サッカー・ブログランキング
最新の記事はサッカーランキングから

「人財」とコンセプトの乖離
攻撃イメージ いまにして思えば、オシム氏がやっていたことは「日本サッカーの日本化」という建前の「日本サッカーのオシム化」であったわけだが、昨年アジアカップの時に痛感したように、日本が保有する「人財」とオシム氏が標榜するスタイルが食い違っているという重大な問題を抱えていた。
 すなわち、「オシム化」というスタイル実現のために、高い技量を持つ選手の代わりに千葉系の選手を多用するなど、チームとしての限界値を自ら下げてしまっていた。それが、アジアカップ4位敗退の決定的素因の1つとなったわけである。
 一方、岡田氏になってからの試合を見るに、監督が標榜するスタイルと日本の「人財」との相性は相対的に良いように思える。おそらくは岡田氏も、我々が感じているような違和感を覚えていたのではないか。
 しかし、現状ではオシム時代のメンバーを承継しているため、今度は選出されたメンバーと標榜するサッカーが食い違っているように見え、同様に限界を感じる。中央はシンプルにし、サイドに量的過剰を作り出すのではなく、3センター中心に連続的なトライアングルの形成をなし、ショートパス中心のサッカーをしたいのであれば、もう少しファーストタッチが優れ、パスフィーリングが豊かで、スモールフィールドで力を発揮できる技術的水準の高い選手が必要となる。メンバーの入替えは必至であろう。
 もっとも、離脱者が相次いだ東アジア選手権は、食い違い以前に使えるメンバーが不足していた。これまで攻撃の核であった高原、中村俊、駒野も不在であった。ゆえに、チームとしての真価・戦術的真価を見るのは、アジアカップのようにベストなメンバーを揃えられた時まで待つことにしよう。
 そこで、現状で気になるディティールを考察してみることにする。
サッカーボールコントロールTech70-DVD超実践!サッカーボールコントロールTech70-DVD超実践!
國枝健一

サッカーフェイント実戦技Best70 サッカー抜き技Best60―DVD超実践! ファンタジスタの肉体改造法 世界への扉を開く10のスキル(DVD付) DVDでマスターする フットサル ワザ本 (ブルーガイド・グラフィック) サッカー リフティング&ジンガバイブル

超実践的ですな

「ポリバレントCB」について
 韓国戦の失点シーンを見て、既視感を覚えたのは私だけではないはず。オシム時代から、同じようなパターンのクロスからの失点が非常に目立っている。サウジ戦の阿部、韓国戦の今野のように、本職ではないCBが対応に遅れ、相手FWに出し抜かれてクロスから失点するというパターンだ(中盤の守備の問題も深く関わっているが、その点は捨象して考える)。
 確かに、相手がゴールに背を向けている状況など、余裕を持って対応しているうちは「ポリバレントCB」の問題は表面化しない。彼らはマークに強くボール奪取能力も高く、両足を使えるから、CBとしての起用も合理性があるように一見感じられる。
 しかし、ゴール前でのクロスの対応というのは、ほぼDFの専属事項といえ、もともとMFだった選手には経験の蓄積がない。独特の駆け引き、急激な角度の変化、アンティシぺーション(予測)、敵との距離感、ポジショニングなど、付け焼き刃ではどうにもならない難しさがある。加えて、彼らにはタッパがないから、ポジショニングで遅れを取るとその時点で厳しい。
 もし、ゾーンディフェンスを採用し、ボールのラインに応じて各ラインが等間隔性を維持しながらポジション移動を繰り返す組織的な守備が整備されていれば、穴は空けにくくなるのだが、オシム氏および岡田氏からその気配は見えないし、宮本恒靖のように、主体的に最終ラインをコントロールしていく豊富な戦術的知識やリーダーシップを持つ選手もいない。
 それに加え、効果的な攻撃展開が「ポリバレントCB」から生まれているシーンは稀であり、現状ではあまりメリットを感じないというのが正直なところだ。
 チームというのは、適材適所に選手を配置することで個々が長所を出して相互に補い合い、全体として最大限の力を発揮できる仕組みになっている。CBの起用法は改善の余地があろう。
 ポリバレントとは、複数のポジションないし役割をこなせる多能性をいう。同義語はユーティリティー、マルチロールなど。
 個人的には、三浦淳宏、柳想鐵(ユ・サンチョル)などが好み。簡単にボールを失わない技術の高さ、的確な状況解析力、肉体的強さを有するバランスの良い選手であった。
 
左利きの選手の必要性
 攻撃においては、予測不可能性意外性という要素が非常に重要となる。ひたすらサイド攻撃や狭い攻撃を繰り返していても相手は慣れてしまうし、対応策を立てやすくなる。
 そして、敵にとって「予測不可能」な攻撃を繰り出すためには、攻撃の引き出しを多く持っていなければならない。いくつかの攻撃の引き出しを予め持っていることで、それらを手を変え品を変え提示し、敵に恒常的にプレッシャーをかけることができる。
 この点は、やはりチームとして練習を積んで、覚え、選択肢を増やしていくしかないが、これに間接的に関わるものとして、左利きの選手の有用性を挙げておきたい。ボールの持ち方が変われば、空間的視野が変わり、それによりボールの循環経路もまた変わってくる。それが攻撃に多様性と拡がりを生み出すことになるし、何より左利きの選手は創造力に優れる選手が多い。
 東アジア選手権直前の親善試合を見ていて、ここで左利きの選手がいれば、と思ったことが何回もあった。画面を見ていると何と全員が右利きであったのだ。展開が狭い要因の1つであろうし、日本の伝来的長所である左サイドの攻撃の良さが減殺されている。
 中村俊輔だけではなく、玉田、柏木、アレックス、相馬崇、本田、中田浩らを適度に組み込めば、面白くなる。幸いなことに、前監督時代は重用されたが代表に選ばれる技術的資格を欠くように見える選手に対し、岡田氏は見切りをつけはじめてるように見え、そこの枠が徐々に空くことになるだろうから、期待できよう。
誰が監督でも、長所をさらに伸ばしていくこと
「日本は、他の国にはない武器を持っている。テクニック、コンビネーションと機動力に優れた中盤の構成力だ。オーストラリアのフィジカル強調型の中盤を、技術と連動に優れる日本が凌駕していた。その事実を決して忘れてはいけない。
 個人的には中村が最も際立っていた。視野が広く、技術が非常に高い。マーカーのグレラは早い時間で退場しても不思議でないほどファウルを頻発したが、ゲームをコントロールした。
 中田英はこのレベルでは、決してフィジカルが強いタイプでないのにピッチ上で常に戦っていた。」
by アルセーヌ・ヴェンゲル
 中盤のテクニックと構成力が日本の最大の長所であることには、疑義を差し挟む余地はない。誰が監督でも、その長所をいかに生かし、チームを構築できるかが問われることになる。この長所を軽視し、中盤の「人財」を黙殺するような方向性はあってはならない。
 いろいろ考えを巡らせてみると、肉体派オーガナイザー(組み立て屋)たる中田英を失ったことは痛いかもしれない。2006年W杯で優勝したイタリアのように、中盤の下がり目(ピルロ)と上がり目(トッティ)に2人の好パサーがいると前にボールを運びやすくなるが、現状でボランチというポジションに耐えうる強さのある組み立て屋が見あたらない。
 しかし、中田英は選手としての最後のピークを2005年のコンフェデ杯で迎えていたように見え、仮に引退しなかったとしてもいつまでも頼ることはできなかったし、従来のタレントに加え、本田、柏木など、面白い「人財」はまだまだ多いし、小笠原も鹿島で健在だ。彼らをうまく組み合わせれば、精緻な中盤の構成力を武器に戦えるチームを作ることは可能である。繰り返すが、こういった「人財」を黙殺するような方向性を追求するようなことは今後二度とあってはならない。
 
 予選が迫っているからこういうことは言いにくいのだが、チーム発足後たった1ヶ月である。もう少し長い目で見守ろうではないか。


サッカーランキング最新サッカー・ランキングへ。
続きが早く読みたい方はクリックで一票投じていただけると、嬉しいです


プレミア流サッカー・コーチング 問題を解決する100のトレーニングプレミア流サッカー・コーチング 問題を解決する100のトレーニング
トニー・カー 加藤 久 岩崎 龍一


Amazonで詳しく見る