今回は、米国「Motor Trend」によるキアの中型クロスオーバーSUV「ソレント」の試乗レポートを日本語で紹介します。


Sorento

ソレントはキアブランドにおいて大きな存在だ。このモデルはアメリカで生産された最初のキア車であり、年間販売台数10万台を超えた最初のキア車でもある。また、キア自身もソレントを「ブランドの中心的な柱」と表現している。つまり、新型ソレントに失敗は許されない。とはいえ、幸いなことに、新型ソレントは正常進化しているようだ。

新型では多くの部分が旧型モデルからキャリーオーバーされているが、それでも評価に値する多くの改善を施している。例えば、全長やホイールベースはおよそ70mm延長されている。一般には自動車が大型化すると批判されがちだが、旧型モデルはコンパクトSUVとミドルサイズSUVの間の微妙な位置にあったように思える。ボディサイズの拡大により、新型ソレントはジープ・チェロキーなどのモデルに対する競争力を増し、3列シート・7人乗りのモデル(オプション)の居住スペースも拡大している(標準モデルは2列シート・5人乗りだ)。

全長が伸びたことで3列目シートの後ろの荷室スペースが55L近く拡大しており、3列目シートのないモデルの荷室スペースは42L増加している。後部座席のスペースは13mm拡大しており、特に2列目はレッグルーム、ヘッドルーム、ショルダールームのいずれも広々としている。このクラスのクロスオーバーSUVの例に漏れず3列目シートは窮屈だが、それでも2列目シートを前にスライドすることができるのである程度のスペースは確保できる。とはいえ、いずれにしても3列目シートは子供向きだ。

新型ソレントにはキア・スポーテージを始めとする他のキア/ヒュンダイのモデルにも搭載されている2.0L 4気筒ターボエンジンが新たに搭載されている。最高出力は243PS、最大トルクは35.9kgf·mを発揮し、旧型からキャリーオーバーされた2つのエンジンと同様に、6速ATが組み合わせられる。キャリーオーバーされたエンジンは、ベースモデル用の188PS/24.6kgf·mの2.4L 直4エンジンと、294PS/34.6kgf·mの3.3L V6エンジンだ。V6モデルの最大牽引重量は旧型モデルの1,600kgから2,300kgまで増加している。いずれのエンジンにも、FFモデルと4WDモデルが用意され、4WDには、前後トルク配分を50:50に固定するロックモードの付いたキアの4WDシステムが備わる。また、スタビリティを確保するため、前後輪にトルクベクタリング機構も備わる。

エクステリアデザインはフルモデルチェンジにより改善しており、ラインはシャープになり、高級感も増して、Cd値もわずかに低くなっている。より切れ長となったヘッドランプにアグレッシヴになったフロントバンパー、それに立体感の増したフロントフェンダーは良い変化と言える。インテリアデザインは大きく変貌しており、高級車にも近づいている。オプションの8インチUVOインフォテインメントモニターも解像度が高く感心させられる。よく使う機能についてはモニター周辺にボタンが配置されており、操作性も高められている。室内にはソフトな素材が散りばめられており、最上級グレードのSXのインテリアカラーはうまくコーディネートされているように思えたものの、グレーインテリアはブラックに比べるとどこか陰気に感じられた。

Interior

キアのフラッグシップセダンであるK900に使われているものにも似たナッパレザーを用いたシートもオプションで設定されており、それ以外の上級オプションとしては、フロントシートヒーター・ベンチレーターや、前方衝突警報、スマートクルーズコントロール、ブラインドスポットモニター、リアクロストラフィックアラート、アラウンドビューモニターなどの安全装備が設定される。全車にステアリングの重さやシフトポイントを変更するドライブモードセレクターが装備される。

今回試乗できたのは4WDモデルだけで、試乗したのはV6のSXと2.0LターボのSXリミテッドの2台だ。いずれにも基本的に良い印象を抱いた。室内は基本的にどんな速度域でも非常に静粛性が高い。カリフォルニア州タホ湖での試乗会はあいにくの嵐だったのだが、豪雨に近い状態で高速道路を流しても会話をするのは容易だった。

2.0Lターボはカタログスペックの出力を考えるとそれ相応のパフォーマンスが出ているようにはほとんど感じられず、その点ではあまり印象は良くなかった。今回はサーキットでの試乗はできなかったものの、それでもターボエンジンの基本的なキャラクターはV6エンジンよりも好ましかった。わずかにターボラグが感じられたため、V6ほどの即時的な加速感はないものの、高速での追い越しの際はV6よりも落ち着いており、また2.0Lターボのほうが高回転域でもスムーズで静粛性も高かった。6速ATはいずれのエンジンにもそれなりに合っていたが、2.0Lターボだとシフトダウンしやすい傾向にあった。電動パワーステアリングはこれまでのキア車と比べるとダイレクト感を増していた。

新型ソレントは2.4L L 2WDが25,795ドルからという価格設定となり、クラスの中でもコストパフォーマンスは高そうだ。


First Drive: 2016 Kia Sorento