今回は、イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのジェームズ・メイが2010年に英「Telegraph」に寄稿したコラム記事を日本語で紹介します。

今回紹介するのは、2011年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した日産・リーフをテーマとした記事です。


Leaf

ひょっとしたら、まだ私が子供だったからそう思ったのかもしれないが、昔のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーは今よりもっと面白かったように思う。

ローバー・2000やオースチン・1800の時代はさすがにまだ若すぎてほとんど覚えていないのだが、年齢が2桁に近付いてくると魅力的な車の記憶が残っている。シトロエンのGSは非常に印象的だったし、3位入賞した同社のSMも印象的だった。

まだ私がラレーの自転車に乗って世界を見ていた頃、父親たちはこぞってCOTYを受賞した車を購入していた。ある友達の父親は1975年のCOTY受賞車のシトロエンCXを購入していた。これはBLやフォードが支配していた当時は非常に左翼的な選択だった。1976年の受賞車、クライスラー・アルパインに乗っていた父親もおり、子供たちは車に群がってリアハッチが開く様を驚いて見ていた。

私の父親は、翌1977年の受賞車であるローバー・3500を購入した。私は声を枯らすほどにこの車を友達に自慢したのだが、その目新しさはすぐに失われてしまった。というのも、翌年にCOTYを受賞したのが、未だその名声を保ち続けているポルシェ・928だったからだ。

つまらなくなってきたのは1990年代中頃からだと思う。COTYは魅力的なアルファ・156を例外として、実用的なコンパクトカーばかりになってしまった。ただ、2004年の受賞車がフィアット・パンダだという点に関しては、間違いなく正しい選択と言えるだろう。

しかし、今度の受賞車は日産・リーフだというじゃないか。私はまだリーフに試乗していないし、ダチア・ダスターにまったく得点が入らなかったことについても未だに憤慨しているのだが、それでも私には理解できない。

私は、大胆で革新的な車が受賞するという古き良き時代の考え方が好きだった。ある評論家によると、リーフは今後20年は語り継がれるであろう車であり、革命の始まりだそうだ。

ひょっとしたらそれが事実なのかもしれないが、個人的には電気自動車ではなく燃料電池車こそが革命を起こす車だと思っている。そもそも、リーフの航続距離は名目上160km(実際はもっと少ないだろう)だし、普通に充電したら8時間もかかってしまう。

つまり、1日50kmの通勤には使えるのかもしれないが、160km以上の距離を走る必要があるなら、もう一台車を持つ必要がある。

バッテリー式の電気自動車にはすでに100年以上の歴史があるのだが、現在においてもまだ実験段階を抜けられていない。そもそも、実験の目的は、何かを実演することではなく、現実性を確かめることにある。そして、電気自動車が実用化されるためには、普通のユーザーが使えるようにならなければならない。

リーフの最大の問題は、いつまで続くか不確実な政府の補助金を考慮してもなお高価すぎる値段だ。結局のところこの車は、それなりに裕福な人が、環境のためにしろ、ファッションのためにしろ、何らかの声明としてしか購入しないだろう。

それでも、我々は批判するべきではない。新しい技術は、最初は裕福な人が試し、そうしてやがて一般人に広がっていく。自動車における重要な技術はどれもそうやって普及してきた。シートベルトも、エアバッグも、ナビも、ABSも、トラクションコントロールも、エアコンも、どんなものであれ最初は高級車に搭載され、やがて信頼性が確立され、コストも削減され、私の小さなフィアットにも搭載されるようになる。

掃除機でも洗濯機でも電灯でも靴でも同じだ。物好きが自己満足にしろ最初に試してくれるなら、我々はむしろそれを歓迎しなければならない。なぜなら、いずれは我々自身の利益になるのだから。もし利益にならなかったとしても、損をするのは我々ではなく物好きな金持ちだけだ。

そうではなく、私が問題視しているのはもっと別のことだ。COTYは消費者に対する指標であるべきだと私は考えている。過去を振り返っても、指標として大きく間違った選択はしていない。つまらない車はあったが、それでも買って損をするような車はほとんどなかった。

しかし、選考委員のうち何人がリーフを自分で買うだろうか。あるいは友人に薦めるだろうか。一般家庭の多くは車を1台しか保有していないのに、160kmで立ち往生してしまうような車など薦められるだろうか。消費者の視点から見れば、1968年の受賞車であるロータリーエンジンを搭載したNSU Ro80と並んで疑問が残る選出だ。

そう考えると、フィアット・パンダはかなり真っ当な選択だったと思う。


Nissan Leaf is Car of the Year: but would you buy one?