オシム氏が基本的にマンツーマン・ディフェンスに軸足を置いていることもあって、近頃マンツーマンかゾーンかという議論が方々で行われている。ということで今回は主にゾーン・ディフェンスの要諦について簡単に見てみよう。

ゾーン・ディフェンスはボールが基準点になる
 まず"現代的"なゾーン・ディフェンスでは、ボールを基準点にしてフォーメーションを形成することがポイントだ。各ディフェンスはゾーン・マーキングを通してある一定のゾーン(スペース)をカバーすることを求められているものの、ボール保持者と自陣ゴールの位置に応じてブロックを形成してポジションを修正・変更しながら守る。
zone 左図は4−4−2においてフィールドを縦に4分割し、MFとDFの各選手が受け持つ一般的なゾーンを示す。L(Left)、CL(Center-Left)、CR(Center-Right)、R(right)の4つだ。
 特筆すべきポイントは3つほど。
・中央がサイドよりも直接的な危険地帯であることから、L,Rに比べCL,CRは幅が狭くなっている。
・必要に応じて隣接ゾーンもカバーする。例えば、本来Lを担当する左SBは必要に応じてCLもカバーする。
・一般的にFWに固定的な担当ゾーンはないが、同様の原理に基づき、個別具体的に決定される。

 こういったゾーン分割を基本としながら、ボール保持者と自陣ゴールの位置に応じてブロックでポジションを変更(ローリング)して守ることになる。下図は、ボール保持者の位置に応じて4−4−2の2ラインがどのようにポジショニングをとるかを単純化して図示したものだ。
4−4−2
 そのとき、敵のボール保持者は1人2人のディフェンスではなく、11人の選手に立ち向かっているような印象を当然抱くことになる。また守備側はボール保持者にそういった心理的・物理的プレッシャーを与えることが重要となるわけだ。

 この点、トランジション・ディフェンス(ボールを奪われた直後の守備)を除くと、基本的にボールよりも人を基準にしているオシムジャパンの属人的守備とは根本的な発想が異なる。ストリクト・マンマークを貫徹する古典的なマンツーマンとは違って、ヘルプ&リカバリーによる受け渡しなどゾーン的な要素も併せ持っているのがEURO2004のギリシャやオシムジャパンなどのマンツーマンの守備法だが、やはりゾーン・ディフェンス主流の現代サッカーにおいてはレトロ感が漂う異質なものである(今後ドリブルやクロスへの対応等で大きな問題が生じてくることは間違いないと予想する。)

 またゾーン・ディフェンスで具体的にどのようにボールを奪っていくか。一般論的に言えば、ディフェンスをセットしプレスをかけていくときは、DFとMFがそれぞれブロックを組み、FWの前線からのフォアチェックで相手ボールをサイドに追い込む。そしてアウトサイドでダブル・チーム(double-teaming:ボール保持者に2人のディフェンスがアプローチする)などの挟み込み、囲い込みでボール保持者の選択肢を奪い、直接ボールを奪うか苦し紛れのパスを強要してボールを奪っていくことが多い。よってチーム・ディフェンスの強度を測るには、アウトサイドの守備がどれだけ強いかを見ていくとよい。
india 先日オシムジャパンと対戦したインドもそういったオーソドックスなゾーン・ディフェンスの発想で守っていた。左図は試合中のワンシーンで、青が3−4−3の日本、赤が4−4−2のインド。インドが日本の3トップに対し4DFで数的優位を作りつつ、中央のコースを切って左サイドに追い込み、左SHとFWのダブルチームでボールを奪おうとしている局面だ。
ストロングサイドとウイークサイド 変則3トップ
weak side これに対抗する日本の攻撃もまた正統派と言うべきか、オーソドックスなゾーン・ディフェンス攻略法を用いていた。
 先述の通り、ゾーン・ディフェンスにおいてはボールを基準にしてポジショニングを取る。よってボールが左にあれば全体が左に寄せ、ボールが右にあれば全体が右に寄せる。このとき、ボールを持っている相手チームの選手がいるサイドをストロングサイドといい、相手チームのボール保持者から離れている反対側のサイドをウイークサイドという。
 ストロングサイドに絞れば絞るほど、言い換えればDF間の距離を狭くすればするほどボールに対する守備は強くなるが、そのぶんウイークサイドのゾーンのカバーの効力は落ちる。またゾーンのカバーを意識すればするほどボール保持者に対する守備は弱くなる。こういった拮抗関係にあるわけである。
 例えば左サイドから攻められている場合、右のウイークサイドにいる敵にはDFには基本的についてはいかない。しかし「注意」はし、パスがでたときにインターセプト、それが無理ならパスが渡った後に攻撃を遅らせることができるようポジショニングを取る。サイドからサイドまでボールを送るには3〜4秒かかるので、パスが出たら急いでポジショニングを修正するわけである。ゾーン・ディフェンスにおいてはそういった「集散」が命となるのだが、インドはオーガナイズを整えるのに精一杯で、集散は遅く、やはり大したレベルにはなかった。
 
変則3トップ 日本はボールサイドで縦パスを入れてインドのディフェンスを食いつける。そしてフィールドを横断するダイアゴナルパスを用いてがら空きになっているウイークサイドへ素早く展開することで、インドの青臭いゾーン・ディフェンスを攻略しようとしていた。せっかくフリースペースで受けたパスを雑なトラップで台無しにしてしまう選手がいたことで印象は悪いが、そういう意図は明確に見えた。
 右であれば駒野が、左であれば山岸かアレックスが受け手となる。日本は3トップではあったが、播戸と巻が2トップ的に動く変則的な3トップであり、播戸が巻の背後から斜角に走り込んで決めた先制点は、偶然性の高いミスから生まれたゴールとはいえ、狙い通りの攻め筋によるゴールではあった。
 なお、ゾーンディフェンスというのは相手のボール保持者が中央にいるときには中央にギュッと収縮するので、そのときはセンターがストロングサイド、空いている左右のサイドをウイークサイドと言う。


 ゾーン・ディフェンスとは、それぞれのディフェンダーが守る範囲をあらかじめ決めておき、ボール保持者の位置に応じてポジショニングを修正しながら、担当ゾーンに入ってきた敵をマークする守備方法である。
 今回は根本的特徴である「ボールを基準点とするポジショニング」を中心に考えてみた。次回はチェルシーを題材にゾーン・ディフェンスにおける中盤のプレッシングを掘り下げて考えてみる。 
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