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第31回全国地域リーグ決勝大会。
決勝ラウンドの初日を見に来ました。

日本サッカーのピラミッドは裾野が意外に広い。
J1、J2くらいまでは誰でも知っているだろう。
「3部」に相当するのがJFL。ここまで全国リーグである。
その一つ下に位置するのが地域リーグだ。
北海道、東北から九州まで全国に9つある。

地域リーグ決勝大会の出場は合計14チーム。
昨年のベスト4を出した地域が2つ、他は1つ出場枠を持っている。
これに加えて全国社会人サッカー選手権大会の優勝チーム枠が1つある。
昇格のレギュレーションは毎年少しずつ違うらしい。
今年は上位2クラブがJFLに自動昇格。
3位チームはJFLの16位と入替戦を行う。
岐阜FCがJ2へ上がる場合は3位も自動昇格だ。
グループリーグから4チームが決勝ラウンドに進出。
3日で3試合という過酷な総当たり戦である。
会場は熊谷スポーツ文化公園陸上競技場。
今日の第一試合はファジアーノ岡山とニューウェーブ北九州の対戦だ。

ファジアーノ岡山FCは前身チームを引き継いで2003年に誕生。
2006年に株式会社化。今年8月にJリーグへの準加盟が認められた。
今季の中国社会人リーグは17戦全勝という圧倒的な強さで制した。
かなり本気で上を目指しているチームである。
社長の木村正明氏はゴールドマンサックス証券の執行役員から転じた人物。
ゴールドマンは日本一ステータスの高い職場じゃないかな?
平均給与もテレビ局なんて目じゃない。ただし猛烈にタフな組織である。
友人がここの投資銀行部門で働いていたが、帰宅は午前3時4時だった。
私も大学5年の時に彼のツテでここの就職説明会に出たことがある。
就職氷河期なのに推定2万円のディナーをご馳走してもらった。
そんな金ピカ企業から地域リーグに身を投じるとは酔狂なお方である。
ファジアーノとはイタリア語で「雉」の意。
岡山といえば吉備の国。吉備といえば桃太郎さん。
さすがに桃や犬や猿でチーム名は作れなかったかな(笑)

ニューウェーブ北九州も将来的には上を目指しているクラブだ。
今季は激戦のkyuリーグで初優勝。最終節でホンダロックを逆転した。
監督は与那城ジョージ氏。
ブラジル出身で85年に帰化。W杯メキシコ大会予選にも参加した。
ラモス瑠偉や戸塚哲也とともに読売クラブを支えた往年の名選手。
指導者歴も読売、名古屋、京都など豊富だ。
前に「北九州と博多のダービーが実現したら盛り上がる」という説を聞いた。
血の熱さ、ライバル感情は他に類を見ないそうだ。

ファジアーノ岡山
GK  1 堤喬也   179/78 V・ファーレン長崎
DF 15 重光貴葵  174/73 東京ヴェルディ
    4 伊藤琢矢  180/74 佐川急便SC
   16 野本安啓  182/73 コンサドーレ札幌
   18 池松秀明  173/68 京都サンガ
MF 28 小野雄平  170/67 徳島ヴォルティス
   38 三原直樹  173/66 東京ヴェルディ
   22 臼井仁志  161/60 神戸国際大附属高
   10 川原周剛  173/65 三菱水島FC
FW  9 喜山康平  179/73 東京ヴェルディ
    7 朝比奈祐作 174/70 東海大

−−−-朝比奈-−−−喜山−−−−
−−川原−−−−−−−−臼井−−
−−−−−三原−−小野−−−−−
−池松−−野本−−伊藤−−重光−
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−-堤-−−−−−−−

ニューウェーブ北九州
GK  1 水原大樹  182/75 東京ヴェルディ
DF 18 小野信義  178/71 横浜FC
    4 ドグラス  193/86 モンテディオ山形
   15 永野諒   172/62 福岡教育大
   20 吉野慎治  173/65 九州共立大
MF  5 桑原裕義  180/72 アルビレックス新潟 
    2 タチコ   193/75 リオ・プレート
    8 日高智樹  170/66 福岡教育大
   10 森本惟人  172/64 アリエット熊本
FW  9 藤吉信次  178/70 FC琉球
   26 中嶋雄大  181/74 福岡教育大

−−−−中嶋−−−−藤吉−−−−
−−−森本−−−−−−日高−−−
−−−−-タチコ−-桑原−−−−−
−吉野−-永野-−ドグラス−小野−
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−水原−−−−−−−


魅力的かつ対照的な布陣である。
ファジアーノ岡山は若手の有望株が揃う。
喜山康平、三原直樹、今日はベンチの弦巻健人がヴェルディ同期生。
ユース時代には高円宮杯優勝。まだプロ2年目である。
選手のだぶつくチーム事情からレンタルに出されている。
ボランチの小野雄平もヴェルディっ子。まだ22才。
ナイキカップで「世界2位」になった時の主将じゃなかたっけ?

ニューウェーブ北九州は渋い面子が揃う。
水原大樹は32才。小倉、中西と共に四中工を全国制覇に導いたGKだ。
小野信義は33才。ヴェルディ、ガンバなどに在籍。
横浜FCではチーム創立以来7年プレーした。
桑原裕義は36才。広島、新潟でプレーした。
J1通算で259試合に出場している。
藤吉信次は37才。まだ現役だったのか!
スタメンはベテラン4人、地元九州の若手5人、ブラジル人2人に三分できる。

ファジアーノ岡山のサポーターが4,50人来ていましたね。
ニューウェーブ北九州も20人くらい顔を見せていた。
休みを取って遠いところから駆けつけてきたんだろう。
こういう情熱にはJ1も地域リーグも関係ないって話だ。

立ち上がりは大きな動きが無かった。
両チームほぼ同じ布陣。しっかりつないで無理をしないサッカー。
いわゆる「ミラーゲーム」が展開されていた。

試合が動いたのは前半30分過ぎら。
33分、北九州は吉野慎治が左から投じたスローイン。
中嶋雄大が二アサイドで反転してシュート。鋭い当たりだが外。

36分、岡山は重光貴葵の突破で獲得したFK。位置は右タッチライン際。
喜山康平が直接狙って二アサイド。GK水原大樹がキープした。

岡山の狙いは前線での細かいパスワークだ。
FWが起点となりワンタッチで前後左右に揺さぶる。
2本、3本をつながるようになってくる。
両サイドバックやボランチも前線に絡んではまれば楽しいサッカーだ。 

37分、北九州はタチコに警告。

42分、北九州はタチコに2枚目の警告。
中盤で相手の突破に足を上げてタックルにはいってしまった。
故意でないにせよ相手の足を払った危険なプレー。
タチコは悔しいのか納得いかないのか…。
ユニフォームで涙を拭いながら名残惜しそう。
与那城ジョージ監督に引っ張られて外へ引き上げていった。

北九州は藤吉信次を右MFに下げた「4−4−1」で数的不利に対応。

45分、北九州は森本惟人の左クロス。
中嶋雄大はヘッドで合わせるもGK堤喬也がキープ。

前半ロスタイム48分。
岡山は川原周剛が左からCK。
重光貴葵がヘッドで合わせてシュートは枠内。
GK水原大樹が弾いてエリア内へこぼれる。
しかし岡山の選手は先に触れない。

前半はそのままスコアレスで終了。

50分、北九州は中嶋雄大が前線で粘って戻す。
吉野慎治が放ったミドルは相手に当たって外。

55分、岡山は川原周剛がFK。
30mほどの距離からゴール前の密集に合わせる。
誰かに合ったが当たりは弱かった。

58分、岡山は朝比奈祐作→ジェフェルソン。
ジェフェルソンは188cmの大型FW。横浜FCにも在籍した。

60分、岡山は喜山康平の右CK。
ジェフェルソンのヘッドはきっちり合わせたが枠の上。

65分、岡山は右から入ったクロスがこぼれる。
重光貴葵のミドルはGK水原大樹がナイスセーブ。

66分、岡山は川原周剛の左CK。
これが直接枠を捉えてニアを襲う。GK水原大樹がパンチして逃れた。

68分、岡山はジェフェルソンが左にワンタッチで叩く。
三原直樹が攻め上がってダイレクトでショートクロス。
池松秀明がエリア内に攻め上がってシュート。
枠を逸れたがいい形、決定的な場面だった。

69分、岡山は臼井仁志が右から高速クロス。
喜山康平のヘッドは決定的。しかしバーに嫌われた。

ファジアーノ岡山は一気に流れを掴む。
しかし決めるべき時に決めねば…。しばらく勢いが納まる。

74分、北九州は森本惟人→楠亮平。

78分、岡山は臼井仁志→弦巻健人。
臼井仁志は高卒1年目。知らない選手だから気になった。
技術もそこそこあるけど、それより「頑張り屋」の印象が強い。
161cmでも怯まず当たりに行くし、ちゃんと戻るし、よく走る選手。

83分、岡山は中嶋雄大に警告。

84分、岡山は右CK。
喜山康平が短く出す。弦巻→喜山→弦巻とヴェルディ同期でパス交換。
弦巻健人はエリア右から間合いを計ってクロス。
ジェフェルソンが二アサイドに飛び込んでヘッド。
ふわっとゴール右に吸い込まれた!
<ファジアーノ岡山 1−0 ニューウェーブ北九州>

北九州はここでカードを二枚切る。
86分、藤吉信次→宮川大輔。吉野慎治→古賀宗樹。
藤吉信次が良かったですよ。
身体の切れは両チームでも一番じゃないかな?
技術はあまり無いんだけど…。若々しくてびっくりした。

87分、岡山のゴールキックが前線に入る。
北九州のDFがクリアミス。
喜山康平がこれを奪おうと走りこむ。
ボールがイレギュラーして拾いきれないが、GKが進路を妨害してしまう。
このプレーで水原大樹に警告。

89分、岡山は弦巻健人に警告。

89分、北九州は右サイドのハーフライン付近からFK。
ボールはラインを割ったが主審の笛。何とPKの判定。
重光が競り合いでが相手を引っ掛けたらしい。重光貴葵に警告。

90分、北九州のPKは小野信義が成功。
<ニューウェーブ北九州 1−1 ファジアーノ岡山>

94分、岡山は喜山康平の右CK。北九州DFがクリア。
攻め直して喜山康平の右クロス。これは前線がオフサイド。

結局そのままタイムアップ。
今大会は決勝ラウンドも総当りのリーグ戦である。
ただし90分を終えて引き分けだとPK戦がある。
PK戦で勝つと勝ち点2。PKで負けると勝ち点1。
PK戦に「勝ち点1」分の価値があるレギュレーションだ。

PK戦の先攻はファジアーノ岡山。
北九州の3人目池松秀明が左ポストに当ててしまう。
岡山も5人目の小野雄平も左ポスト。
北九州の5人目。楠亮平のキックをGK堤喬也がストップ!
PK戦はファジアーノ岡山が4−3でものにした。

地域リーグ決勝大会 決勝ラウンド初日
ファジアーノ岡山 1−1(PK4−3) ニューウェーブ北九州
熊谷スポーツ文化公園陸上競技場 観客390人