2006年10月02日
フルラウンド劇場「逮捕」
自分の部屋に戻って半頃、パソコンを閉じて
布団に入った。
いつものようにビデオを流しながら目を閉じて
熟睡しかけたころ、他の部屋で音がした。
いつものように猫が騒ぎ出したのだろうくらいに
考えていた。
でも、どこか緊張感を感じた。
猫にはない重い音が鈍く部屋に響いたからだった。
僕は用心深い、ガスの元栓もしつこいほど確認する。
玄関の鍵や窓の鍵も友人が呆れるほどしつこく確認する。
閉めたのにちゃんと確認しなかったというだけで
途中で戻って確認する。
如何なる大事な用であろうと、人を多少待たせてしまい
兼ねない状況であろうと僕はそっち選択する。
無事が何より第一だから、そして僕は母譲りの
心配性だからその選択に迷わない。
そんな僕のことだから鍵を閉め忘れたなんてことはない。
そして、それが霊であるはずもない。
幾度か見たことはあるけれどそういう気配というか
予感ではなかった。
予感というよりは悪寒がした。
開いている襖から覗き込むと、窓に黒い大きな人影がある。
自分よりも大きい男が窓に立っている。
表情は見えない。
豆電球では帽子を被った男の表情は確認できない。
「おい、」
僕は叫んだ。
腹の底から叫んだ。
次の瞬間、窓を開けて男は外に跳び出た。
迷わず僕も跳び出た。
そして、雨の中、裸足で逃走する犯人を追いかけた。
曲がって男は狭い建物の間に入った。
隙間に自転車が一台止まっていた。
自転車が一台止まれる程度しかないその隙間を
縫って男は逃げようとする。
向こう側に逃げられたら捕まえられない、
地元の僕の地理感覚からいえば逃げ道がいくつもある。
今、捕まえなければ、でも、自転車が邪魔だった。
自転車の合間を縫って向こう側に行こうとすると
男は何かを手に持って僕の腹を刺した。
「やられた、」
そう思ったけれど痛みは鈍かった。
傘だと確認して僕は自転車越しに男の手を引っ張って
手前に引っ張り出した。
噛まれたり殴られたりしながらもつれ合いは続く。
馬乗りになって帽子を剥がす。
剥げた中年だった。
「誰か、警察、」
幾度もそう叫ぶも誰も出てこない。
民家の灯りがつくこともない。
しばらくして、一人二人出てきた。
事情を話して通報してもらった。
それから少ししてようやくパトカーがやってきた。
警官が取り押さえてから雨の中を裸足で戻ると
外の道路に通帳やパスポート、キャッシュカードが
散らばっていた。
水溜りの中のそれらを拾って泥棒の入った我が部屋を
覗く。
窓の上の30cmほどの天窓が全開だった。
そこから入ったらしい。
猫が異常に興奮して僕を噛んだ。
傘で刺された脇腹が痛い。
乱闘の際、肘から出血して中原裕さんに作ってもらった
Tシャツに血をつけてしまった。
膝もどこで転んだか腫れて、裸足で走った足の裏は
擦り剥いて痛い。
何枚も写真を撮って何枚もの調書に住所氏名年齢の
サインをして、今さっきようやく帰宅した。
犯人は前科があって常習でもあるらしい。
警察は喜んでくれていた。
そんなわけで僕は今から寝る。
非常に疲れた。
人生初のエキサイティングだった。
布団に入った。
いつものようにビデオを流しながら目を閉じて
熟睡しかけたころ、他の部屋で音がした。
いつものように猫が騒ぎ出したのだろうくらいに
考えていた。
でも、どこか緊張感を感じた。
猫にはない重い音が鈍く部屋に響いたからだった。
僕は用心深い、ガスの元栓もしつこいほど確認する。
玄関の鍵や窓の鍵も友人が呆れるほどしつこく確認する。
閉めたのにちゃんと確認しなかったというだけで
途中で戻って確認する。
如何なる大事な用であろうと、人を多少待たせてしまい
兼ねない状況であろうと僕はそっち選択する。
無事が何より第一だから、そして僕は母譲りの
心配性だからその選択に迷わない。
そんな僕のことだから鍵を閉め忘れたなんてことはない。
そして、それが霊であるはずもない。
幾度か見たことはあるけれどそういう気配というか
予感ではなかった。
予感というよりは悪寒がした。
開いている襖から覗き込むと、窓に黒い大きな人影がある。
自分よりも大きい男が窓に立っている。
表情は見えない。
豆電球では帽子を被った男の表情は確認できない。
「おい、」
僕は叫んだ。
腹の底から叫んだ。
次の瞬間、窓を開けて男は外に跳び出た。
迷わず僕も跳び出た。
そして、雨の中、裸足で逃走する犯人を追いかけた。
曲がって男は狭い建物の間に入った。
隙間に自転車が一台止まっていた。
自転車が一台止まれる程度しかないその隙間を
縫って男は逃げようとする。
向こう側に逃げられたら捕まえられない、
地元の僕の地理感覚からいえば逃げ道がいくつもある。
今、捕まえなければ、でも、自転車が邪魔だった。
自転車の合間を縫って向こう側に行こうとすると
男は何かを手に持って僕の腹を刺した。
「やられた、」
そう思ったけれど痛みは鈍かった。
傘だと確認して僕は自転車越しに男の手を引っ張って
手前に引っ張り出した。
噛まれたり殴られたりしながらもつれ合いは続く。
馬乗りになって帽子を剥がす。
剥げた中年だった。
「誰か、警察、」
幾度もそう叫ぶも誰も出てこない。
民家の灯りがつくこともない。
しばらくして、一人二人出てきた。
事情を話して通報してもらった。
それから少ししてようやくパトカーがやってきた。
警官が取り押さえてから雨の中を裸足で戻ると
外の道路に通帳やパスポート、キャッシュカードが
散らばっていた。
水溜りの中のそれらを拾って泥棒の入った我が部屋を
覗く。
窓の上の30cmほどの天窓が全開だった。
そこから入ったらしい。
猫が異常に興奮して僕を噛んだ。
傘で刺された脇腹が痛い。
乱闘の際、肘から出血して中原裕さんに作ってもらった
Tシャツに血をつけてしまった。
膝もどこで転んだか腫れて、裸足で走った足の裏は
擦り剥いて痛い。
何枚も写真を撮って何枚もの調書に住所氏名年齢の
サインをして、今さっきようやく帰宅した。
犯人は前科があって常習でもあるらしい。
警察は喜んでくれていた。
そんなわけで僕は今から寝る。
非常に疲れた。
人生初のエキサイティングだった。
asshi_elvis at 07:44│Comments(1)│
│日記
この記事へのコメント
1. Posted by 高村 2008年12月14日 18:31
すごい!