2008年06月18日

Parade ピザそば

Parade ピザそば2008年6月24日をもって閉店されました

2年余りの営業に幕を下ろすParade。最後の11日間は「parade final 11」と銘打って過去提供されたメニューを中心にフィナーレを飾りました。
2年。普通のお店ならようやく軌道に乗ろうとするかの期間で、創意工夫に満ちた数多くのラーメンを世に送り出したものだと、改めて感心させられます。それも、熟練の料理人ならいざ知らず、前歴もない弱冠20代前半の青年によって繰り広げられたことは、驚愕以外の何物でもありません。

この11日間のなかで、どうしてもいただきたかったのが、この日の「ピザそば」です。

僕自身が、ラーメンはさておき、イタリアンを好んでいることは事実ですが、理由はそこにはありません。

店頭でも紹介されている通り、これは東京大井町の「ajito」とのコラボメニュー。ajito店主が直々にレシピを提供したものです。そして何を隠そう、昨年末「ajito」を共に訪問したのが、parade店主その人だったのです。

ビジュアルからは、これはもはやラーメンやまぜそばの類いから遥かにかけ離れた料理とばかり思っていました。そして、それでもよい。ラーメンという食べ物は、現在に至ってようやくその境界を模索する段階となった、今現在も進化し続ける料理だからこそ、あえて挑発的なまでに越境せんとする姿勢は、一層このカテゴリーに活力を与えんとする試みとなると考えるからです。

そして実食。
そんな予見を、見事なまでに裏切ってくれました。

Parade ピザそばのトースト麺の底に仕込まれた醤油主体のタレは、ラーメンのそれと何ら変わらないものであるばかりか、意外にも鯖節等和素材も用いた本格的なものです。それと、ピザと冠される所以である、トマトソースやパルメザンチーズとの相性が良いのです。狐につままれたかのような感覚に陥ります。

具材のパプリカやベーコンは、まったくジャンルにそぐわない食材であるはずが、全体的な印象は、ちゃんと成立している。そう、美味しいのです。間違いなく、美味しいです。


手前味噌な比喩で恐縮ですが、かの宮沢賢治は、往時勃興し旺盛した「小説」という形態をあえて自分の表現方法として選ばず、あくまでも「詩人・童話作家」として自らを位置付けていた節があります。彼の文学に対する目的は、あくまでも法華経信仰を広く世に知れ渡らすことでしたが、没後、いみじくもその「詩」「童話」が後に文学に与えた影響は、けして少なくありません。

東京の「ajito」は自らのお店が、ラーメン屋やつけ麺屋ではない、と言い切っておられると伺っています。それは、つまるところ、現在のラーメン・つけ麺に対して成立しつつあるカテゴライズという枠に対して疑義を呈してのことではなかろうか。そのアンチテーゼな作品を世に問うことが、実は逆説的ながら、このジャンルに価値を注ぎ込み、タブーを打ち破り、建設的な進化を促しているように思います。そして、そのことをparade店主が構造的に理解はしなくとも、直感的抽象的に感応し、今回のようなコラボに至ったと解釈するのは、なにも飛躍した話ではないでしょう。

2店の店主に、他人には見えない同調する波長が響いた気がします。

そんな一杯をいただくことができたこと、本当に感謝しています。


【2008年6月18日訪問】

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