米 原 伊 吹 の 今 夜 も 眠 れ な い !


『大図書館の羊飼い-Dreaming Sheep-』2014年3月28日発売予定、11月29日より全国のPCショップで予約受付開始です。 『大図書館の羊飼い-Dreaming Sheep-』2014年3月28日発売予定、11月29日より全国のPCショップで予約受付開始です。

世のは、アニメやゲームだらけ。

そんなものを全部やっていては、夜も眠れない

そんな中でも、果敢に自分の好きなモノを追い求める――

きっとそこに、何かがあるはずだから。


大図書館の羊飼い

米原伊吹オリジナルストーリー 白崎つぐみ SS 白崎の不思議と魅力

こんにちは。米原です。

今、米原はちょっと幸せです。
4月の中頃から、平日の定時後、ほぼ全てを、研修に費やして来ました。
家に帰り、風呂に入ると、23時。
残業が一切できない分、余裕を持った仕事配分をしようとすると、朝早く行くしかない。
よって、始業時間の9時よりも早く、出勤する。
その為には即、寝る。
そんなつまらない生活をしてきました。
しかし、そんな生活も、5月31日をもって、終了となりました。
(正確に言うと研修論文だ報告だあるのですが、それは今だけ忘れます) 

そんな中でも、オーガストは私を支えてくれました。
オーガストからの告知が出るたび、Twitterで暴走していたのは、この生活が原因です。
特に31日はひどかったです。
自分でも、認識するぐらい。
だからこそ、なのでしょうか。
やっぱりオーガストの話を書きたい。
でも、ネタがない。
という事で、Twitterでアンケートを取りました。
その結果は、「つぐみの笑顔輝く話」を書くことでした。

つぐみといえば、つぐみにすたーゆーまき
彼に選んでもらった最高のつぐみは、こちらです。

chaosつぐみ


これは、ChaosTCGというカードゲームの為に書き下ろされたつぐみです。
つぐみらしく、華やかで、でも優しさがある。
真っ直ぐにこれからの明るい未来を見つめている――
そんな印象を持つ絵です。
そんなつぐみが挿絵になったお話を、今回書きました。

今回、帰りながらどんな話にするか考えたのですが、いつもならすぐ出るアイディアが全く出ず、結構な難産でした。
普段は、というより、初めて見る絵は、インスピレーションでバババと妄想するのですが、この絵は見慣れていたので、なかなか妄想がうまく展開されませんでした。
こうなると、真面目に考えていくしかありません。 
まずはこのつぐみを、いつ出すか。
大きく分けると、付き合う前か、後か。
同人誌の大半は、付き合ってからの話です。
二次創作も、同様。
よって私は、付き合う前の話を書くように心がけています。
ラブラブな気持ちを前面に出すのも良いですが、ふとしたきっかけで恋に落ちていく。
そのきっかけを、もっともっと書いていきたいのです。

今回も、何とかこのつぐみが入る場所を、探しました。
初めは、ミナフェスでの演説の感謝の気持ちを筧に伝える為のCGだと位置づける事にしました。
そのシーンは丁度6月(19日)。
これからの時期にもマッチし、丁度良いと思ったのです。
しかし、よく確認すると、今回のCGは冬服。
6月19日は夏服です。
これではダメだという事で、ゲームをやり直しました。
そして結果、4月25日に決定しました。

この日は、病気の千莉の介抱した週末、凪が家にテレビを見に来た日の翌日です。
丁度日曜日が書かれていない。
その為、この時点で辻褄が合うように、色々と合わせていきました。

出来上がってみると、ちょっと表現がしつこかったり、無理矢理感、つぎはぎ感があったりと、ちょっと納得出来ていない面もありました。
また、つぐみに萌える話というよりは、つぐみを愛でたくなる話になってしまいました。
しかしまぁ、今回のつぐみの絵柄は、萌える絵柄ではありません。
更に、没シーンっぽくて、良いかなーとも思っています。

読んでくださった方を納得出来る物かどうか、よくわかりません。
でも、損はしない内容だとは思います。

約6,300字にわたる『こんなシーンがあったらシリーズ』、お楽しみください。



=米原伊吹オリジナルストーリー 白崎つぐみ SS 白崎の不思議と魅力=


~Apr. 25~

4月最後の日曜日、俺は暑さで目を覚ました。
「もう、初夏だな……」
もうじき『春の大型連休』が始まるわけだが、『初夏の大型連休』に名前を変えるべきなのではないかと思うような日差しが、窓から差し込んで来る。
乾いた喉を潤すべく、台所へ向かう。
「ん?」
普段、受信なんぞする事ない携帯が、ランプを放ってそれを俺に知らせている。
「珍しいな……」
そう思いながら、ディスプレイにあるメッセージを開いてみる。


筧くん、おはようございます。
急で申し訳ないのですが、服の採寸の最終調整のために、一度会ってもらい、もう一度だけ、測らせてもらえませんか?
お礼にお昼ごはん、ご馳走します。

ファンファーレつぐみ

P.S. 千莉ちゃんはもう完全回復して、月曜日から学校に来られるそうです。


白崎からのメールだった。
「そういえば、コスプレ服を造ってもらってるんだったな……」
寝ぼけている頭に、少しずつ記憶がよみがえってくる。
今週は御園という女の子を介抱した事。
次週、コスプレ姿で料理研究部のビラを配る事。
その為に、白崎に採寸された事。
昨日は、隣に住む小太刀が俺の部屋に来た事。
今まで、人とのふれあいなんてなかった俺だが、今は急速に世界が動いている。
「ふあああぁぁぁ……」
今週の行動は、本を読むだけの体力しか持っていない俺には辛いものだったのだと、脳が体を使って俺に伝えてくる。
だが――
不思議と、断ろうという気には、ならなかった。
「……乗りかかった船だ、仕方ない、か」
俺は顔を洗い、歯を磨き、意識をきっちりと整え終えると、白崎に返信した。

11時45分。
指定場所の正門には、普段とは違う白崎の姿があった。
男のそれとは違い、白と赤を基調とした女性らしい制服は、優しさの塊のような白崎にはよく似合っていた。
今回も、同様。
白を基調に、いつもつけている髪飾りと同じ、薄いグリーンの上着が、白崎を引き立てていた。
普段と少し違うのは、制服姿の白崎は如何にも女子学生らしいのに対し、今の白崎は少し大人びた女性に見える。
OL……とまではいかないが、子供っぽさがまったくなく、上品な女性に見える。
だが、白崎のアイデンティティともいえるやさしさ、そしてこの日差しにも関わらず、涼しげでさわやかな印象。
実によく似合っていて、素晴らしい私服を選ぶセンス――
ふと、そんなことを、こちらを見て笑顔のまま大きく手を振る白崎を見て、思ってしまった。
「おはよう、筧くん」
「おはよう、白崎。と言っても、もうすぐ昼だけど」
「正午まではどんな時でも、『おはよう』だよ、筧くん」
少し首を右に傾け、口元がにっこりと笑っている顔で、白崎はそう言った。
「それはそうだけど、何となく違和感があってね」
俺は肩をすくめて答える。
「その気持ち、すっごくわかるよ。でも、そう決まっているんだもの、仕方ないよ」
「どこかで線引きは必要だもんな」
「そうだよ、筧くん。目安がないと、人間迷ってしまうもの」
白崎は俺の会話をうまく拾ってくれる。
『呼び出しておいて、不快にさせるなんてとんでもない』
そんな気迫さえ伝わってしまう程だった。
「……と、立話も疲れるでしょ? 先ずは計測させてもらえるかな? そしたら、この先のベンチでお昼にしよう」
白崎は持ってきたリュックサックを俺に見せる。
なるほど、今日の昼飯は、手作り弁当か。
「とりあえず、ベンチに行こうか。ここで計測されるのは、なんだか恥ずかしいな」
「そそそっ、そうだね。ごめんね、配慮が足りなくて」
白崎は顔を真っ赤にして、慌てふためく。
そんなに気にすることない……のだが、白崎にとっては大問題なのだろう。
それだけ、俺にへそを曲げられるのは、困るという事か。
「気にするなよ白崎。行こうぜ」
「うっ、うん……」
後ろをついてくる白崎の顔は、『どうやって挽回するか』を考えている顔だった。

一番近くのベンチに着くなり、白崎はリュックサックをベンチに置いた。
「今日11時45分を待ち合わせ時間にしたのは、15分で計測して、12時からはお弁当を食べてもらいたかったからなんだ。でも、計測している間にお腹空くと辛いと思うから、先に食べる?」
「いや、大丈夫だよ。計測してからで大丈夫だ」
「そ、そう。それじゃぁ、計測からさせてもらおうかな」
白崎はポケットからメジャーを取り出す。
「今回測りたかったのはね、ひざ下と、腕周りなの。ほら、ズボンがつんつるてんだったら恰好悪いし、腕が窮屈だったら辛いでしょう?」
白崎はそういうと、まずは腕を広げ、十字架の形になるように指示してきた。
「前回測らせてもらった時、細身でピシッとした執事服にしようと思ったの。だから腕回りもそのつもりで測ったのだけど、それだとビラ配る時に窮屈になる可能性が出てきちゃの」
白崎は解説をしながら、俺の腕を計測してはメモしていく。
「腕って、曲げるでしょ? 脚以上に計算が難しいんだよ。肩も近いし、よく動かす。でも、大きくしすぎるとダボダボになっちゃう。そのバランスをとるのって本当に大変なんだけど、出来上がってきてもらった時にぴったりだと、本当にうれしいし、なんだか気持ちよさまで感じちゃうんだよ」
そうなのか、と思いながら、白崎に言われるがままになる。
腕を曲げ、伸ばす。
これを何度か繰り返しのち、肩を廻させられる。
腕を後ろに伸ばしたり、反対に前にしたり。
……あれ、前回にも同じ動作をしたのではなかったか?
そういう疑問すら沸いてしまったが、まぁ、良いだろう。
心配性の白崎のことだ。
ついでだから、全て再計測しておきたいのだろう。
「それでは筧くん、今度は脚ね」
肩幅程開いた状態で計測をされていく。
一通り計測が終わると、屈伸をさせられる。
しゃがんだ状態、伸ばした状態。
それぞれ、何度か測られる。
しゃがんだ状態でのひざ下、腰、胸と膝までの間など。
思ったよりも多くの場所が計測された。
「……はい、終了です。ありがとうね、筧くん」
『やっと解放されたー!』
思わず、そう言いそうになった。
……が、寸でのところでこらえる。
余計なことを言って、また白崎に変な気を利かせられては困るからだ。
「お待たせしました。それでは、お弁当タイムです」
笑顔の白崎の手の中には、既にお弁当が包まれていた。

「それでは筧くん、どうぞ」
「ありがとう」
白崎からお弁当を受け取る。
男がよく持参する、無骨で、やたらと無駄機能ばかりの弁当箱とは違い、ピンクで可愛らしい、楕円型のシンプルな弁当箱だ。
半面、蓋には可愛らしいデフォルメされたひよこの絵が描かれており、如何にも女性が好みそうなデザインだと思った。
蓋をあける。
すると、中からは色とりどりのおかずがお目見えした。
赤、緑、黄。
黄の代わりに青だったら光の三原色だったのに、とも思ったが、青の食品は如何にもマズそうだ。
この『食品の三原色』ともいえる鮮やかな色合いに、茶も混ざっている。
栄養学的にもバランスがとれていそうで、何より、凝っている。
工場で大量生産されている市販の冷凍食品ではなく、明らかに手作りであり、更にボリューミーである。
女性のカバンよろしく、何故そんなに入っているのかと思う程、バリエーション豊かだった。
「いただきます」
白崎から箸を受け取り、一口食べる。
「どう……かな?」
「すっごく、うまい……」
「本当?」
「あぁ。アプリオよりも美味いよ、これ」
「そ、それは大げさじゃないかなぁ……」
「いや、そんな事ないよ。しょっちゅうアプリオで食べてる俺が言うんだ。間違いない」
「あ、あはははは……」
白崎は『さすがにそれはないよ~』とでも思っているのだろう。
だが、俺は本気でこの弁当はアプリオより美味いと思う。
もちろん、弁当であるが故、熱々の料理ではない。
だが、白崎のお詫びが、ひしひしと伝わってくる。
アプリオの料理に、お詫びの気持ちなんか入っているわけがない。
その差が、この味を引き出しているのだと俺は思う。
「あ、ごめん筧くん。言い忘れていたけど、こっちに白米と、おかずその2、それとデザート、用意してるから」
「お気遣いありがとう。全部食べさせてもらうよ」
俺がそう答えると、白崎は安心した顔をした。
「残さず食べてね」
白崎はそう言うと、自分の分の弁当箱を取り出した。
「いただきます」
白崎の弁当は、ちょうど俺の半分の量だった。

「ふー、食べた食べた。久しぶりにご馳走を食べたよ。白崎、ありがとう。ごちそうさま」
「お粗末様でした」
白崎は食べていたお弁当をいったん脇に置き、俺の弁当箱を受け取ると、風呂敷に包んだ。
「食べながらいろいろお話しようと思ったのに、筧くんがあまりにも夢中で食べるから、お話しする機会失っちゃった」
「……ごめん白崎。あまりにも美味かったから、つい」
「ううん、いいの。筧くん、すっごくおいしそうに食べるんだもん。なんだか、見てるだけで幸せになっちゃった」
「作ってくれた人にそう言われると、なんだか照れるな」
「食いっぷり、凄かったぜ、筧さんよぉ」
「白崎さんの作ってくれたタダメシだぁ。食わねぇわけにゃぁ、いかねーぜ」
「うふふ」
「あはははは」
「急に時代劇みたいな言い方して、ごめんね」
「いや、乗りやすかったから、楽しかったよ」
「……よかった」
白崎の笑顔の中に、ホッとした表情が混じっていた。
「元々、図書部の活動って、わたしのわがままで決まった話でしょ? 正直、迷惑じゃないか、心配だったの」
……迷惑と言えば、迷惑だ。
本を読むだけの部活であった図書部は乗っ取られ、俺は現に今、読みたい本が読めていない事実がある。
だが、白崎と過ごしているこの日曜の昼。
これが楽しい時であるのも、また事実だ。
「昨晩送った急なメールにもちゃんと答えてくれて、時間も作ってくれて、私のお詫びもちゃんと受けめてくれて。なんだか筧くんにしてもらってばっかりで、申し訳ないと私は思っているの」
「それは違うよ、白崎」
「え?」
「俺は自分の意志で白崎を手伝う事に決めたんだ。そこに後悔なんてないし、嫌だという感情なんてない」
「……」
「最初はゴミ拾い、次に人の恋路、さらには同級生の介護。今までじゃ体験出来なかった事を白崎に体験させてもらってる。しかも今度はビラ配り。白崎、俺はこの図書部が、俺たちの手によって成長しているのが、すごくうれしい」
「筧……くん」
「だから白崎、俺は白崎に感謝しているんだ。申し訳ないなんて思わなくて良いんだ」
「……!」
驚いた顔の白崎。
思ってもみない返事だったのだろう。
「……筧くん」
「なんだ?」
「ありがとう、ね」
「?」
「わたし、図書部を初めて良かったって、今、本当に思ってるの。手探りだし、依頼もまだ未熟だし、全然先は遠そうだし。実は毎日、結構不安なんだ。でも今、図書部は成長しているって事を知った。ううん、筧くんが教えてくれた」
白崎が立ち上がる。
「私、頑張りたいの。今はまだダメダメなのはわかってる。すぐに成果なんか出ないのもわかってる。でも、いつかきっと、汐美学園がもっともっと楽しく出来ると信じてるの。だから……」
白崎が、両手を広げる。
「だから、そこに筧くんもついて来て欲しいの。完全なるわたしのわがままなんだけど、筧くんと共に、汐美学園をもっともっと楽しく出来る方法を、さぐっていきたいの!」
「……」
俺は思わず手を伸ばす。
が、白崎は手をひっこめた。
「筧くん」
「……どうした」
「今はまだ、手を握って欲しくないの……」
「え?」
「今はまだ、筧くんについて来てもらう資格なんて、わたしにはないの。でも、いつか、この両の手を、筧くんに握って欲しい。だから、その時まで、とっておいて」
「……わかった」
「約束……だからね。でも、期限中にわたしがその資格を取れなければ、容赦なく、この手を払いのけてね」
「……あぁ」
「約束……だよ」
手と顔が、再び元に戻る。

chaosつぐみ


まるで天使――そう、羽根さえつけちゃえば、白崎は天使なんじゃないかと思うぐらいの明るい笑顔。
そして、今にもつかみたくなるこの朗らかな両手。
どこまでも真っ直ぐで、白崎にしか見えない未来を見ているような瞳。
だがその未来は、必ずこの手で現実にするんだ。
そんな覚悟も見て取れる。
白崎は、本当に不思議だ。
希望と覚悟、理想と未来、努力と困難。
これら全てを、この手で手繰り寄せ、握りしめ、実現する。
そんな事が、この恰好から読み取れる。
俺は未だかつて、そんな人を見た事あっただろうか……。

白崎の自分のお弁当を食べ終わる。
「さて、筧くん。私との約束は、これで終わりです。時間を作ってくれて、本当にありがとう」
「いや、こちらこそ礼を言わせてもらうよ。白崎と話せて楽しかったし、何より弁当が美味かった」
「えへへ、一生懸命作ってきた甲斐がありました」
「じゃぁ、明日、楽しみにしてるね」
俺はベンチから腰を浮かす。
「あ、筧くん、待って!」
白崎に呼び止められる。
「再びだけど、今日は本当にありがとう」
「こちらこそ」
「最初の方、覚えてる? わたしが焦って正門前で計測始めようとした時の事」
俺は首を縦に振る。
「あの時ね、わたしはどうやってこの失敗を挽回するかしか、頭になかったの。これから計測で苦痛な時間を与えちゃうし、お弁当は挽回のネタにはならないし。とにかくお話しして、計測の間、退屈な時間だと思わせないことにしたの」
白崎は、続ける。
「わたしは、気の利いた事なんて話せなかった。なんでまた計測をしないといけないか、不思議に思わせないための話ぐらいしか出来なかった。でも、筧くんは嫌な顔一つせず、私に従てくれた。それで本当に助かったの」
更に続ける。
「わたしは思ったの。あぁ、これが真の気遣いなんだな、って。その後、お弁当であんなに褒めてくれて。更に、『図書部の活動がうれしい』って言って、私を元気づけてくれて」
俺にはその意図はない……が、結果的に、白崎にはその何気ない行動が、救いになったようだ。
「わたしは、さっきも言ったけれど、筧くんと共に、汐美学園をもっともっと楽しく出来る方法を、さぐっていきたい。そして、筧くんと一緒に、汐美学園をもっともっと楽しい学園にしたい。その為に必死に頑張ります!」
「……期待してるよ」
「まずは見てて、ビラ配り、絶対に楽しいものにするから」
「どうだかなぁ~。イマイチ、信じられないなぁ」
「絶対に大丈夫! 必ず、楽しいものになるから!!」
「わかった。明日、楽しみにしてるよ」
「それでは筧くん、じゃあね~!」
白崎はこちらに向かって大きく手を振ると、背を向けて走り去っていった。
その白崎に向かって小さく手を振る。
ふと、白崎といた自分は、普段の自分と違うことに気が付いた。
自分はもっと他人に無関心で、暗い奴だ、と。
「……」
自分は今回、白崎といる時に変わることが出来た。
それは、まぎれもない事実だ。
たまたまなのか、はたまた……。
以前感じた、『白崎の魅力』。
本には載っておらず、そして俺に備わっていないもの……。
それは、『人を積極的にする能力』……なのだろうか。
白崎と積極的に話そうと思ったし、何より、白崎を積極的に助けてあげたかった。
沈みかけの白崎を救ってあげたくて仕方なかった。
これが正解かはわからない、が、白崎の理解しがたい部分が少し、見えた気がする。

帰宅して、思う。
今日は、楽しい一日だった、と。
一日中本を読んだ満足感とはまた少し違う満足感を、今の俺は持っている。
それをくれたのは、まぎれもなく白崎……。
だが、同時に、別の感情も芽生えていた。
『これ以上、白崎に関わってはならない』
自らが持つ防衛本能が、そう続けている。
とりあえず、GWまで――
俺は、この問題に向き合っていくとしよう。


END



いかがだったでしょうか。

前半、ずいぶん語ったので、こちらではあーだこーだ言いません。
「こんな没シーン、あったかもしれないね」
そう思っていただければ、それに代わる喜びはありません。

米原

※誤字とかあったらあとでゆっくり直します。 

大図書館の羊飼い 御園千莉誕生日 SS Ver. 2016 赤と白の誓い

大図書館の羊飼い 御園千莉誕生日 SS Ver 2016 赤と白の誓い

日曜日の夜に到来した寒波は、月曜日の午前中に、街に雪をもたらすほどだった。
それゆえにどうしても、『寒い寒い』ばかり言ってしまう。
だがそれは、この部屋の中では禁句のようだった。
「寒い寒いって、そればかりで……ぶつぶつ」
今週ずっと、千莉は不機嫌である。
今思えば、千莉はこっそりと部屋の暖房を入れてくれていたり、体が温まる食事を作ってくれていた。
……授業や部活を、早引けしてまで。
だがそんな努力も、気がつかれなければ意味がない。
もとい、俺が気がつくことがなかった。
それが現在の、"寒さ"の影響である。
「自業自得、だな」
「とは言っても、本当に寒いじゃないか」
「筧が逆切れたぁ珍しい。それだけ、報いを受けていそうだな」
高峰に、鼻で笑われる。
俺と千莉のバカップルぶりを見てきた高峰にとって、すーっとする出来事なのかもしれない。
「で、俺に何のようだ?
「あぁ、千莉の機嫌をとるには、どうしたら良いものかと……」
「それをこの俺に聞くたぁ、自棄が回ったか、あん?」
俺が図書部の一員である千莉と付き合うことになったうえ、千莉が見せびらかすかのように高峰の前でいちゃつくので、高峰の態度は冷たくて当然だ。
しかし、今俺が頼れるのは高峰しかいないのも。また事実である。
「高峰、このとおりだ。何とか知恵を貸してくれ」
「いや、ねぇ。そう言われてもさぁ。おれっちだって経験ねぇよ」
「……」
「な、なんだよその目は」
「早とちりした俺が、馬鹿だった」
「はぁ?」
「俺はてっきり、普段から千莉が高峰をからかっているから、いい気味だと思ってるのかと思ったよ」
「俺はそこまで白状じゃない。友人が困っているんだから、助けるってのが筋ってモンよ。あと、あれは千莉ちゃんが俺をからかってるだけ。何だかんだ言って、楽しいぜ」
「……」
「な、なんだよその目は」
「高峰……もしかして、千莉にからかわれて喜んでないか?」
「そりゃ、喜ぶだろ?決して手を出してはいけない美女にからかわれる。こんなにおいしいことはねぇぜ!」
「……」
「な、なんだよその目は」
「……なんでもない。さ、本題に戻ろう」
「筧……もしかして、怒ってねぇか」
「怒ってはいないぞ」
「じゃぁあれだ……不機嫌。顔が千莉ちゃんによーくにてるぞ、ホラホラ」
無理やり俺に鏡を見せようとする高峰の奥に、明日の主人公が、引き寄せられるかのように現れた」
「誰が、不機嫌そうな顔なんですかね?センパイ♪」
高峰の顔が、音を立てて回っていく。
「……これはこれは、御園さん……コンニチハ」
千莉はにっこりと笑うと、高峰の顔に何かを押し付ける。
「あーっ、ウェイトレスさーん!この人、食堂に猫なんか連れてきてますよー!」
流石は歌姫、声が良く通る。
「さっ、行きますよ、先輩」
千莉に引っ張られるように、俺は食堂を後にした。
高峰の顔に押し付けられたギザは、何故か高峰の顔に引っ付いている。
「あらあらあらあら」
顔は笑顔なのに、なぜか血管が浮き出ている小さな女の子が、ゆっくりと高峰に向っていく。
手には何故か小型のマシンガン。
そういえば、以前、あれに撃たれたな……。
そんな嫌な思い出が、頭の中をめぐる。
「うわっ、ぶへっ、ちょっと気持ちよかったけどさぁ、なんかこう、男の象徴みたいなのも一緒に見え……」
ようやくギザが取れたようだが、開放された高峰の前には、地獄が待っていた。
「いや、これでっち上げだから。俺、何も悪いことしてないから!」
「言い訳無用―!」
「うぎゃーっ!」
けたたましい機械音とともに、見苦しい男の叫び声が、食堂中に響いたのであった。

千莉に連れられ、自分の部屋に戻る。
「もう、センパイ。あんなに恥ずかしい相談、しないでください!」
「ごめんごめん。自分の欠点を振り返るには、高峰と相談するのが一番なんだ」
「……それ、本当なんですか?」
「あぁ。なんだかんだ、あいつと話すと、自分を客観的に見られ、問題点が良くわかるんだ」
「ふーん」
千莉は納得していないようだった。
「と、とりあえずさ。高峰と話して、千莉がどれだけ俺のことを気遣ってくれていたか、よくわかったよ。千莉、感謝してる」
「……高峰先輩とお話しするまで、本当に気がつかなかったんですか?」
「千莉がウチに出入りするようになってさ、あの日常が当たり前になってしまって……本当にごめん」
「……じゃぁ、先輩には、それ相応の罰を与えなくてはならないですね♪」
期待のまなざしを向けながら、千莉は俺の腕に絡み付いてくる。
「それを受けなくてもいいように、ちょっと手を回しておいたよ」
「え?」
「そろそろ、到着してくれるかな?」
ピンポーン
「え?え?」
「ちょっと出てくるね」
俺ははんこをもって、玄関まで赴く。
「おまたせ~」
「……いったいその後ろに隠してあるものは何ですか?」
「迷惑かけた、千莉へのお詫び」
「プ、プレゼントで私を釣れると思ってるんですか?」
「さぁ、ね」
そういいながら、俺は隠していたプレゼントを千莉に差し出す。
「白椿……の花束?」
「千莉に申し分ない魅力があるのを証明しようと思って」
「は、花言葉ってやつですね。白椿の」
「そうだよ」
「け、結構キザなんですね、先輩って」
コンクールで花束をもらうことはあっても、日常生活でもらうことはなかなかないだろう。
やはり、ずいぶんとうれしいようだ。
「それと、誕生日プレゼントは、日付をまたいだらね」
「……今見せてくれたら、機嫌直してあげます」
唇を尖らせながら欲望を殺しながら千莉は言った。
だが、こればっかりは、その日まで見せるわけにはいかない。
「そら、我慢我慢」
「ちょっと先輩、子ども扱いしないでください」
「あはは、千莉があまりにもかわいくって」
「……じゃぁ、ヒントくれたら機嫌を直します」
「そうだなぁ。もうひとつ、日付にちなんだものだな」
「これだけ教えてください。その色は、赤、ですか?」
「……そうだね」
「わかりました。明日まで待ちます」
「おや、潔い」
「でもその代わり、日付が変わると同時に、私にくださいね。遅れたら、承知しませんよ!」
プレゼントは、千莉の誕生石であるガーネットの指輪。
この石は、相手との愛を深め、苦難に耐えて目的を達成することが出来ると言われている。
今後、どんな困難が訪れようとも、二人で乗り越えていく。
そんな"誓い"を、千莉の誕生日に、俺はしたい。

大図書館の羊飼い 御園千莉 SS 静かなる反逆

こんにちは。米原です。

もはや恒例ともなりつつある、藤原のあ様の描かれた絵をシナリオ化するこの企画。
今回はついに千莉ちゃん登場です!
バンザーイと思ったら束の間、全身佳奈すけって!

どう考えても、我々の世界と羊飼いの世界をごっちゃにしないと成り立たない設定。
アレコレ考えて、とりあえずこうなりました。

それでは、お楽しみください。



大図書館の羊飼い 御園千莉 SS 静かなる反逆


時の流れというのは残酷だ。
刻々と変わる時間を戻すことは出来ないし、進めることも出来ない。
一秒は一秒なのに、その時々により、長くも短くも感じる。
今日のこの時――
その「残酷さ」を感じた者は、一体何人いたのだろうか。

「時間だ」
"カチッ"と鳴った時計の音に合わせ、桜庭がつぶやいた。
「皆、準備は良いか?」
白崎、御園、鈴木、小太刀。
四人の少女が、覚悟を決め、首を縦に振る。
「それでは皆覚悟を! ……えいっ!」
部屋に響いたクリック音と共に、画面が変わる。

1位 : 鈴木佳奈 / 13704ポイント
2位 : 小太刀凪 / 7796ポイント
3位 : 桜庭玉藻 / 5674ポイント
4位 : 嬉野紗弓実 / 5412ポイント
5位 : 白崎つぐみ / 4861ポイント
6位 : 御園千莉 / 4807ポイント
7位 : 望月真帆 / 4728ポイント
8位 : 芹沢水結 / 4087ポイント
9位 : 白崎さより / 1136ポイント
10位 : 多岐川葵 / 951ポイント

「おおおおおっ!」
女性陣が皆、一同に声を上げる。
既に中間発表では、一位二位の予想がされる程の票を集めていた鈴木、そして小太刀が、ワンツーフィニッシュを決めた。

「おめでとう、佳奈ちゃん」
「おめでとう、鈴木」
「やったね、佳奈」
「ぐぬぬぬぬ、この私が負けるなんて……」
「い、いやぁ……何だか照れるなぁ……」
皆から祝福を受ける鈴木。
その顔は、嬉しさもあるが、少し複雑そうな顔だった。
「しかし、一体誰がこんな事始めたんだろうね」
鈴木の顔が複雑そうに見えたのは、白崎のこの一言に凝縮されていた。
あの嬉野さんですら特定できなかった、人気投票の発信源。
しかも、我々からは一切投票出来なかった。
どこか、別の世界の人々が我々に投票――
そうとしか思えないような結果が、画面には映し出されていた。
薄気味悪いったらありゃぁしない。
だが、これは、現実なのである。

数日後。
街で会った御園は、とんでもない恰好をしていた。
「み、御園! なんだその格好は!」
「あ、筧先輩。おはようございます」
CWMQNgsU4AUx_XU

全身、鈴木だらえけ。
正確には、Tシャツ、マフラーバッグ、キーホルダー、挙句の果てにはスマホカバーまで鈴木だった。
「かわいいでしょ?」
「か、かわいいって……」
普段、ビシッとした格好をしている御園がこんな格好をすると、確かにギャップがあり、似合うように見える。
これが動物だとか、何かのワンポイントならば、まだわかる。
だが、そのワンポイントはすべて鈴木。
まるで、アイドルオタクが全身でアイドルを応援しているように見える。
「佳奈推しです」
「は?」
「私、投票出来なかったけど、もし投票出来たら佳奈に投票しました」
「は、はぁ……つか、それ何処で買ったの?」
「オンラインショップです」
御園は、スマホの画面を見せてくれた。
そこには、図書部の女性陣、それに望月さん、芹沢さん、嬉野さん、さらには以前図書部に依頼に来た土岐さんと藤宮さんのグッズまであった。
「全身水結にしようとも思ったのだけど、あるのは財布だけ。佳奈みたいに沢山なかった」
一体、なぜこんな事になっているのだろうか。
目が回ってくる。
「あ、そう言えば」
御園は嬉しそうにスマホをいじる。
「……御園、お前、スマホ持ってたっけ?」
「これ、佳奈のスマホケースを買ったので買いました」
「わ、わざわざ……」
「だって、使いたかったんだもん。あ、先輩、コレです、これ」
「……」
俺は、今、人生で一番ショックを受けた。
儀左右衛門の置時計なんて、誰得なんだよ……。
「佳奈の時計とどっちにするか迷ったのですが、結局両方とも買っちゃいました♪」
「はぁ……」
本当にめまいがしそうだ。
「それでは先輩、今から佳奈と買い物なので」
「お、オイオイ、そんな恰好で鈴木と会うのかよ」
「はい。私の佳奈愛を、本人に見てもらいたいので」
「……お前、自分が図書部員の中で最下位で、鈴木が一番だったからって、ひそかに嫌がらせしようとしてないか?」
「さぁ、どうでしょうね?」
御園はすました顔で背を向けると、街中へと消えていった。

「筧さん」
本屋で本を吟味していると、声をかけられた。
「……芹沢さん」
「こんにちは」
「こんなところで会うなんて」
「珍しい、ですか?」
「あまり図書館でも会わなかったし」
「そうですね。でも、本屋は練習台、豊富なんですよ」
手にしていたのは、腹式呼吸の本と、子供向けの童話。
「発生方法を学びながら、様々な声で一つの本を読めるようになるのが、声優としての成長を促します」
「なるほど」
「筧さんはもう、本を選び終わったのですか?」
「あぁ。予算内で吟味した結果がこれ」
「5冊も……。ジャンルは、推理小説、歴史小説、お笑い芸人の自伝、ビジネス書、政治研究の本……。バラバラですね」
「読めればいいんだよ。読めれば、はっはっは」

たわいのない話をしながら、レジに並ぶ。
「あれ、その財布……」
「あ、気が付きました?千莉の絵が入った財布です」
「そういえば、御園は鈴木の……」
「あの子、やっぱり……」
「……」
"墓穴を掘った"
俺はそう思った。
だが、時は戻らない。
御園の幸運を願うことしか、俺には出来なかった。

翌日。
俺は部室に行くのをためらってしまう程であった。
だが、御園が心配だ。
意を決して、部室に入る。
いつも通り。
「うーっす」
「筧君、お疲れさま」
「お疲れ、筧」
「お疲れ様です。筧先輩」
「筧さん、お疲れ様でーす」
「あ、うるさいのが来た」
「なんで小太刀が?」
「いちゃ行けないの?」
「そんな事はないが」
「もう、別にいいでしょ?あの投票があって以来、私のグッズ持ち歩いている人がチラホラいて、気持ち悪いったらありゃしない」
そういえば、御園にサイトを見せてもらった時、凪のグッズも多かったっけか。
「ところで先輩」
「どうした御園」
「今日、部活に遅刻してきましたね?」
「いや?確かに一番遅く来たが、時間通りだと思うが?」
「いいえ、立派な遅刻です。そんな時間の管理が出来ない筧先輩には、こちらをプレゼントします!」
「ぶぶっ」
ギザの時計だった。
「時間は大切にお願いしますね、筧先輩」
「ハ、ハハハハハ……ありがたく、もらっとくわ」
やはり、御園は芹沢さんとひと悶着あったのだろうか。
この小さな仕返しは、俺にとってはものすごく大きな仕返しに感じる。
時間が、水に流してくれるのを信じよう。
それしかない……それしか。


END



いかがだったでしょうか。
もう書いてて意味不明な約2500字です。
とりあえず、ギザ時計が誰得な印象が強かったので、「時間」という観点から攻めてみた結果です。

ちょっと佳奈に嫉妬する千莉に嫉妬する水結も書いておきました。
水結ちゃんグッズも多く出てれば、もう少し違う話もかけたのですが、現状だとこれがせいぜいかなと。

やっぱりこういうのは4コマにしたいですね。
でも絵が描けないのでムリ。
リンゴすら描けない私にとって、絵描き様は本当に羨ましいです。
私も、小さな悪戯やってみようかなぁ。

米原

大図書館の羊飼い 白崎つぐみ SS 本当の出会い

こんにちは。米原です。

今日は、12/3(木)に、藤原のあさんがツイートしてくれたつぐみのイラストを題材にします。

最初は生徒会長として交渉事に出かけたつぐみが、その帰り道に見つけた可愛い冬の装いを気に入ってしまい、学校に帰る。
それを当然、周りも気に入って~、という話を考えていました。
しかしながら、

・この季節に着込んで外出しないのがおかしい。
・(上記に関連し)買った店で買った服に着替えたとして、着て行った服はどうしたのか。
・昼間(授業中)に校外に交渉に行くのはありえなくはないが、成績がそこまでよくないつぐみに痛手にならないのか。
・(上記に関連し)放課後の交渉ではダメなのか。真帆が遅くまで学校にいる理由は、それではないのか。

等々、合わせねばならない辻褄が多々あるワケです。
大図書館の羊飼いは、つぐみが二年生の時の一年を書いているわけですから、どのルートに転んでも生徒会には入るわけで。
十二月は、生徒会活動と切っても切れない関係になります。
そろそろ、花いっぱい活動の用地問題も済み、植える頃になる……のかなぁ。 

それならばいっそのこと、つぐ玉コンビの一年生の時を書いた方が良いのではないかと思いました。
当然、この頃からあった、運命の出会いのキッカケを入れて。

これは、大図書館の羊飼いで書かれなかった、我々が知る羊飼いの世界が始まる前のお話です。
オリジナル要素が多いかとは思いますが、可能な限り辻褄を合わせました。

お楽しみください。



大図書館の羊飼い 白崎つぐみ SS 本当の出会い


秋と冬の境目は何処からなのだろうか――
白崎つぐみはふと、そう思った。
街行く可愛い女の子たちは皆、冬の装い。
でも、街の木々はまだ紅葉しきっておらず、秋の景色だ。

そんな街の入り口に、ひときわ目立つ、大人びた少女。
白崎とは違う、いや、全てが正反対とも言える彼女の名は、桜庭玉藻。
噂には、良い所の家系だとか。
白崎は、そんな憧れの存在とも言える人と、放課後、買い物に来た。

街は、クリスマスムード一色。
『私に男の子はいないけど、もっと大人になったら。今は自分を磨こう』
だから今年は、玉藻ちゃんと、共に――
そう思いながら、白崎は、桜庭に声をかけた。

「玉藻ちゃーん!」
「おー、やっと着いたか、白崎」
「ごめんねー、待たせて」
「いや、仕方ない。今日の授業は二人別々だったし、あの先生は、授業時間無視で有名らしいな」
「そうなのそうなの!この前も、平気で30分延長したんだよー!次の授業が無いからって、こっちの予定が狂っちゃう!」
「……どうやら、他の授業時間に支障が無いように、一番最後の時限のみ授業をしているという噂は、本当みたいだな」
「玉藻ちゃーん、どーしよー!」
「どーするも何もないだろう。諦めるしかない」
「でもでも、玉藻ちゃんとの時間が減っちゃうよぉ……」
白崎は桜庭に甘える子供のように抱きつき、胸の上で嘆く。
「お……おおお……おい白崎、こっ、ここは公道だ。はっ、恥ずかしいからやめよう!」
桜庭の顔は、散りゆく落ち葉よりも真っ赤になっているのだが、白崎は全く気が付かない。
「ほっ、ほら、かっ、買い物の時間が無くなるぞ。早く、行こう」
「あっ、う、うん……そうだね」
白崎の目尻に輝くモノを見た時、桜庭は再度、『白崎を幸せにしたい』と思った。

師走の街は、思ったよりも赤かった。
女性のコートと言えばもっぱら、グレーやベージュが多いのだが、クリスマス前という事で赤が目立っていた。
その街に降り注ぐ夕日が、よりそれを強調させる。
二人の目的はおのずと、自然の流れにそそのかされるかのように、決まっていた。
「なぁ白崎。今日の目的は、防寒具、だったよな」
「うん。せっかく新入生になったんだから、今年の季節は毎回新しいモノを堪能したいなって」
「うん、うん。私もわかるぞぉ、その気持ち。でだ。色なんだが……」
「うん。手袋とかの小物は、赤にしようかな……って」
「それだ。私もそう思った。制服が白を基調とした、赤いラインが入っているのだから、マフラーと手袋も赤にしよう。
「コートは、どうしよっか?」
「本格的な冬と言うのは、1月の終わりから二月の始まりだ。それに、年内ではなく、年始に買ったほうが安くなる」
「寒く……ないかなぁ」
「服というのは、『口』を閉めると寒くないのだ。まずは、袖口と襟口を閉めよう。それでも寒かったら、考えよう」
「わかった。試してみるよ、玉藻ちゃん」
素直な白崎が見せる屈託の無い笑顔に、桜庭は自らの赤いモノが出て来そうになりながらも、何とかこらえることが出来た。

ショーウィンドウに写る色は、やはり、想像した通りだった。
近年は、クリスマスパーティにも、コスプレ衣装にも、はたまた日常使いにも使えるような、可愛らしいサンタ帽子が流行っているという。
クリスマスらしい防寒具をまとったマネキンが、二人の想像力を働かせていた。
「赤……赤かぁ……。網目模様が入った女性らしいモノにするか。あるいは、女の子らしく、ハートマークがおおいモノにするか。はたまた、ここはあえてシンプルなモノにするか……」
「た、玉藻ちゃーん!声に、声に欲望が漏れてるよぉ……」
「すっ、すまない、白崎。決して、白崎を着せ替え人形のように楽しんでいたわけではないぞぉ。私のお勧めは、これだ!」
玉藻が選んだのは、チェック柄の手袋とマフラーのセットだった。
「えっと……あ、これ。制服と近いチェック柄だね」
「うむ。これなら制服とマッチすると思うぞ」
「お値段は……2480円か。うん。全然高くないし、良いと思うよ、玉藻ちゃん」
「だろう?私だってただ単に妄想していたわけではないのだ」
エッヘン、と胸を張る玉藻。
やはり、白崎にとって、桜庭は頼りになる存在だった。
「じゃぁ、これにするね」
「おっと、白崎。これは私のクリスマスプレゼントにしてくれ」
「えぇっ?」
「その代わりと言ってはなんだが……今年のクリスマスは、私と一緒にパーティをして欲しい。そして、その時に白崎の手料理、食べたいんだ」
「うん、もちろんいいよ、玉藻ちゃん。私でよければ、喜んで」
「よかった。それでは」
桜庭は、白崎から手袋とマフラーのセットを受け取ると、レジへと向かった。
『これが、私から白崎への最初のプレゼントになるのか……』
一か月前の11月1日。
白崎からもらった、赤い小さな簪に手を添えながら、桜庭はそうつぶやいた。
『今回、良い口実が出来て、良かった』
桜庭にとって、お返しに148日も待つのは、相当つらかったのである。

「はい、白崎。お待たせ」
「ありがとう。玉藻ちゃん。でも、ラッピングまでしてもらう必要は、なかったかな?」
「すまない。なんとなく、プレゼントなのだからという理由で、頼んでしまった」
「そっか。それで……ラッピングがもったいないけど、早速着てみても、良いかな?」
「あぁ」
白崎は丁寧に包装を剥がす。
そして、マフラーを首に一巻きし、手袋をはめる。
「おぉぉ……」
CVSzl_RUEAAKNv8
桜庭は、思わず声を漏らした。
それほどまでに、白崎に似合っていたのである。
制服の柄に似たマフラーは、学校指定なのかと思わせる程にマッチしていた。
「どう……かな」
「似合うぞ、凄く似合う」
「えへへ、良かった」

日が沈むにつれ、風が少しずつ、強くなっていった。
姉妹のように仲の良い少女二人は、今日の思い出を胸に、いろいろなことを話しながら、街中から帰宅の途についていた。
その頃。
その二人に負けず劣らずの男コンビが、学校から街中に向かい、歩いていた。
「よぉー、よぉー、筧ぃー。買い物に行くってついてきたら、本買うだけかよぉ」
「何度もそう説明しただろうが。『女の子と出会いがあるかも』とついてきたのは、何処のどいつだ」
「そ、そりゃぁ確かにぃ。そんなことを言ったこともないかもしれないけどぉ」
「とりあえず、俺の今日の目的は、貸し出し中で手に入らなかった本を買うこと、以上。後は高峰の好きにすればいい」
「よっしゃぁ!じゃぁ、清楚な読書女子、見つけるぞぉ!」
「ハァ」
あきれ顔の筧と、変な喜びを表す高峰。
その二人の先に、二人の少女が映った。
制服は同じ。
汐美学園の生徒だ。
一人は茶色の長い髪で、首に赤いマフラーを巻き、赤い手袋をしていた。
もう一人は、黒の長い髪を、ポニーテールで結んでいる。
見た瞬間『親友』と判断できる二人が、筧と高峰の脇をすれ違っていく。
「なぁ、筧。どっちが好みぃ?」
「そんなのどっちでもーー高峰、後は頼んだ」
「後は頼んだってオイ、筧!」
走り出す筧。
あっという間に二人を抜き、その先の角を左に曲がる。
「チッ、何なんだアイツは?」
高峰もそのあとを追う。
高峰もその角を曲がると、筧は自転車に乗った男と言い争いをしていた。
「急に曲がってぶつかってきたのはそっちだろうが」
「自転車も車両の一種だ。スマホを見ながら乗っているからこういう結果になるんだろう!」
「はーん……なるほどなるほど……」
高峰は、全てを察知した。
「玉藻ちゃん、あれ……」
「おいおいなんだ?喧嘩か?片方はうちの生徒みたいだな」
「あぁお嬢さん方。これ、今お芝居の練習してるの。だからささ、直進した直進」
「なんだぁ、そうだったんだぁ」
茶髪の女の子は、心底、安心した表情を見せた。
「怪しいなぁ……君、本当にそうなのか?」
黒髪の女の子は、疑いのまなざしを見せてきた。
「そうだともそうだとも。ささ、邪魔しないでね」
「とは言えど……」
「ま、仮に芝居じゃなくてもケガしてないでしょ?明らかに大ごとじゃない。だから心配しないで。って言うより、練習の邪魔しないで頼むから!」
「た、玉藻ちゃん、邪魔しちゃ悪いから、行こう?」
「お、おぅ……」
高峰は、二人が直進したのを確認すると、一目散に筧の傍に駆け付けた。
「筧、大丈夫か」
「あぁ。なんとか」
「誰だてめぇ」
「目撃者って言ったら、どうする」
「あぁ!?」
自転車の男は、少しうろたえる。
「この夕刻に無灯火で、しかもスマホ片手についでにたばこ。こりゃ、警察呼んだらどうなるか、わかってるんだろうねぇ」
「チッ……」
「こっちとしては、何か取引しようってんじゃない。これに懲りて、危険運転をやめろって言っているだけだ。どーしてもやめらんねぇってんだったら、仕方ない。通報するしかないね」
「わーったよ」
分が悪いと感じたのか、男はタバコの火を消し、自転車のライトのスイッチを入れ、スマホをポケットに入れると、その場から去っていった。
「ふぅ。助かったぜ高峰」
「オイオイ、無茶すんなよ。ありゃ、どー見ても自転車に自らタックルしに行ってるぜ」
「すまない」
「で、何が見えたんだ?」
「茶髪の子、赤いマフラー巻いてたろ?あのマフラーを、自転車のハンドルが巻き込む。さらに、タバコの火でだんだんとマフラーが焦げていく」
「……地獄絵だな」
「あぁ。この身を多少犠牲にしても、守らなきゃって思ったんだ」
「ま、当の本人は今頃、知らん顔だろうけどな」
「それでいい。俺は正義のヒーローでも何でもない」
「これじゃ、骨折り損のくたびれ儲けだな」
「世の中は、不条理なんだよ」
「ほー、またどこかで聞いたような言葉を」
「まぁ、彼女が無事でよかった。百害の中に一利ぐらいあったさ」
「一利どころじゃねーよ。ホンッと、おせっかいだな、お前は」
「生まれつきさ。行くぞ」

こうして、誰の記憶にも残らなかった本当の出会いが、一瞬にして終わった。
年が明け、桜が散り、春らしさが本番となる4月19日。
遂に、運命の針が動き始めるのである。
これが序章であることを証明しながら。


END


いかがだったでしょうか。

この作品、出来上がってさぁ載せようと思ったら、PCフリーズにより、書き直しとなりました。
何とか気を取り直して、記憶を頼りに書き直したのがこちらです。
前よりも良いような、悪いような。
とにかくお楽しみいただけてたら幸いです。
いくら骨格があり、記憶に新しいとはいえド、4千時を復帰させるのは、結構骨が折れました……。

なお、文中に出てくる"148日"は、桜庭と白崎の誕生日の間の日数を示しています。
11月1日生まれの桜庭に対し、白崎は3月29日。
桜庭は誕生日プレゼントを白崎からもらっても、お返しするのに148日待たなくてはならないのです。
義理堅い桜庭の事だから、今すぐにでもお返しをしたい。
でも何の理由もなしに、お返しは出来ない。
ならば、ということで、マフラーと手袋をクリスマスプレゼントしたという設定になっています。

後半部、筧と高峰の登場ですが、筧は羊飼いの能力がかすかにある為、忘れやすいのではないかと思い、この設定に矛盾はないと判断しました。
また、日の入り間近という設定のため、どんな顔だったのかもわかりづらいのではないかと。
じゃー高峰は?一番二人と話してたよ?と思うかもしれませんが、一度街であっただけの顔を、3カ月後に覚えていられるとは思いません。
よほど印象に残らないとね。

ちなみに、ですが、下記に,挨拶部でお話しした、ボツになった冒頭の出だしを書いておきます。
ここまで書いてから、矛盾が多くて断念致しました。
個人的には、『ありったけの思いを込めて風に飛ばす』という表現が気に入っています。
つぐみなら本当に、しそうです。


<Another View ―白崎つぐみ―>

秋と冬の境目は何処からなのだろうか――
私、白崎つぐみはふと、そう思ってしまった。
街行く可愛い女の子たちは皆、冬の装い。
でも、街の木々はまだ紅葉しきっておらず、秋の景色だ。

信号の色が青くなり、一気に動き出す人の波に流されながらも、私は目的地に着いた。
今日は、まだちょっぴり苦手な交渉事。
生徒会主催の年末パーティー開催に使う、食料の調達。
皆から預かったお金なのだから、出来るだけセーブしたい。

『頑張って来るよ、京太郎君――』
部屋で私を、いつまでも優しく待ってくれる彼に、ありったけの思いを込めて。
風に乗せて飛ばしてみた。
きっと届く、そう信じて。

<Another View ―白崎つぐみ― END>


「はくしゅっ!」
「お、京太郎、風邪かぁ?」
「高峰、くしゃみ一つで風邪扱いするな」
「なんだよ~、心配してやってるんじゃないか~」
「心配なら別のことをしてくれ」
「具体的には?」
「当然、つぐみの!」
「あ~、はいはい。そうですね」
高峰が白けた。
「いいねぇ、いいねぇ。そーやってせーしゅん出来る身分がいいねぇ」
「お前だって、い、いたんだ……ろよ」
「……今いなけりゃ一緒だぜ」
「……だな」
「で、つぐみちゃんはどうなんだよ」
「どうって……」
「ちゃんと出来そう、なのか?」
「あぁ、頑張るってさ。……風の便りだけど」
「はぁ?人づてって事?」
「いや……何となく、風に乗ってそう聞こえたんだよ」
「お前……大丈夫か」
バカップルだ!とでも言いたそうな高峰の顔は、冬の風よりも痛かった。


オーガストのコミケ情報、発表されましたね。
もう少しだけ、ワクワクしながら、待ちましょう。

米原

大図書館の羊飼い 放課後しっぽデイズ 土岐のぞみ SS 夢の中の私

こんにちは。米原です。

今日はすんげぇ汚くなった私の部屋を掃除しつつ、twitterを覗いてみたら、藤原のあさん(@komesarada)が美化委員メイド服ののぞみちゃんを描かれていました。
一言、かわいいっ!
当然、病気は始まるものです。
約1時間で2500字即興SSを制作致しました。
のあさんの許可も取りましたので、美化委員メイド服のぞみんを挿絵にしたお話を描かせていただきました!

それでは、お楽しみください。



大図書館の羊飼い 放課後しっぽデイズ 土岐のぞみ SS 夢の中の私


猫写真部での活動の傍ら、時折、私の視線は猫以外の方へ向いていた。
桐島慶。
私の同級生にして、幼馴染である。
「……ハァ」
私は、誰にも気づかれないような小さなため息をついた。
慶は今、猫に夢中である。
いや、正確には、猫の写真を撮ることに、である。
それはそれで、問題ない。
だが問題は、強力なライバルが出現したことだ。
藤宮朔夜。
私たちの友人である。
友人だからこそ、いや、女同士だからこそ、わかることがある。
朔夜は、絶対、慶のことが好きだ。
どうしよう……。
慶が朔夜に取られるのは、嫌だ!
でも、それ以上にもっと嫌なことがある。
自分の気持ちを朔夜に隠していること。
……もし私が慶と付き合えたとしたら……朔夜が傷つくこと。
それと、朔夜を一人にしてしまうこと。
どう転んでも、私は朔夜を傷つける。
ならばいっそ……あきらめてしまうことも、一つの手だ。
私は一度、フラれているのだから。
「慶ちゃーん、写真を撮ると、どうしても画像が荒くなるんだけど……」
「どれどれ……ってISO上げすぎだよ、12600って使いすぎ」
「でもでも、シャッタースピードを上げると暗くなるからって、慶ちゃんが……」
「それでも限度ってモンがあるよ。ISOは今だと……そうだな、400あれば十分」
「シャッタースピードは?」
「いくら猫がすばしっこくても、とりあえず250あれば十分だよ」
「そっかぁ、私、出来るだけボケのない猫ちゃんを撮ろうとしてから、4桁の数値をつかってた」
朔夜の家にあったという高級一眼レフの操作がきっかけで、慶と朔夜は仲良く談話を続けている。
コンパクトデジタルカメラの私では、出来ない話だった。
「……」
慶と朔夜の距離は、どんどん近づいている。
……どうしよう。
何か、策を……。

翌日。
私は補習があると嘘をつき、部活をサボった。
何か目的があったわけではない。
ただ言うならば、慶と朔夜が仲良くしているのを見るのが、辛かっただけだ。
「ねぇねぇ、今日おいしいって評判のアイスクリーム屋さんが出来たの、一緒に行かない?」
「行く行く~」
正門では、女の自分の目から見ても可愛いと思う女の子が、青春していた。
仲の良い女の子と一緒に、甘いものを食べに行く。
敵意を持たずに、笑顔で。
これぞ、友情である。
……正直、今の私は、親友であるはずの朔夜と、そんな事なんか出来ない。
何だか、どんどん自分が嫌いになっていく。
「……」
私は、その女の子達に惹かれるように、街へ繰り出した。

女の子たちは私がついて行っていることに全く気付かず、いろいろな話をしていた。
勉強のこと、趣味のこと、最近の流行、ファッション。
全てが、女らしかった。
……彼氏や好きな男の子の話題が出なかったのは、幸いなのかもしれない。
ドンッ
「きゃっ!」
「あ……す、すみません」
女の子グループの一人にぶつかってしまった。
ぼーっとしていて、彼女たちが止まったことに気が付かなかった。
彼女たちは、アイスクリーム屋さんの列に並んでいたのだった。
私は謝り倒し、そして逃げるように走り出した。
……もう、ヤダ。
息切れしたところで足を止め、ハンカチで汗をぬぐう。
「あ……」
顔を上げると、そこは、お洒落な洋服店だった。
どの服も、すごく可愛い。
「こんな服を着られたら……」
直ぐ妄想が、頭に浮かぶ。
「いらっしゃいませ、是非ともご覧になってください」
にこやかな笑顔の女性店員が、私をもてなしてくれる。
「え……あの……」
「どうぞ、ご遠慮なさらず」
私はその甘い言葉に耐えられず、中へと入ってしまった。

「本日は、なにかお探しですか?」
特にない――
そう言いたかったが、私の口からは本音が出ていた。
「好きな人を、振り向かせたいんです……」
「あらぁ、そうですか」
その女性店員はまるで自分の事のように喜んでくれた。
「お客様は背も高く、スタイルが良いので、大人びた服の中に、ちょこっと可愛さのある服なんかいかがでしょうか」
店員があれこれ勧めてくる。
「あ、で、でも……学生なので高い服は、ちょっと……」
「あ……そうでしたね、ごめんなさい」
私の常套手段が決まったのか、店員さんに謝られた。
「い、いえ……私、好きな人の仲良しさんが小さくてすごく可愛らしいだけじゃなくて、料理上手なので、ちょっと焼いてまして……ハッ!」
しまった!
また、余計なことを言ってしまった!
「あら、それでしたら」
店員は一つの服を取り出した。
「こちら、ぜひご試着なさってください」
店員に勧められるがまま、更衣室へと進んでいく。
一体、私は何をしているのだろう。
「これならきっと、好きな方を振り向かせられますよ」
「はぁ……」
もう、こうなったらヤケだ。
大丈夫、無駄に背の高い私の体形に合う服なんて、そうそうない。
着るだけ来て、サイズが小さいとか言って、断ってやろう。
そう思って、試着を始めた。

「……」
服を着終えた私は、絶句した。
CSfL-ttUYAEVccE
目の前には、メイド服の私。
サイズもちょうど良い。
メイドらしく、大人っぽさもあるが、可愛らしさもある。
朔夜が着たら、もっと可愛いかもしれない。
でも、幸い、朔夜はこっちに来たばかり。
可愛い服なんか、持って来てないだろう。
朔夜の料理は絶品だ。
私の腕でかなうわけがない。
でも。
でも――
この服であれば、慶は私を選んでくれるかもしれない。
料理がマズくても、私が女らしくなくても。
この服であれば、慶を誘惑出来るかもしれない。
これなら、朔夜に勝てるかもしれない!
この私ならば、慶は私を選んでくれるかっしれない。
あの時、フラれたこの私を――
「慶……どうかな?」
服というのは本当に怖いものだ。
その気にさせる。
コスプレする人の気持ちが、少し、わかった。
「これで慶を……」
さいっこうの笑顔の私が、鏡に映った。

バシッ!
耳元に当たった強い衝撃。
「ひあああっ!? 何するのよっ!?」
あれ?
さっきとは全く異なる場所。
あの可愛い服の私は、何処に!?
「え? あれ?」
目の前に突然の慶。
なんで?
「あの、今は西暦何年?」
ちょっと可愛くボケてみる。
「もう西暦は使われていない。世界大戦は全てを変えた」
「うそ……」
とりあえず、慶のツッコミに乗ってみる。
「んなことより、服、直せよ」
「わああっつ!?」
慌てて服を直す。
まったく、あの可愛い服だったら、慶を誘惑出来たのに!
「見たの?」
「見えただけ。不可抗力だからな」
「おのれ」
どうせならもっと可愛い私を見てよねっ!
私はそう思いながら、大好きな慶と、私だけのコミュニケーションを取るのであった。


土岐のぞみ SS 夢の中の私 End


読んでいただいてわかったかと思いますが、これは序盤に朔夜が慶の部屋で眠ってしまったシーンの補完です。
朔夜というライバル出現で落ち込んだのぞみは、自分を奮い立たせるためにへヴィーメタルを聞いて、本を読んでいたのでしょう。
そしてそのうち、眠ってしまったわけです。
その中の夢のお話です。

でも、この「夢」はいわゆる眠ってみる「夢」だけを指すわけではありません。
「自分が慶と結ばれたい」
そんな「夢」も指します。
もっと言うと、自分が慶に近づきたい、もっと女として見られたい、ふさわしい女になりたい……etc。
そんな夢を見たからこそ、朔夜の得意分野である料理をする格好=メイド服を、夢の中で見たのだと思います。
朔夜に、料理でも勝ちたい。
そんな想いが、のぞみにはあったんだと思います。

さて、いろいろ語りたいことはあるのですが、早く更新する為に、ここまでにします。
お楽しみいただけていたら、幸いです。

米原

Augustic Eternal 8 おしながき

こんにちは。米原です。

ちょうど一年前、秋葉原でオーガストのステッカーがもらえる……だか何だかというイベントがありました。
実はその時、会社から召集がかかっていました。
受付が用意され、来ない人間がわかるシステム!
会社のドアは解放され、(受付があるので不審者は入らない)「社員証を忘れた」のような言い訳が出来ない!
さらに、そこ以外からは会社の門ですら閉鎖されている始末!
なんと、恐ろしい!
だが、私は八月信者、絶対に秋葉原に行くんだぁっ!
……という気合をもとに、受付を済ませて、裏技を使って、会社から脱出して向かいました。

その時が……再び!
なぜ会社は、オーガストのイベントと被らせるのが好きなのでしょう。
今日から秋葉原でオーガスト展が再び行われました。
本日のみ、というわけではなかったので、しぶしぶ会社に行きましたが、もう一週だけずらしてくれと。
そういえば、5月に行われた真夏のフェスティバルもそうでした。
べっかんこう先生が帰られて数分後に、私が到着したそうです。
くっ、(自信作の)本をお渡ししたかったのに!

さて、明日のAugustic Eternal 8 は、もちろん、遅刻しないで参加いたします。
明日に限っては邪魔が入りませんので、ご安心ください。

さて、お売りする本は、こちらです!

大図書館の羊飼い -Dreaming Sheep-
御園千莉 SS 本 将来の誓い

一冊100円、15部限定での販売とさせていただきます。

画像はこちら。
pic.twitter.com/Kx3FtBrBhk
もしくは、
http://t.co/Kx3FtBrBhk

当日の日程については、こちらを確認願います。
http://augusticeternal.iza-yoi.net/

それでは、AE31にて、お待ちしております。

米原

大図書館の羊飼い 望月 真帆 SS 真帆の策略

こんにちは。米原です。

この6月、何もブログを更新していないと気づき、急遽ネタを考えました。
そういえば、以前、ツイッターの診断メーカーか何かで「真帆が筧の家にお泊りする話を書け」みたいな内容が出ました。
そのときに浮かんだのが、この案です。
その時は少し忙しく、対応できなかったのと、私の案の設定が合うのか、調査の時間が必要でした。
思ったとおりの設定で対応化のだったので、急遽書くことに。
久しぶりの5300字、お楽しみください。


大図書館の羊飼い 望月 真帆 SS 真帆の策略


珈琲の香りが包む小さな部屋で、今日も討議が行われていた。
6月19日に行われたミナフェス以降、図書部への依頼はうなぎ登り。
特に、今は季節柄と言える、運動部の練習場の確保に追われている。
「はぁ、これだけ公営の施設を確保しても、まだ足りないのか」
桜庭を中心に、出来る限りの対応をしている。
だが、それでも室内練習場は足りない。
「どこの部活も、皆協力して譲り合ってくれているのに、それでも足りなくなっちゃうんだよね……」
全ての部に対し、公平に対応できない結果に、白崎は残念そうだった。
「梅雨の季節じゃなければな、外の運動部は皆「恵の雨だ」なんて言って練習を休むのに、勝手な面もあると俺は思うぜ」
室内競技である空手の経験者である高峰らしい愚痴も出たりする。
各自それぞれ思うところがあるだろうが、皆共通しているのは『早く梅雨が終わって欲しい』という想いだ。

「そういえば千莉、今晩、楽しみだね」
「そうだね、でも、佳奈、ちゃんと準備はした?」
「いったい何の話をしているんだ?」
御園と鈴木の会話に、桜庭が口を挟む。
「今度の寮の撤去の話です。私の110号は延期になったので、対象者の佳奈は撤去の間、私の家に泊まることになったんです」
「あぁあぁ、その話か。実は白崎もウチに来る事になっている」
「玉藻ちゃんが寮住まいじゃなくて良かった。短い間だけど、よろしくね。玉藻ちゃん」
「あぁ、こちらこそよろしく頼む、白崎」
「あのー、何の話か説明してくださる人ー」
寮住まいではない俺と高峰には、ちんぷんかんぷんな内容だった。

桜庭の説明によると、こうだ。
汐美学園の寮のメンテナンス工事が行われるため、一時的に寮から出て行ってもらうことが、4月頭から告知されていた。
寮住まいの人間は、一時的に友人宅に泊めてもらうなり、頑張って実家から通うなり、何とかして一週間だけ仮の住まいを確保して貰えとの事。
期間は、明日の7月1日から一週間との事だった。
「しかしこれがどうも妙なんだ」
「へぇ……妙って、どこが?」
高峰が少し、興味を持ったようだ。
「今回の目的は、雨漏り検査だから、梅雨にやりたいそうだ。だが、汐美学園の寮に、雨漏りの報告など一軒も出ていないんだ」
「でも玉藻ちゃん、生徒会の話では、『雨漏りが起きてからでは遅いから』……っていう説明だったけど」
「あぁ、百歩譲って、そこは良いとしよう。まだ辻褄が合うからだ。実は、当初これは101号から110号まで一斉に行われる予定だったんだ。理由は、いっぺんに施工した方が安くなるから。しかし、最終決定は違ったんだ」
「半分の105号までになったとか?」
「おしい。当初は105号までの予定だったが、生徒会の予想以上に仮の住まいの確保が出来ない生徒が多く、103号までで決定した。おかしいと思わないか?」
「確かに、あの生徒会が生徒の仮住まいの確保が出来なかった場合の予想していないなんて、おかしいな」
「筧の言うとおりだと私は思うんだ。あの汐美学園生徒会が、こんなヘマをするとは思えない。ちなみに、生徒会長が、自身の住む101号だけは絶対にやるって、聞かなかったんだ」
「会長さんも、寮住まいだったんだ。私、知らなかった」
「白崎の言うとおり、多くの生徒が、どこに誰が住んでいるのかなんか把握していない。寮なのか、自分で借りているのか、はたまた実家なのか。唯一把握しているはずの生徒会が、そこをコントロール出来てないなんて、おかしくないか?」
「うーん……」
俺は考え込んでしまった。
あの真帆会長率いる生徒会が、こんなに方針を変えなくてはいけなくなるなんて、想定できない。
桜庭のように何か裏がある……のかもしれないが、生徒を追い出して工事を施工しても、何も生徒会には得がないはずだ。
「噂じゃ、今回の施工業者社長がこの学園のOBで、資金繰りに困って無理にでも施工をお願いして来ただのなんだのあるが、あのカタブツ生徒会長がそんな理由で施工を受け入れるとは思えないんだ」
「まぁ、生徒会がどんな裏を持っていてもぉ、私は千莉と一緒にお泊り会が出来るんで、嬉しいですけどね」
「もう、佳奈ったら」
鈴木は、御園と一緒に、一つ屋根の下で過ごせるのが、待ち遠しいようだ。
「ま、私も同じだ。白崎とずっといられるなんて、夢みたいだ……」
「た、玉藻ちゃん……」
白崎の顔が赤くなる。
「ま、こうしてみんな、どっか見つけたんだろ? 友情も深まるし、良い事じゃないか」
「それがそうでもないんだ。結構見つからない生徒もいるようで。生徒会は合宿所の確保で躍起らしい」
「桜庭の言うとおり、望月さんらしくないな……」
「だろう? でも、ここまでして生徒会に何の得があるのかさっぱりわからない。ま、私達図書部の女子は、『恵みの雨』だとおもって、楽しい一週間を過ごさせてもらうさ」
桜庭は、さらりと言った。
「あぁ、そうだもう一つ。何故かは知らんが、このことが通達されたのは、寮生だけだそうだ。確かに寮生に伝えれば済む事ではあるが、その寮生を受け入れるのは、学校の生徒だ。学校全体に通知されるべき内容だと私は思う」
「へへっ、俺達が知らされてないあたりに、何か秘密がありそうだな、筧」
「ま、別に興味ないし、あの望月会長がいる限り、生徒会が生徒会の私利私欲の為に動くなんて、なさそうだし」
「ま、そうだな。それだけ信用できそうだしね、あの人は。さ、桜庭ちゃん、続き、はじめようか」
「そうだな。いい休憩になったし、はじめるとしよう」

日が沈み、図書部は解散となった。
夕食と風呂を済ませ、ベッドで本を読んでいると、インターホンがなった。
「どちら様……って、望月会長」
「ご、ごめんなさい。こんな時間に押しかけて」
「ど、どうしたんですか……あっ」
望月会長は少し濡れていた。
「と、とにかく中へ」
望月会長との変な噂が経っても困るし、タオルで体を拭いてもらい、傘を貸して帰って貰えば良い――
俺は、そう考えていた。

「突然の雨、大変でしたね」
「えぇ、ちょうど筧君の家の側を通ったものだから……助かったわ」
「タオル……俺のでよければ、あ、もちろん洗濯した奴ですので」
「ありがたく使わせてもらうわ」
望月さんは顔と濡れた髪の毛をタオルで拭いた。
「制服、少し濡れているけど、上から拭けば大丈夫そうね」
そう言って、望月さんはジャケットを脱ぎ、拭き始めた。
「天気予報で、もしかしたら夜は弱い雨になるかもしれないって言ってましたから、その通りにになっちゃいましたね」
「そうなの。どっちか明確にして欲しいモノね」
望月さんの残念そうな顔は、普段は見ない濡れた髪と、肌が透けて見えそうな白いワイシャツを着ているせいか、なんだか色っぽく感じた。
「筧君。助けてくれてありがとう。あと、お邪魔してごめんなさい。もし私に何か手伝おうことがあれば、お礼としてやるわ」
「いや、特にないですよ」
「あら、そう? じゃあ……あつかましいんだけど、私から筧君に、一生のお願いがあるの、聞いてくれる?」
「え?」
「一生のお願いなの」
「え……あぁ……はい……」
俺は、なんとなくOKを出してしまった。
「この家に、一週間だけ、一緒に暮らさせて欲しいの!」
……。
…………。
……………………。
え?
「男に二言はないわよね?」
「えっ? えっ……えぇーっ!」
「実は明日から一週間、私の住む寮に雨漏りの施工が――」
俺は、全ての合点がいった。

「……望月さん」
「何かしら?」
「もし、望月さんが正直の話したら、今晩だけ、この部屋に泊まる権利を差し上げます」
「こ、今晩だけ?」
「もし、正直に話さなかったら……多岐川さんに連絡します」
「!」
望月さんは、動揺したようだ。
「わ、わかったわ。何の内容かは知りませんが、生徒会長たるもの、正直お話します」
「望月さん、今回の雨漏りの施工。これは全て、俺の部屋に泊まるための作戦だったんですか?」
「……」
望月さんは少し黙った後、口を開いた。
「半分、正解です」
望月さんは、全て、洗いざらい話した。

きっかけは、学園OBが経営する、この学園の寮を建てた会社からの一本の電話からだったそうだ。
その経営者は、ちょうどマンション建設の注文が埋まらず、売り上げ確保の一つの方法として、この学園の寮のメンテナンスを思いついたそうだ。
また、梅雨時の6月、7月は、建設が止まる事が多い。
従業員を遊ばせておくわけには行かず、『梅雨時に雨漏りチェック』というビジネスモデルを思いついたそうだ。
経営者も資金が欲しいので、施工料安くはしてくれる。
しかし、学園側としても、無駄なお金は払いたくない。
なぜ寮のメンテナンスを前倒しにして行わないといけないのかと、反対意見も多かった。
望月会長としても、当初は不要だと思っていたが、自分の住む寮を含め幾つかの寮生を短時間追い出すというその会社の施工方法を悪用すれば、俺の家に泊まることが出来るのではないかと思ったという。
過去の俺の行動から、本当に帰る家がない事を逆手に取り、押しまくり、涙を見せれば、一晩は泊まれるのではないかと分析。
一晩で信頼を勝ち取れば、後は一週間居座り続けられるやもしれない――
そういう魂胆だったという。

「……以上が、私が考えた作戦、全てよ」
「……わかりました。とりあえず、約束どおり、今晩だけはこの部屋に泊まる権利を差し上げます」
「……ありがとうございます」
「……そして、二度とこういう私利私欲に走らないと約束すれば、一週間、この部屋に泊まる権利を差し上げます」
「! 筧君」
「望月会長」
「は、はい!」
「俺は、望月会長が不正をするなんて、信じられなかったです」
「……ごめんなさい」
「でも、人は時には、感情がコントロール出来ずに、悪事に流される事もあります。もし今後、望月会長がその道を選ばない方法がこの部屋に一週間泊まることであれば、俺は喜んでこの部屋をお貸しします」
「ありがと……って、筧君? ここは筧君の家でしょう? 一緒に暮らしてくれるんじゃな――」
「流石に年頃の女性とは一緒に暮らせませんので、俺は高峰のところに行かせて貰います。幸い、アイツも寮じゃないんで」
「ちょ、ちょっと筧君」
「モノ、さっきの宣言どおり、盗んだりしないでくださいね。あ、これ、この部屋の鍵です。複製したりするのもNGですよ。ま、さっき宣言したんで、しないとは思いますが」
「ちょっと待ってよ、ねぇ、筧君! 流石に家主がいないのは不安が――」
「大丈夫ですよ。俺、今の望月さん、結構信頼しているんで」
俺は、部屋を飛び出した。


翌日、俺は高峰の家から学校に登校した。
こんな事、初めてだった。
「しっかしまぁ、あの短期間に良くアレだけの頭が廻ったなぁ、筧は」
「言葉のアヤって奴だよ。本の知識に頼っただけさ」
「冷静な望月会長も、筧に踊らされた、か」
「お、おはよう……」
「望月会長、おはようござい……」
「噂をすればなんとやらって……うぉ!」
望月会長は明らかに寝不足で、眼の下にクマが出来ていた。
「昨日、筧君の家に一人でいて、寝不足になってしまったわ……。ちょっと貴方に、キツイ魔法をかけられたような気分よ……」
「ま、魔法って……」
「筧君の物を触るだけで、悪事に感じてしまうようになってしまったわ……」
「オイ、筧。チトやりすぎたんじゃねぇか?」
「……少し、反省してる」
俺は高峰の問いに対し、小さな声で答えた。
「も、望月会長。別に部屋の備品は使っていただいてかまいませんよ。コップを使ってもらってもかまいませんし、ベッドで寝ていただいてもかまいません。ただ、俺の服とかは着られると……ちょっと」
俺は常識的な範囲で折れの部屋の物を使ってもらってもかまわないつもりだったが、予想以上に望月さんには答えたようだ。
「ふぅ、今冷静になって考えると、私としたことが、飛んだ強引な計画だったと反省しています」
「そ、それはそれは」
「葵が借りている部屋に私も移らせてもらうわ。鍵、ありがとう」
「ど、どうも……」
望月さんは、俺に鍵を返すと、去っていった。
「さて、短いお泊りだったな」
「あぁ。急な対応、感謝してる」
「しかし筧、あんな美人が一晩を過ごした部屋に戻るんだろ? 今度はお前が緊張するんじゃねぇか?」
「いや、望月会長、たぶん生徒会室で一晩を明かしたと思う」
「何でそう思うんだ?」
「俺はいつもあっちから来るが、望月会長、こっち側から来た」
俺は校舎のほうを指差す。
「ほーん、こういう事だけはよく見てるな、お前は」
「これだけが、とりえだからな」

俺は高峰と別れ、教室へと向かった。
今日は珍しく授業が頭に入ら……いや、今日は珍しく、授業中に本を読んでいない。
高峰と別れてからずっと、望月さんにどう謝罪するかばかり考えていた。
望月さん程の知識があれば、一晩、俺といろいろな話をして楽しめるかもしれない。
俺が普段、鈴木に語ることぐらいしか出来ない本の話を、望月さんだったら喜んで聞いてくれるかもしれない。
どうにかして望月さんを元通りにしなければ――俺はそればかり考えていた。
ふと、もし望月さんがここまで、つまり、俺がまた餅をあげるところまでを想定していたら……と考えてしまった。
もしかしたら、俺は望月さんの策略から、俺はまだ抜け出せてないのかもしれない。
望月さんは、一週間、俺の部屋で過ごさなかったのだから。


END


いかがだったでしょうか。

内容が少々強引だと思いつつも、どのゲームにおいても、こういうちょっとしたご都合主義だらけですので……。
(そうでもしなけりゃお話は進みません)

さて、梅雨の真っ只中ですね。
関東地区だけの話にはなりますが、6月の終わりは、梅雨のちょうど真ん中を意味します。
あともう半か月ぐらい、梅雨とお付き合いしましょう。
今後の楽しい夏の『恵』をもたらしてくれる、梅雨と。


米原 伊吹

真の真夏のフェスティバル!

真の真夏のフェスティバル!


こんにちは。米原です。

今日は重大発表!
フィオネ・シルヴァリア役、そして桜庭玉藻役、きっと稲生滸役になるであろう、斉藤佑圭さんがご結婚を報告されました!
お相手は同じ事務所の先輩である、草尾毅さんです!
草尾毅さんといえば、ドラゴンボールのトランクス、スラムダンクの桜木花道という有名キャラをご担当。
……あれ、これらは私が小学生の時のアニメ……。
と言う事は(どういうことだよ)相当なお年の方!
実際、現在49才、今年50才になられます!
斉藤さんが現在28才、なんと21年の年齢差があるんですね!
私が斉藤さんの父親だったら結婚を許さなかったかもしれません。
ただ、二人とも気が合ったのでしょう。
誕生日も同じ11月(斉藤さん13日、草尾さん20日)ですし、斉藤さんも世代的に、この方の演技が声優を目指した原因の一つではないかと思われます。

Twitterを見ると、同じ事務所の方もびっくりされていましたので、誰にも知られる事がなかったのだと思われます。
お二人は、オフの日にこっそりと、お会いしたりしていたのでしょうか。
はたまた、年の差がありすぎて、二人で街を歩かれていても、誰も不思議に思わなかったのかも???
斉藤さんは個人的にものすごく好きな声優さんで、赤備えのトークショーを見にわざわざ滋賀県まで行きましたし、実はトークショーに何度か参加させていただいたりした声優さんです。
あぁ、ちょっと切ない。(涙)
でもお幸せになっていただければな~と思います。

真夏のフェスティバルはジューンブライドの6月か?
はたまた8月?いや、もっと先?


さて、ボケはこのぐらいにして、真夏のフェスティバルの話。
http://plaste.web.fc2.com/august/
スペース、サイトを探しても書いていませんが、18番です。
24日の11時から15時まで!
お待ちしていまーす!!
といいたいところなのですが、すみません、11時まで会社に缶詰です。
ってなわけで、相方に全てを委託!
私も会社終わり次第急行しますので、早ければ12時にはお会いする事が可能です。
それまでにお読みいただいた方、いらっしゃれば感想をいただけると幸いです。
内容はこちら

既に告知したとおり、金魚のお話です。
これの18禁シーンを入れた、完全版を作成しました。
お値段は赤字価格の100円!
全60ページ、1万5千字の大ボリューム!
20部限定!
お買い上げ、お願い致します。

米原 伊吹

大図書館の羊飼い 白崎つぐみ SS 仲間と育んだ三つの"しき"

こんにちは。米原です。

本日、2015年8月22日(土)、23日(日)に、東京オペラシティにて予定されている、トラベリングオーガスト2015に動きがありました。
既にあったティザーサイトに、つぐみの絵が公開されました。

https://twitter.com/side_connection/status/585374680611041281

指揮棒を振るつぐみの姿は、今回の趣旨である「オーケストラ・コンサート」らしいような、らしくないような。
美しいドレスは合っているのですが、つるが指揮棒と体、そして左腕にまかれ、指揮者としては少し動きづらそうに見えます。
さらに、水面に浮いています。
ちょっと妖精チックにも見えるこの絵は、あくまでオーガストのキャラクターによる、キービジュアルです。
「オーケストラ」とか「オペラ」と聞くと、格式が高く、堅苦しさをも想像してしまいますが、この絵を見ると、「オーガストらしさ」を感じました。
おふざけはダメですが、前回同様、ゆっくりと、楽しく、リラックスして聞けそうです。

さて、このつぐみ。
凪ぐらい胸があるように見え、そして本当に美しいです。
千莉推しな私ですが、このつぐみは本当にかわいいと思います。
それだけすばらしい絵であるにもかかわらず、一枚絵であるため、動きません。
ならば、ストーリーをつけて動かしてしまおう。
いつもの病気が始まりました。

思考する事、数分。
そして、案を実行する事、約1時間と30分。
この絵を挿絵にしたSSを完成させましたので、公開いたします。
ずいぶん無茶な設定ですが、仕方ありません。
元々、大図書館の羊飼いとは、何の関係もない絵なのですから。

私だけでなく、皆様も感動したであろうこの絵が、動いた瞬間を、お楽しみいただければと思います。


大図書館の羊飼い 白崎つぐみ SS 仲間と育んだ三つの"しき"


―3月30日(月)―

次週より、一万を超える新たな汐美学園生が誕生する。
つまり、今週が、俺達が今の学年で行う、最後の活動と言う事になる。
しかし、この場に御園は、いない。
「もう一週間も千莉を見ていないと、やっぱり寂しいですね」
会議の休憩中に、佳奈すけがポツリと言う。
「元々、こうなるのはわかっていた。今の御園を見ていると、今後はこういうことも増えそうだ、今のうちに慣れておくとしよう」
至って冷静な意見を述べた桜庭だが、その顔には寂しさが滲んでいた。
「ま、特別な生徒なんだから、これぐらいやってもらわないとね」
サバサバとした意見を述べるたのは、高峰だった。
自身も、『一応』特別な生徒ならではの意見だろう。
厳しい中にも、思いやりがある言葉だと感じた。

御園がいない中であっても、滞りなく進んでいく会議。
先週からずっと、新入生歓迎会の歌練の為に、生徒会室には来ていない。
桜庭の言うとおり、こうなるのはわかっていた。
高峰の言うとおり、御園は特別だ。
だが、佳奈すけの言う通り、『仲間』がいないのは、本当に寂しい。
「なんか私達に手伝える事、無いんですかね」
「鈴木、ピアノか何か出来るのか?」
「まーったく出来ません。桜庭さんは?」
「たしなみとして多少は出来る。だが、御園を狂わせてしまうが関の山だ」
肩をくすめる桜庭。
鈴木の言うとおり、手伝いなり、励ましなり、仲間なのだから何かしてやりたい気持ちはある。
しかし、俺達素人レベルが口出しする事は、無駄どころか、マイナスになりかねない。
「高峰、特待生として、何かコメントできる事はないか?」
「ヒュー、まさか筧から痛いところを突かれるたぁーね」
苦笑いをする高峰。
「ま、緊張ってのはさ、練習不足が原因なのさ。例えば、百マス計算の完走なら、緊張はしないだろ?」
もしこれが、『何秒以内で完走しろ』だったら緊張もするだろうが、時間を幾らかけても良いなら、極度に緊張する必要も無くなる。
「それは、今までに、百マス計算が完走出来るだけの練習、もとい勉強をして、それ相応の実力があるからさ。実力がないと緊張もするし、自信も失う。それと同じさ」
「おぉ……」
高峰の適切な意見に対し、感嘆する二人。
「ま、俺達が出来る事は、邪魔せず、千莉ちゃんが安心してたくさん練習が出来るように、サポートする事だけさ」
高峰は、窓の外を見ながら、言った。
その顔は、過去の自分に、そう言い聞かせているようにも思えた。

「でも、何かしたいですよね」
佳奈すけがそうつぶやく。
「千莉のことだから、私たちが一回も顔を出さないと、へそを曲げそうです」
「ハハハ、かもな」
佳奈すけの発言に対し、桜庭が笑う。
確かに、御園の性格だと、そうかもしれない。
親友らしい意見だと、俺は思った。
「何か出来ないですかね。指揮とか」
「オイオイ、佳奈すけ。音感の無い俺達に、指揮なんか出来っかよ」
「そうだぞ、鈴木。ただ単に手を振っているだけじゃないんだから」
「そ、それはわかってます。でも、私達が出来そうなのって、それぐらいしかないじゃないですか!」
……佳奈すけの言い分はわかる。
楽器が出来ないのであれば、俺達にできるのは、演奏者を鼓舞する、指揮者ぐらいだろう。
だが、鼓舞するには相当の力が必要だ。
ただ手を振ってれば良いってもんじゃない。
「あー、もう。人のボヤキに対してそこまで突っ込まないでください。ハイハイ、考えが浅はかでしたよーだ」
へそを曲げる佳奈すけ。
「会議、始めましょ。私達に出来る事は、祈る事と、千莉のいない間に会議を進めておくことなんですから」
膨れっ面の佳奈すけは、ホワイトボードを消し、次の議題を書き始めた。
「佳奈すけ、待った」
「へ?」
「全然浅はかな考えなんかじゃない。良いアイディアだ」
「何言っているんですか、筧さん。指揮者って、演奏の一番大事なところですよ。それを……」
「まぁ、そういわずに、聞いてくれよ」
俺は、一つのアイディアを語った。


―4月6日(月)―

Another View ―御園 千莉―

新入生歓迎会が進むにつれ、周りの大人からは、焦りの色が見え始めた。
自らが行うわけで無いにもかかわらず、顔には、不安の色も見えている。
いや、自らが行うわけではなく、生徒一人に全てを委ねているからゆえ、なのかもしれない。
だったら大物を、閲覧者として呼ばなければ良いのに――
そう思ってしまう。
大人の世界はしがらみが多く、先生だって好んで呼んだわけではないのはわかる。
新入生がメインの場であるにもかかわらず、新入生を祝う気がさらさら無い人を呼ぶなんて、幾ら意地の悪い先生方でも、普通しない。
サマコン以降、学校の行事のたびに、歌う事がまるで義務であるかのように発生していった。
そのピークが、卒業式だった。
私の歌を目当てにする人が押し寄せたのだった。
その枠に漏れた人々の怒りを静めるためのステージが、この新入生歓迎会というわけである。
そこまでこの結果を重視するのであるのならば……せめて、私と心中するぐらいの覚悟でいて欲しい。
そうではなく、わが身の可愛さ余りに苛立ちを抑えるのに必死だなんて、失礼すぎる。
……今回は、みんなの後押しがあって、練習に集中できた。
今までに無いぐらい、完成度が高い。
自分で、そう思うぐらい練習した。
だからこそ、成功する自分の姿だけが見え、暗い部分は一切見えない。
どのような結果になっても、私は後悔しない――
そういい切れる程。
私は、眼を閉じた。
『ありがとう。みんな』
大切な仲間に、そうテレパシーを送った。

Another View ―御園 千莉― END

「なーにを緊張しているんだっ」
「ひゃっ」
俺達生徒会の突然の訪問により、驚く御園。
「び、びっくりさせないでください。せっかく貯めた適度な緊張感が、全て抜け出てしまいました」
「ハハハ、悪かった」
「本当に悪かったと思っているんですか? 桜庭先輩!」
不機嫌そうな顔をする御園。
ただ、本当に不機嫌ではないだろう。
顔には、『心配してくれて、ありがとう』と書いてあった。
「さて、御園。本番だ」
「え? 私の出番はまだですよ」
「ほら」
桜庭が、ステージの方向を指差す。
「それではこれより、汐美学園生徒会長、白崎つぐみより、挨拶をさせていただきます」
芹沢さんが司会を務めるこの式。
当然、学校長の式辞はあるものの、それ以外は全て生徒が運営する。
生徒会長の挨拶も、当然行われる。
「皆さん、ご入学おめでとうございます。私は、生徒会長の白崎つぐみと申します」
白崎に、昔のようなたどたどしさは一切無かった。
今は、堂々とした生徒会長の姿を、俺達に見せてくれる。
「御園」
俺が切り出す。
「御園がいない間、俺達、生徒会の仕事をこなしてきたよ」
「はい」
「この式の進行計画作成は鈴木、各部との調整は桜庭、式の会場作りは高峰、挨拶文、及び、お偉いさん形の対応は白崎と多岐川さん」
「先輩は?」
「俺は残念ながら、日々の雑用さ」
「先輩らしいですね」
御園が笑う。
「さて、御園もこれから、生徒会の仕事をこなそうとしているよな」
「はい、生徒会のメンバーとして、そして、学校の代表として、新入生が感動するような歌声を届けるる仕事をします」
「その意気だ。さて、でも俺らが仕事を全うできるように、タクトを振ってくれたのは、誰だと思う?」
「桜庭さん……と言いたいところですが、白崎さんですね」
「その通り」
俺は、鈴木に合図を送る。
こっそりと置かれていたイーゼルの上で、一つの『芸術』が披露された。
「うわぁ……綺麗……」

TA2015キービジュアル

御園の眼に飛び込んできたのは、きらびやかな服装で、指揮棒を振る白崎の絵だった。
「俺達全員で構図を考えて、桜庭に描いて貰ったんだ」
「凄く……幻想的です」
「あぁ、俺も、こんな人にタクトを振られて、そしてこの人の下で働けて、本当に嬉しい」
「はい」
「少し、やりすぎ感のある絵かもしれないけど、みんなで色々話した結果、こんな白崎になった」
「白崎先輩、恥ずかしがってなかったですか?」
「そうなると思ったから、白崎には隠して勧めたんだ」
「全然、指揮官の言う事を聞いていないじゃないですか」
笑みを浮かべる御園。
俺も、つられてしまった。
「……それでは、皆さんの三年間がより良いものになるよう、私達が全力でサポートさせていただきますので、よろしくお願い致します!」
拍手に包まれて、壇上を後にする白崎。
『千莉ちゃん、がんばって』
そんなメッセージが、こちらに届いた気がした。
「さ、御園。バトンがお前に渡されたぞ」
「任せてください」
御園の背中は、いつもよりも大きく、そして、凛々しく見えた。
「それでは、新入生皆様へのへのお祝いに、当校を代表しまして、二年生の生徒会メンバー、御園千莉より、お祝いをさせていただきたいと思います」
芹沢さんの司会に合わせて、ドレスに身を包んだ御園が、壇上に登場した。
御園の一礼と共に、沸きあがる拍手。
歓声が一切発せられないところをみると、御園の名声は、どうやらもう、響いているようである。


―4月7日(火)―

「ふええええ……」
白崎が生徒会室に入ってくるなり、間の抜けた声が部屋中に響いた。
「白崎、生徒会長なのだから、もう少ししっかりしてくれ」
「そうですよ、白崎先輩。昨日の凛々しかった先輩は、どこに行ったんですか?」
「白崎さん……(この体が)うらやましいです!」
桜庭、御園、佳奈すけの三人は、それぞれ、好き勝手に感想を述べる。
当然、俺達が作った、タクトを振る白崎の絵について。
「わ、私こんなに胸も大きくないし、妖精さんみたいにきらびやかな格好なんてしてないし、指揮棒なんて振ったこと無いよぉ!」
「大丈夫だ、白崎。白崎ならこのように、立派に俺達を導いてくれるさ」
「筧くぅん、プレッシャー、かけないでよぉ……」
今にも泣きそうな声を出しながら、あたふたしてしまう白崎。
こんな面もある白崎だからこそ、だろう。
俺達が白崎に指揮されたいのは。
俺達は、白崎が大好きだ。
残りの任期だけでなく、これからもずっと白崎を支えて行きたいと思う。
なぜなら、白崎は『仲間』であり、『俺達を指揮するのにもっともふさわしい人物』なのだから。


仲間と育んだ三つの"しき" END


いかがだったでしょうか。

今回は4千字程度でさらっとまとめてみました。
既にお分かりでしょうが、タイトルの"しき"は、下記の三つです。

指揮
士気
の三つです。
「士気」のみ、本文中に言葉が出てきませんが、「鼓舞」という言葉に隠れています。
「士気」は入れようと思ってた言葉ですが、あえて外しました。
白崎が、仲間の「士気」を高めているのは、明白なので。

さて、冒頭でもお話したように、今回の絵は、トラベリング・オーガストのキービジュアルです。
大図書館の羊飼いとは全く関係のない絵です。
しかしながら、これだけ美しい絵、そして可愛いつぐみの絵を、なんとかして大図書館の羊飼いの世界に持ち込みたいと思ったのが、このSSを書いたきっかけでした。
はっきり言って、設定は強引。
無茶も多く、良く見れば、ちょっとめちゃくちゃ過ぎないか、という話の流れの部分があると思います。
しかしながら、つぐみがもはや図書部ではなく、学校のリーダーであり、今後、彼女の指揮によって、どんどん学校が良くなって行くのは明白です。
生徒士気を高めてくれるのは、もはや疑いも無くつぐみであり、式を取り仕切るのもつぐみなのです。
それだけ、つぐみは成長したのです。

大図書館の羊飼いは、千莉や玉藻、凪などの魅力的なメンバーが登場します。
ですが、やはり話の中心はつぐみなのです。
つぐみがいるからこそ、このゲームが成り立つのです。
実績ゼロの図書部を、生徒会をも超える図書部にし、その実績を引っさげ、今後は生徒会として、そして図書部員として、学校をもっと良い方向に変えていくでしょう。
トラベリング・オーガストの指揮だけでなく、そっちの指揮も、つぐみに頑張って欲しい――
そんな願いを込めて、三つの"しき"という掛詞のタイトルで話を書かせていただきました。
大図書館の羊飼いは、一年間の話で終わってしまっています。
しかしながら、もう一年だけ、一人のメンバーも欠けずに、活動が出来ます。
是非、その世界も我々に見せて欲しい――
そんな淡い想いを東中野に送りながら、挨拶とさせていただきます。

米原伊吹

大図書館の羊飼い -Library Party- 刈屋美沙希 SS "羊飼い"の依頼

こんにちは。米原です。

一日の更新以来、金魚ルートはもちろんのこと、他のルートをちょくちょくプレイしています。
更に、金魚ルートをはじめ、羊飼いLPのまとめ文を作成しております。
しかし、七日、八日の週末はどちらも勤務、そして十四日も勤務があり、なかなか時間が取れません。
そんな中、やっと休みが取れた十五日に、秋葉原に行ってきました。

前々からネットでは、「UDXでの電撃イベントで、羊飼いのタペストリーが売られるらしい」という情報が流れていました。
しかし、絵柄は一切わからず。
結局、現地に行かなくてはわからないという状態のまま、当日を迎えました。
当然、行列が。
最長は二時間待ちを超えたとか。
そんな中、午後も三時を過ぎると、列がほとんどなくなりました。
チャンスとばかりに飛び込み中を覗くと、なんとつぐみと金魚の書き下ろしタペストリーでした。
元々、ゲームのパッケージ絵だと予想していましたが、びっくり仰天。
六千円+消費税と比較的高額でしたが、迷わず買いました。
それがこちら!

CAHjG4VUcAA8-Oj

あと、べっかんこう先生が以前描いた愛宕と高雄のスポーツタオルも売っていたとの事。
なんとお値段二千五百円!
コミケの時より安い!
てか、コミケで売り切れたはずでは……再生品?
まぁ、既に持っている私には関係ありませんね。

なお、ツイッターで画像を公開したところ、携帯の鳴りが止まりませんでした。
夕刻には、八月信者ご一行様がお買い上げしていました。

そんなつぐみと金魚のかわいらしいタペストリーの絵柄からひとつ。
久しぶりのSS、そして初めてとなる一之江金魚の二次創作です。

※金魚ルートのアフターの設定ですので、金魚ルートを終わらせてから読む事をオススメします。


大図書館の羊飼い -Library Party- 刈屋美沙希 SS "羊飼い"の依頼


ぽかぽかとした陽気が当たり前になってくる。
それにつれ、カミツレでのオーダーも、ホットドリンクからコールドドリンクに変わってくる。
カミツレ自慢のブレンドコーヒーも、アイスコーヒーの割合が増えてきた。
「ふ~ん……」
店長がため息をつきながら、今日何十回目かのアイスコーヒーを出した。

閉店後、店長に聞いてみる。
「どうしてあの時、あんなため息を出されたのですか」
店長は、ご自慢のちょび髭を指先でなぞりながら、答えてくれた。
「……今年は、朝晩は冷えるが、昼間は暖かい。そんな日が多くてね。なかなかオーダーのバランスが取れない」
「? どういう事ですか?」
「コーヒー、特にブレンドコーヒーって言うのはね、ブレンドされているから豆単体の個性は薄いが、その店の味、そして顔になるんだよ」
「そうですね。キリマンジェロとか、モカとか、有名豆のコーヒーって言うのは、産地が違うだとか、挽き方が違うだとかあるかとは思いますが、基本的にはどこでも同じ味ですよね」
「そう。うちでは、朝コーヒー、昼コーヒー、午後コーヒーと、三種類のコーヒーが用意されている。それぞれ、ホットとアイス用。合計六種類だ」
「それがカミツレの自慢だったはずじゃ……」
「その通り、その通りなんじゃが……在庫の偏りが多くてねぇ。昼のホット豆が結構余ってるんだよ」
店長の言う通り、昼間のコーヒーオーダーは、ほとんどがアイスに変わっている。
「何とかして減らさないとねぇ……と言っても、腐る物でもないから、そこまで躍起にならなくてもいいとは思うが、在庫のバランス調整をしないとなぁ」
カミツレは、大きな食堂ではない。
必然的に、バックヤードは小さくなる。
そのスペースを出来るだけ有効活用すべく、カミツレでは、問屋に調合表を渡し、既に豆を混ぜてもらった状態で卸してもらっている。
常時六種類の袋があるわけだが……毎年、季節の移り変わりには在庫量で苦労するそうだ。
「今年は特に苦労してるよ。金魚ちゃん、いや、ミサキがお客さんを随分呼びこんでくれたからねぇ。先を読むのが難しいよ」
店長は笑いながら、クロージング作業を進めて行った。

帰り道、店長の話を美沙希に伝える。
「はぁ、京太郎さんはよく見てますねぇ。娘である私は気がついてないというのに」
「ハハ、俺はフロントとバックの中継地点だからね。たまたまさ、たまたま」
「でも、長年父と働いている私が気が付いてサポートすべき内容なのに、それを全部京太郎さんがこなしている気がします!」
頭から蒸気機関車のような煙を出しながら、美沙希は強く主張した。
「美沙希は、美沙希にしかできないことをやるのが一番だよ」
「私にしか、出来ないこと?」
「そうだよ。おとりつぶしになってものほほんとしていた店長を、ここまで奮い立たせたのは、美沙希の力なんだ。美沙希にしか出来ない方法で、在庫削減の方法、考えてみてよ」
「私だけの方法……ですか……」
「俺も俺なりに考えてはみるけど、美沙希の視点から、何か提案してみてよ」
「う~ん……」
美沙希は、きらめく星空を見ながら、あれこれと考えて始めた。
『美沙希、気が付いたのは俺かもしれないが、問題を解決するのは、今まで同様、美沙希だよ』
俺は、美沙希の過去の頑張りを思い返しながら、ミサキをサポートしていくことに決めた。

翌日。
朝起きてからずっとご機嫌な美沙希を見ながら、美沙希お手製の朝食を食べた。
何を聞いても、
「放課後までのおたのしみで~す」
としか言わない美沙希。
「頼むから、内容を忘れないでくれよ」
「ひぐっ!」
電池が突然切れたロボットのように、固まる美沙希。
「せ、せっかく考え付いたのに、わ、忘れたらどうしましょう」
「俺にだけ伝えておけ。記憶力には自信がある」
「だ、ダメですダメです! これは、放課後のサプライズなのです」
「なら携帯のメモ帳にでも入れておけ」
「あ、その手がありましたね♪」
ルンルン気分で入力を始める美沙希。
「はっ! もしや後でこっそりと中身を見ようという魂胆じゃ……」
「しねーよ」
美沙希らしい喜怒哀楽をはっきりさせながら、朝の楽しい時間が過ぎて行った。
『いったい、どんなアイディアなんだろうな』
放課後を、楽しみにしておくことにしよう。

本日最後の授業が終わると、携帯が震えた。
『今日は、図書部でお待ちしてますね。 美沙希』
どうやら、発表は図書部で、らしい。
アレコレと予想しながら、図書部へと向かった。

「なぁ、筧。金魚が来たってことは、何か図書部に依頼があるってことだよな」
「知らん。俺は何も聞いてない」
影の部長、玉藻にコーヒーを淹れながら、答えた。
「私の予想によると、『また売上アップの為に、我々に一肌脱いでくれ』……だとは思うが、詳細が少なすぎて、わからん」
「ひぐっ!」
朝、こんな光景を見たような……。
チワワみたいにプルプル震えてるし。
「エ、エスパーです。桜庭さんはエスパーです!」
「……依頼が無ければ、我々の元には来ないだろう。これぐらい、誰でも予想は出来る」
「で、でも……私の驚き、桃の木、山椒の木のアイディアが、筒抜けで……」
「美沙希、桜庭は、売り上げアップを依頼してくるとは予想しているが、具体的な内容は知らない。お前のアイディアは漏れていない、大丈夫だ」
「ほ、本当ですか? 桜庭さん……」
「あ、あぁ。本当だ。私はなーんにも。知らない。はっはっは」
「そ、そうですか。良かった♪」
美沙希は、再びルンルン気分で、図書部のメンバーが集まるのを待った。
「はぁ、疲れる」
「すまないな」
インスタントとはいえ、カミツレ自慢のブレンドコーヒー。
『頼むぞ、桜庭を癒してやってくれ』と念を込めてから、桜庭に手渡した。

全員がそろい、会議が始める。
「今回は、私から依頼をしたいと思いまーす」
「よっ、待ってました! 金魚ちゃんの為なら、たとえ火の中、水の中。どんな困難でもこなしてやるぜ!」
「あ、たぶん高峰さんの出番はないです」
「……なぁ、筧。俺ってやっぱり、要らない子?」
「……ぶっ、ぶぶぶっ!」
ギザにまで笑われた高峰は、部室の奥の方で屍と化していた。
……あとで、元気づけてやるとしよう。
「今回の依頼は、カミツレのコーヒー豆在庫一掃で~す」
ミサキは高峰には目もくれず、自分のアイディアを語った。

「……つまり、女の子を呼べばいいってことだよね」
「そうです、白崎さん。男性に比べ、女性は冷えを気にするし、温かい飲み物を求めます。だから、女性の来店を促せば、必然的にホットコーヒーが売れるというわけです!」
美沙希の考えはこうだ。
男性客には悪いが、女性専用のキャンペーンを打ち、女性に来店してもらう。
女性客ならば、アイスコーヒーではなく、ホットコーヒーをオーダーしてもらえる。
そうすれば、ホットコーヒー用の豆が減る、という魂胆だ。
「それで、どうやって女性を呼ぶのですか」
御園が訪ねる。
「今考えているのは、女性がうれしくなるような、可愛いお店に変えてしまおうと考えています」
「可愛いお店……猫カフェの時みたいな?」
千莉はあの時を思い出したのか、少しやる気になったようだ。
「猫カフェもいいのですが、また同じだと二番煎じになりかねません。ですから、別の内容にしようと思っています」
「そうですか……」
猫カフェを否定され、御園のやる気の火は、消えてしまったようだ。
「それで、内容は?」
今度は鈴木が訪ねた。
「今考えているのは、ファンシーで女性心をくすぐる店内にしようと思っています。ホットコーヒーに合うようなお菓子をだして、コーヒーをたくさん飲んでもらいます」
「おぉ、なんだか楽しそうですね」
今度は鈴木の火がついたようだ。
「つきましては、店内のレイアウト、お菓子のアイディア、それと宣伝ポスターの作成をお願いします」
「ねぇねぇ、執事とかいらないかな?」
「そんなイケメンを雇えればいいですね。あ、でも、男性の目が気にならないお店の方で考えているので、不要かな?」
「あ……そ……」
……高峰は、狙ってやってるのではないかと思ってしまう。
今度聞いてみるとしよう。

図書部内で、美沙希の意見を聞きながら、少しずつまとめていった。

・店内は、ファンシーでお菓子の城のようにしたい。
・食べ物は、ホットコーヒーを飲みながら食べたくなるような、お菓子を用意したい。
・店員は、図書部全員がお手伝いし、男は裏方に徹する。
・イメージ写真を撮ってポスターにし、学校に張る。

「男性客には申し訳ないけれど、沢山の女性お客さんが来店してもらえるような店にしたいです!」
鼻息の荒いミサキ。
「金魚ちゃん。あくまで期間限定にしておいて、今後のリピーターになってくれるように、頑張ろうね」
「はい!」
美沙希は特に、白崎と息が合ったようだった。
思えば、理系教室が多く集中するところにあったカミツレ。
必然的に、男性客が多かった。
美沙希目当ての客も多く、ちょっとイラッと来ることもあったが、これで男女比が釣り合いが取れれば、俺の気も休まるやもしれん。
「店長と在庫量の相談をして、期間を決めておきますね」
美沙希の瞳は、輝きに満ちていた。

店長に今日の出来事を報告する。
「う~ん、そうだねぇ。三日、ぐらいが良いところかな?」
「そんなに短い期間でいいんですか?」
「男性は完全に排除しちゃうわけだし、ほとんどのオーダーでホットコーヒーを出すとなると、随分在庫が減ってしまう。真夏だってホットを求めるお客さんだっているんだ。バランスを考えると、三日で十分だよ」
「む~、店長がそういうのなら……」
せっかく店内を改装するのだから、美沙希はもう少し長い期間にしたかったのだろう。
どれだけの作り物で部屋を飾るかは未知数だが、立った三日で消えてしまうのはもったいない。
「美沙希、期間が短い方が限定感が出ていいと思うよ。女の人は『限定』って言葉に弱いし」
「でも……」
「たった三日だけど、お客さんの思い出として、永遠に残るような店になるよう、頑張ろうぜ」
「永遠の思い出……ですか」
「そ、ずっとやってたらありがたみがないじゃん? ぱっと散ってしまうかもしれないけど、その分味わい深いものにしよう」
「……はい!」
「ハハハ、流石筧君。手なずけてるなぁ」
「店長! 何か言いましたか?」
「いやいや、何も。さ、僕はお菓子の案でも出しておくかね」
美沙希の鋭い視線を背に、店長は奥へと消えて行った。

図書部では翌日から、店内の改装案を出してくれた。
珍しく、佳奈すけが仕切り、随分と早く案がまとまったそうだ。
ついで乗り気なのは、白崎。
桜庭、御園のクール組は、暴走阻止という役割だったと聞いた。
期間は、次々週の火曜日から木曜日の三日間に決定した。
飾り付ける物が出来上がる度、美沙希の眼の輝きが増す。
『けっこうこういう、可愛らしいの、好きなんだな』なんて言ったら、美沙希にへそを曲げられてしまった……。
『ちょっと子供っぽいところがあるんだね』と取られてしまったようだ。
『似合っていると思うんだけどなぁ』なんて言ったら、火に油を注ぐかな?
つぐみと作業しながら、自分の背丈の事を気にしていたから。

「できたーっ!」
すっかり意気投合した白崎と美沙希キが、大きな声を上げ、飾り付け制作は終了した。
あとは実際に飾り付けるだけである。
「ねぇねぇ、実際に取り付けてみようよ。この図書部に」
「白崎、そんなことしたら、つけて、はずして、面倒だ。それに……」
「いえ、桜庭先輩。取り付けるべきだと思います」
「え?」
今までほとんど口を出さなかった御園に、全員の瞳が向けられた。
「まだポスター撮影をしていないですし、取り付けと取り外しの練習も必要だと思います。全部ではなく一部を付けて、ポスター用の撮影をした方が良いと思います」
「……私も、千莉の意見に賛成です。実際に取付用のテープの強さも見ておきたいですしね。食べてる最中にコーヒーカップめがけて落下したら、それこそ大惨事ですから」
「……そうだな、御園と鈴木の言うとおりだ。一部だけ、飾ってみよう」
店内のイラストをベースに、飾り付けが始まる。
「……実際に店内に飾ったら撮ろうと思っていたが、それだと開催当日にポスターを張ることになる。幾らお客の集中を避けたいと言っても、閑古鳥が鳴いては元も子もないか」
桜庭はそういうと、うれしそうに飾り付けをしている四人に加わった。
五人は、うれしそうに飾り付けをしている。
俺はこっそり、彼女らの笑顔を、ファインダーに納めてしまった。

飾り付けを終えると、自然に構図の話が始まった。
「金魚ちゃんがモデルになるは当然として、あとはどうしようか」
「はーい、案がありまーす!」
もうノリノリの美沙希に、全員任せることにした。
「ん? どんなどんな」
白崎もノリノリである。
「白崎先輩は、ここに正座してください」
「うん」
「そして私は先輩にダーイブ!」

CAJQQY3UUAAltFu

「おぉっ!」
一同の声が上がる。
妹が姉に甘えているのか、はたまた若いお母さんに対して子供が甘えているのか。
それとも、保母さんに甘えている園児か。
色々な思考が、廻れるような、絵がそこにはあった。
「……桜庭先輩、見とれていないで早く、撮影撮影!」
「おっといかん、そうだったそうだった。あまりにも刺激的で……」
「……早くしないと私が撮りますよ」
「ダメだ、それはダメだ。美しくもかわいい、癒し度満点の白崎は、私の手で永遠に保管するのだ!」
桜庭は、白崎のカメラで、様々な角度から撮影を始めた。
「ん~、さすが先輩の、柔らかくって、フカフカで、弾力があって……はぁ、幸せ」
「金魚ちゃんのだって、私と変わらないぐらい大きくて、柔らかいよ」
「でも先輩には大人の風格があります~。むふ、癖になりそう」
「……ハァハァ、わ、私もあの中に飛び込みたい!」
「桜庭先輩、……仕事が出来ないなら私が代りますよ」
「ダメだ、ダメだダメだ! この情景は、私だけのものだ!」
「うっ……くっ……羨ましい、うらやましいです! 千莉、あれは反則です! ギルティです!」
「別に私は羨ましいとは思いません」
「せんせぇ~、裏切者がいますぅ……」
桜庭は興奮し、御園は相変わらず、佳奈すけはコロコロと顔を変えていく。
……なんだか、ほほえましさまで覚える。
「京太郎さ~ん」
「……ん?」
「うらやましぃですかぁ~」
「……」
俺は金魚からのあおりに対し、無言を通し続けた。

パソコンに画像を取り込むと、一同が画面にくぎ付けとなった。
どれがいいか、どれにするか、どれを保存するかの大合唱。
携帯の待ち受けにするだの、個人パソコンの壁紙にするだの、本来の目的を忘れ、皆一同に本音をぶつけまくっていた。
どの絵柄が良いか、五人がそれぞれ譲らず、結局夜遅くまでバトルが勃発。
最終的に、俺が選ぶことになり、それがポスターへと採用された。

「あ~、今日は幸せでしたぁ~」
美沙希は、ずっと白崎の胸に当て続けていた自分の頬を、さすり続けていた。
「……そんなに良かった?」
「はいぃ~とってもやわらかで~」
まるで、この世にある極上の料理を食べた後かのように、美沙希は幸せの絶頂を感じていた。
「はぁ。でも白崎先輩は羨ましいです」
急にしょげた顔をする美沙希。
「私より身長は十センチも大きくて、大人で、美しくて、でも可愛さがあって、胸が大きくて、お母さんみたいで、料理も上手で、図書部のリーダーで……」
美沙希は、白崎の特徴を上げ続けた。
「あぁ……私もあぁなりたい……」
「……それは困るよ、美沙希」
「え?」
「俺は美沙希が好きなんだ。美沙希が白崎になってもらっちゃ困る」
「……」
「確かに、白崎、いや、白崎だけじゃなく、魅力的な女性ってのは数多くいる。でも、俺はその中の誰よりも、美沙希がいいんだ。美沙希じゃなきゃ嫌なんだ!」
「京太郎さん……」
「俺は美沙希が好きなんだ。美沙希が誰かにあこがれて、美沙希じゃなくなっちゃうのは嫌だ。そうあってもらっては困る!」
「では……ではもし、私が今の私じゃなくなったらどうします?」
「例えば?」
「ん~、事故にあって顔に傷がついたとか、羊飼いに戻って仕事をすることになったとか……他には、なんでしょう」
「……俺は、美沙希の個性がなくなるのが嫌だ」
「個性、ですか」
「美沙希だけの良さ。今まで羊飼いとして世界を救い、誰よりも優しさ、そして優しさの裏にある残酷さを知っている。今までの苦労があるからこそ、今の美沙希があって、今の幸せがあるんだ」
「……」
「俺は美沙希が美沙希であって欲しいんだ。誰に影響されることもなく、美沙希の個性、それを残したままの変化は仕方ないよ。体型とか。でも、影響されて、マネして、だんだんそのマネしたものと同化してなんか欲しくない」
「そ、そうですか……」
美沙希は、頬を赤くした。
「って、体型は変化してませんよ! 太ってなんかいませんよ!」
おなかやお尻をぺたぺたと触りながら、慌てふためく美沙希。
俺、身長とか、そういう事を言っていたんだけど。
もしかして、最近、体重の変化があったのだろうか。

その夜、美沙希は、ベッドの中で口を開いた。
「京太郎さん」
「なんだ?」
「白崎先輩が抱きついているとき、先輩は性的に興奮しました?」
「え?」
「女性同士がいちゃついているとまでは行きませんが、普通の男性なら興奮するようなシチュエーションだったと思います」
「えっと……」
「ごまかさないで、正直に、伝えてください」
月明かりを通して見た美沙希の瞳は、真剣そのものだった。
「そりゃぁ、結構興奮したよ。なんかこう、男が出来ないことを堂々とやっているからさ、余計」
「そう……ですか」
沈黙。
やはり、美沙希には聞きたくない答えだったか。
「してみたい、ですよね」
「え?」
「男性なんだから、私が白崎先輩にやったように、胸に顔をうずめたり、触ったりしてみたい……ですよね」
「……そりゃぁ、まぁ」
俺は小さく答えた。
「今日、嬉しかったんです」
「え?」
「憧れの白崎さんに甘えられたのが、嬉しかったんです。でも、京太郎さんに、私へのストレートな気持ちを言ってもらえて、もっともっと嬉しくなりました」
「ミサキ……」
「そ、そうしたら……私も女なんですね。京太郎さんに同じことをされたくなっちゃいました」
「……」
「以前、ソファーでキスしてくれたじゃないですか」
俺は、コクリとうなずく。
「あの時、私は嬉しくて、気持ち良くて、幸せで……今、私は、その時、いや、その時以上の嬉しさ、喜び、幸せ……そして、気持ち良さを味わいたいんです」
「……」
「ですから、京太郎さん、お願いします。……私を、女にしてください」
「……わかった」
俺は……美沙希の気持ちを受け入れた。

ポスターの撮影を終わらせれば、作成、張り出しの作業が待っている。
それと同時に、店内の改装も進めていく。
ポスター関係を、桜庭、御園、鈴木。
改装を、白崎、美沙希、俺が担当することにした。
図書部で山ほど作った飾り付け品を、カミツレへと運ぶ。
「金魚ちゃん、なんだか嬉しそうだね。何か良いことでもあったの?」
「えへへ、わかります?」
「うん、とっても幸せそう。あ、昨日の余韻かな?」
「そうなんですよ。もう二度とあんな幸せは、味わえないのかな……って」
「えへへ、恥ずかしいけど、本当にたまにだけ、させてあげたいな~って」
「……?」
「あ、あれ? 私、変な事言ったかな?」
「あ、いえいえ、何でもありません。ぜひお願いします」
「うん、本当はちょっと恥ずかしいんだけどね。なぜだか金魚ちゃんだったら体が受け入れるんだ」
二人のすれ違い続ける会話にヤキモキしていたが、美沙希は気が付いて、上手く修正してくれた。
まったく、そばにいる男の身にもなって欲しい。

すっかりとファンシーになった店内は、もはや女性の憩いの場と化していた。
クリスマスのようなきらびやかな飾りつけに、薄いピンクの垂れ幕。
やわらかく、男だったら座るのに躊躇しそうなクッションに、風船。
ここまでファンシーにすれば、女性専用としなくても、男は退散するだろう。
「で~きた、できた♪」
「な~にが、できた♪」
「「お店~」」
すっかり仲良し、いや、もはや姉妹とも言えるような美沙希と白崎。
ある意味、明日からの三日間が楽しみだ。
「やれやれ、たった三日、限定期間とはいえ、なんだか店がのっとられた気がするわい」
「我慢してください、店長。これも美沙希の思いやりによるものです」
「ハハ、この年になって、思いやりを学ぶとは思わんなだ」
店長は肩をすくめていた。
「明日は俺も裏方で手伝いますので、よろしくお願いします」
「あぁ。私も、キミがいてくれないと参りそうだ」
はしゃぐ二人をよそに、俺達は大きくため息をついた。

あのかわいらしいポスターが功を奏したのか、午後のカミツレは女子生徒でいっぱいだった。
飾り付けられた店内と、おいしいコーヒー、それに店長特製のドーナツが、女子生徒には大ウケしたようだ。
さらには、店内と飲食物がSNSで拡散されたようで、あっという間に学校中に広まっていく。
「て、店長、豆、減りすぎませんかね?」
「ハハハ、こんな事もあろうかと、取り寄せておいた」
「ざ、在庫低減が目的だったはずじゃ……」
「ま、上手く減らして見せるよ、わはは」
どうやら、俺の心配は、取り越し苦労だったようだ。

怒涛の三日間が終わった。
店員として頑張ってくれた、白崎、桜庭、御園、鈴木、そして美沙希。
全員、よっぽど疲れたのだろう。
机にうつぶせになっている。
「お疲れ様。三日間本当にありがとう」
店長が差し入れのコーヒーと、ドーナツを振る舞ってくれた。
「わーい、ありがとうございます!」
一番最初に元気を取り戻したのは、佳奈すけだった。
「早くいただきましょうよ、ね」
「そうだね、佳奈ちゃん。出来立てをいただいちゃいましょう!」
部長の白崎が音頭を取った。
「はむっ……うわぁ~、これおいしい」
「ほう、この甘さと苦味……絶妙だ」
「……癖になりそうです」
「あ~、疲れたからに効きますぅ~」
四人とも、大満足のようだ。
「ほら、美沙希、筧君。キミ達にも」
「わはは~い、ありがとうございます」
俺達も、三日間の限定品に、舌鼓を打たせてもらうことにした。

翌日からポスターと飾り付けの回収が始まった。
担当は、変わらず。
気分転換で変えてみてはという意見もあったが、『ポスターの位置を正確に知るのは、ポスターを貼った者だけだ』という意見の元、準備と同じ面子が片づけをする事になった。
「あぁ……せっかく作ったのに、もったいないです」
「金魚ちゃん、幾つか取っておこうよ。それと、幾つか持って帰ってお家に飾ったら?」
「あ、それはいいアイディアです♪」
早速、店を片付けながら、アレコレと話す二人。
和ましいが、そろそろ現実に戻ってきてもらう頃だ。
もうお祭りは終わったのである。
また明日からは、通常の営業。
今まで来てくれた男性客はもちろん、今回のイベントをきっかけに、女性が来店してもらえるように、努力しなくてはならない。
……しかし、美沙希の笑顔を見ると、なかなか言い出せなくなってしまった。
もう少しだけ、夢を見させておくことにしよう。

部室に戻ると、なんだか部屋が騒がしい。
「一体どうしたんだ?」
「大変なんですよ、筧さん!」
「ポスター画像と、私達の画像が、ネット上で評判なんです」
御園と鈴木の表情は真剣だった。
二人が指差す先には、渋い顔の桜庭。
桜庭が開いた画面を覗くと、あのファンシーなポスターや、店内の図書部員の画像が、電子掲示板やSNSで出回っている。
女子生徒が宣伝目的で公開した画像が、一人歩きし始めたのだ。
中には、
『あぁ、うらやましいなぁ。俺も女の子の胸に飛び込みたい』
『おまいら、右と左どっちが好み?』
『ウエイトレス可愛すぎ』
『また図書部の女の子か。永久保存だな』
という男の嫉妬心が見て取れる。
「なんだか……勢いでやってしまったが、冷静になってみると……こうなる事は明白だったな」
桜庭はがっくりと肩を落とす。
「うぅ……なんだか、死ぬまで永遠に他人に見続けられているようで……正直怖いです」
がたがたと震える美沙希。
「ど、どうしよう。何か方法ないかな?」
怯える白崎。
「あ」
「鈴木、なんかいいアイディアがあるか?」
「一つだけ、可能性があるかもしれません」
「何だそれは! 是非言ってみてくれ」
桜庭が、藁をもすがる思いで鈴木に問いかける。
「あ~、でも成功するかどうか……」
「何でもいい、まずは言ってみてくれ」
「ちょっと聞いてきます」
鈴木は、部室を出て行った。
「一体、何だろう?」
「白崎、鈴木に賭けてみようじゃないか」
「うん……」
佳奈すけが帰ってくるまで、図書部はしんと静まり返っていた。
しかし、佳奈すけが帰ってくるなり、図書部は喚起に湧いた。
「うん、それなら問題ないね」
「良く思いついたぞ、鈴木」
「さっすが佳奈!」
「鈴木さん……ありがとうございます!」
「ま、ま、待った! 俺の許可を取れ!」
喚起の中、一人慌てふためく俺。
「まぁまぁ、人助けだと思って」
ニコニコ顔の鈴木。
「膳は急げという事で、飛んできました♪」
「う、うわ、悪魔だ!」
「いえいえ、私は皆を救う天使、嬉野紗弓実です」
「い、いや、お前は悪魔だ!」
「貴方にとってはそうかもしれませんが、ここの女性陣にとっては、天使ですよ」
にっこりと笑った嬉野さん。
手にはいつの間にか、鈴木が俺に使っている化粧道具があった。
「それでは筧さん、私に撃たれて誘導されるか、それともおとなしく誘導されるか、二つに一つ、選んでくださいね」
「う……」
俺は、がっくりと肩を落とした。
「京太郎さん……」
「な、何だ美沙希!」
俺はこのとき、美沙希なら……美沙希なら俺の味方をしてくれると思った。
「頑張って来てくださいね!」
彼女が、彼氏を売った瞬間だった。

俺は京子となり、涙を呑んで撮影をこなした。
その電子データがとあるサーバーに保存されると、瞬く間にダウンロードを求めるアクセスが集中した。
その電子データには、ポスターの画像や、ウェイトレス姿の図書部員など、カミツレの三日間の撮影データが消滅するウイルスが含まれている。
その為、この電子データのダウンロードと引き換えに、それらのデータが消滅する。
かなりきわどい写真をとったせいか、汐美学園中の男の中から、あの三日間のデータは、綺麗さっぱりなくなったらしい。
それらの消滅と共に、俺の中の大事な何かも消滅したような気がする。
ただ、このおかげで、今、目の前に、美沙希の笑顔があるのだから、それもやむなし、と思うことにしよう。
「ねぇ、京太郎さん」
「なんだ?」
「私、羊飼いの時は、他人の願いを叶えてばっかりでした。でも、自分の願いを、みんなで叶える時って、こんなにも楽しいんですね!」


"羊飼い"の依頼 END


いかがだったでしょうか。
久しぶりに一万字をゆうに超える長文となりました。
イヤハヤ、筆が進む進む。
急遽作成したので、ぽろぽろと脱字があると思いますが、発見次第修正していきます。

さてはて、このお話、自分で作ってて結構気に入っちゃいました。
中盤で金魚が女になるわけですが……。
その部分を追加した完全版を、5月24日に行われる「真夏のフェスティバル」にて出版しようと考えています。
当然、十八禁です。
絵はなく、文字だけとはなりますが、金魚と筧のハジメテを描こうかと思います。
乞う、ご期待!

米原 伊吹

UUアクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

PVアクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

livedoor プロフィール
記事検索
Twitter プロフィール
米原 伊吹(マイバラ イブキ)と申します。忠義と愛の八月信者です。 八月至上&原理主義(マイルド派)所属。 オーガスト(特に千莉ちゃん)が好き過ぎて、Kの人に進化しました。 フォローは私の独断と偏見によって決まり、常に変動します。 なお、18禁画像を取り扱いますので、18歳未満の方が私に接触することに一切を禁止します。
最新コメント
  • ライブドアブログ