カテゴリ:
サッカー(U18)
引き続き国立競技場で高校サッカー。
準決勝はフレッシュな顔ぶれとなった。
どこが勝ち上がっても初の決勝、初の優勝だ。
第二試合は青森山田と関大一の対戦である。

青森山田は順当である。
本気で優勝を狙い、準備してるチームに違いない。
柴崎岳、中島龍基と年代別代表もいる。
関大一高の準決勝進出は驚いた。
知人は「関西勢の中で一番期待できない」と。
ただ今大会の戦いは堂々たるものである。
八千代、藤枝明誠と名のある高校を撃破した。

青森山田高校
ＧＫ　１２　櫛引政敏　　２年　１８５／７２
ＤＦ　　５　横�霆悉咫　。嫁�　１７１／６２
　　　　３　中山渉吾　　３年　１７６／６９
　　　　４　赤坂勇樹　　３年　１８２／７０
　　　　６　中島龍基　　３年　１７０／５８
ＭＦ　　７　椎名伸志　　３年　１６６／５９
　　　１０　柴崎岳　　　２年　１７２／６２
　　　　９　遠藤竜史　　３年　１６９／５８
　　　　８　三田尚希　　２年　１６４／５７
ＦＷ　１３　野間涼太　　３年　１７８／６７
　　　１４　成田鷹晃　　２年　１７０／６０

−−−−野間−−−−成田−−−−
−−三田−−−−−−−−遠藤−−
−−−−−椎名−−柴崎−−−−−
−中島−−赤坂−−中山−−横�陝�
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−櫛引−−−−−−−

関西大学第一高校
ＧＫ　　１　樫根啓人　　２年　１８４／７４
ＤＦ　　６　小島悠司　　３年　１７８／６９
　　　　５　小谷祐喜　　３年　１８０／７３
　　　　４　水田優輝　　２年　１７６／７１
　　　　２　横川玄　　　３年　１７３／６２
ＭＦ　１０　三浦陽平　　３年　１８０／７３
　　　　７　久保開立　　３年　１７２／６４
　　　１９　梅鉢貴秀　　２年　１７６／６５
　　　１２　和田紳平　　１年　１７５／６４
　　　１５　濱野友旗　　２年　１７７／６４
ＦＷ　　９　久保綾祐　　３年　１７１／７４

−−−−−−-久保綾-−−−−−−
−−−−−−−濱野−−−−−−−
−和田−-久保開-−梅鉢−−三浦−
−−横川−-水田−小谷-−小島−−
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−樫根−−−−−−−

関大一は藤枝明誠戦と同じやり方。
小谷祐喜がスイーパーとして余る。
水田優輝に加えて両ＳＢは中へ絞ってＦＷをマークする。
浮いた一人が中盤まで押し上げる。
三浦陽平、和田紳平は守備の仕事が多い。
相手サイドハーフを追って最終ラインまでカバーをする。
「誰が誰を潰す」という硬直性は無い。
でも連戦の中で役割分担、受け渡しがスムーズになった。
攻撃は前線に早めのロングボールを入れる。
強烈な得点パターンはセットプレー。
梅鉢貴秀が左右両足で精度の高いキックを入れる。
久保開立のロングスローも有効だ。

立ち上がりから激しい展開。
お互いに決定機が続く。

２分、関大一は梅鉢貴秀が右ＣＫを左足で入れる。
小谷祐喜が遠いサイドで外に首を捻る。
ヘッドを上手く摺らしたが惜しくも左ポスト。

６分、青森山田は横�霆悉咾�押し上げてヘッドを跳ね返す。
関大一ＤＦはお見合いして処理が遅い。
三田尚希がセカンドボールを拾ってエリア内に切れ込む。
関大一ＤＦは何とかこれを引っ掛ける。
最後は柴崎岳がセカンドボールをミドルシュート。
ＧＫ樫根啓人がブロックして外。

８分、関大一は梅鉢貴秀が右ＣＫを左足で入れる。
横川玄がニアの密集からヘッドを合わせる。
セカンドボールは久保綾祐の足元。
ゴール脇から反転してシュートを狙うが打ち切れない。

１３分、青森山田は野間涼太が右サイドに展開。
横�霆悉咾�駆け上がってファーサイドへ折り返す。
柴崎岳は胸でトラップ。冷静に右後方へ落とす。
野間涼太がエリア外から強烈ミドルシュート。
ＧＫ樫根啓人が指先で触れて外。

１５分、関大一は小島悠司が前線にロングフィード。
久保綾祐が走り込んで競りに行く。
ＧＫ櫛引正敏は大きく飛び出してパンチ。
久保開立は左足ループシュートでＧＫの頭上を狙う。
いい狙いだったけど枠の右外。

１６分、関大一は小谷祐喜がブロックして縦に叩く。
小島悠司が１タッチで中に叩く。
梅鉢貴秀は右サイドへのロングボールで急襲。
濱野友旗が裏へ抜け出してエリア右に切れ込む。
左足シュートは決定的だったけどＧＫ櫛引政敏がブロック。

１７分、関大一は梅鉢貴秀が左ＣＫを右足で入れる。
小谷祐喜が遠いサイドから中にヘッドを落とす。
横川玄のヘッドは小さいが味方に繋がる。
久保綾祐がセカンドボールを拾ってシュート。
何十ｃｍ単位の至近距離だったがＧＫ櫛引政敏はよくキープ。

１５分過ぎから関大一に決定機が続く。
しかしＧＫ櫛引政敏が好セーブを連発して凌いだ。
試合はしばらく落ち着いた展開である。

３０分、青森山田は右サイドからスローインを投入。
野間涼太がヘッドを競る。
遠藤竜史がキープしてヒールで中に落とす。
野間はワンタッチで右サイドにフィードを入れる。
成田鷹晃がオフサイドぎりぎりでＤＦ裏のスペースに抜け出す。
スピードを落として右から中へ２タッチ。ＤＦが寄ってくる。
成田は右に切り返して再加速。エリア内へ切れ込む。
関大一は小谷祐喜が併走してスライディングタックル。
しかし一瞬行き遅れてボールに届かない。
主審の判定はエリア内でのファウル。
青森山田にＰＫが与えられる。

３１分、青森山田はこのＰＫを野間涼太が成功。
＜青森山田　１−０　関大一＞

３９分、関大一は梅鉢貴秀が中盤で緩い横パス。
青森山田はカウンターチャンスだ。
成田鷹晃はカットできそうだったけど体勢が悪かったので味方に譲る。
椎名伸志がいい出足で踏み込む。
ボールを奪うと右に叩く。しかしＤＦがブロック。
椎名はこぼれ球に反応して左足一閃。
エリアの少し外からループシュートを突き刺した！
＜青森山田　２−０　関大一＞

４１分、青森山田は柴崎岳がライナー性のパスで右に展開。
遠藤竜史はエリア右で右、左と切り返して更に反転。
マークを完全に振り切ってゴール右脇からシュート。これは枠上。

４３分、関大一は濱野友旗→井村一貴。
これは負傷によるもの。
関大一の布陣はこうなる↓
−−−-久保綾-−−−三浦−−−−
−−和田−−−−−−−−井村−−
−−−−-久保開-−梅鉢−−−−−
−横川−−水田−−小谷−−小島−
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−樫根−−−−−−−

青森山田が２点のリードを守って前半終了。

５１分、青森山田は中島龍基が成田鷹晃とワンツー。
中島は左サイドから一気に駆け上がってエリア進入。
切り返しでスライディングを外すと右に持ち替えてシュート。
シュートは決定的だったが枠の上。

５２分、関大一は三浦陽平→浅井哲平。
布陣はこうなる↓
−−−-久保綾-−−−井村−−−−
−−和田−−−−−−−−浅井−−
−−−−-久保開-−梅鉢−−−−−
−横川−−水田−−小谷−−小島−
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−樫根−−−−−−−

５５分、関大一は井村一貴に警告。
椎名伸志のドリブルを強引に上半身でブロック。

５８分、青森山田は柴崎岳が中盤でパスカット。縦にクサビを入れる。
成田鷹晃はこれを収めて左に叩く。
柴崎は縦に駆け上がって左足のダイレクトで折り返す。
野間涼太がファーに走りこんでボレーを狙うが合わない。

６５分、関大一は和田紳平が左サイドに切れ込む。
青森山田のＤＦが何とか奪って跳ね返すが小さい。
関大一は梅鉢貴秀が押し上げて左足で中央に折り返す。
浅井哲平がＤＦの前を上手く取ってヘッド。惜しくも枠の上。

６７分、関大一は梅鉢貴秀が右ＣＫを左足で入れる。
小島祐喜、小島悠司がファーサイドに飛び込む。
最後は小島がヘッドを合わせたが枠の左。

７３分、青森山田は成田鷹晃→星大貴。
７６分、青森山田は遠藤竜史→橘一輝。
布陣はこう↓
−−−−-星-−−−−野間−−−−
−−三田−−−−−−−−-橘-−−
−−−−−椎名−−柴崎−−−−−
−中島−−赤坂−−中山−−横�陝�
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−櫛引−−−−−−−

８１分、関大一は水田優輝→小畑善孝。
布陣はこう↓
−−−−小畑−−−−井村−−−−
−−−−−−-久保綾-−−−−−−
−−-和田−−-梅鉢−−久保開−−
−横川−−小谷−−小島−−浅井−
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−樫根−−−−−−−

８２分、青森山田は中島龍基が左サイドで相手ボールをカット。
中島は柴崎岳とのパス交換から縦に持ち上がって折り返す。
三田尚希がＤＦの弾いたこぼれ球を拾ってエリア右にスルーパス。
野間涼太のシュートはＧＫの頭上をふわっと破るが枠の左外。

後半は前半以上に青森山田のペース。
運動量が最後まで落ちない。
技術があるので体力のロスも少ない。
ただし２度３度とあった決定機で「３点目」を取りきれなかった。
更にこの時間は「気持ちのズレ」が出ていた。

青森山田はあまりボールを後ろに下げないチーム。
可能な限り「攻め切る」サッカーである。
例えばサイドバックがボランチに当てたらパス＆ゴーで前へ行く。
クロスかフィニッシュで終わる。
それがチームの「決まりごと」なんだと思う。
ただこの時間はどの選手も疲れている。
特に使われる側の選手は休みたい。
スペースに走り込まない、攻め切らずにボールを戻す場面が出ていた。
そうするとズレ、迷いが生じてチームのリズムが悪くなる。
逃げるなら徹底的に逃げればいい。
最終ラインでグダグダ動かす。ボカボカ蹴り戻す。
そういう選択は有り得る。ただし意思統一が必要だ。
青森山田は勤勉で真っ正直なチームである。
だから試合を壊すせこさが無い。
でも２点のリードがあるから問題はない…はずだった。

８９分、関大一は梅鉢貴秀が中盤でセカンドボールを左に落とす。
横川玄が押し上げて久保綾祐とワンツー。
左サイドを抜けて中央に折り返す。
青森山田は赤坂勇樹がＦＷに身体を入れてブロック。
久保綾祐はセカンドボールに喰いついて反転。
エリア左から強烈な左足シュートを流し込んだ。
＜青森山田　２−１　関大一＞

素晴らしいシュートだった。
ちなみに久保綾祐の弟・賢悟君はガンバユース所属。
大阪府国体選抜にも入っていた有望株である。

関大一高は小谷祐喜が前線に攻め残る。
最後はこういう布陣↓でパワープレー。
−−−−−−−小谷−−−−−−−
−−小畑−−-久保綾-−−井村−−
−-和田−−−-梅鉢−−−久保開−
−−−横川−−小島−−浅井−−−
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−樫根−−−−−−−

９１分、関大一は自陣からのＦＫをＧＫ樫根啓人が蹴り入れる。
青森山田は中島龍基がヘッドで跳ね返す。
関大一は浅井哲平がエリア奥からシュート。
中山渉吾がブロックしてエリア右にこぼれる。
井村一貴が左足一閃。完璧なシュートが対角ネットに突き刺さった。
＜関大一　２−２　青森山田＞

ロジックを超越した展開である。
５年前の準決勝を少し思い出した。
ただ今回は２点差だったし…。
関大一高の執念、逞しさを褒めるしかない。

決勝進出はＰＫ戦の結果へ委ねられることになった。
先攻は青森山田。
青森山田１本目。柴崎岳が「コロコロ」気味に成功。
＜青森山田　１−０　関大一＞
関大一１本目。小島悠司のキックを櫛引政敏がブロック。

＜青森山田　１−０　関大一＞
青森山田２本目。三田尚希のキックを樫根啓人がブロック。
＜青森山田　１−０　関大一＞
関大一２本目。久保綾祐のキックを櫛引政敏がブロック。
＜青森山田　１−０　関大一＞
青森山田３本目。野間涼太が成功。
＜青森山田　２−０　関大一＞
関大一３本目。小谷祐喜が成功。
＜青森山田　２−１　関大一＞
青森山田４本目。椎名伸志が成功。
＜青森山田　３−１　関大一＞
関大一４本目。横川玄が成功。
＜青森山田　３−２　関大一＞
青森山田５本目。赤坂勇樹のキックは右外。
＜青森山田　３−２　関大一＞
関大一５本目。梅鉢貴秀のキックを櫛引政敏がブロック！
＜青森山田　３−２　関大一＞

櫛引政敏は５本中３本をブロックする大活躍。
派手な前宙で喜びを表現していた。
ＰＫ戦にはかなり自信があったようだ。
腕を組んで自信満々にキッカーを凝視する様子が印象的だった。
彼は２年生の早生まれ。
９３年組だから「次のユース代表」に絡む年代である。
背が高いし身体能力も高い。何よりキックの飛距離が抜群だ。
大会前から注目度の高かった選手には違いない。
ただ今選手権で更に一皮剥けたかも知れませんね。
自信と思い切り、そして「オーラ」が身につきつつある。

関大一は強かった。
大阪府予選はノーシードのチームである。
大阪桐蔭、金光大阪に比べて名の通ったタレントもいなかった。
ただ全国大会である種の融合、化学変化が起こったんだろう。
チームがいい意味で「躁状態」だった。秘めた力が全開になっていた。
９０分が終わった時に選手が３、４人崩れ落ちていた。
さすがに「出し切って」いたんだと思う。
タレントがいないと言うのは相対的な評価である。
改めて「大した差じゃない」と思った。
彼らは頑張り、結束でそれを乗り越えた。
ＤＦ陣はマークが堅くて受け渡しも良かった。
久保綾祐の打開力、両ボランチの才覚も全国レベルだろう。
和田紳平は１年生ながら献身的な攻守で貢献。
左足を磨けば上を狙える選手だと思う。

青森山田は苦戦するかもしれないと思った。
準々決勝の神村学園は前に出てくる、攻めてくるチーム。
だから裏に蹴って間延びを誘えば楽だった。
でも関大一は引いてガッチリ守るチーム。
それをどう崩すか注目していた。
今日の山田は開いたスペースにきっちりボールを運んでいた。
柴崎岳の配球はやっぱり効果的である。
青森山田の前線は「背負うプレー」をあまりしない。
なるべく動き回ってボールに触る。
少ないタッチと連動した動きでＤＦを翻弄していた。
攻撃が「一撃」で終わらないのが素晴らしい。
仕掛け損なっても味方が押し上げてセカンドボールを拾う。
そういう「スクランブル」は彼らの強みである。

選手権は残すところ決勝戦のみとなった。
今大会のトレンドは「古いサッカーの復権」だと思う。
マンマーク、ロングボールの活用が目立った。
そういうチームが結果を出していた。
日本サッカーにとって「いいこと」だと思う。
我々が最終的にモダンサッカーを目指すのは正しい。
ただいきなり「結論」から入ると内容が薄くなる。
深みを与えるのが「古典」の素養じゃないだろうか？
それに古いサッカー、理不尽な環境は意外と人を育てる。
「抑圧が天才の閃きを育てる」とすら思う。
遠藤保仁や松井大輔を育てたのは坊主頭集団なのである。

ＪＦＡは自陣からつなぐ、意図のあるパスで崩すサッカーを奨励している。
ただどうも「教科書通りのサッカー」をやるチームが増え過ぎた。
どのチームもマンマークに慣れてない。
能力が高いはずの選手、チームが単純な守備に対応できない。
主役は「モダンサッカー」が務めればいい。
でもライバルがいないと主役は引き立たない。
モダンサッカーは保守的な対抗勢力に磨かれて初めて本物となる。
似た者同士の「馴れ合い」は日本サッカーを弱くする。
異分子の台頭は歓迎すべき現象である。

もう選手権を通して全体の傾向、課題を語る時代じゃない。
自民党のマニュフェストを読んで日本の政策を論ずるのと同じだ。
高校サッカーはもう「与党」じゃない。
ただ確かな野党の存在は与党と同じくらい重要だ。