2006年08月15日

Parade スペシャル(第3章)

Parade 第3章スペシャル(黒)「Parade」さんを再訪。今日は煮卵がつき、チャーシュー(鶏肉)が大盛になった「スペシャル」(780円)を注文しました。
こちらのお店のラーメンには、「黒」「白」という二つの異なったスープがあります。
前回「黒」をいただいたので、今回は「白」を頼もうと考えていたのですが、店主曰く、ラーメンそのものが新しくなったので、今晩はぜひ「黒」を食べて欲しいとのこと。そう、ラーメンはさらに進化をとげ「第3章」に至っていたのです。

以前は、スープを注ぎ足しながら作る「呼び戻し」を使用したものを「黒」とし、新しくとったものだけで提供されるものを「白」とされていました。しかし、この「呼び戻し」というのが曲者で、なかなか安定した状態を維持できない。ならば全面的にその2区分を改めて、獣骨の比率が高いものを「黒」、和出汁の比率が高いものを「白」とされるようになりました。

蕎麦などの出汁(つゆ)はともかく、ラーメンにおいては豚骨のみのストレートな出汁においてのみ、「呼び戻し」というのは通用する手法なのかもしれません。Paradeさんのものは、どう考えても豚骨オンリーというわけではありませんから、そもそもラーメンのスタイルに対して、やや無謀な挑戦であったのかも知れません。

結果はそうでしたが、この事実をもって、このお店が未熟であると断じることは早計に過ぎません。むしろ評価したいのは、若い店主が、あらゆる可能性を追求して、より納得するものを創りあげようとする熱意です。

さて、スープの取り方に根本的な変化はありましたが、それ以外のところにも改善されたところは多くあります。青菜は、以前の「セロリの葉」を改め、「豆苗」という野菜を選ばれました。これは、えんどうの若芽とつるを摘み取ったもの。意外にもこちらの方が安定的に仕入れを行えるというご事情もあったみたいです。Paradeさんのスープには「豆乳」も用いられているくらいですから、その関連であわせてみたと理解すると面白いかも知れません。ただ、香りに関しては淡白なのは事実。個人的な趣向を述べさせてもらうと、もっと香りの強い青菜の方が適しているように感じます。スープそのものが濃度が高く、アジアチックで、かつ複雑ですから、より爽快感のある香草の方がマッチするでしょう。日本の方には好まない人が多いので、採用には否定的ですが、個人的に「香菜(シャンツァイ)」くらいアクの強い香草でも耐え得るという印象を持ちます。

和出汁の煮凝りは、より濃厚になり、出汁のもとである鰹などの節がザラザラと舌で感じられるほど含有しています。また、帰宅後写真を見比べて気がつきましたが、上に降りかけられる胡麻も擂られたものに変わっていますね。

表面にかなりの油分が膜をなしています。伺うと「鶏油(チーユ)」とのこと。他のお客さんの、もっとボリューム感が欲しいという声に応えた結果だそうです。京都で一般的な「背脂」を用いないところが、この若い店主の独創たる所以でしょう。ただ如何せん量が多い。油っこいものを求める若い人のニーズとはいえ、僕にはちょっとしつこく感じました。鶏油は、香ばしい風味付け程度の方が嬉しいです。

今回の注文ではじめて食べた煮卵は、かなり濃厚な味付け。単体としては、よく調理されたものですが、スープをはじめ全体的に濃い味付けとなっているので、ややもたれそうな印象を受けます。鶏肉もしかり。個性的な春雨は健在。エノキ茸はちょっと少なくなったかな?

いろいろ書かせていただいて、失礼極まりないですが、敢えて言います。
今京都で、一番可能性と独創性に満ち溢れているお店に違いありません! その将来性に期待を寄せつつ、エールを送りたいと思います。


Paradeさんの進化するラーメンをいただいて、思い出した言葉があります。

「永遠の未完成、これ完成なり」

宮沢賢治、晩年の手記にある言葉です。
童話作家・詩人として比肩すべき者のいない孤高の文学者は、自らの著作に対して幾度も筆を入れ、常に推敲を重ねていました。あの有名な「銀河鉄道の夜」でさえ、実は未完の作品であることは有名なお話です。

Paradeさんのラーメンが熟慮を重ね、常に変化し、またそれが他と比較できない独創性を秘める様から、インスピレーションを得ました。

ただし、このメタファーは諸刃の刃ともいえます。坂口安吾も認めた明治以後の偉大な文学者は、生前全く認められることなく、夭逝しました。世に認められたのは、彼の死後、大戦を経た後もしばらく経ってからのことです。

願わくば、このお店が賢治と同じ轍を踏むことがないことを、祈りたいです。

地図 

【2006年8月15日訪問】

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この記事へのコメント
どもです
 「第3章」を私もいただいてきました。
 味に安定感が出てきた気がします。それから麺の茹で具合も、ムラが無くなり美味しくいただくことが出来ました。
 着実に前進していると思います。
 個人的には、まだスープの「芯」がボンヤリしたものと感じられました。旨みのあるスープをキュッと引き締める辛味成分のようなものを入れられないかと思います。
 テーブルにはニントンがありますが、スープの味をガラっと変えてしまうので、合わないというのが私の感想です。
  以前にこのお店に対し「試作品を客に食わせるのか?」という発言がありました。確かに開店当初は味のばらつきも酷く、そもそも開店時間はおろか、日もまちまちという状況でした。
 しかし、確実に美味しくなっています。
 もちろん、まだまだ未完成で荒削りです。
 開店当初に訪れた方は、ぜひもう一度食べてほしいと思います。
Posted by Archy at 2006年08月27日 21:40
Archyさま

いつもカキコありがとうございます。
「芯」がホンヤリというのもわからなくありませんが、なにせ他店と比較が出来る類型に属さないスタイルなので、どうすれば正解、というのも難しいですね。
「辛さ」は、唐辛子系のもので表現するのでなく、香りのあるさっぱりとした風味を個人的には期待したいところです。香草系になりますでしょうか。意外なところで、生姜か茗荷(みょうが)か、はたまた辛味大根、柚子胡椒...!?

Posted by at_you_see at 2006年08月28日 03:59
「試作品」云々という批判は知りませんが、どの水準が「試作」で、どこからが「完成品」かは各店で結構差がありますよね。

当たり前のようにメニューにならぶものでも、店主の考えで常に調整を加えられているお店は少なくありません。それを知らされないか、店頭に明示するかだけの差なんです。

個人的には、以前のものと比べてどんなところが変わったんだろう?という疑問をもちながら一杯に向き合うことが楽しいと思えるので、教えてくれるお店は僕にとっては「親切」と受け取れます。

感じ方はいろいろですよね。
Posted by at_you_see at 2006年08月28日 04:00
とりあえず昨夜は営業されておられたようです。継続は力なり…。
Posted by yu2R at 2006年08月28日 09:05
よろこばしいことです。

って、営業していることは、ほんとは当たり前なわけで...(^_^;)
Posted by at_you_see at 2006年08月29日 01:57
Paradeには二回行って、黒と白を味わいました。
両方ともおいしいです。

>今京都で、一番可能性と独創性に満ち溢れているお店に違いありません!
私もそう思います。
Posted by inski at 2006年09月06日 23:15
はじめまして。

来週末、Paradeに行く予定です。店主とは高校時代からの親友。
>今京都で、一番可能性と独創性に満ち溢れているお店に違いありません! その将来性に期待を寄せつつ、エールを送りたいと思います。

読んでて、自分のことのように照れてしまいました。あいつがどんなラーメンを出してくれるのか、今から楽しみです♪
Posted by yasu at 2006年09月08日 09:49
inskiさま
ご賛同、ありがとうございます。m(__)m

yasuさま
はじめまして。カキコありがとうございます。
ご検食されました感想をぜひとも伺いたいものです。
Posted by at_you_see at 2006年09月11日 07:46