2009年12月

2009年12月29日

COP15後の投資戦略

COP15の結果は投資家としては少し残念ですが、日本人としてはこれで良かったのではないかという複雑な思いがしています。日本経済が戦略なき温室効果ガス25%削減により、甚大なダメージを受けるのは間違いないからです。

しかし、欧米は環境消費により経済を活性化させる計画を今さら変更できるはずもなく、特に欧州では二酸化炭素排出権市場の世界的な拡大が悲願でもあります。COP16以降では欧米が接近し、中国や途上国に対し強硬な姿勢に転じてくることも考えられます。

拙書『金融危機で失った資産を取り戻す方法』においても、各国で環境消費拡大の扇動が行われ、環境バブルが起こる可能性が高いと述べています。

その時期については、「環境バブルの兆候が、早ければ国連気候変動枠組条約の締約国会議(COP15)が開催される2009年12月〜2010年夏ごろにかけて表れてくる」(41ページ1〜3行)、「早ければ2009年12月のCOP15で次のルールが決定された明くる2010年、もしくは遅くとも今後数年のうちに、環境バブルが発生するだろう」(145ページ5〜6行)と書いております。環境バブルが起こる時期的な見通しには変わりありません。

買うタイミングについても、「2009年秋から2010年夏にかけて、世界景気や株式市場が二番底を試す展開になるようなことがあれば、その時が環境関連銘柄の買いのタイミングになる」(227ページ4〜6行)と書いておりますが、この点については修正を加える必要がありそうです。

2010年は二番底が来ない可能性が高まってきているからです。アメリカの2009年の雇用統計や失業率、住宅価格などの推移を見ると、仮に二番底が来たとしても、それは2010年より先に延びると思われます。そもそも二番底は金融危機が伴って初めて起きるものであり、2010年に重要な経済指標が急激な悪化をしない限り、金融危機も二番底も起こりようがありません。

いずれにしても、金融危機が起きるか否かは、今後の欧米の住宅や商業用不動産の価格動向に大きくかかっています。しかし、2010年の世界経済は下振れしたとしても、金融危機を起こさずにやりすごせるトレンドに入ってきているように思われます。要するに、下振れしてもリーマンショック後のように極端な悪化はしないということです。

むしろ心配なのは、オバマ大統領の支持率です。支持率の低下に歯止めがかからなければ、グリーン・ニューディール政策を強く推し進める力に翳りが見え始めるかもしれません。

よって、買い向かう時期を決めるのは非常に難しいと言えます。臨機応変に対応する自信がない場合は、買う時期を3回くらいに分けてリスク管理を徹底したほうが良いでしょう。

買う銘柄については、やはりオンリーワンの企業が有望です。スマートグリッドでは203ページ上から2番目の銘柄、原子力では207ページの上から4番目の銘柄が断然お勧めです。二次電池では今のところオンリーワンの企業がありませんが、213ページのどの銘柄が一歩抜け出てきてもおかしくないと思います。

また、環境関連以外では、デフレ関連銘柄が注目されてくると思われます。

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2009年12月22日

COP15が失敗した理由

先週閉幕したCOP15では、ポスト京都の枠組み作りは先送りされ、事実上、中身のあるものは何一つ決まりませんでした。

あまり報道されていませんが、先進国と途上国の溝がこれだけ深まってしまったのは、「地球温暖化と二酸化炭素の増加には因果関係がない」ことが明らかになってきたからです。

IPCCは2年前の報告書で、「近年の気温上昇の原因の大半は人間活動によるもの」と結論付けました。研究成果が認められ、ノーベル賞も受賞しました。このまま、IPCC主導のもと、COP15あるいはCOP16で新しい枠組みができる可能性が高まっていました。

しかし11月に、IPCCの意思決定で中心的な役割を果たしたフィル・ジョーンズ教授が研究データを捏造していたという疑惑が発覚し、欧州では大騒ぎになります。この頃からCOP15の作業部会でも、事態が急変していきます。日に日に途上国の態度が厳しくなっていったのです。

今まではあまりメディアに取り上げられなかった、IPCCの研究結果を懐疑的に見ている科学者たちの話が頻繁に取り上げられ、IPCCには、メディアに圧力をかけて反論を取り上げないよう働きかけていた疑惑も浮上しました。

先進国サイドから「地球を守るために協力してほしい、そのために原発やその他もろもろの省エネ技術普及のための資金援助をする」と説得されてきたのに、IPCCの研究成果が極めて疑わしいものとなれば、途上国が「何のための温暖化ガス削減なのか」と不信感を増幅させるのは当然でしょう。

COP15の結果を受けて、新興国や途上国が強欲だという意見もあるでしょうが、彼らの気持ちは理解できます。「欧米のインチキで世界経済の枠組みを勝手に変えるのであれば、成長を阻害される以上のお金をよこせ」という気持ちが強まるのは仕方のないことです。

恐らく、来年のCOP16でもこの不信感は解消されず、先進国は莫大な資金提供を要求されるでしょう。先進国は途上国向け資金支援として、2010〜2012年に300億ドル、2020年までに年1000億ドルの資金を集める仕組みを構築するようですが、それ以上の高いハードルを突き付けられる見通しです。

それでは、私たちはどのような投資戦略を立てて行けば良いのでしょうか。

基本的な戦略は拙書『金融危機で失った資産を取り戻す方法』に書いておりますが、次回はこのブログの原点である「拙書の読者のためのブログ」に立ち返り、その投資戦略に補足を加えて説明したいと思います。

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2009年12月14日

国債のパラドックス

例えば、年収400万円の人が毎年850万円の生活をしていたとします。すでにこの人の借金は8600万円もあり、来年は9000万円を超えようとしています。このような状況が理解できたうえで、あなたはこの人に金を貸せますか?

財務省によれば、国の借金は2009年9月末現在で865兆円にも上ります。来年の今頃には、900兆円を超えるのが確実です。来年度の予算では、税収が40兆円を大きく割り込み、45兆円以上が借金で賄われます。

これは、国民1人当たり680万円の借金をしている計算になります。4人家族なら、2720万円の借金を抱えていることになります。

ここまで借金が膨らんでしまうと、利息の支払いだけで精一杯で、借金の元本を返済していくことは不可能です。日本はこれから、人口と労働力人口がともに減っていきます。税収が減り続ける一方で、社会保障費が膨張し、状況は年々悪化し続けていきます。

もし政府が何の長期的な成長戦略もとらずに、無為に時間が経過してしまったとしたら、国の借金は10年後には現在の1.5倍〜2倍に膨らんでしまうでしょう。

日本国債の信用力は、海外投資家の保有率を見るとよくわかります。米国債の場合、その約50%を海外の投資家が保有しています。ところが日本国債の場合は、海外投資家の保有比率が6%台と極端に低く、残りの90%以上は国内の金融機関や個人投資家が保有しています。

これは、多くの海外投資家が日本国債を危ないと見ている一方で、日本国民が約1500兆円もの豊富な貯蓄を使って、日本国債を買い支えていることを意味しています。

元々、個人向け国債は生まれた動機が不純でした。国内金融機関だけでは消化しきれなくなった国債を、個人に引き受けてもらおうという発想から誕生したからです。

10年前には「トンデモ論」として扱われてきた国家破綻が、いま現実に向けて進んでいると言わざるを得ません。このまま行けば、いずれ借金の額が国民の金融資産1500兆円を上回る日が来ます。それ以前に、円相場と国債の暴落がほぼ同時に起こり、国家破綻のシグナルを発するでしょう。それは経済の歴史が証明しています。

「日本は世界最大の債権国だから大丈夫だ」と言う楽観論もありますが、対外債権はたったの225兆円しかありません。地方の借金がやっと帳消しにできる程度の額です。

日本が借金を増やさないためには、どうすればいいのでしょうか?

答えは簡単です。私たちが国債を買わなければいいのです。貸す国民がいるからいけないのです。冒頭の質問に対する私たちの答えは、質問を読み終えた瞬間から決まっているはずです。

「私たちが国債を買えば買うほど、自身の貯蓄が増え、国家財政は安定する。しかしそれと同時に、放漫財政が放置され、国家財政の破綻が近付く。それは国民生活の破綻に直結する。」

私はこれを「国債のパラドックス」と呼んでいますが、日本の借金体質を支えているのは私たちなのです。未来の世代にツケを回さないために、今こそ国債を買わない行動を起こすべきではないでしょうか。

そんなことをしたら金利が上がってしまうという意見が出るかもしれませんが、このまま借金が増え続ければ、それ以上に金利は急激に上がり、国民生活は破綻してしまうでしょう。 

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2009年12月07日

日本はあと20年経ってもデフレから抜け出せない

11月下旬に政府がデフレ宣言をして以降、「日本のデフレはどのくらい続くのですか?」という質問をよく受けるようになりました。

私は、「日本はあと20年経ってもデフレから抜け出せない」と考えています。端的な理由が拙書 『サブプライム後の新資産運用』 の本分中にありますので、その箇所を引用したうえで、現状も踏まえた補足を加えたいと思います。

(以下 『サブプライム後の新資産運用』134〜137ページから引用)

そもそも、健全なインフレとは、労働者の賃金が伸び、消費が拡大して初めて起こります。日本にインフレがこない最大の原因は、実はバブル経済が崩壊した1991年以降、労働者の賃金がまったく伸びていないことにあります。

バブル崩壊後の日本だけが、「賃金が上昇して、消費が拡大し、物価が上昇する」という経済学上のプロセスを世界で稀に経験できずにきてしまいました。バブル崩壊による平成不況は2002年に終わり、企業業績がすこぶる良くなった2003年以降も、労働者の賃金は下がり続けているのです。

実際に、1998年から2006年まで9年連続でサラリーマンの平均年収は下がり続けています。これは、大企業が国際競争力を保つために人件費や製造コストの抑制を不況脱出後も続けているからであり、それが大多数の中小企業の労働者の賃金の押し下げに影響を与えているからです。

おそらく、労働者の賃金が上昇しないという流れは今後も止まらないでしょう。世界経済の拡大期は2007年でいったん終了し、それ以降は景気が後退あるいは停滞する可能性が高いことを考えると、労働者の賃金はこれからも横ばいか、あるいは右肩下がりになる可能性が高くなることが予想されます。

企業収益が過去最高を5年(2004〜2008年度決算)連続で更新したとしても、このありさまなのです。ひとたび企業業績が天井を打ち伸び悩むようになれば、デフレの長期化が今後も続くことは間違いありません。

2007年後半から、世界的なエネルギーや食料価格の高騰が進み、世界的なインフレが起こっています。日本でもガソリンや食品価格の値上げが続き、急激なインフレが起こるのではないかとマスコミを中心に騒がれています。

しかし、インフレにならない日本の体質を知っていれば、さほど心配する必要はありません。日本は労働者の賃金が伸びないほかにも、エネルギーの消費効率がとても優れていて、食料品価格の物価に与える影響は世界でも最低水準であるというインフレに強い体質を持っています。

例えば、食料品にしても2008年に入ってから10〜20年ぶりの値上げをしたものが多く、牛乳のように30年ぶりの値上げというものもありました。これは、世界から見たら驚くべき物価情勢です。

日本の物価がこの20年間で10%くらいしか伸びていないのに対して、アメリカでは80%、イギリスでは70%、その他の先進国でも同じ水準の伸びを示しています。このことを考えると、日本の物価情勢がいかに特殊であり続けてきているのかが理解できます。

(引用終わり)

以上の文章は、マスコミでインフレが来ると騒いでいて、多くのエコノミストが物価上昇率は3%や4%になると言っていた時期に書いた文章ですが、現状を分析すると、事態は当時よりも悪化していて、日本のデフレはこれからさらに加速していくと考えられます。

安売りが衣類や食料品、電化製品だけでなく、いよいよ高額の耐久消費財にまで波及してきたからです。

その象徴的な事例が、今年の9月にトヨタの社長が低価格化路線への転換を表明したことです。自動車はシェア争いのために安売り競争をすることなく、これまでは高価格を維持してきた商品です。それがプリウス値下げの成功により、「低価格にすればガソリン車も売れる」というトヨタの勘違いを生み、その後はガソリン車の上級車も低価格で設定されるようになりました。

経済界の大きな流れを左右するトヨタの路線転換は、自動車業界だけでなく、他の業界へも大きな影響を与えるはずです。「トヨタがやるのだから、我社もやらなければならない」という風潮を作り出すには十分であったでしょう。そうすると、デフレが加速していきます。

このままでは、もっとも高額な耐久消費財である住宅にも、その影響は波及してしまうかもしれません。セキスイハウス、大和ハウス、パナホーム、へーベルハウスなど大手住宅メーカーまでもが低価格路線を打ち出してきたら、デフレも最終形態に入ってくるものと思われます。

日本人はもう10年以上もデフレと付き合っており、世界的に見ればデフレの大ベテランです。給料が上がらなくても安い商品を選び、上手にやりくりする術を身につけてきました。とはいえ、これから迎える長期デフレにおいては、その術を持ってしても、過酷な状況に追い込まれるかもしれません。

値下げ競争が激化し、企業の利益が減る。その結果、給料が下がり、消費が縮む。そして、さらなる景気後退を呼ぶ。こうしたデフレスパイラルを避けるためには、日本のシステムそのものをつくり変えていかねばなりません。

それが、法人税減税と派遣労働者の正社員化、年金財源の全額消費税化といった三位一体の抜本改革なのです。雇用環境が改善し、実質的な手取り収入が増え、将来不安がなくなる。このような条件が揃わない限り、国民は安心して消費をしませんし、給料も上がりません。

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asset_station at 14:23|この記事のURL経済・相場分析 

2009年12月01日

読者からの質問

『サブプライム後の新資産運用』の読者から、最近も次のような質問をいただくことがあります。

【質問】
著書ではポートフォリオの中に外貨預金を組み込んでいますが、現在はどのような外貨を保有したら良いのでしょうか?

【回答】
確かに拙書では、「株式・外貨預金・現預金」の三つの金融資産から構成されるポートフォリオを提案していますが、世界経済と相場の大きなトレンドを捉えて運用することが最も重要であると説明しています。

拙書の109ページでは、「世界の政治情勢や金融情勢が混迷して、金融市場の方向性を予測することが非常に難しいときがあります。そういったときは、できるだけ金融資産の保有割合を減らし、現金化することでリスクを抑えるようにします。そして、世界の金融市場の方向性が見えるようになってきてから、そのときに適した金融資産を再び買うようにします。」と述べています。

ゆえに、為替市場における大きな方向性が「アメリカの超低金利政策の長期化」にほぼ決まっている時点で、外貨預金は適した金融資産とは言えず、ポートフォリオから外すことがセオリーとなります。「ドルではなくて他の通貨を買えばいい」という意見もあるかもしれませんが、ドル円相場がドル安円高に振れれば、他の主要通貨もそれに連動して円高になる傾向があるので、やはり他の通貨も勧めることができません。

実際に、顧客へのアドバイスやメルマガ等でも、今年の3月下旬から外貨預金はポートフォリオから外していましたが、それは為替市場の大きなトレンドには逆らえないと判断したからでした。その判断が間違いないと確信に近い形になったのは、11月のFOMCで金融緩和の長期化が強まったのに加え、FRB理事の面々が講演等で「あと2年〜3年は超低金利を継続する」とアナウンスし始めたことにあります。

今回のドバイショックはひとつのきっかけにすぎず、円高の流れはずっと前から決まっていたと言っても過言ではありません。国際金融の常識では、中東の資金繰りが急速に悪化していることは夏場から言われてきたことですし、ドバイショックが起こる以前に日経新聞の記事でも、中東の政府系企業で債務不履行が起こる可能性が高いことは取り上げられていました。

ドル円相場は先週に88円をブレイクしたことで、新しいトレンドに入ってしまったかもしれません。本日、日銀が臨時の金融政策決定会合を開き、相場は87円台まで戻していますが、10兆円規模の資金供給オペレーションではこの流れを止めることは難しいと思われます。

関連記事 
(1)2008年11月18日の記事  
(2)2008年9月4日の記事

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asset_station at 16:49|この記事のURL拙書への質問