今回は、人気自動車番組「Top Gear」でもおなじみのジェームズ・メイが2014年に英「Top Gear」に寄稿した愛車BMW i3の購入記を日本語で紹介します。


i3

新しく買ったBMW i3に非常に興奮している。実のところ、納車は予定より遅れてまだ私のところには来ていない。ひょっとしたらドイツからの輸送中に電池が尽きて充電に手間取っているのかもしれない。

それでも私の興奮は冷めていない。しかし、"航続距離不安症候群"にかかりかねないような車に対して、どうして眠れなくなるほどの興奮を覚えているのだろうか。それに、先日は電気とガソリンを見事に調和させたフェラーリ・ラ フェラーリまで体験したのに、どうしてバッテリーだけで動くたかが電気自動車の到着をこれほどまでに楽しみにしているのだろうか。不思議だ。

この車を購入した私を多くの人は嘲笑しているようだ。Top Gearの司会者が電気自動車を買うなんて、エコ精神の欠片もないという批判も受けた。しかし、私はエコのためにi3を買ったなどとは一言も言っていない。私はエコロジーになど興味はないし、i3を買ったのも車が好きだからだ。ニック・クレッグが私のi3購入を知って喜んだという話を聞いてもむしろ困惑してしまった。私は彼とは違う。

Twitterでも自動車好きとして間違っているのではないかという批判を受けた。車の情熱を否定しているのではないかと言われてしまった。

しかし、車の楽しさは様々だ。私は馬鹿みたいなスーパーカーも好きだが、落ち着き払ったロールス・ロイス ゴーストだって好きだ。無音で走る電気自動車にだって、今までになかった「クルマの楽しさ」があるかもしれないじゃないか。私はそれを知りたい。

しかし、以前にも言ったことがあるのだが、電気自動車は一種の公的な実験なのだと思う。私もその実験に喜んで参加したいと思っている。ただ、私は同級生の定規をバーナーで燃やしたとき以外は学校の実験を楽しんだ覚えがない。つまり、ここにも私が興奮している理由はなさそうだ。

意外かもしれないが、電気自動車はずっと昔から我々の身近を走っている。イギリスを走っている牛乳配達車は電気自動車だ。しかし、そんなことは今までまったく気にしてこなかった。

しかし、突然電気自動車が恰好良く思えるようになった。なぜだろうか。ひょっとしたら、エコを装うことがファッショナブルになったのかもしれない。電気自動車を乗り回せば世間の見る目は変わるだろうし、歩行者を驚かせながら街中を無音で走り回れば新しい時代の人間になったような気分に浸れることだろう。

それだけではない。長らく、電気自動車は使いものにならないバッテリーを積んだだけで、それ以外は普通の車と変わらない乗り物でしかなかった。かつて、バッテリーで駆動できたのは電動歯ブラシくらいだった。しかし、今や充電式のものは巷に溢れている。充電式の掃除機だってあるし、もはやありふれている。つまり、充電するという行為は生活に浸透してきている。

私はi3の注文書をベッドの横に置いて眠っているのだが、その注文書を改めて眺めてみた。私はナビや渋滞アシスト、運転支援装置、インターネット機能、オンラインエンターテインメント、スマートフォン連携機能、デジタルラジオなどの装備をてんこ盛りにした。渋滞中にはゲームをすることもYouTueを見ることもできる。

ようやく分かった気がする。i3は車なんかではない。巨大なiPadだ。車としての機能もあくまでアプリの1つに過ぎないのかもしれない。


James May on: his new BMW i3