青銅色の小動物医療ジャーナルクラブ

小動物医療の英語文献を自分の勉強のためUPしています。 週1回更新が目標です。 すでにジャーナルクラブを継続されている、 「黄金聖闘士」な先輩方にあやかるべく、小宇宙を燃やしてがんばります。

Foster Dm, Gookin JL, Poore MF, Stebbins ME, Levy MG.
"Outcome of cats with diarrhea and Tritrichomonas foetus infection."
J AM Vet Med Assoc. 2004 Sep 15;225(6):882-92.

PMID:15485048

アブストラクト
訳内の緑文字は,本文から訳者が抜粋・追記した内容です

目的
 Tritrichomonas foetus に感染した猫の長期予後を判定し,
 T.foetus関連性下痢に対する治療と管理戦略を特定する.

研究デザイン
 前向き研究

対象動物
 研究開始の少なくとも22ヶ月前からT.fetusに関連する下痢を呈する猫26頭.
 室内飼育猫であること,市販フードを食べていること,
 観察開始前にフィラリア予防薬以外の医薬品投与歴がないことを組み入れ条件とした. 

方法
 猫の飼育者を対象に,臨床経過と管理について定式アンケート調査を実施した.
 全ての猫から糞便検査試料を採材し,
 糞便塗抹の顕微鏡検査,市販培地での培養検査,
 種特異的プライマーを含むT.fetus rDNAのPCR検査により,
 T.fetus感染を評価した.

結果
 アンケート調査は26頭の全飼主から得ることができた.
  26頭中24頭にT.fetus駆除治療が実施され,8種類の抗生剤が使用された.
  抗生剤を投与された際に改善が認められたのは,
  パロモマイシン(13/15),メトロニダゾール(1/13),スルファジメトキシン(0/14),
  フェンベンダゾール(0/13),フラゾリドン(1/1),エンロフロキサシン(0/2),
  ゲンタマイシン(0/2),セファレキシン(0/2)であった.
 23頭で下痢は完全寛解した.(発症後からの期間中央値9ヶ月)
 22頭中12頭の糞便検査でT.fetusの存在が確認され,
 下痢解消後もT.fetusが観察された期間中央値は39ヶ月だった.
 食事変更や,paraomomicinの投与が実施された個体や,
 多頭飼育家庭である個体には,下痢の改善までに時間がかかる傾向にあった.

結論と考察:
 猫のT.fetusに関連する慢性下痢は,発症から2年以内に自然治癒する可能性がある.
 下痢の解消後,臨床徴候を伴わないT.fetus持続感染は一般的のようだ.
 下痢の重篤度を一時的に低下させることはしばしば有効であるが,
 T.fetus感染症の猫を治療しようとすると,下痢の解消までに時間が長くなるのかもしれない.

訳者蛇足①
 本文献は,猫の診療指針Part 2 (緑書房.2018)のトリコモナス症の項内で
「猫のトリコモナス症は治療しなくても88%が自然寛解する」ことの
 参考文献として引用されています。

 アブストラクト考察にも自然寛解についての記述があります。

 ただし本文を確認しますと,無治療なのは「組み入れ時」であり,
 調査された26頭中24頭には駆除を目的とした抗生剤治療が施されていますので
 本文献結果から,自然寛解が88%で起こるとは言えないように思いました。

 ※文献本文は無料配布ではなく、訳者本人が独自に手に入れたものです
  
訳者蛇足②:
 T.fetus感染の猫にパロモマイシン治療を施すと,下痢解消までに時間がかかるのではなくて,
 長期間解消しない下痢に対して,パロモマイシンが使われる傾向にあったのでは…
 と推測してしまいました。

 なおパロモマイシンはアミノグリコシド系抗生剤で,
 犬猫のクリプトスポリジウム治療に使用されます.

Lappin MR, et al.
” Antimicrobial use Guidelines for Treatment of Respiratory Tract Disease in Dogs and Cats: 
 Antimicrobial Guidelines Working Group of the International Society for Companion Animal 
 Infectious Diseases. "
J Vet Interm Med. 2017 Mar;31(2):279-294.

PMID:28185306
本文無料PMC公開

アブストラクト
犬猫の呼吸器疾患において,
細菌感染は基礎疾患であることも,二次的に感染が併発していることもある.
小動物臨床において,抗生剤の誤用・不適切な使用・過剰投与が少なくない.
動物国際感染症学会では,経験の共有,科学的データの検討,臨床試験レビューを通じて,
獣医師が適切な抗菌剤を選択・使用することに貢献できるよう,
臨床微生物学者・薬理学者による犬猫の細菌性呼吸器疾患の管理において,
適切な抗生剤選択マニュアル(”ガイドライン")を開発した.


(本文より抜粋)
<細菌性気管支炎が疑われる場合>
 犬猫の細菌性気管支炎の主な臨床徴候は咳であり,
 呼吸困難を伴う場合も,示さない場合もある.

 上部気道感染症URIまたは犬感染性呼吸器疾患複合体CIRDCが
 事前に確認されていなくても,十分な身体検査(徹底した胸部聴診)が肝要である.

 肺や心臓の変化を評価し,咳の鑑別ができるよう留意して,胸部X線撮影をする.
 犬では,気管虚脱を確認するために,吸気・呼気時の頸部・胸腔内気管を撮影する.
 
 気道の潰瘍を診断するために,蛍光透視法を用いることもある

 細菌性気管支炎では,X線写真において気管支壁の肥厚が示されることが多い.
 しかし時に,気道洗浄液細胞診で炎症が存在するにも関わらず,
 X線写真に気道の変化が認められないこともある.
 CTが,疾患の重症度を評価する際に使用することができる.

 気管支炎の原因については,さらなる探査が必要となることもある.
(犬糸状虫検査,糞便検査,バーマン法による寄生虫検査,喉頭機能評価など)

<細菌性気管支炎の治療>
 本団体は,培養・感受性試験の結果が出るまでは,
 抗生剤を使用しないことを推奨する.
 病態が重篤な際には,ドキシサイクリンを7-10日投与してもよいだろう.
 
 ドキシサイクリンは,犬猫から分離された気管支敗血症菌 B. bronchisepticaに対して,
 in vitroでの抗菌活性が確認されている.
 猫のマイコプラズマ呼吸器感染に対しても,ドキシサイクリンは有用であるが
 時に副反応が発生する可能性が報告されている.

 17人の査読者のうち,16人(94%)が当該推奨を支持し,
 1人は,ドキシサイクリンを犬に投与した際に,
 これらの細菌に対する breakpoint data が不明瞭であるとして不支持を表明した.

 感受性試験の結果が得られた後は,血液気管支壁浸透のある薬剤を選択する.
 投与7-10日で改善傾向が得られた場合,臨床徴候が消えてから7日は投与を継続する.
 これら投与継続期間に裏付けはなく,当団体の臨床獣医師の経験に基づいている.

 ほとんどの小動物微生物研究所では,Mycoplasma sppの感受性結果は報告されない.
 この菌群は時に培養困難だからである.
 ゆえに,マイコプラズマ性気管支炎が疑われている場合,
 しばしば経験的な抗菌薬投与が実施されることもある.
 選択される薬剤は,主にドキシサイクリン・ミノサイクリンであり,
 フルオロキノロンとアジスロマイシンも有効かもしれない.

<細菌性気管支炎の治療モニタリング>
 原因がMycoplasma sppまたはB. bronchisepticaである際は,
 初回選択した抗生剤投与で改善が得られる事が多い.
 時に,長期的な抗生剤治療が必要となるケースもある.
 アレルギー性気管支炎が背景に存在し,細菌感染が二次的である場合,
 繰り返しの治療が必要となるかもしれない.
 基礎疾患の管理制御が求められる.
 胸部X線検査を繰り返すことは,気管支の変化を追従することを可能にするが,
 感度は限られており,時に気道細胞診断と培養検査が必要となるだろう.

Kornegay JN.
"Ataxia, dysmetria, tremor. Cerebellar diseases."
Probl Vet Med. 1991 Sep;3(3):409-16

PMID:1802262

アブストラクト

小脳疾患の典型的な臨床徴候は、運動失調・測定異常・震戦である.

測定異常とは,筋肉の随意運動に伴う距離測定が不適切な状態をさし,
測定が過大(overstepping)にも,過小(understepping)にもなり得る.
小脳疾患に起因する震戦は,主に目的を持った運動の際に発生する(企図震戦).
通常の視力を有するにも関わらず,威嚇反応の喪失が見られることがあるが,
この現象の解剖学的根拠は不明である.

猫の小脳に影響を及ぼす疾患として,
汎白血球減少症ウイルスの子宮内感染による小脳形成不全が代表的である.
中枢神経を複数部位に影響をおよぼす疾患が関与している場合,
認められる神経徴候が小脳障害単独であることもあれば,
他の解剖学的部位の障害も併せ持つ可能性があることも注意が必要だろう.


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