2011年07月

2011年07月19日

円高基調は止まらない

8月は円高に振れやすい傾向があります。過去30年間で19回、20年で15回、10年では8回も円高が進んでいます。昨年も8月半ばに83円台に突入し、15年ぶりの高値を付けたのは記憶に新しいところです。近年になればなるほど、8月の円高の確率が高くなっているのは、それだけ日本経済の外需依存度が上がってきているからです。

8月以降は、輸出企業が9月の中間決算を控え、海外で稼いだドルを円に換えて国内へ還流させたり、お盆休みの前に円買い・ドル売りの為替予約をしたりする時期でもあります。また、米国債の償還時期は年4回ありますが、8月が最も規模が大きいこともあります。機関投資家が償還・利払いで得たドルを国内へ還流させる時期にも当たっています。もちろん、夏休みで相場参加者が減少し、相場が乱高下しやすいという要因もあります。

もっと大きな流れで見ると、円高基調は少なくてもあと1年〜2年は続くと考えています。先進国と新興国の双方がドルやユーロの保有を減らし、円やカナダドル、オーストラリアドル、金などの購入を増やす流れはしばらく続くと見ているからです。特に、新興国の外貨準備における円保有が大幅に伸びることが予想されます。

その背景には、みなさんもご承知の通り、欧州で財政危機問題が収束するまでには、長い時間がかかることが想定される一方で、米国では大規模な量的緩和を実施したにもかかわらず、景気が本格的に回復する見通しが立っていないという事情があります。

もちろん、これは純粋な日本買いを意味していません。日本経済は長期の停滞に陥っている上に、欧州の高債務国と同じく、深刻な財政問題も抱えています。しかし、国の「正味の債務はどれだけあるのか」という本質に迫ると、「国(政府)と金融機関の債務を合算した債務である」という解が得られます。だから、「ドルやユーロよりはマシだ」という選択肢で買われているのです。

日本が大震災で打撃を受けようが、日本国債が格下げされようが、円高の基調は変わらず、今後は70円台が標準になる相場が定着するでしょう。仮に政府が円売り介入すれば80円台に戻るかもしれませんが、円安へ反転を保てるのは比較的短い期間になるものと思われます。

次回は、これからの新興国投資はリスクが高いことについて述べる予定です。

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asset_station at 11:46|この記事のURL経済・相場分析 

2011年07月12日

フェローテックの増資について

昨年実施された日本板硝子や他の複数の企業の公募増資において、事前に情報を入手していた外資系証券が、増資の発表前に大量の空売りをして不正に利益を得ていたという疑いが浮上し、市場ではちょっとした話題になりました。

主幹事の証券会社が増資引き受けのために海外で行う事前需要調査(プレ・ヒアリング)で、調査先の外資系証券から増資に関する情報が漏れ、多くの外資に悪用されたと考えるのが自然であり、その後、金融庁もそういった動きに対して規制や監視を強化する旨のコメントを出していました。

しかし、昨日の夕方にフェローテックの増資が発表され、日本板硝子のケースとまったく同じことが再現されてしまいました。6月下旬から空売りをしていた多くの外資が、増資に伴う事前需要調査があったことを知っていた、と考えて間違いないでしょう。

金融庁が規制や監視を強化する方針に加え、株主総会が終了して間もないうちに「道義上、増資はないだろう」と誤った判断をしていました。私の認識が甘かったようです。

金融庁が本当に個人投資家の裾野を広げたいと考えているならば、このようなインサイダー取引を野放しにしてはいけません。きちんと調査し、摘発しておかなければ、今後も同じことが繰り返されてしまうでしょう。

株価の見通しについて述べますと、多くの場合、増資における大きなポイントは発行価格が握っています。発行価格が下値の目処になる傾向があるからです。

発行価格が決定するのは7月20日(水)〜7月25日(月)の間になります。それまでどのような株価の推移をするのか見当が付きませんので、発行価格がわかってから売買の方針を決めたほうが良いと思います。

今回の増資は、インサイダー取引さえなければ、素直に評価できる内容のものでした。中国の太陽電池の需要急増に備えて、増資で得る資金の8割を中国の子会社の太陽電池関連事業に充てる予定であり、「選択と集中」を高める方向性がはっきりとしているからです。

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2011年07月08日

経済産業省の試算への疑問(2)

経済産業省による原子力発電のコスト試算では、使用済み核燃料を何万年〜何十万年も保管するという途方もないコストが、実質的には計算に入っていないことを述べました。

当然、国が原発を受け入れた自治体に出し続けている補助金や、国や電力各社がマスコミや政治家、御用学者にばら撒いてきた巨額なお金もコスト計算には入っていません。福島の事故を受けて、新しい安全基準を満たすためのコストも計算に加えなければなりません。

これだけでも原子力発電のコストは何倍にも膨らんでしまうのではないでしょうか。

東京電力に限っては、被害を被った住民に対する賠償金、放射能が高い地域の除染費用、廃炉費用などがかかります。そして、巨額の訴訟費用も考慮しておく必要があります。

福島の人々が10年後、20年後に癌になったとしても、裁判ではその因果関係を立証することはできないでしょう。それでも、東京電力に対して大量の訴訟が起こされるであろうことも容易に想像できます。

たとえ自然エネルギーへの転換を今後積極的に促進したとしても、あと10年〜20年は原子力による電力が必要になります。その間に、「原発事故は二度と起こらない」とは言い切れません。だから、電力各社は事故を起こした時の保証金を積む制度を設けるべきだと思います。

コストの計算とは別の話になりますが、以下のURLの映像はぜひ見ていただきたいと思います。
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

左上の「審議中継カレンダー」から5月23日の部分をクリックし、中央上部の「行政監視委員会」をクリックすると、あまりマスコミに取り上げられることがなかった映像が見ることができます。

3時間23分もの長い映像なので、時間を取って見ることがなかなかできなかったのですが、日本の原発行政がいかにいい加減であったかということが理解でき、これまで原発の御用学者の言ってきたことを鵜呑みにしてきた己の知見の浅さを反省いたしました。

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2011年07月04日

経済産業省の試算への疑問(1)

経済産業省の試算によると、原子力の発電単価は1キロワット時当たり4.8〜6.2円と、風力発電の10〜14円、太陽光発電の37〜46円に比べて安いとされています。

しかし、この試算は2009年のもので、すでにデータとしては古いと言えます。太陽光発電のコストはここ2年〜3年で世界的に大きく下がってきているからです。

世界経済危機をきっかけに、2008年に欧州では太陽電池バブルが崩壊し、それに併行して中国や米国のメーカーが参入したことで、太陽電池は価格競争の時代に突入しました。特に、太陽の光が強い南欧では、太陽光発電のコストが電力料金並みに安くなってきています。

実際には、現在の太陽光発電のコストは30円台前半くらいかもしれません。日本では家庭用の電力料金は1キロワット時23円とされていますが、日本メーカーの技術力を持ってすれば、あと2年〜3年で欧州と同様に、家庭用電力料金を射程圏に捉えてくるだろうと予想されます。

太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーはまだコストが高く、原子力を完全に代替するのは難しいと、経済産業省は言います。

ところが、経済産業省は原子力のコスト試算における詳細な資料を公開していませんし、原発事故後に露見した強大な利権構造を目の当たりにすると、原子力のコストは意図的に低く計算されていると考えたほうが正しいのではないでしょうか。

なぜなら、使用済み核燃料を何万年〜何十万年も保管するコストが、実質的には計算に入っていないからです(コストとして十数兆円は計算に入っているそうですが、どう考えても足らないと思います。)

最も毒性が強いプルトニウムの半減期は24000年と言われ、無力化するには何十万年かかるのか、正確には誰もわかりません。そして、そのコストはあまりに膨大なため、誰にも計算できません。おまけに、放射性廃棄物の保管場所や保管方法も詳細には決められていません。

経済産業省は原発行政を進める上で、そういった不都合な計算は意図的に省いて国民に示してきたとしか思えません。

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asset_station at 15:50|この記事のURLその他