2009年11月13日

投高打低の犯人は誰だ?

「2010年のドラフトは豊作」と言われている。
人気者の斎藤佑樹が最上級生になる。
他にも150キロ超の速球派が選り取りだ。
今年は六大学から2投手がドラフトで1位指名された。
来年の神宮はそれ以上の投手が最上級生に5,6人いる。
ベースボールマガジン誌が「松坂世代に匹敵」と書いたほどだ。

ただ豊作は投手に限った話である。
投高打低現象が解消される気配がない。
小池翔太、荒木郁也、林崎遼、伊志嶺翔太、田中宗一郎…。
今度のプロアマ戦で大学日本代表に選ばれた3年生である。
もちろん悪い打者じゃないですよ。
ただプロの即戦力ではない。
二軍ならレギュラーを取れるかな?というレベルだ。
日本野球は野手が枯渇し始めている。
「U-25」のレギュラーはもはや希少だ。
84年組は松本哲也、吉村裕基、西岡剛、長谷川勇也、坂口智隆と揃う。
プロのレギュラー格が7,8人いる。
ただ85年組から一気に人材が途絶える。
「高卒6年目」「大卒2年目」以下がいない。
全球団を探しても目ぼしい「U-24」はこれくらいだ↓
85年…小瀬浩之、小窪哲也
86年…石川雄洋、細山田武史
88年…坂本勇人


一時的な現象ではない。
アマチュア野球を見ているとロースコアの試合が多い。
いい野手が見当たらない。
東都の投手成績打撃成績を見てもらうと分かりやすい。
どちらも今秋のものである。
東都はデータが充実している。コールドがない。
あと「東大」が混ざってない(笑)
実力が接近して壊れる試合が少ない。
だからこれを見てもらった。
なお指名打者制が導入されているから若干「打高」の要素がある。

規定投球回数に達した投手が11人いる。
0点台が1人、1点台が5人、2点台が3人…。
ダルビッシュ有より防御率のいい投手が5人いる(笑)
東都限定の話ではないと思う。
大学選手権で見た各校の主戦は防御率0点台が珍しくなかった!
規定打数に達した野手は36人。
3割台が4人、2割台が20人、1割台が10人、0割台が2人。
全チームの平均打率は何と2割を切る。
中日がドラフトで3位指名した中田亮二が2割5分5厘。
ソフトバンク4位の中原恵司は1割8分2厘だ。
36試合の総得点は「187」。
1チームに割ると1試合の平均得点が「2.60」。
最多得点は3校が記録した「7」。
つまり二桁得点の試合は無い。
一方で完封試合が11試合もあった。
野球はサッカーと同じくらい点の入らないスポーツとなりつつある!

私が初めて見た大学野球の試合を思い出す。
慶應義塾大に高橋由伸がいた。
打撃練習の飛距離、矢のような送球…。
圧巻でした。どこに投げても打ちそうな雰囲気を持っていた。
本当にパーフェクトでした。
そういえば同姓同名の20キロ増量した選手が巨人にいますね。
団塊ジュニアは日本野球の黄金時代だった。
高橋由伸、井口忠仁が同時期に神宮でプレーしていたんだから!
それに比べると最近の大学野球は寂しくなった。

少し前まで「打高投低」が言われていた。
打者はバッティングマシンで打ち込む。
録画が普及して投手の癖も容易に分析できる。
ボールの反発力は上がり、バットは軽くなっている。
打者優位の説明は簡単である。
でも現実は逆に動いている。
なぜ投手が有利なのか?野手が育たないのか?
私はずっとこの問題を考えてきた。
素人なりの分析を書いてみようと思う。
仮説になるけどご容赦頂きたい。
この議論を他のファン、専門家が発展させてくれたら嬉しい。

最近三つの「弊害」を痛感している。
一つ目は右投げ左打ちの弊害だ。
最近見た学生野球の試合を見て改めて思った。
前橋工業は左打者が9人。そのうち右投げが8人。
東海大相模、前橋商業は左打ちが7人だった。
創価大と白鴎大が左7人。東京情報大が6人…。
合計しても「右投げ左打ち率」は半分を超えるのではないだろうか?
左打ちのメリットは間違いなくある。
一塁への距離が短い。内野ゴロを安打にできる可能性が高い。
投手は右が多い。右対左は一般的に有利である。
利き目が右ならボールを見やすいという利点もある。
ただ打ち方がぎこちなくなるから飛距離は出ない。
松井秀喜みたいな例もあるから絶対的な摂理ではない。
一般的に「右投げは右打ちの方が飛ばしやすい」ということである。
これは高校、大学の問題でない。
野球を始めた直後から左打ちを始めている選手が多いそうだ。
適性のない子まで「何となく左打ちにする」傾向があるように思う。
子供はやっぱり「おかわり君」よりイチローに憧れるんだろう…。

二つ目は「金属」の弊害だ。
野球は高校を卒業するまで金属バットである。
木と違って折れない。
野球の普及を考えたら仕方ないのだろう。
ただ金属バットは性能が高すぎる。芯が大き過ぎる。
木のバットは「点」で合わせないと飛ばない。
金属は「面」に当てれば飛んで行く。
だからバットコントロールが雑でも打ててしまう。
強く振らなくても飛んでしまう。
腰を入れない、手首を使わない「金属打ち」が定着する。
18才を過ぎてからそれを矯正するのは難しい。
ちなみにイチローは子供の頃から木で打ち込んでいたらしい。
育成を考えれば木や竹で練習するべきだと思う。

日本野球は「球に逆らわない打撃」信仰が強い。
タメのない手打ちが賞賛されることさえある。
金属ならそれでもヒットが打てる。
でも木のバットは全身を使わないと飛ばない。
北京五輪を見て痛感した。
アメリカ、韓国の打者を見て「何て粗いんだ」と思った。
でもそういう選手が日本の有力投手を打ってしまう。
「ホームランの打ち損ないがヒット」を地で行っていた。
決して「日本人に飛ばす適性がない」という訳ではない。
日本にも中村剛也、村田修一、中村紀洋みたいな選手がいる。
でも皆がイチローを目指してしまう。
強く振り切る選手は指導者に直されてしまうんだろう。

三つ目は「野球しかやらない」弊害だ。
これはこちらの文章でも触れた。
他の競技、遊びで身体を使わない子供が増えている。
若い選手を見ていると総じて身体の動きがぎこちない。
反転が遅い。足の運びが悪い。腰を落とせない。
「背筋力300キロ」的なパワー自慢は増えているようだけど…。
全身を同調させる、使いこなす能力を持っている選手がいない。
身体操作のセンスが身についてない。
相撲でも体操でもサッカーでも何でもいい。
成長期以前に他の競技へ取り組めば肉体のポテンシャルは拡がる。
でも指導者は短期的な結果が必要だから「回り道」を嫌うんだろう。
バック転が上手くても野球で使う場面はない。
でも秋山幸二はバック転をする能力があったからあの打撃、守備があった。

プロ野球の補強は簡単だ。
投手と捕手、遊撃手を取ればいい。
捕手と遊撃手が務まらない選手を他に「左遷」する。
一塁から遊撃に回るのは無理だ。でもその逆は簡単である。
遊撃手は野手の「華」である。
特に高度な運動能力、センスを要求されるからだ。
でも最近はアスリート系が外野に集中している印象がある。
早い時期から簡単なポジションに移ってしまう。
今年はアマ球界に凄い遊撃手が少なかった。
素人目に上手いと思える派手なアスリートがいない。
今年の大学4年で一番いいと思ったのは近畿大の荒木貴裕だけど…。
彼は俺が見た試合で2つエラーした(苦笑)

イチローが日本野球を悪くしている。
こう書いたら流石に言い過ぎだ…。
正確には「イチロー志向」が野手のレベルを落としている。
皆が右投げ左打ちの巧打者を目指しすぎる。
俊足、強肩のアスリートが外野に逃げてしまう。
近年そういう弊害を感じている。

augustoparty at 21:00│Comments(14)TrackBack(0) 野球批評 

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この記事へのコメント

1. Posted by asshi   2009年11月13日 23:07
少年野球のレベルも年々落ちてます。今年、都のベスト8に入ったけど、10年前なら地区大会2回戦くらいのレベルの子供達。それが天狗になるから癖が悪い。そんな我がチームも左打ちが4、5人いますよ。

ここ最近で一番ビックリしたのは帝京の伊藤拓郎の小学生の時かな?レベルがずば抜けてましたよ。
2. Posted by よしお   2009年11月14日 01:12
>イチローが日本野球を悪くしている。
大空翼が日本サッカーを悪くしている。
と同じなのか・・・。
3. Posted by do   2009年11月14日 10:32
5 最近、アマチュア野球の選手に大柄な人が減って、いかにも足が速そうな小柄なタイプが増えてる気がします。
今年の甲子園の開会式ですれ違う球児たちが170cm
と小柄な私と大して変わらなかったのに少し驚きました。聖望の選手のガタイが際立って良かったのも覚えてますが。

昔は殆どが体も大きくてガタイも良くて足も速くてってイメージでしたが…
4. Posted by アフロ建   2009年11月14日 22:38
竹バットって水島新司の創作じゃなかったんだ(^^;)
おはようKジローでは(分かりますよね?)竹バットで特訓してて、芯に当てなきゃシビレるってありましたね。
あとは当てに行くんじゃなくて、振り切れってのもあったかな。

強く振るでピンときたのが池田高校ですか、やまびこ打線を思い出します。
5. Posted by いつも拝見しています   2009年11月15日 11:42
まず身体能力が重要視されるアメリカでは
他競技でも成功していた選手が多いですね。
NBAではアメフトのレシーバーでも活躍した
レブロン・ジェームスやサッカーやってたスティーブ
ナッシュ。NFLでもカレッジバスケのスターでもあった
ランディー・モスやトニー・ゴンザレスなどが成功してます。
NFLとMLBで二束のわらじを履いたディオンサンダース
なんてのもいましたね。
6. Posted by fs   2009年11月16日 00:54
党首の仰る三つの弊害のうち二つ(金属バット・野球しかやらない)は
今に始まった話じゃないですよね
荒れる素だから敢えて触れなかったのかもしれませんが
野球を選ぶ子の資質の低下って問題はないんでしょうか
7. Posted by 野球観なくなって10余年   2009年11月16日 20:18
打者の成績が悪いのは投手のレベルが高いから?
投手の成績が良いのは打者のレベルが低いから?
どっちなんでしょう?
8. Posted by プライセス   2009年11月16日 22:19
凄いタイトルですね(笑)。ただ曖昧なタイトルよりも全然好きですよ。私は。

指導者も、選手もイチロー志向に走ってしまいましたね。2006年のWBC初優勝したときからそれに拍車がかかってしまったと思います。スモールベースボールはよくいえば緻密的ですが、悪く言えば非力な野球ですからね。簡単にいってしまえば。
この国はスラッガーを育てるのが本当に下手になってきています。スラッガーになる可能性を秘めた選手はいるのですが、日本ハムのように走攻守の総合力の高い選手たちがレギュラーとして選出される。勝つためには大事な戦略のひとつでしょう。しかしスラッガーの芽を摘んでいることは事実です。育てるというより我慢強さがなくなってきたのもスラッガーが育たない一因かもしれません。

来年は中田翔や岡田が三振のワースト記録を作ってでも試合に出場し続けてもらいたいですね。

ps 明日雨で中止になると水曜日はいかないかもしれません。4試合はきついですね。試合をみるというより更新が滞ってしまいますので・・・。
自宅でゆっくりと見ながら、更新作業したいと思います。
また球場で野球談義をしたかったのですが、まことに申し訳ありません。
9. Posted by あ   2009年11月18日 08:30
智弁和歌山が竹バットで打撃練習しまくってるのは結構いろんなとこで言われてると思うんだけど。
10. Posted by ダケ   2009年11月21日 17:52
全く同じ事を考えてしまいました。

始めまして一野球ファンのダケといいますm(_ _)m
いつも記事を楽しく読ませていただいております。

ドラフトについて考えるのが好きでいろいろ候補を見ていたのですが野手の上位候補(特に大学)がいないということに気がつきました。
野手に関しても不作と言われていた今年だって7人くらいは上位候補がいたはず、それなのに今年にいたってはめぼしい選手すら数人上がるのみで投手の質がいいわけけであると思いました。

けど投手のレベルが上がっているなら野手もそれなりに結果を残せる(対応できる)はずなのに投稿低打は変わってません。

いっそのこと中途半端な大学の選手をドラフトで獲るくらいなら・育成で独立リーグの大型野手を獲るなり他球団の埋もれている選手をトライアウトから見つけた方がマシなんじゃないかと考えてしまいます。

このまま人材が枯渇する事はまだ無いとは思いますが何か対策を取らないととんでもない事になりそうな気がしてなりません・・・・・
11. Posted by 党首   2009年11月23日 08:58
> asshiさん
> ここ最近で一番ビックリしたのは帝京の伊藤拓郎の小学生の時かな?

伊藤君は凄かった。
何気に君のやってる地区はレベルが高くないかい?

> よしおさん
> 大空翼が日本サッカーを悪くしている。
> と同じなのか・・・。

あるとおもいます(笑)
一時「トップ下にタレントが集中する」と言われましたよね。

> doさん
> 最近、アマチュア野球の選手に大柄な人が減って、
> いかにも足が速そうな小柄なタイプが増えてる気がします。

確かにアスリートがなかなかいませんね。

> アフロ建さん
> おはようKジローでは(分かりますよね?)竹バットで特訓してて、
> 芯に当てなきゃシビレるってありましたね。

すいません。水島漫画は読んだことがなく…(笑)
でも竹ばっとってそういう特性みたいです。
12. Posted by 党首   2009年11月23日 09:07
> いつも拝見しています、さん
> まず身体能力が重要視されるアメリカでは
> 他競技でも成功していた選手が多いですね。

他競技に取り組むことで狭義の「身体能力」でなく、
身体の操作感覚、反応といったセンスが鍛えられると思います。
アスリートとしての「幅」ですね。

> fsさん
> 荒れる素だから敢えて触れなかったのかもしれませんが
> 野球を選ぶ子の資質の低下って問題はないんでしょうか

あるかもしれません。単純に子供の人口が減ってます。
ただ「他競技に流れる」影響は言うほどないと思うんです。
競技人口はトップクラスだし、野球が圧倒的に盛んな地域もあります。
野球で成功する子がサッカーで成功するとも限りませんし。
つまり「両方一緒に強くなる」ことは可能だろうと思います。

> 野球観なくなって10余年、さん
> 打者の成績が悪いのは投手のレベルが高いから?
> 投手の成績が良いのは打者のレベルが低いから?
> どっちなんでしょう?

両方あると思うんです。
13. Posted by 党首   2009年11月23日 09:18
> プライセスさん
> スモールベースボールはよくいえば緻密的ですが、
> 悪く言えば非力な野球ですからね。

野球にきめ細かさは必要だと思います。
ただ理想は「ビッグな選手がスモールな野球をする」ことです。
黄金時代の西武がそうでした。

ただそれは大人になってからやればいいことだと思います。
ティーンエイジは「アスリートとしての幅」を拡げられる貴重な時期です。
アスリートとして万能だからこそ、
野球選手としての幅も広げられるんだろうと。

> 育てるというより我慢強さがなくなってきたのもスラッガーが育たない一因かもしれません。

強く同意します。我慢強さは大事です。

> あ、さん
> 智弁和歌山が竹バットで打撃練習しまくってるのは結構いろんなとこで言われてると思うんだけど。

ご指摘多謝です。
無知にして知りませんでした。
内容を修正しなくてはいけませんね…。

> ダケさん
> ドラフトについて考えるのが好きでいろいろ候補を見ていたのですが
> 野手の上位候補(特に大学)がいないということに気がつきました。

更に言うと外野手はいるんです。でも内野手がいない。
プロ野球は「内野が外野に転向する」ことはあっても、
「外野が内野に転向する」ことはまず有りません。
内野の方が難しい、難易度の高いポジションだからです。
アスリートとして能力の高い子が外野に「逃げてしまう」のは残念です。
14. Posted by メジャーでも通用できた右代   2012年09月26日 20:34
3 もしロンドンオリンピックに出ていた右代をスカウトして育成したら全盛期秋山みたいな選手になっていたのでは。 

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