2015年12月

おでんはなくなってしまったけど、残りの汁を捨てるのは少しもったいない。
何時間も煮込んで、あらゆる具材の旨みの滴る汁です。もったいない。

そんな時は、カレーに打ちなおすに限ります。

おでん、鍋、チャーシューの茹で汁…
なんでもカレーにすれば美味い。

玉ねぎ、きのこ、豚こま、厚揚げ…
冷蔵庫にあるものを適当に入れて煮て、火が通ったらカレールーを溶きます。
それだけ!簡単です。


今日はシンプルに玉ねぎのみ。
生卵とキャベツの酢漬けをのせて。
激辛のツバメオリソースを少しかけて。

インディアンカレーを知ってから、福神漬けやらっきょうよりも、キャベツの酢漬けが欲しくなりました。
本当はしっかり漬けた方が美味いけど、レンチンしてすし酢に数分漬けるだけでも、そこそこ美味しい。

ぐちゃぐちゃとかき混ぜながら食べます。



しろくまカレーライス園   そこではみんながにこやかにカレーを食べてしろくまを見る
/溺愛『動物図鑑』神大短歌1号

初句の壮大な字余りから、二句目8音、三句目以降は定型に収まっています。
大胆な破調!という印象と短歌としての許容が両立している。すごいバランス。
三句目のにこやかにが上手いなぁ。
音数上、にこやかにを削っても、31文字を超えてくるんですが、これが挿入されることで定型感がぐっと増すし、物語っぽい雰囲気が醸し出されます。
作者が描いているのは、ある種のユートピアなのかも知れません。
このカレーは、なんの変哲もない普通に美味しいカレー。そんな気がします。

短歌な友人達が家にやってくるということで、おでんを炊く。
何かを煮込むのはほんとうに楽しいものです。
疲れやストレスが溶けていきます。

おでんは煮込みはじめたらぼうっとしているだけですが、下ごしらえが面白い。
大根は米の研ぎ汁で下茹でして(生米を一緒に入れても大丈夫。)、
玉子は固めに茹でて水にさらして、
厚揚げや練り物は油を抜いて、
牛すじは下処理して…
この工程が面白い。

下処理が全部終われば、あとは煮込むだけ。
出汁をとっても美味しいし、
白だしやおでんの素でも美味しい。

入れる具材もノールールなので好きなものを入れてしまえばいい。
うちのおでんにはジャガイモではなくて、里芋か京芋を入れるし、レンコンやきのこも入れます。
このアナーキーさが魅力です。

冷める間に味が染みるので、一晩おくといい感じですね。


中まで茶色くなった大根は幸せの味。

おでんを食い終わったら、カレーに打ちなおしても美味です。


火の通りにくいものから鍋に入れ軟らかくなるまでに泣きやむ
/泳二『第7回空き家歌会』

おでんではなく鍋の歌。
煮込むという行為には一種のカタルシスがあると思うのです。
学生の時分から、ストレスが溜まると、チャーシューを作ったり、モツ煮をしたりしていました。
脂とともに、自分の中の不浄な部分が溶けてゆく気がするんです。
もちろん泣くという行為も多分にカタルシスを含みます。
鍋に仮託して、自己再生を歌う。
いい歌やと思います。

ずいぶんと長いこと放置していました。
生業がばたばたしていて、ちゃんとご飯が作れない。ストレスです。

先日、えいやぁと早く職場を出て、スーパーに寄ると、菜の花が売られていました。地元産。
もう少し、春にならないと食べられないと思っていたので、衝動的に買ってしまいました。
帰宅して、思案したあげくに、芥子和えにすることに。

粉芥子を白だしと水でのばして、さっと茹でた菜の花を絡めたら出来上り。
簡単です。

まだ、冬の先兵達が到達し出したところやけど、ほろ苦い春の味がします。
しかし、春の野菜、ほろ苦いものが多いのはなんでなんでしょうか。

白ごはん、鰆の南蛮漬け、豚肉とさつま芋の炒め物、かぶらのスープで晩御飯。


今何を考えている菜の花のからし和えにも気づかないほど
/俵万智『かぜのてのひら』

菜の花の芥子和えで思い出すのはこの歌。
せっかくの菜の花の芥子和え。
食卓に連れてきた春にいっこうに気づかない相手に対する小さな不満でしょうか。
二句切れの言い切りが少しだけ怖い気がするのですが、俵さんのエッセイでは温かい解題がしてあった記憶があります。

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