飛鳥ベスパー雑記

Ultima Online, Asuka, Vesper unemployed's note.


本年度のご応募、全27作品から選ばれました、
受賞作品を発表致します。


15

大賞『Locked Box』選評
 本作は、UO内賭博をモチーフとした娯楽作品である。
 前回もそうだったが、著者の作品には明確な「アイデア」がある。
 これはエンタメには欠かせない大切な要素であり、
 かつ/にもかかわらず、俄かには得難いものでもある。

 困難に直面し、最早これまでというとこまで行ってしまった物語が、
 一気にごろんと180度転回するような「アイデア」を見せられた瞬間、
 我々は、スカッと胸のすくような思いを味わう。
 快哉を叫びながら、主人公と共に結末へ駆け抜けてゆく。
 本作はまさに、そういった作品である。

 更に特記すべき点は、それがウルティマ・オンラインならではの要素、
 他のRPGでもMMOでもない、UOにのみあるポイントを活かし、
 組み上げられた構造になっているというところだろう。

 表現力についても、前回から確実に成長が感じられたのが嬉しかった。
 いわゆる伸びしろというものを目の当たりにした感覚があった。
 文章だけでなく、キャラクターの描き方も巧みになっている。

 ややご都合主義的なきらいが、各所においてない訳ではないが、
 それを補って余りあるだけのカタルシスを感じられる作品である。
 むしろエンタメ作品は、そのくらいのお気楽さで読むのが良い。

 よくできた一本の映画を観たような、充実した体験が得られる。
 是非皆さんにも、大金が掛かったUO内賭博の緊張感を、
 主人公たちと一緒に味わって頂きたい。



14

佳作『Cya, My Stones.』選評
 その完成度に圧倒され、読後しばらく放心してしまった。
 キャラクター、テーマ、構成、そして表現力。
 どこを取っても「本物」の小説のクオリティである。
 先にも書いたが、おそらくはこの先、ここまでの仕上がりの
「別れ」をモチーフとした作品は、おいそれとは現れないだろう。
 そのくらいの衝撃を、本作は審査員一同に与えた。
「この人のことをもっと知りたい」と感じるキャラクター達がおり、
 心地よく翻弄されてしまう物語の波があり、
 そして雨上がりの空をゆっくりと去る、黒い雲を見送るような、
 美しい読後感があった。本当に素晴らしい。
 惜しむらくはこれが「UO本」であったこと、その一点のみだろう。
 
 まさかこんな矛盾を経験することになるとは思わなかった。
 本作が例えば、同人誌であったり、ブログのエントリーであったなら、
 即ち窮屈な見開きや文字数・ページ数の制限に縛られていなければ、
 その実力を余すことなく展開できていたに違いない。
「UO本」という不自由な形式が本作のリーダビリティを阻害してしまう、
 その悔しさに、審査員一同は歯がゆさの極みであった。
 
 しかし勿論、この物語はそれを踏まえた上においても充分な、
 ウルティマ・オンラインのノベライズとして歴史に残り得る、
 見事な小説作品として完成されている。
 是非とも、ひとりでも多くの方に楽しんで頂きたい。
 お世辞抜きで、本当に、面白い作品だった。



13

BBNN賞『Phlebotomy』選評
 何気ない仲間内のひと言が、隣の席の誰かを傷つけてしまう――。
 そんなのは、よくある話かもしれない。
 だからどうした、好悪の表明にまで検閲がかけられる世界になれば、
 それは最早ディストピアではないかとは、私も思う。
 しかし、だけれどもやっぱり、ここに確かに泣いている人がいて、
 社会から追放された人が、己の心を追放してしまった人がいて、
 こうして控えめな声で、内心を吐露しているのだ。
 何の治療にもならぬ血抜きをして、
 一時の眩暈にかりそめの癒しを求めているのだ。
 それを見て見ぬふりできるほど、私は強くない。
 もういい。わかったから黙ってこの手を握れ、と、この著者に伝えたい。


Library cafe賞『Soshite Hajimaru,,,』Latour殿選評
 実際に上演された演劇の舞台裏を描いた
 いわゆるバックステージ物はこれまで書かれたことがありません。
 本作はブリタニア文化史の貴重な資料となるはずです。
 もちろんドキュメンタリー作品としても楽しめました。
 メンバーそれぞれが個性と力を発揮して準備に奮闘する様子は
 まさにもう1つのドラマです。



12

ベスパー賞『Korotan Daisuki』Bunzo殿選評
 エリシア(主人公の女の子)とコロタンの心温まる物語と思いきや、
 手に汗握る戦闘への切り替わりに正直驚いた。
 戦闘のシーンが多く読み応えがあるが、同時に非常に読みやすい。
 本の内容がスッと入ってくるのが好印象の作品。
 そして、コロタンは可愛い。


ミノック賞『Iniya Utsutsu ma』FALF殿選評
 強い冒険者でもなく、何か特別な能力を持つわけでもない、
 あくまでその世界の一般人の主人公が、
 一般人としての視点のまま少し不思議な体験、冒険をしたり、
 もしくはその生活する姿を描く。
 そういった物語が元々好きで、特にこの作品では作品全編に流れる
 優しい空気に非常に心惹かれました。とても素敵な作品です。



11


受賞者の皆さま、おめでとうございます!!!!
全応募者の皆さまも、本当にありがとうございました!!!!


 ※


6月12日、22時~、
『第二回飛鳥文学賞表彰式』を行います。

場所は、前Yew首長 Holly-Bell殿の多目的ホールをお借りしています。

1212
ベスパーミニホールに、会場直通テレポーターを設置しています。
赤い看板が目印)


受賞者の皆さんへの賞金は勿論、応募者の皆さんに、
投稿1作品につき1mを原稿料としてお支払いします!!
是非ご来場くださいませ!!!

(当日、ご都合が合わない方は、後日お渡し致しますので
 どうぞご遠慮なく、良きタイミングをお知らせください)


 ※


受賞作品の講評などについては、こちらの配信アーカイブもご覧ください。


※ 作品講評

 以下の講評は、作品紹介ではありません。
 ネタバレ的な要素も含まれると思いますから、
 先に応募作品を読み、楽しまれることを、強く推奨致します。 



No.22『Sin』Gren著

 無邪気な婚約者の秘密。
 う~~ん、これもなかなか……すげえな……。

 安心して読み進められる文章力に、まず感服する。
 100ページの長さがあるが、話の中に引き込まれ、
 あっという間に読み終わってしまう。

「自分の善悪が信じられないで生きていくってどんな気持ちなんだろう」
 この台詞が、物語の主題であろう。
 主人公自身の中には確固とした道徳観、信ずる正義というものがあり、
 それを逸脱したものは迷わず排除するという生き方が見える。
 我々の多くも、そういったオセロのような世界観を抱きがちである。

 が、いざ物事を決めた後になって、何かイレギュラーな葛藤を抱き、
 自分の選択はこれで本当に良かったのだろうか、
 この結末に本心から納得しているのだろうかと悩み始めると、
 もういけない。

 この物語の主人公もその局面に突き当り、大いに悩んだ末、
 結局は自分自身の心に素直に生きることを決めている。
 つまり、あれほど確かだった善悪の軸を、喪失してしまっている。

 婚約者についての生まれ持った気質・環境など、
 色々と考慮すべき要素が仄めかされているのは、
 我々に「まあそれなら仕方ないよね」という落としどころを示す、
 本作のほとけごころのようなものである。
 そのような言い訳の余地など一切ないレベルで、
 自分の感情と、道徳心とが真正面からぶつかる場面は必ずある。

 どちらを取っても悔いが残るなら、せめて、
 隣で笑ってくれる人がいるほうがマシだろうなと、私も思った。



No.23『Neko no Me』FALF著

 飼い主の想い人について、あれこれくっちゃべる猫。
 面白い。語りだけで物語を描き切る文章力は確かなもの。
 飼い主の生活やら、酒場やらの情景が次々と浮かんでくる。
 いかにも猫らしい、皮肉っぽい口調も憎めない。

 この後、オウムの告げ口がどのような結末を招くのかは、
 はてさて我々の想像次第といったところだが、
 クーシーより強い女戦士が怒り狂わないことを祈るばかり……。

 パパッと読めて好印象。よかった。



No.24『Iniya Utsutsu ma』Niboshi著

 エルフへの転生。出会いと別れ。
 転生クエストの様子がとても丁寧に、面白く描かれている。
 表現力に優れており、臨場感、余韻もしっかりとある。
 相当に達者な筆であるという印象。

 終盤、短い区間だけ三人称になっている点が惜しい。
 右側のページから突然変わっているので、
「彼女って誰だろう、そこに先客がいたのかな」と混乱してしまう。
 意図は分かるが、一人称で統一してもらったほうが良かったと思う。

 単純な色恋の話ではなく、心に残り続ける美しいものとして
 エルフの青年を描いているのが著者の鋭いところ。
 あえてひとことで言うならば、非常にエモい。
 面白かった。



No.25『Cya, My Stones.』HidokuKurai SORA著

 崩壊を目前に控えた砦と、それぞれの「別れ」を抱えた三人。
 戦場、ピット、腐り待ち――鳴り続ける剣戟の果てに、
 彼らが辿り着いた先は。

 ……いや、ちょっとこれ。
 モノホンが来てしまったな、というのが第一印象……。
 ベースとなっている技術が、最早UO本ではなく一般小説のそれ。
 ゆえに少々、頭を切り替えて読む必要すらあった。
 猛烈に縦書きで読みたい、と思ったのは今大会これで二本目である。

 読み進めるうち、登場人物達にどんどん感情移入させられてゆく。
 描写・比喩の巧みさだけでなく、筋立てや構成も本物。
 戦いの連続に圧倒される。最後まで目が離せない。
 タイトルもニクい。そうきたか……。

 エピローグが、余韻を残せるギリギリの長さだったので、
 あと2ページほど回してもらいたかった感もあるが、
 それ以外はもう何も言うことがない。

 「別れ」や「引退」をテーマとする長編において、
 これ以上の完成度の作品は、もうおいそれとは現れないだろう。
 とにかく凄い。素晴らしい小説だった……。



No.25『Sub GM no Susume』kawasaki著

 殺人者ギルドのサブGM、その日常。
 ギルド運営の舞台裏、という地味になりそうなテーマなのだが、
 なかなかどうして、予想外に面白い。
 
 時々コミカルなやり取りもあり、しかし冷静に考えると
 こいつら全員とんでもないサイコパス集団なのだろうとも思い、
 その辺りのギャップと戸惑いは、そのまま我々の「PK」に対する
 憧れと嫌悪感がない交ぜとなった複雑な感情、そのものである。

 あえて山場らしい山場を置かず、日常風景のみを切り取ったことが、
 本作においては効果を上げている。
 あれこれ愚痴を言いながらも、タイトルが「ススメ」である以上、
 やっぱり彼はサブGMというポジションが気に入っているのだろう。
 その気持ちはなんとなくわかる性質であるから、
 苦笑しつつ、大変楽しんで読んだ。



No.27『Voyage King』TAIYOUJI著

「航海王」というタイトルのゲームブック。
 かなりのボリュームがあり、全エンディングを読もうと思ったら、
 腰を据えて挑戦する必要がある。
 ひとつ選択を間違えれば、即座にミンチになって死亡する。

 物語はドタバタ風の貴種流離譚。
 童話よりもシンプルな思考回路の主人公が、
 ジェットコースターのような人生の船旅で暴れまわる。

 執筆には時間もかかったのではないだろうか。
 力作。パパッと楽しめて、面白い。

※ 今後のスケジュールについて

・本文学賞では、「読者賞」選定の材料となる、
 読者諸兄からの感想本を受け付けております。

 投函用ポストは、「Library Cafe 新館」屋上の、
 作品展示会場内にございます。

 感想本の投函〆切は、6月6日の日曜日
 (即ち、7日の月曜日の朝、ポストを開くまで)と
 させて頂きます。


・審査結果は、6月11日の金曜日23時から
 Youtube配信の『BBNN:Fri』にて発表させて頂きます。
 (配信終了後、当ブログにおいても公開されます)


・その翌日、6月12日の土曜日22時から
 前Yew首長のHolly-Bell殿の「多目的ホール」におきまして、
 『第二回 飛鳥文学賞 表彰式』が行われます。

 会場へのアクセス等は、結果発表の際、
 あわせてお知らせ致しますので、皆さま是非ご来場ください。





※ 作品講評

 以下の講評は、作品紹介ではありません。
 ネタバレ的な要素も含まれると思いますから、
 先に応募作品を読み、楽しまれることを、強く推奨致します。 


No.18『MAJI GIRE 5 Seconds』Hina著

 趣味の園芸が、格ゲーもかくやの激しいバトルを招く。
 大仰な形容がコミカルで、サクサク読めた。

 物語の主題として、趣味の成果と仕事の商品、
 同じ物差しで測るのは間違いだ、という主張が熱く語られる。
 熱量が大きい。著者の持論かもしれない。

 これは確かにそのとおりで、最初から賞や批評を求めない、
 あくまでも自分と自分が選んだ鑑賞者だけのためのモノを、
 横からああだこうだと言われるのは、たまったものではない。

 たとえその批評者がその道のプロだとしても、
 求められてもいない苦言やアドバイスというのは、
 単なるマウンティングと取られても仕方がないだろう。
 ムカついて当然の話。
 
 いやはや、気をつけたいところですね……。



 ※ 付記

  本文学賞においては、「文学賞ロールプレイ」の一環として、
  いかにも訳知り顔の評論家が、尤もらしく述べてそうな感じの
  講評記事を書かせてもらっています。

  これが、単なる社交辞令のベタ褒め講評ばかりになってしまうと
  あまりにもヌル過ぎるというか面白みに欠けますから、 
  あえて時々、苦言も交えさせて頂いております次第です。
  一応、賞レースですしね……。

  ただ、外部からの批評(批判に非ず)によって成長してゆく、
  というのは、ワイの経験則からしても間違いなくございます。 

  「広く読まれる作品」には、「広く読まれるための書き方
  が必要ということで、応募者の皆さまにおかれましてはひとつ、
  寛大なるアンガーマネジメントをお願い申し上げますと共に、
  これからのご参考として頂けましたら、さいわいでございます。
  悪しからず、ご了承くださいませ。



No.19『Britannia's wind』Park GUELL著

 風に吹かれ友を思う詩と、虎のありようを羨む詩、の二本の詩作。
 どちらも簡潔だが、著者の心の瞬間をしっかりと込めてある。
 
 こういった、ふと立ち止まって呟かれたような詩の中にこそ、
 人の世の営為がありありと描き出されるものである。
 


No.20『seaside restaurant』aqua著

 海辺のレストランを懐かしむ、人と、人でないもの。

 前半の手記の部分と、後半の述懐の間に齟齬が見え、
 非常に悩んだ。どういうことなのだろう。
 「祖父」の話は嘘なのだろうか。

 いや、もしかすると「マスター」はこの手記を書いたあと、
 何か思うところがあって「祖父」らの来店も受け入れるように
 なったのかもしれない。

 文体や、作品としての雰囲気は良好である。



No.21『Locked Box』Chandra著

 ゴミ漁りにまで身をやつした、冒険者崩れの博徒。
 その、一世一代の大勝負。

 いや~~~、面白い!!!
 これぞ王道、といった感の博徒小説。読み応え充分。
 ひと癖ありそうな登場人物らはいずれも憎めない連中で、
 繰り広げられる博打も、UOのシステム内で工夫して行われる
 お手製のものであるから、やろうと思えば今すぐプレイ可能。

 来てほしいところに見事に球が来る、
 おさえてほしいところをキッチリおさえる。
 前作もそうだったが、著者はこれらのポイントを着実に守りつつ、
 「ウルティマ・オンラインの小説」を書き上げている。
 やろうと思ってもすぐにできることではない。凄い。

 前作よりも娯楽性にウエイトが置かれた話になっており、
 テーマ性を強く求めるむきには物足りないかもしれないが、
 それは逆に言えばこの作品が「エンタメか、文学性か」という
 一般小説と同様の議論を引き起こすレベルにまで到達している、
 証左でもある。

 私は、非常に面白かった。素晴らしい。


※ 作品講評

 以下の講評は、作品紹介ではありません。
 ネタバレ的な要素も含まれると思いますから、
 先に応募作品を読み、楽しまれることを、強く推奨致します。 



No.13『Her smile is ...』Snow-Spider著

 野良ヒーラーに片思いしてしまった男。
 スピーディで、ひねりの効いた展開も面白い。
 情景描写に工夫の様子がみえるのも好印象。

 序破急、でスパッと終わってしまうのが惜しい。
 この面白い設定のもう一歩奥まで踏み込んで、
 起承転承転結、くらいの話には広げられる物語だと思う。
 でも面白かった。



No.14『jester swit』emu著

 レアシーフと、訳ありヒーラー。
 なかなかメロウで好きなタイプのお話だった。
 DOOMやその対岸は、モチーフとして描きがいがありそう。
 本作は湧きレアが主題だが、他にもドラマの宝庫だと思う。

 筋立てそのものはシンプルなのだが、
 残念ながら凝った構成が裏目に出てしまっていて、
 今、何の話なのかというのがすぐには掴みづらい。
 一旦最後まで読み切ってから、頭の中で再構築して、
 筋立てを理解する必要があった。 
 その辺りがちょっぴり、勿体なく感じた。

 読者にそれなりの「読み解き」や「察し」を求める作品は、
 相応の読書家でないと話について来てもらえなくなるので、
 まずは「初見でも読みやすい」「シンプルな構成」を目指しながら、
 その上で「ここだけは拘りたい」というポイントをグッとひねる、
 と、そんな書き方をしてみるのが良い気がする。



No.15『Korotan Daisuki』Melody著

 ジャイアントビートル愛。
 ほのぼのお散歩ストーリーかと思ったら、
 ハラハラ連続の本格バトルもので、正直仰天した。

 激しいアクションをかわゆいペット愛で包むという、
 その意外性もさることながら、著者の確実な文章力、
 本書がスムーズな読書体験を提供できるよう、
 一文一文のバランスを重すぎず軽すぎずに調整しながら、
 丁寧に紡ぎあげているのが最大の評価点ではないだろうか。
 この著者は確実に地頭がよい。

 その上で、あえて気になったところを上げるとすれば、
 やはりメインとなるバトルシーンだろうか。
 面白いのだが予想外に長引いているという印象は否めず、
 今の半分~三分の二くらいの長さで仕上げても良かった気がする。

 好印象、読み応えのある作品。



No.16『What's Magick.』Hina著

 対モンス戦についてのメイジの述懐。
 自分がどのようにしてモンスターと戦っているか、
 なぜそうなったのか、を淡々と独白する。

 全体的に淡泊な印象を受けるのだが、
 そこがかえってリアルでもあり、好ましい。
 少しずつプレイヤースキルを上達させて、
 段々と強い敵に挑み、勝ったり負けたり、
 そんな根本的なゲームの楽しさを追体験できる。

 内容自体は前著と同様、
 メイジの戦い方のハウトゥにもなっている。



No.17『Human TENSEI』BAR-chin著

 人間になった蛙、その末路。
 不条理小説である。

 まず転生のシステムが作中においては説明されておらず、
 蛙は何故かいきなり、銀行員になる。
 この時点で、もう大抵の人はついて行けない。
 しかしその、ついて行けない感じに無理について行き、
 あら、普通になってきたなと思ったところでまた、
 唐突に不可解が発生して終わる。

 こういった無茶な内容でありながら、
 それなりに面白く(首を傾げながらも)読めたのは、
 やはり著者の文章がこなれて来たからだろう。

 訳のわからない話を訳のわからない文章で書くと、
 もうそれは、誰にも読んでもらえないものになる。
 読めるということはその話の「今の状況」わかるということで、
 なのに話の「筋立て」がわからないから、
 読みながら夢を見ているような、不安定な心証となる。

 本書はその意味において、しっかりと、
 「蛙が見た、醒めない夢」になっている。



※ 作品講評

 以下の講評は、作品紹介ではありません。
 ネタバレ的な要素も含まれると思いますから、
 先に応募作品を読み、楽しまれることを、強く推奨致します。





No.08『There and Back Again』Wordsworm著

 なるほど、という感想。
 一度引退を経験しているUOプレイヤー諸氏ならば、
 この本は我がことのように頷けるものだろう。
 ついつい何度も繰り返して読んでしまう。
 まさに、寄せては返す波のような一冊。
 


No.09『Soshite Hajimaru,,,』BAR-chin著

 劇団アールポップ第二回公演にまつわる手記。
 日を追って公演が迫る、その緊張感がとてもよく伝わってくる。
 脚色まじりとのことだが、大筋はこのとおりなのだろう。

 中盤以降は文体の気負いも取れて、テンポよく読める。
 仲間たちとワイワイ相談しながらひとつのゴールを目指す、
 そんなギルド#RPGの日常が目に浮かぶ。
 ほほえましい、楽しい一冊。



No.10『Rust-free nails and Sea blue』Niboshi著

 ワンダリング・ヒーラー達の、知られざる背景。
 独自の世界観があり、とても抒情的な、
 ある種の虚ろさのようなものが全編に漂う。
 生と死を頻繁に往復する、ブリタニアならではのストーリーである。
 彼らは森や草原ではなく、その境界を彷徨しているのかもしれない。

 三人称、私、俺、三人称、俺、という風に視点の転換がやや頻繁で、
 そのたびに少しだけ没入感が削がれてしまう感があり、
 この長さの話なら視点はふたつまでに留めておく方が無難に思われる。

 また、「察する」ことを期待するのは読者への信頼の証でもあるが、
 あえてもう少しだけ、「何となく読んでいる人にもわかる」ような
 簡潔な説明を挿入することで、読者の理解を助けてあげるというのも、
 よりクオリティを高める上でのポイントと言える。

 ともあれ、実によい雰囲気の話だった。秀逸。



No.11『TEGAMI』Sawako著

 ブリテインに現れた、なぞの蛮族。
 う~~んこれは、良い……。
 じつに良いぞ……。

 短いページ数でしっかりと起承転結があり、構成は満点。
 読後感も極めて良好。むしろこれ以上の終わり方は無い。
 昨年のSawako殿の応募作を読んでいれば更に、ニヤリとなる。
 いや、非常に面白かったです。
 ありがとうございます。



No.12『Phlebotomy』Purged著
 
 タイトルの意味は「瀉血」。
 一読、心臓をギュッと掴まれた気がした。
 咄嗟には言葉が出て来ない。

 現実社会において極めて重要な、誰しも他人事ではないテーマを、
 UOの世界観でしっかりと描いている。
 作中の幽霊の言葉に胸をえぐられ、「僕」の叫びで涙が出そうになる。

 たまらない。やっぱり、こんなのってない。
 誰かの素直な思いが嗤われるような社会は決して許されないし、
 それぞれの中にある良心をしっかりと、目覚めさせなければならない。 

 極めて印象深い、強い一冊。

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