April 05, 2012

言葉という音楽を奏でる映画 『英国王のスピーチ』

パッケージ
監督:トム・フーパー
出演:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター
イギリス映画 2010年 ・・・・・・ 6点




言葉という音楽を奏でる映画


以前にどこかの雑誌か何かで、「優れた演出家は優れた耳を持っている」というのを読んだことがあるのですが、この映画を観てその言葉が思い出されました。

久石譲のいない『風の谷のナウシカ』は考えられないし、ジョン・ウィリアムズのいない『スターウォーズ』も考えられないというような内容でして、優れた映画には必ず優れた「音」があるというのはとても納得した記憶があります。

この映画も「音」にフォーカスを当てた作品だと思います。

困惑
 

冒頭のシーンではっきりと示されます。

ラジオ放送を担当する人が、自身の喉の調子を整えマイクとの最適な距離を測るアクションで無言に語っていますよね。「音」に対する繊細な感覚を言葉なしに表現していたのは巧いです。

上品な「音楽」を一時停止してまで響かせた下品なうがいの「音」にも端的に表れていますしね。ある意味、この映画の主役は「音」であり、それも音楽ではなく「言葉」(厳密に言えば人間が発する音)であるわけですね。

礼服

国王が吃音症だった、というのは時代が時代なら話にのぼるだけで即打ち首にされるようなことですが、今作では、王族を何らかの隷属関係にある職業自由のない人とか表現するように、ユーモアを交えることで重くなりがちな話を軽やかにしていますね。
吃音克服の練習シーンなどでのライトなコメディタッチが作品全体にリズムを生み出しているように思います。

さて、「音」に関してですが、言葉というのはとてもリズミカルで美しいものなんだなというのが伝わってきます。特にライオネル(ジェフリー・ラッシュ)は素晴らしかったです。シェイクスピア劇のシークエンスに象徴的ですが、声がすごく良い。とても耳触りの良い声だし、威厳と柔らかさが同居している感じです。このキャスティングは大正解ですね。人間が発する言葉には、テンポがあってリズムがあり、抑揚があって疾走感まであるひとつの「音楽」であることを観客に実感させます。

同席

その部分で残念だったのが、国王(コリン・ファース)が終盤で感動的なスピーチをするシーンにBGMを加えたことでしょうか。

おそらく観客の間が持たない、飽きることに対する配慮なのでしょうが、吃音の主人公が内面の抑圧を克服し、国民を勇気づける力強い「言葉という音楽」を奏でる感動的な場面なのに、BGMがちょっと邪魔しちゃったかなという印象を受けました。ここが惜しいと思いますがどうでしょう。

医師2

総じて品の良い作品だと思います。現英国女王の父君にして前国王ですので、あまり品のないこともできないでしょうが、治療という名のもとに放送禁止用語を連発させたのは面白かったですね。良作だと思います。 

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atribecalled at 23:30│Comments(2)TrackBack(6)その他の国 | 6点評価

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わーい、コリン・ファースさん(好き)。吃音のため話すことが苦手な国王が、国民の心を掴むためにスピーチに挑むというこの作品、実際の話なんだそうですね。軽快な言い合いやユーモラスな場面で、開戦前という時代ながら暗さをなくしているのがいいですね。 生真面目

この記事へのコメント

1. Posted by maki   April 07, 2012 08:29
声というものの響きによる音楽というものに関して同意見ですね~
だからこそ、後半で国王がスピーチに挑んだときの声の響きには感激してしまうのですが…(私はあまり音楽は気にならなかったなあ、それよりも失敗しないかそちらが心配でたまらなかった!)
なんだか巣箱から旅立つ子を心配する親鳥の気分でした(笑)

前後に大きく体をゆらすというのはありだなと思いました
2. Posted by Quest   April 07, 2012 14:32
makiさん、コメントありがとうございます!

私も緊張してうまく話せないような経験はたくさんあるのですが、リズミカルに話すとうまく言葉がでてきたりしますよね。体を揺らせてリズムをとるのは有効かもしれないですね。

言葉や発音の持つ美しさをちゃんと捉えた上品な作品でしたね。

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