交通事故の過失相殺について判断した裁判例です。争いのない事実、証拠(甲三、四、六ないし一一、一三ないし一五、一七、乙六、被告啓介本人)及び弁論の全趣旨によれば、〔1〕B地点以下に数台の右折待機車が存在したことから、被告車から対向車線への見通しが一部遮られていたこと、〔2〕被告啓介は、対向直進車への安全確認が不十分なまま、本件交差点で停止することなく時速二〇キロ程度で右折したこと(甲一一、被告啓介本人三頁)、〔3〕被告車は、交差点の中心直近に寄らないで右折したこと(B地点が交差点の中心直近で右折待機していた対向右折車の位置であることからして、〔2〕地点から〔5〕地点へと右折した被告車は早回り右折をしたといえる。被告啓介本人一五頁)、〔4〕本件現場は、最高速度が時速五〇キロに制限されているところ、弘和二輪車は、時速六五キロから七〇キロ程度で走行していたこと(乙六、他方、本件全証拠によってもそれ以上の速度超過を認めるに足りない。)、〔5〕弘和二輪車が走行していた第一車線(〔ア〕地点の車線)は、直進及び左折用の車線であり、また、第二車線は、直進及び右折用の車線であるが、本件交差点付近では、広がっており、右折待機車があっても、直進車が直進できるようになっている(甲一三、一四、一五)ことが認められる。なお、乙九には、弘和二輪車が第二車線の右折待機車の影から第一車線に車線変更したかのような記載があり、被告啓介も弘和二輪車が右折待機車の陰から出てきた感じを受けた(被告啓介本人三頁、一二頁)と供述しているが、被告啓介が弘和二輪車を始めて発見した時点では、弘和二輪車が第一車線上にいたことからすれば、被告啓介は弘和二輪車の車線変更自体を目撃しているわけではなく、また、第二車線でも直進は可能であることからして弘和二輪車があえて第二車線から第一車線に車線変更する理由も見出し難いことからすれば、乙九のように弘和二輪車が車線変更したとは認められず、他にこれを認める証拠もない(被告啓介は、突然弘和二輪車を発見したことから、乙九のような印象を抱いたに過ぎない可能性もある。)。前記認定事実に基づいて判断する。被告啓介は、対向右折待機車により対向車線の視界が遮られていたのであるから、十分に速度を落として対向直進車の有無を確認して右折すべきところ、対向直進車への安全確認が不十分のまま漫然と時速二〇キロで右折し、しかも、交差点の中央直近を通らずに、早回り右折をしている。他方、亡弘和にも最高速度を一五キロないし二〇キロ程度超過して走行した過失がある。以上の双方の過失内容、本件交通事故態様、交通事故現場の状況等前記認定の事実を総合考慮すると、本件においては、亡弘和に一割五分の過失相殺をするのが相当である。なお、弘和二輪車が第一車線内の右側を直進していた点は、第二車線も直進可能であることからすれば、特に右折待機車の影になるような走行であったとは言えず、過失割合に影響する事実として評価するのは相当ではない。また、被告らが既右折として主張する点も、被告車が早回り右折をしたこと、交通事故に至る両者の位置関係に照らし、同様に解する。
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