4月9日。僕はひとつ大人になった。
と、そんなことは言ったがただ単に学年が一つ上がっただけで今日から僕は高校3年になった。
高校3年ともなると進学で多少忙しくなるもののそこまで大きく変わる事はないだろう。
まぁなんにせよ高校生活最後の1年は有意義な年になるといいけれど。
「お兄ちゃん支度できたー?」
鞄を持って部屋を出ようとしたら妹が勝手にドアを開けて入って来た。
「お前なぁノックぐらいしろよ」
「えー、別にいいじゃんお兄ちゃんなんだし」
「どういう理由だよ…。それよりもお前の方は準備できたのか?」
「うん!バッチリだよ」
うちの妹こと春海は今日から高校生となった。しかも僕と同じ高校だ。
ただでさえ家で一緒というのに高校まで一緒ということになると考えるだけで疲れる…。ただでさえ最近口うるさくなったというのに。
「お兄ちゃん余計な事考えてない?」
「考えてるわけないじゃないか」
「それならいいんだけど…。それよりもお兄ちゃん私に何か言うことない?」
言うことか。確かこの前の春海の卒業式にも聞かれたよな。あの時は「卒業おめでとう」だったな。
ここまでくると何を言えばいいかさすがに鈍いと言われ続けている僕でもわかる。
「入学おめでとう」
「それは当たり前だよ!もっと違う事あるでしょ?」
おかしいな違ったようだ。それ意外に言う事あるかな。
「普通わかるでしょお兄ちゃん」
そう言うと春海はその場ではその場でくるりと一回転した。
僕はその妹の一回転を見てハッとした。確かクリスマスの時にも七夏が一緒の事してたな。
そうかこっちの方か。
「制服似会ってるぞ」
七夏の時は服だったはずだ。ということは春海は初めて着る高校の制服の事を言っているはずだろう。
「お兄ちゃん相変わらず鈍いよー。まぁ気持ちは受け取っといてあげるけど」
春海は相変わらず素直じゃないよな。まあ適当に褒めて置いたけど…。
でも春海は紺色のブレザータイプのごく普通の制服だが兄の僕が口に出して言うのは恥ずかしいがよく似合っていると思う。
「さてとそろそろ行くか」
「そうだね。ちゃんと学校まで連れて行ってねお兄ちゃん」
「しょうがないな。ちゃんと道覚えろよ」
「大丈夫大丈夫。これから1年はお兄ちゃんと一緒だし」
「もしかして僕と一緒にこれから登校するとか言わないよな?」
「当たり前でしょ?」
こいつと一緒に登校することになったら絶対僕の朝のリズムが壊れそうだ。僕としては朝はギリギリまで寝たいというのに。
「いや、さすがにそれはないだろ?お前も兄と一緒に登校してたら周りの目が気になるだろ」
「何で?私は全然気にしないけど」
当たり前のように答えた。どうやら春海は本当に全く気にしていないようだ。
そういえば小学生の時も中学の時もずっと春海と登校してたな。
「というわけで1年間よろしくね、お兄ちゃん♪」
春海は笑顔で僕に言ってきた。はぁ、こんな笑顔で言われたら断るに断れないよな…。
「わかったよ」
「さすが私のお兄ちゃん♪それじゃあ行こ!」
春海は鼻歌を歌いながら部屋から出て行った。
本当に最後の高校生活有意義な1年間となってくれるといいんだが…。