今回は、英国の人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのリチャード・ハモンドが2013年に英国「Top Gear」に寄稿したフェラーリ・F355の試乗レポートを日本語で紹介します。


F355

フェラーリは美しくなければならないという事実は揺るがない。パワーウェイトレシオや剛性、高級素材などについて一日中語ることもできるのだが、見た目の悪い跳ね馬では話にならない。

355の先代モデルである348は別に醜い車だったわけではないのだが、特に美しいわけでもなかった。ボディサイドのエアインテークはテスタロッサとほぼ同じデザインだったため、登場時点で既に古さが感じられた。それに、パフォーマンス面でもあまりぱっとしなかった。同時期にホンダからNSXが発売されたのだが、話題的にも実力的にも348が劣っていた。

その反省として生まれたのが355だ。美しさとパワーを兼ね備えており、現代においてもなお輝き続けている。僕は別にフェラーリの熱狂的信者というわけではないのだが、このV8エンジンやステアリングに貼り付けられている黄色いバッジを目にすると、心の奥に熱いものがこみ上げてくる。

フェラーリ。その名前だけにも相当な重みがある。それはフェラーリの帽子をかぶったことも欲しいと思ったこともない僕のような人間にとっても同様だ。そして355はなんとも美しい。寸法的には348とほとんど変わらないのだが、ボディは完全な新設計であり、噂では風洞実験に1,800時間が費やされたそうだ。しかし、この車のデザインからは機能性など感じられない。それほどまでに美しい。それどころか、登場から19年が経って、355はなお一層魅力的になった。

355は「ただの古いフェラーリ」と「クラシックなフェラーリ」の狭間にある。もうクラシックカーと言ってしまってもいいくらいだ。インテリアはフェラーリらしくはあるのだが、うまく歳をとったとは言いがたい。ベントレーやジャガーのような高級車であれば、薄汚れたレザーや錆もそれはそれで味があると言えるのだが、フェラーリだとそうはいかない。ただ、デザインにしろ、レイアウトにしろ、フィーリングにしろ、355が生まれた時代をはっきりと体現しており、当時の自動車のデザインを感じ取ることができる。あるいは、これこそが「クラシック」なのかもしれない。

ミッドシップに搭載される380PSのV8エンジンは8,250rpmまで回り、堂々とした低音を響かせる。フェラーリゆえに、美しいだけでなく、速くなければならない。事実、355は速い。0-100km/h加速は4.7秒でこなし、最高速度は295km/hで、いずれの数値も十分評価に値する。その速さが生み出される過程も見事だ。V8は吠え轟き、Hゲートを使った変速も抜け目ない。これぞフェラーリだ。

355の開発ではエンジン、サスペンション、それにトランスミッションに大きく手が入れられ、6速マニュアルトランスミッションのシフトゲートは前述の通り特徴的だ。フェラーリのあるべき姿をしっかりと体現している。これはサラブレッドだ。フェラーリ特有の緊張感を乗り越えさえしてしまえば、従順で使いやすく、それでいてわずかに儚い車であることが体感できる。

F355は大いに愛されている車だ。90年代初頭のフェラーリの不振を救った車だと言う人もいるし、フェラーリはV12しか認めないという昔のフェラーリファンの凝り固まった考え方を覆した車だと言う人もいる。

F1チャンピオンのフィル・ヒルもそうなのだが、中には355をフェラーリ史上ベスト10に入る車だと言う人もいる。つまり、伝説的な自動車メーカーが作り上げた中でもランドマークとなる車と言える。それが現在55,000ポンドほどで買えるのは幸せなことだろう。


Hammond drives the icons: Ferrari 355