「立ち上がりテスト」について

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ロコモティブシンドロームの判断基準として臨床現場等で取り組まれている「立ち上がりテスト」の啓蒙活動として非常に面白い動画が配信されています。


 
40cmの高さの台等から片脚で立ち上がるときに必要とされる大腿四頭筋の筋力は体重の60%を支持するために必要な筋力(体重支持指数:WBI=0.6)に相当し、基本的な社会生活を送るためにはWBI0.6以上が必要(黄川と山本ら,1988#1,1991#2)であるとされることから、「立ち上がりテスト」は基本的な社会生活を送るために必要とされる筋力を有しているか否かを評価するためのテストとして非常に簡便であり、人間工学的に凡その椅子の座面の高さは40cmであるといわれていますので、日常生活の中で随時テストが可能ということでロコモティブシンドロームの予防を啓蒙する活動としては非常に良い取り組みであると考えます。

本テストの実施方法から考えると、大腿四頭筋優位の動作となることから大腿四頭筋の筋力の簡易的評価として非常に有効ではあると考えられますが、骨盤の前傾可動性が不十分な場合や大殿筋の筋力が不十分な場合については、大腿四頭筋にある程度の筋力(WBI=0.6程度)があっても立ち上がれないこともあり、評価に際しては注意が必要な面があります。

当方の経験則ではありますが、とある競技選手群においては40cmの高さから片脚で立ち上がれない選手もいました。

また、ロコモティブシンドロームの予防という観点から考えた時、「寿命と歩行速度の関係」および「歩行速度と下肢伸展筋力の関係」から、下肢伸展筋力の維持、向上が不可欠なり、必ずしも大腿四頭筋優位な動作による(主として)大腿四頭筋の筋力評価が適切であるとはいえない面もあります。

下肢伸展筋力の維持、向上という点では骨盤の前傾可動性の評価ならびに大殿筋やハムストリングスを主とする筋力評価、トレーニングが必要であり、そのような視点から「立ち上がりテスト」を活用することが有効ではないかと考えています。

いい換えれば、40cmの椅子から立ち上がれるか否かを単純に評価するのではなく、骨盤の前傾を伴う下肢伸展筋群を主とする動作によって立ち上がれるかを評価することが重要であるといえるでしょう。


●立ち上がりテスト実施方法:https://locomo-joa.jp/check/test/pdf/stand-up.pdf


参考文献:
#1)黄川昭雄,山本利春ら(1988):アスレティック・リハビリテーションにおける下肢の機能および筋力評価.臨スポーツ医会誌,5:213-215.
#2)黄川昭雄,山本利春ら(1991):機能的筋力測定.評価法-体重支持指数(WBI)の有効性と評価の実際.日整外スポーツ医会誌,10:463.468.


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これまで多くの先行研究によって高齢者の体力に関する報告がなされていますが、その多くが寝たきり予防、転倒からの骨折予防という視点に基づくものであるといっても過言ではなく、そこで捉えられている体力はLawtonによって報告された「人の活動能力の諸段階(Lawton, 1972)」から考えると「機能的健康度」ならびに「身体的自立」に相当し、人間として必要とすべき最低限の体力であるといっても過言ではありません。

「身体的自立」に必要な体力は、いい換えれば介護を必要としない体力と捉えることが出来ますが、65歳以上の人口の75%は介護を必要としていないことが報告されており(柴田,1998)、また、平均寿命の延伸に伴い「健康寿命(健康長寿)」や「活動的寿命(活動的長寿)」という概念が生まれ、更に高齢者の健康課題として「プロダクティビティ」を重視すべき(柴田, 1998)という考え方に至る現在、高齢者の体力について更なる検討、考察が必要であると考えられます。

なぜなら、「健康寿命」「活動的寿命」「プロダクティビィティ」という概念や考え方は「人の活動能力の諸段階」でいえば、最も高次レベルの能力である「社会的役割」に相当するものとなり、そのような能力を発揮する上で必要とすべき体力は、上述した「身体的自立」に必要な体力よりも高いレベルになる可能性があるといえるからです。

従って、今後、高齢者の体力を考える時には、プロダクティビィティの増進に必要な体力がどの程度のものなのかということについて検討していく必要かあるといえますが、プロダクティビィティの増進に体力が直接的な影響を及ぼすとはいえない面もあり、十分な研究が行われていない状況にあるといえるでしょう。

超高齢化社会において、高齢者に必要な体力は「身体的自立」を目標とするレベルで良いのか、より質の高い生命を全うする上で更に高いレベルの体力が必要となるのか、我々運動指導者としては更なる研究に期待したいところです。

参考:
Lawton, M.P. (1972). Assessing the competence of older people. In: Kent, D.P., Kastenbaum,R., & Sherwood, S. (Ed.). Research, Planning, and Action for Elderly: the Power and Potential of Social Science, New York: Behavioral Publications. pp. 122-143.

柴田博(1998). 第 2 章 求められている高齢者像. 東京都老人総合研究所(編)サクセスフル・エイジング 老化を理解するために ワールドプランニング pp. 42-52.



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高齢者を含む一般の方々がウエイトトレーニングを実施する一つの目的は、加齢に伴う筋量および筋力の低下を防ぐことであるといっても過言ではなく、その目的を達成する上で最も効率的、効果的なエクササイズは極めて高重量を扱うことが可能であるバックスクワットならびにデッドリフトであるといっても過言ではありません。
 
従って、高齢者を含む一般の方々に提供されるウエイトトレーニングプログラムはバックスクワットならびにデッドリフトを中心に構成することが重要であるといえる訳ですが、バックスクワットならびにデッドリフトは複合的な動作を必要とするエクササイズであり、また、各関節に無駄な負荷をかけることなく安全に実施するためには極めて難しい複合動作を身に付けなければならないことから、高齢者を含む一般の方々に対するウエイトトレーニングプログラムは、まずは何より「バックスクワットならびにデッドリフトが実施出来る身体作り」をコンセプトにデザインされることが現実的であるといえます。
 
具体的には、バックスクワットならびにデッドリフトを実施するために必要とされる股関節伸展筋群の柔軟性および筋力を向上させること、および、上背部(肩甲骨周辺筋群)の柔軟性および筋力を向上させることをコンセプトにトレーニングプログラムをデザインし、そこで主となるエクササイズはリバースランジとルーマニアンデッドリフトの2種目となります。
 
しかしながら、高齢者を含む一般の方々の身体的特徴としてみられる加齢に伴う筋量の減少および筋力の低下による姿勢の変化から考えると、股関節伸展筋群の柔軟性および筋力の低下と上背部(肩甲骨周辺筋群)の柔軟性および筋力の低下が極めて顕著なケースが多いといっても過言ではなく(高齢になればなるほど顕著となる)、リバースランジならびにルーマニアンデッドリフトが速やか且つスムースに導入出来ない場合も多いといえます。

これらのことから、リバースランジならびにルーマニアンデッドリフトを導入するためのプログレッションパターンを準備しておくことが重要になります。
 
以下に、そのプログレッションパターンの例を示します。

1.ルーマニアンデッドリフトのプログレッションパターン例:
シーテッドペルヴィックティルト&グッドモーニング→グッドモーニング(BW)→RDL(BW)→RDL

2.リバースランジのプログレッションパターン例:
片脚立ち→1L DL(BW)→Rev.Lunge(BW)→SD Rev. Lunge(BW)→OH Rev.Lunge→OH SD Rev.Lunge→Rev.Lunge

このようなプログレッションパターンを構築する創造性が、高齢者を含む一般の方々に対して、特に高齢者に対して適切にウエイトトレーニング指導を提供する上で重要な能力であるといえるでしょう。


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