今回は、イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのジェームズ・メイが2014年に英「Top Gear」に寄稿した自動運転車に関するコラム記事を日本語で紹介します。


driverless car

世間がやたらに自動運転車に興味を持っている理由は何なのだろうか。一つ思い当たる節がある。

飲酒時にあらかじめ一人だけ酒を飲まないドライバーを決めるようにする運動のことを指名ドライバー方式という。指名ドライバーになど誰もなりたがらないのだが、誰かがならなければならない。

しかし、もし指名ドライバーの役割を車自体に押し付けることができたらどうだろうか。運転操作はすべて冷静で過ちを犯すことのない機械が行うとしたら。

いずれにしても、運転という行為には面倒な側面がある。特に、高速道路を走っていると電車に乗ったほうが良かったと思うことが多い。ドライバーがするべきことなどほとんどないのだが、それでも常に気を張り詰めていなければならない。電車であれば、本を読んだり、パソコンをいじったり、酒を飲んだりすることができる。

けれど、車のほうがもっと便利だ。電車のドアの向こう側は駅だが、車のドアの向こう側はすぐに目的地だからだ。ならば、車に乗りながら自分の好きなことができるというのが一番の理想ではないだろうか。ひょっとしたら、楽しい山道ではこれまでのように自分で運転できる自動運転車だって出てくるかもしれない。

しかし、問題はまだ残っている。先日、ロンドンからケントまで運転したのだが、3時間近くかかってしまった。これはかなりの時間の無駄だ。要するに、車は遅い。

もう少し掘り下げてみることにしよう。リチャード・ハモンドはホーム・ピルという夢の薬を思いついたそうだ。これを飲めば、空をひとっ飛びで目的地に行けるそうだ。

しかし、これは一種のテレポーテーションであり、ご存知の通り、現在の技術では実現不可能だ。それから、我々はもう少し考え、iHomeというアプリを思いついた。以下にその概要を記そう。

リチャード・ハモンドがジントニックを18杯飲み、家に帰ろうとしたとする。そこで、スマートフォンのiHomeのアイコンをタップすれば、近くでこっそり彼のことを監視していた人間が、彼に向けて薬を塗った矢を放つ。

そうすれば彼は意識を失い(どちらにしろそうなっていたはずだ)、彼の意識が戻るまでに家まで送るという作業が開始される。

彼を家まで送る作業はプライベートジェットや速い車を使ってまで急いでする必要はないだろう。そうする理由は私には見いだせない。もし急ぎでないならばバスや貨物船やバンを使ってもいいはずだ。そのためには、運送会社のバンの荷室で藁にまみれて移動している途中に彼が目を覚まさないよう、前もって薬の投与量を調整する必要があるだろう。

意識を失っているのだから、どんな移動手段を使おうとハモンド自身には関係ない。テーブルで私と対面して座っていたかと思えば、次の瞬間には自宅の庭なりベッドなり小屋の中なり、あらかじめiHomeの画面で選択した場所にいるのだから。

これを実現させるためには多くの壁があるはずだ。しかし、このアプリが普及し、輸送ネットワークが構築されてしまえば誰もが簡単に家に帰ることができるようになるはずだ。ひょっとしたら、ハモンドがビジネスマンや若者と一緒に輸送されることもあるかもしれないが、そうなったとしても意識のない本人には絶対に分からない。それに、この輸送方式はすでに手紙や荷物で十分確立されている。

要するに、iHomeは既に実績のある技術を使っており、自動運転よりも実現可能性の高いシステムだ。バースデーカードやeBayの荷物と同じように人も運べるようにすればいいだけの話だ。

唯一のハードルはコストだけだ。試算してみたのだが、ケントからロス・オン・ワイにある自宅までハモンドを送り届けるためにはかなりのコストがかかる。ゴルフGTIの上級モデルと同じくらいのお金がかかってしまう。

なので、現時点では普通に運転するのがいいだろう。これまで通りに。


James May on: driverless cars