今回は、米国「Car and Driver」による新型 インフィニティ・QX60の試乗レポートを日本語で紹介します。


QX60

パフォーマンス重視の高級車メーカーであるインフィニティは、クロスオーバーSUVの販売という面で微妙な立ち位置にいる。インフィニティが最初に生み出した2列シートクロスオーバーSUVのFX(現在のQX70)は、屈強で男らしく、まさに上述のインフィニティのキャラクターに相応しい車だった。しかし、3列シートのクロスオーバーとして登場したQX60(登場時の名称はJX)はかなり穏やかな車で、インフィニティのキャラクターと合っていなかった。要するに、レクサスのような車を生み出してしまった。

しかし、QX60はインフィニティで2番目に売れるモデルとなった。そして2016年モデルでは、よりインフィニティに相応しいモデルになるよう、フェイスリフトだけでなくシャシにも改良が加えられた。

エクステリアでは、ヘッドランプがより鋭くなり、またメッシュのフロントグリルの中央には大きなインフィニティエンブレムが装着され、その下にはエアインテークが備わる。テールゲートやリアバンパー、テールランプの意匠も変更されており、18インチ、20インチホイールも新デザインとなっている。

一方でインテリアの変更点は少ないのだが、ダッシュボードやドアの材質にパッドが多く使われるようになり、上質なステッチも追加されたことで、少なくともセグメントの平均以上の質感を実現している。新型QX60ではシフトレバーも新設計のものとなっており、以降のインフィニティのモデルにも同様のデザインのものが使われていく予定だ。また、USBポートも3つ新設されている。

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パワートレインは2種類ともキャリーオーバーされている。272PSの3.5L V6にはCVTが組み合わせられ、4WDモデルは0-100km/h加速を7.8秒でこなす。残念ながら、フルスロットル時のエンジンの粗さはまだ残っているし、CVTのせいで踏み込むと回転数が上がってしまうのでエンジン音はどうしても気になってしまう。254PSの4気筒ハイブリッドの方が滑らかかつ静かなのだが、原油安の影響でほとんど売れておらず、現在は受注生産となっている。

メディアや顧客の要望、それにインフィニティ自身の方針に従い、シャシは車との一体感を増す方向に変更されている。ステアリングは応答性を高めるためにギアがクイックになっており、ダンパーは新設計され、スプリングも改良されている。実際に試乗してみても、ステアリングは確かにダイレクトに応答したし、ステアリングを介して路面状況がしっかり伝わるようになっていた。これは嬉しい変化だ。

ただし、サスペンションが強化されたことで、路面状況がドライバー以外の人にも伝わるようになってしまった。路面の凹凸はどこの座席にもダイレクトに伝わってきてしまう。もし新型QX60の走りが真に優れているのであれば乗り心地の悪さにも納得がいくのだが、実際は違う。コーナーではかなりロールしてしまうし、重さも隠しきれていない。

ある意味では、新型QX60はレクサス的な車からインフィニティ的な車へと変貌しており、その点では成功だと言えるのかもしれない。しかし、QX60程度の足回りではBMW X5のような車には到底敵わない。

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とはいえ、価格まで考慮に入れればBMW X5やアウディ・Q7とも十分戦うことができる。QX60の価格設定は4万3,595ドルから(4WDモデルは4万5,395ドルから)となり、装備が充実したモデルでも5万ポンドを少し超える程度なので、ライバルに比べると大幅に安い。ただし、ボルボ・XC90(4万4,945ドル〜)やアキュラ・MDX(4万3,955〜)まで比較対象にしてしまうと厳しい戦いになってしまう。

ただ、少なくとも新型QX60は従来よりも進歩しているし、数年後に次期モデルが登場するまでは高級クロスオーバーの顧客を引き留め続けることだろう。そして、次期型こそは、インフィニティというブランドに相応しい、しなやかかつ高性能な3列シートクロスオーバーSUVに仕上がることを期待したい。


2016 Infiniti QX60 - First Drive Review