花粉症へぇニュースのカテゴリの記事は、とくにタイムリーな内容というわけではないけど、なんとなく「へぇ」と思うであろう内容の記事です。あつ花*別館でやってきたものの続きです(番外編もあります)。


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抗ヒスタミン薬の副作用といえば「眠気」がもっとも注目されるものだ。
古い第一世代の抗ヒスタミン薬では、この眠気が避けられないものであって、古くからのカフナー(とくに市販薬を使ってきた人)は「花粉症の薬=眠くなるもの」という刷り込みがなされているだろうと思う。

第二世代抗ヒスタミン薬は、第一世代に比べて眠気が少なく、かつ抗ヒスタミン作用だけでなく抗アレルギー作用とか、いくつかの作用を兼ね備えているとされている。
その第二世代抗ヒスタミンが、ここ数年のうちに次々と市販薬として出てきたので……まあ、はっきりいって、これは「時代が変わった」といってもいいと思っている。


それはいいとして眠気だ。
いろいろ文献を調べていると、「なんだよ、調査によって数値がぜんぜん違うじゃん」みたいなことが、じつはある。
いちいち原典にあたってるわけじゃないし、そもそも私はそっち方面の専門家でもなんでもないので、そのあたりについての評価はできないが、「まあ、そーゆーもんなんだろう」みたいに思うこともあった。

んで、医師や薬剤師がデータとして信用してる……かどうかはわからないが、一般的な商品でいうところの「カタログ数値」みたいなものがある。
メーカーが、「試験をした結果、これこれこうでしたよ」みたいなデータを発表しているもので、インタビューフォームと呼ばれている(その薬の成績表みたいなものだよね)。
そこに「この薬の眠気の発現率はこれぐらいでした」という数値が出ているのだが……正直いって、すぐ上では「信用してるかどうかわからない」と書いたが、「誰も信用してない」といってもいいぐらいなのかもしれない(笑)。
いや、それしか信頼できるデータがないとしたら、笑いごとじゃないのだが。

そこで、実際に薬を治療のために服用している患者(花粉症患者というわけではない)へのアンケートを行なって、その薬の眠くなりやすさというのを調べようということがあり、その結果が公表されている(念のためだが、メーカー発表値だって患者で試験してる……当たり前だが)。
興味深いのでみていこう。


まず、これが各薬剤のインタビューフォームに出ている「傾眠・眠気」の発現率だ。

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ケトチフェンというのはザジテンなど(市販薬ではザジテンALなど)
メキタジンはゼスランやニポラジン(市販薬ではストナリニガード。ポジナールなどは成分が少ない)
アゼラスチンはアゼプチン(市販薬ではスカイナーALなど)
オキサトミドはセルテクト
エメダスチンはダレンやレミカット(アルガード抗アレルギーカプセルというのがあったが販売をやめたようだ)
エピナスチンはアレジオン(市販薬ではアレジオン10だが、これは医療用の半量だと思っていい)
エバスチンはエバステル
セチリジンはジルテック(市販薬ではコンタック鼻炎Zなど)
ベポタスチンはタリオン(市販化予定)
フェキソフェナジンはアレグラ(市販薬ではアレグラFX)
オロパタジンはアレロック(市販化予定)
ロラタジンはクラリチン

まあ、これは眠くなる人の率であるからして、これがすなわち眠気の強さではないのだが、ケトチフェンの4.26パーセントというのはウソだろうと思わざるを得ない(笑)。
同じく古い薬であるメキタジンも、2.3パーセントというのはナイ……とか思ったりして楽しい(?)。
ザイザルが出てないのは、調査した時点ではまだ発売されてなかったからのようだ。

この表の隣に、先に説明したアンケートによる眠気の発現率というのを並べてみる。

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たとえば、この「時々眠くなることがある」という人の率が、すなわち「それだけ注意しなくちゃいけない度合い」だと思ってみれば、たしかにケトチフェンの36.6パーセントとフェキソフェナジンの27.8パーセントというのは違う。
1割近く違うのだから、アレグラは眠くないにくい……というか、眠くなるかもしれない心配をしなくてはいけない度合いは低いとはいえるだろう。

しかし、実際に「毎回眠くなる」人の率は……まあ、これもたしかに薬によって違うけれども、どれもそれほど大きな違いはない。
3.1と12.5を比較すれば4倍違うとはいえるけれども、どれかが30でどれかが0.5だというほどの違いはない。


ともあれ、眠くなりにくい花粉症の薬(市販薬)ということでアレグラFXがノシてきているが、コンタック鼻炎ZやストナリニZ(セチリジン)も、実力では負けてないってこと……むしろ勝ってるといっていいのかもしれない(実力ってのは、眠くなくて効くという意味ね)。
まあ、調査対象になった人数が違うので、同列に比較することはできないが。
いわゆる統計学上で有意な差といえるのかどうかもわからないし、これも最初に書いた「調査によって違う」ということにすぎない可能性もあるしね。


そういうわけで、とりあえず「眠くならない抗ヒスタミン薬はない」ということがわかったし、メーカー発表値の数字以外の数字(たとえば眠気を感じる人が2.3パーセントだったら、残りの97.7パーセント)の人はまったく眠気を感じないというわけではないということもわかった。
「時々」ではあっても、眠気を感じるリスクがある人の率はかなり高かった。
すなわち、それらを合わせると30~40パーセント程度の人が眠気が出るかもしれないので注意しなくてはいけないという、とんでもない結果だということもできる。


では、その眠気のひどさについてはどうなのだろうか。

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眠気を感じた人のうち、どれだけが「我慢できないほど」の眠気だったかというのを調べた結果だが、ケトチフェンがそれほどでもないというのにふたたび意表をつかれた。
いや、むしろフェキソフェナジンのほうが、眠気を感じる人の率は少し低いけれども、その人たちの中でひどい眠気を感じる人の率は低くはない。


なかなか興味深い調査結果だといえる(これはネット調査なので、それだけでバイアスがかかっていると考えられるため、鵜呑みにはできないということはあるとは思うが)。


なお、これら眠気を感じる人の率というのは、年齢や服用期間による違いはないとのこと。
んで、こうしたインタビューフォームとの数値の違いというのは、まず治験では眠気のような軽い副作用よりも、もっと重い副作用のほうが重要視されていることと、誰が「眠くなった」と判断したのか(患者自身なのか医師なのか、とか)というようなことからくるものではないか、とのこと(まあ、「たまに眠気を感じる」とかは「眠気」にカウントされてないんだろうな)。


医師や薬剤師に「眠くなりにくい」とかいわれてアレグラを出してもらってませんか?
「眠くなりにくい」と「眠くならない」は違うし、とくに車の運転をしたり勉強に差支えがあったりすると困るような人は、よりいっそう注意をする必要があると思います(記事では、どんな薬でも「抗ヒスタミン薬を飲むと眠くなることがある」と伝えるべきだと述べられています。そこの薬剤師さん、伝えてますか?)。


この記事はGSK(グラクソスミスクライン)の『ファーマシストジャーナル』35号を参考にしました(図表の引用も)。


(フォレスト)