ネタ元を訪ねて 第2弾 『ラスト3デイズ すべて彼女のために』隣の家のおじさんのクールネス 『アジョシ』

May 31, 2012

それでも少女は恋をする 『携帯彼氏』

パッケージ
監督:船曳真珠
出演:川島海荷、朝倉あき、石黒英雄
日本映画 2009年 ・・・・・・ 5点




それでも少女は恋をする


突き抜けた凄みはないものの、よく出来ているのではないでしょうか。B級映画の分類にはなると思いますが、低予算で興行的に大きなプレッシャーがないからか、比較的伸び伸びとした雰囲気を感じます。

本作は、サスペンスフルなホラーと位置付けられると思いますが、そもそもホラーとは何ぞやと改めて考えさせるほど、テーマ追求が巧みな印象です。未読ですが、これは原作のケータイ小説の手柄になるのでしょうか?

手がかり

ホラーは、怪物や幽霊が出てきて(出てこなくて)怖がらせるものから、精神的に追い詰められる様を恐怖として描くものまで幅広くありますよね。そこに共通しているもの、それは現実にある恐怖の投影であるという事ではないかなと思います。

得体のしれない恐怖とかも突き詰めれば、現実の人間という生物や人間社会への恐怖に他ならないのではないかなと思うのですがいかがでしょうか。

どうすれば

例えば、リドリー・スコット『エイリアン』で人間に寄生した未知の生物がお腹を切り裂いて這い出てくる有名なシーンがありますが、あれは出産のメタファーだと思いますし、お腹を切り裂いて赤ちゃんを取り出す帝王切開の視覚的強烈さ、そして本質的には文字通り「無からやってくる」赤ちゃんに対する本質的な怖れ(小さくて頭の大きい一般的な宇宙人像のモデルは赤ちゃんであることは有名ですしね)を映画的なホラー表現として投影させているのだと思います。

勿論、赤ちゃんはそれはそれは可愛い存在ですが、「無からやってくるもの」への怖れはもともと深層心理に深く刻まれているものでもあるのだと思います。

他にも、フレディのような凶暴な怪物などは人間の暴力性に対する考察であると思うし、貞子に代表されるような呪われた存在は、非常に日本的な祟りとか怨念の概念から発せられており、そういう存在は必ず不幸な生前を送ったとか悲惨な最期を遂げているわけで、今生きている者がそういった死者に抱く後ろめたさが恐怖として投影されていると思います。

このように、ホラーの正体は現実世界の人間の恐怖を映し出したものであると考えますがいかがでしょうか。

なんですと

それで今作の、架空の彼氏が携帯電話にとりつき持ち主の女の子を殺してしまうホラーは何を投影しているのかと考えてみると、それは「思春期の女の子が彼氏に嫌われたり別れたりすることになったらどうしようと考えてしまう不安」ではないかなと思います。

携帯電話というのが最大のポイントであり、例えば、彼氏にメールを送ったけどすぐに返事が来ないし嫌われちゃったのかな・・・、とひとり思い悩むわけですよね。

ある程度の大人からしたらそんなに深く考えないのですが、思春期の女の子からしたら死活問題でもあるわけですよね。そういった人生経験の浅さからくる必要以上の執着、彼氏を失うことに対する過剰な怖れをホラーとして投影しているのではないかなと思います。

守

架空の彼氏が携帯にとりつくというアイデアが秀逸で、ちゃんとメールをしないとゲージが下がっていくし、ゲージがなくなれば別れという「死」が待っているし、ゲージが上がったらそれはそれで彼氏が「去っていく=死」(重いとかはっきりとウザがられる)わけですよね。この構図はよく出来ています。

思春期の女の子のこうした恐怖は、甘酸っぱい青春映画で存分に描かれてきたものですが、これをホラーとして機能させたのは斬新だし、やはり日本ならではアイデアではないのかなと感じます。

それは、もしかしたら日本が「察する」文化であることも関係していて、思春期ならではの自意識過剰が「察しすぎてしまう暴走」を呼びやすいからかなとも考えます。「察しすぎて被害妄想気味になる」わけですよね。

「察する」文化はそれを強制する文化でもある、このあたりに日本的共同体の粘着さをも感じます。

初恋

B級映画だからといって侮るなかれ。

日本映画の最先端は、テレビ局主導の大作映画より今作のようなキメ細やかな低予算映画にこそあるのかもしれません。
 

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atribecalled at 20:30│Comments(9)TrackBack(7) 日本映画 | 5点評価

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1. 携帯彼氏  [ いやいやえん ]   May 31, 2012 20:44
携帯で擬似恋愛。それは別にいいんですよ、ラブプラスとか恋愛ゲームとか、色々ありますからね。でも…アニメ画じゃなく実写…。気持ち悪くないのか?と疑問に思う。よっぽどのイケメンさんたちでもないと、なんか色々納得できない。 実際この作品にでてくる携帯彼氏達、
2. 携帯彼氏  [ 佐藤秀の徒然幻視録 ]   May 31, 2012 20:46
公式サイト。船曳真珠監督、川島海荷、朝倉あき、石黒英雄、小木茂光、星野真里、大西結花、桑江咲菜、落合扶樹、前田希美。15歳の川島海荷の映画初主演のホラー・オカルト・ラブ ...
3. 携帯彼氏/川島海荷、朝倉あき、石黒英雄  [ カノンな日々 ]   May 31, 2012 21:15
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4. 「携帯彼氏」彼氏を転送し続けて辿りついた許されない凶悪事件の真実  [ オールマイティにコメンテート ]   May 31, 2012 21:52
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5. 携帯彼氏  [ 銀幕大帝α ]   June 01, 2012 00:43
09年/日本/102分/ミステリーサスペンス・ロマンス/劇場公開 監督:船曳真珠 原作:kagen(魔法のiらんど) 出演:川島海荷、朝倉あき、石黒英雄、小木茂光、星野真里 <ストーリー> 真由美が謎の言葉を残して自殺。同級生の里美と由香は、死の真相を探るため...
6. 『携帯彼氏』新宿ピカデリー スクリーン4  [ ふじき78の死屍累々映画日記 ]   June 02, 2012 07:47
もったいないのは絵が安い事。 川島海荷は充分、可愛いけど、もうちょっと可愛く撮れる気もする。 星野真理は疲れてる。浮かび上がる皺が痛々しい。 小木茂光も疲れてる。まあ ...
7. 『携帯彼氏』  [ 映画批評ってどんなモンダイ! ]   June 02, 2012 10:38
携帯彼氏 [DVD]クリエーター情報なしジェネオン・ユニバーサル 『携帯彼氏』 2009年(日)監督:船曳真珠 ●学園ホラーの傑作にして、ジャパニーズ・ホラーの秀作  「携帯小説を原作にしたアイドル映画だ」と馬鹿にできない恐怖映画の秀作。話の筋やアイディアとし..

この記事へのコメント

1. Posted by maki   May 31, 2012 20:54
こんばんは♪
いつもながらしっかりとした考察をお持ちで素晴らしい記事ですね!
思春期の女の子の携帯にはまる嗜好&彼氏に嫌われたくないという繊細な感情をホラーにするという試みは確かに面白いものだと思います
低予算ホラーながらしっかりとした作りで好感ももてますが、いかんせん作中の「擬似彼氏たち」が憧れの先輩以外は格好良くないんですよね^;
みなが納得のいくキャスティングは難しいとは思いますが、もう少し爽やかな面子を使って欲しかったと思います…とはいえ、リアルの彼らのやっていたことが酷いので、格好良くなくても仕方ないかなとも思えたりも…。
2. Posted by Quest   May 31, 2012 21:23
makiさん、コメントありがとうございます。

行き違いだったみたいですね(笑)
個人的で自分勝手な感想を述べているだけなのですが、そう言っていただけると嬉しいです。
私としては、本当に幅広い映画をたくさん鑑賞しているmakiさんはかなりの映画好きなんだなと感心してしまいます。選り好みしている自分がちょっと恥ずかしいです(笑)

今作の疑似彼氏たちは、もうちょっといろいろなタイプを揃えるべきでしたね。ナンパなサークルのメンバーなので仕方ないですが、それならもうちょっと違う設定を考えることも出来たわけで、そこはちょっと残念です。

Jホラーは独自の路線をひた走っていますよね。もうガラパゴスとか無視して、突き抜けたような世界観を構築してほしいです。
3. Posted by かのん   May 31, 2012 21:34
これはわりと印象的な作品だったのですぐに思い出せました(笑)。いわゆる登竜門的なアイドルホラー映画でしたけど、ストーリーがしっかり筋道だっていてドキドキ感がありましたね。低予算ですし安っぽさは否めませんけど今でもいくつかの場面が記憶に蘇ってくる作品です。
4. Posted by Quest   May 31, 2012 22:06
かのんさん、コメントありがとうございます。

結構、印象的な映画ですよね(笑)

ストーリーやテーマ追求がしっかりしていて、比較的贅肉のない引締まった作品だったと思います。

確かに安っぽい作品でしたが、余分なシーンを加えることもなく、思春期の女の子を捉えた着眼点は光るものはあったように感じました。

登竜門的なアイドルホラーというのはその通りですね(笑)
5. Posted by ヒロ之   June 01, 2012 00:48
こんばんは!
コメント&TB有難うございました^^

正直な所、これは海荷ちゃんが出ているので観ました(笑)。
それ位海荷ちゃんが好きな私ですが、映画そのものの出来も悪く無く思っていたよりかは楽しめたという印象でしたね。
ただやっぱり私の目線は常に海荷ちゃんでしたけれど^^
彼女には何処か守ってあげたくなるピュアさがあるかと思います。
もうじき『怪物くん』の映画版がリリースされるのですが、実はドラマ版をしっかりと観た事が無いので、どうしようかと迷ってます。
6. Posted by Quest   June 01, 2012 01:06
ヒロ之さん、コメントありがとうございます。

川島海荷には素晴らしいポテンシャルを感じてしまいます。
ずる賢そうな長澤まさみをピュアにした感じでしょうか(笑)まだまだ若く、これから成熟していくとは思いますが、今作で見せたような純粋な処女性と妖艶な色気がうまい具合に同居している感覚を、これからも保っていってほしいですね。

『怪物君』はドラマをチョロっとしか観ていませんが、嵐のリーダーが前に出過ぎていて、川島海荷のファンからしたらちょっと物足りないかもしれません(笑)
7. Posted by KLY   June 01, 2012 01:52
むろんこんな映画ばかりになっても困りますが、現代の若い世代の文化をテーマにしたホラーとして十分面白かったです。
私はヒロ之さん同様に海荷ちゃんが出てるから見たクチなんですが、彼女今でも普通に中学生に見えるんだよなぁ…(笑)
8. Posted by Quest   June 01, 2012 02:10
KLYさん、重ねてありがとうございます。

川島海荷は大人気ですね(笑)
確かに大学生であってもおかしくない位の年齢なのですが、いまだに中学生のような少女性を醸し出していますよね。

小学生を表現する子役はたくさんいますが、中学生や高校に入りたてのような感覚を抱かせるのは新しい感覚で、非常に魅力的ですよね。

彼女がこれからどのように化けるのか、とても楽しみであります(笑)
9. Posted by Konno Natsumi   August 21, 2013 07:38
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