Stanley L.Marks, Peter H.Kook, Mark G. Papich, M.K. Tolbert, Michael D. Willard.
“ACVIM consensus statement: Support for rational administration of
 gastrointesutinal protectants to dogs and cats.”
J Vet Interm Med. 2018 Nov-Dec; 32(6):1823-1840.

PMID:30378711

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アブストラクト
胃腸粘膜は常に,有害毒素・活性酸素・微生物・薬物にさらされ,
これらの暴露は,炎症・びらん・潰瘍病変の発生に関与する.

本研究は,以下の薬剤に重点をおいて,
犬・猫への消化管保護薬(GIP)の適正使用について提唱するものである.
 プロトンポンプ阻害剤(PPI)
 2型抗ヒスタミン薬(H2RA)
 ミソプロストール
 スクラルファート

これら薬剤は,胃の酸性度を下げ,粘膜保護メカニズムを活性化させ,
消化不良・消化管潰瘍・胃食道逆流の管理に貢献する.
人医療では胃十二指腸潰瘍・胃食道逆流への適正治療ガイドラインが確立されているが,
犬・猫においては,今も抗分泌薬の適切な投与量は明らかとされていない.
また,制酸剤の不適切な処方は,人医療同様,小動物臨床に多く見受けられる.

犬猫の胃炎・膵炎・肝疾患・腎疾患を有するものの
消化管潰瘍や出血のリスクが乏しい犬・猫へ
ルーチンとして消化管保護薬が利用される状況に対して,本研究は異を唱えるものである.
最近の研究では,人・動物へのPPIの長期補給には有害作用もあることが立証され
より慎重な酸抑制剤投与が望まれるだろう.

本文より(ざっくりと抜粋)
<犬と猫のGIP使用に関する情報>
6-1.胃十二指腸潰瘍・びらん (GUE)
 理論的には,酸分泌抑制がGUE治療に有効だろう.
 SIDよりもBIDのほうが酸抑制に優れている.
 人医療では,PPIはH2RA・スクラルファート・ミソプロストールよりも
 GUE管理に優れ,犬・猫でも標準治療としていいかも.

6-2.胃炎
 特発生胃炎への胃酸抑制の利点は検討されていない.
 制酸剤には制吐作用はないので注意.
 潰瘍のない犬猫の胃炎に,胃酸抑制剤の予防的使用を支持する証拠はない.

6-3.肝疾患
 肝疾患の犬にGUEが発生しやすいが、肝疾患が直接原因である証拠は乏しい.
 肝疾患のある犬猫への酸抑制剤の予防的使用については,
 PPIが消化管出血や潰瘍を減らした,という弱い証拠がある.

6-4.ストレス性粘膜障害(SRMD)
 犬猫のSRMD有病率・重症度は不明である.
 激しいストレス下の動物(パフォーマンスアニマル)において
 予防的なPPIはSRMDを減少させる可能性がある.

6-5.腎疾患
 犬猫の腎疾患で,消化管潰瘍・びらんは一般的ではない.
 健康な猫よりCKD猫のほうが胃pHが安定してるという報告も.
 消化管出血や嘔吐のないCKD犬猫へ,慢性的に酸抑制剤を投与すべきでなく,
 カルシウム代謝と骨リモデリングに有害な影響を与える可能性がある.

6-6.膵炎
 膵炎による上部消化管出血の対して胃酸抑制剤が使用される.
 PPIは膵臓の分泌を抑制し膵炎を改善するとされているが,
 効果がないか,むしろ炎症が誘発されるという報告もある.
 犬猫がGUE所見を有さない限り,制酸剤が膵炎管理に有益かは不明だ.

6-7.逆流性食道炎
 経験的情報だが,酸抑制剤が犬猫の食道炎予防に有益だという証拠がある.
 麻酔処置に関連する場合は,特に予防が有益のようだ.
 PPIの投与は逆流は減少しないが,胃酸による障害を防ぐかもしれない.

6-8.ヘリコバクター
 犬猫のヘリコバクター管理に,酸抑制剤が有益であるという証拠はない.

6-9. 血小板減少症
 胃のpHをあげると,血栓分解が抑制されることで胃出血が抑制される.
 犬のIMTPでは消化管内出血が一般的で,酸抑制剤は補助療法として使用される.
 ただし,健康な犬猫に酸抑制剤をBIDで投与しても,胃pH>6を長時間保てず,
 IMTPの生存期間・退院確立に差がでないという説もある.
 予防的酸抑制剤投与を支持する証拠は不十分だ.

6-10.脊髄損傷と椎間板手術
 犬の脊髄損傷・椎間板手術には消化管合併症がおこりやすい.
 猫については不明である.
 高用量コルチコステロイド投与が関与しているようだが,
 スクラルファート・ミソプロストール・H2RA投与では
 予防効果はみられないという報告があり,
 予防的消化管保護薬が有益であるという証拠はない.
 ただし,PPIについては,これらが報告された1980年代以降の製剤のため不明である.

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