April 10, 2012

作品自体が園監督世界への洗脳に近い 『愛のむきだし』

パッケージ
監督:園子温
出演:西島隆弘、満島ひかり、安藤サクラ
日本映画 
2008年 ・・・・・・ 7点




作品自体が園監督世界への洗脳に近い


以前に観た『冷たい熱帯魚』『恋の罪』の原型と言えそうです。
これ以降の作品は本作の派生というか、部分的に拡大したものなんだなというのがよくわかります。それくらい監督の世界観を出し切った大作ですね。約4時間という長尺も納得です。

時間が長いのでさまざまなスタイルを試したというか、そういう遊び心は個人的に好みです。

特にスコセッシばりのモノローグとショットの組み合わせを満載させたパート(チャプター4サソリ前半など)は、音楽とのマッチも含めとてもよく出来ていました。あのリズム感と疾走感はなかなか出せないと思いますし、監督にはこんな才能もあったのかと驚きました。
 

二人

B級っぽい悪ノリも印象的ですね。
カンフーのような盗撮や無意味にたくさんのエキストラを画面に登場させたがるなど、映画の説得性や現実再現性を平然と無視する姿勢はギャグとして良いアクセントになっているのではないでしょうか。

盗撮に青春をかける仲間たちの友情、という描写も良かったですね。『ハザード』から大きく進化しているのがわかります。

また、コイケ(安藤サクラ)のキャラクターはとても良かったですね。どの役者も優れた演技を見せてくれますが、彼女の無邪気な悪意の演技表現は一段と光っていたように感じました。
 

コイケと一味
 

劇中何度も何度も出てくるのですが、本作で欠かせないのが「パンチラ」ですね。「愛のむきだし」はつまるところ「パンチラのむきだし」であるわけですね、冗談ではなく()

聖と俗、理性と本能、男と女、親と子、過去と現在、現実と幻、普通と変態といった相反する概念をごちゃ混ぜにして浮かび上がったのが、ユウ(西島隆弘)が唯一反応する「マリア様のパンチラ」であり、その具体化がヨーコ(満島ひかり)なわけですね。
 

ヨーコ
 

そしてヨーコの背後には幼くして亡くした母がいるというかなりマザコン的な映画なのですが、だから女性崇拝になっているわけですね。

テーマ的に見れば、女性崇拝を突き詰めれば
『恋の罪』になり、導入部分で描かれた父子関係を突き詰めれば『冷たい熱帯魚』が出来上がるのではないでしょうか。

非常に抽象的な事象を具体的な行為で具現化する、という監督が得意とする領域でして素晴らしいと思います。
 

ユウ
 

面白かったのが、カオリ(玄覺悠子)がユウの父親(渡部篤郎)に「ありえないくらい」しつこく迫って自分のものにし、終盤のラジオ体操では父親に「愛している」と言わせますが、その構図がそっくりそのままユウとヨーコにも当てはまるわけですね。ただ立場が逆で、ユウがカオリと、ヨーコが父親とそれぞれ対応しているわけです。

拒絶されても構うことなく「ありえないくらい」ヨーコに執着したユウは殺人まで犯しビルを爆破します。まるでカオリが車を横転させてまでユウの父親に執着したように。
そして、今度はヨーコがユウのいる病院で愛を伝えます。まるでラジオ体操での場面のように。

こう考えると「むきだし」とは「ありえないくらい」凶暴で動物的なものであり、キューブリック『時計仕掛けのオレンジ』のように膨張した男性自身そのものであるのかもしれません。そして、特筆すべきは、こんなに性を扱っているのに、性的な匂いが一切しないということです。あくまで「純愛」を描くことを貫いているわけですね。
 

支える
 

どちらかと言えば男性的な映画です。『恋の罪』を鑑賞していないなら絶賛したかもしれませんが、園監督の属性というか、相性の良さを感じるのは女性的な映画の方なのかなと思います。

それは本作に即して言えば、「むきだし」を表現するものが、男性には少な過ぎるし底が浅いし少々荷が重いということではないでしょうか。やはり女性の方が奥が深いということですね。

女性への崇拝や畏怖を全開にさせた『恋の罪』には及ばないものの、観ておくべき作品です。 


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atribecalled at 07:00│Comments(4)TrackBack(6)日本映画 | 7点評価

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この記事へのコメント

1. Posted by maki   April 10, 2012 09:04
こんにちは♪

この作品では、まさに、ひたむきでむきだしの愛に打ちのめされましたね~
こんな作品が「日本で」あったのか!という衝撃とともに、作る監督の手腕、世界観の見事さなど、みるべきところもたくさんありました
基本は変態なんですけどもね~
「恋の罪」は未見ですけれども、そちらのほうが作品としての出来は良いのでしょうか?すごーく気になります!
なんにせよ、4時間という長丁場でダレ場のない作品を日本映画で久々に出した監督には頭が下がります
2. Posted by かのん   April 10, 2012 10:00
私の場合、園子温作品には『自殺サークル』『紀子の食卓』辺りからハマっていきましたのでこの作品は究極の集大成という印象がありました。園子温監督らしいカルトな作品ですがこれを機にメジャー化さえたことを考えるとたしかに後の作品にも大きな影響となるターニングポイントだったと言える作品ですね。
3. Posted by Quest   April 10, 2012 19:52
makiさん、コメントありがとうございます!

園監督作品、基本は変態なんですが、なにか普遍性みたいなものを感じます。

『恋の罪』は園作品で今のところ一番ですね、個人的に。好みの問題になると思いますが、本作や『冷たい熱帯魚』が嫌悪感なく鑑賞できるなら必見ですね!!
4. Posted by Quest   April 10, 2012 19:56
かのんさん、コメントありがとうございます!

『自殺サークル』と『紀子の食卓』、『気球クラブその後』など観たい作品はたくさんあるのですが、近所のレンタル屋さんに置いていない・・・。取り寄せか、ネット宅配を真剣に考えています(笑)

カルト作家がメジャーになるとよく作風が変わったりしますが、カルト時代とどう変わっているのか変わっていないのか観てみたいです。

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