時々、日本酒が無性に飲みたくなります。

普段はビールかウイスキーを飲んでいるのですが、ふっと日本酒が飲みたくなる日があります。
刺身や豆腐で飲む日本酒は格別で、あぁ、日本人で良かったと思う訳です。

刺身を買い、薩摩揚げをあぶり、青梗菜と舞茸の炒め煮を作り、冷や奴にする。
これに冷やで飲む日本酒が美味しい。


癖のない冷や奴は日本酒に合う。
冬なら俄然湯豆腐ですが、残暑が続く今時分はやっぱり冷や奴。

軽く湯通ししたオクラと梅干し、鰹節を混ぜて叩いたものを乗っける。
もうひとつは胡麻油とみじん切りの白ネギで。
少しばかりの醤油を垂らせば、素晴らしきアテが生まれます。

日本酒がぐいぐいと進む。



柚子風味ポン酢醤油に浸されし木綿豆腐の安寧を言ふ
/田中槐「サンボリ酢ム」
醤油で食う豆腐も旨いけれどポン酢で食う豆腐も旨い。
これは冷や奴というよりは、なんとなく湯豆腐な気がします。

大豆の味の濃ゆい木綿豆腐は本当に美味しくて、キリッとしたポン酢に合う。
温まった豆腐がポン酢におりゆく様が安寧であるというのは言い得て妙。
熱湯にいた豆腐が、悠々とポン酢に浸かっているのでしょう。

お酒の強い槐さんです。
きっと、一杯やっているのでしょう。

タイトルからして面白い「サンボリ酢ム」ですが、お酒の歌がたくさん収録されていて面白い。

体調が悪い時には先ず麦酒。不味ければ寝る。美味ければ飲む
こめかみに沁みるシャブリで乾杯のあとこれでもかつてくらゐ牡蠣
大ぶりのワイングラスに赤い月酔ふときひとりでゐるのが好きで
/田中槐「前掲書」

杯を傾ける様子が目に浮かびます。

ジン、ウォッカ、ロンリコやがてスピリタス   強いお酒を痛さうに飲む
/田中槐「前掲書」