May 04, 2012

他に類を見ない趣味的ながら野心作 『ツリー・オブ・ライフ』

パッケージ
監督:テレンス・マリック
出演:ブラッド・ピット、ショーン・ペン
アメリカ映画 2011年 ・・・・・・ 2点




他に類を見ない趣味的ながら野心作


『シン・レッド・ライン』などで知られる巨匠テレンス・マリック御大の最新作ですが、何故か黒澤明の晩年の『夢』という作品を思い出しました。

歩く
 

彼の年齢やその寡作ぶりからすると、もしかしたら「最後の監督作」という位置付けになるかもしれないのですが、見事に「死と再生」というテーマをぶつけてきました。

『崖の上のポニョ』での宮崎駿もそうだと感じますが、死を強く意識したテーマ選択は、キャリアの晩年を迎えている演出者として本能的なものなのでしょうか。
「死と再生」を語るときに、この両監督が「海」や「水」のイメージを多用しているのも面白いですね。
 

光
 

一筋縄ではいかない作品です。何も説明しない、物語を語らない。

宇宙の起源や生命の進化、雄大な自然を静かに映し出すイメージショットと、1950年代アメリカの田舎でのある家族の日常を並列させています。

その
2つに明確なリンクがあるのかというとそうでもなくて、何かしらの解釈や説明をすることはできますが、おそらくどれが正しいのかわからないように思います。
答えのない問題を解いているようなものですね。
 

光2

詩的な映像表現に定評のある監督ですが、今作のビジュアルも本当に素晴らしいです。

1ショット1ショットが一枚ずつちゃんとした絵画になっているかのような、こちらのイマジネーションを刺激する魅力的な映像表現がお腹いっぱいに味わえます。

それが、壮大な音響と自然の音(木々のざわめきや川のせせらぎ、火山の噴火まで)に包まれており、視覚と聴覚で鑑賞者を圧倒する、という映画的な魅力に溢れた瞬間ですね。
 

木

なにせ、一般的なドラマを求めると見事に裏切られる実験作というか、かなり野心的な作品です。

点数評価はすごく迷いました。極端に言えば、2点か9点かどちらかだなと。8点とか5点の映画ではないように思いました。
 

家族2
 

黒澤明『夢』がそうであったように、巨匠によるおそらくは相当に「監督個人の趣味的な作品」である印象が強く、だからほかの作品と比べても娯楽度がかなり低く、内面的な映画になっているのではないかなと思いました。そう考えると2点になってしまいました。

ただ誤解してほしくないのですが、決して悪い映画ではありません。監督の才能が暴発しているような、恐ろしく意欲的な作品です。

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この記事へのコメント

1. Posted by KLY   May 05, 2012 09:35
内容はお世辞にも解り易いとは言えず、その点は“流石”テレンス・マリックでした。何せオスカー授賞式では「もう少し解りやすく作ってくれよ~~♪」と唄われてましたしね(笑)
でもブラピの演技には圧倒されましたよ。あと音楽も^^
2. Posted by Quest   May 05, 2012 11:34
KLYさん、コメントありがとうございます。

仰る通り「流石」マリック御大でした(笑)
ブラッド・ピットの演技は素晴らしかったですよね。作品の選び方や魅せてくれる演技など、着実に大俳優の道を進んでいますね。

音楽は今作の主役の一つと言っても過言ではなかったですね。圧倒されました!
3. Posted by maki   May 05, 2012 11:40
大いなる生命の神秘と再生、普遍なるもの、それを抽象的に表現した作品だと思いますが、
やはり万人に理解してくれよというのは、無理。
Questさんがおっしゃっているように、2点か9点、そのどちらかでしょうね
映像や音楽は美しく、たおやかで儚い。
そこは素晴らしく良かったです
4. Posted by Quest   May 05, 2012 12:21
makiさん、コメントありがとうございます。

点数はあくまで個人的な指針なのですが、この作品は迷いました(笑)一応、幅として9~10点、2~1点はよほどの事に備えて取ってあるのですが、そうしておいて良かったです(笑)

そもそも理解しろというのが難しい映画ですね。どのような解釈も成り立つくらい抽象的なわけですから。
5. Posted by ナドレック   May 05, 2012 15:45
こんにちは。TB&コメントありがとうございます。
ところで『崖の上のポニョ』は死を強く意識した作品ですか?
私はそうは捉えていなかったので、意外に感じました。

『ツリー・オブ・ライフ』に関して、才能の爆発ではなく暴発とは言い得て妙ですね。
6. Posted by Quest   May 06, 2012 04:58
ナドレックさん、コメントありがとうございます①

ナドレックさんの『ポニョ』評も拝見しました。特にコメント欄でのリサは峯不二子だ、というのはかなり納得できました(笑)

宮崎駿は「異界」を描いてきた演出家だと思うのです。『ナウシカ』の腐海や『ラピュタ』の失われた文明、『トトロ』での不思議な生態系や『もののけ姫』でのシシ神の森などでも見受けられると思います。それが『千と千尋』以降でよりはっきりとしてきて、『ポニョ』ではついに一体化してしまいます。それが、漫画版ナウシカでの大海嘯のような『ポニョ』の津波ではないかなと思うのですがいかがでしょうか?

「異界」はあの世とか神々の国とか、つまり「この世の理が通じない世界」なわけですよね。その対立や融和を描いてきた宮崎駿ですが、『ポニョ』では劇場映画としては初めて「ひとつ」にしてしまったのではないかなと。つまり、この世とあの世が混在一体となった世界が津波のあとの世界ではないかなと思うのです。

7. Posted by Quest   May 06, 2012 04:58
ナドレックさん、コメントありがとうございます②


そこでは古代魚が泳いでいますし、大正時代のような夫婦も出てきます。「異界」の住人であったグランマーレは「この世」の住人であるリサと今後について話をしますし、車イスの老婦人たちは津波前とはうって変わって元気に走り回りますよね。まるで「あの世」がそのまま「この世」に来てしまったみたいですよね。

また、『ポニョ』で顕著な極彩の色あいは、子供の無邪気なテーマパーク的楽しさに溢れていると同時に、仏教における曼荼羅のような神々の国(つまりあの世)を暗示しているようにも感じました。

逆に言えば、それを子供向けの無邪気な作品でここまで明示できる宮崎駿という演出家の「凄さ」も再確認した思いでした。『ポニョ』は、老境に達した偉大な才能が、大海嘯に飲み込まれようとしている(死を意識した)ことから生まれたあの世とこの世の融合(死そのもの)を表現したものとして、非常に示唆に富んでいると思うのですがいかがでしょうか。

そして、死には再生が必ず伴いますよね。それは宗介が5歳にしてポニョのすべてと今後を受け止めると決意する場面でもあり、その勇気と友愛は過去に監督が描いてきた世界観そのものでもあるわけですよね。「子供たちの未来」という、おそらく宮崎駿が最も砕身粉骨しているテーマをこれだけ「死」を意識した作品の中で高らかに歌い上げることに『ポニョ』の凄まじさを感じるのですが、ナドレックさんはどう思われますか?


8. Posted by ナドレック   May 07, 2012 15:20
丁寧なコメントありがとうございます。
コメントを拝見して少々判らないところがあるので質問しようとしたのですが、字数制限に引っかかって受け付けられませんでした(T_T)
そのため、拙ブログの方に記載いたしました。
コメントがあちこちに飛んで申し訳ございませんが、ご覧いただければ幸いです。
9. Posted by YAN   June 02, 2012 15:29
Questさん、こんにちは!
サブタイトルの「他に類を見ない趣味的ながら野心作」は、
まさにその通りだと思いました!上手い表現ですね★
こういうの、今まで観た事ないし、ものすごい野心作で、心に残りました。
人によって解釈が異なるのも、読んでいて面白いです。

2点は5点満点じゃなくて10点満点のだったんですね(^^;
よほどの事に備えて取ってある・・・よほどの事ってどんなんですか?(≧ε≦)
10. Posted by Quest   June 02, 2012 17:19
YANさん、コメントありがとうございます。

本当、人によってさまざまな解釈がありますね(笑)
抽象的描写と具体的日常が交互に繰り返されている構造は、物語的な分かり易さを放棄しているように思います。

点数に関しては本当に個人的な評価なのですが、特に、1~2点は、点数が低いからダメなんじゃなくて、私が今はちゃんと理解できていないけど何か引きつけられるものがあって、例えば10年後とかに再び観たら、ものすごく素晴らしいと感じるかもしれないと思った時に、暫定的に付ける点数にしています。そんなに頻繁にはないのですが。

だから実質的に最低点は3点です(笑)

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