今回は、英国「Auto Express」によるテスラ・モデルXの試乗レポートを日本語で紹介します。


Model X

テスラはまだヨーロッパでのモデルXの試乗機会を設けてくれていないのだが、今回はそんな革新的SUV型電気自動車にニューヨークの街中で試乗することができた。

モデルXは、2008年に最初に登場したロードスター、2013年に登場したモデルSに次いで3番目に登場したテスラのモデルだ。これは"実用的"なテスラであり、個性的な「ファルコンウィング」は開く際に翼のように上にせり上がる。

モデルXのシャシはモデルSと共通で、電気だけで駆動するパワートレインも共通だ。バッテリー容量の少ない低出力モデルものちのち登場する予定なのだが、現時点ではP90と4WDモデルのP90Dしか選択肢がない。イギリスにおける価格設定は未発表なのだが、おそらく価格帯は5万ポンドから9万ポンド程度になると考えられ、最初に販売される高出力モデルはそれなりに高くなるだろう。

公称値では0-100km/h加速が3.8秒なのだが、試乗した場所がマンハッタンの街中だったので今回それを試すことはできなかった。ただ、運転した感じではモデルSよりも重く感じられた。事実、モデルXはかなり重く、車重は2.5トン近くある。おそらくは背の高いボディや複雑なドア構造に起因しているのだろう。

シャシは背の高いボディに十分合っており、コーナリング時にもかなりフラットに保たれる。それに、街中の舗装の悪い場所(マンハッタンにはそういう場所が多かった)も難なく走れるくらいのしなやかさも併せ持っている。3段階あるパワーステアリングのセッティングはモードによってアシストの度合いが変わるそうなのだが、「イージー」モードにしてもかなりアグレッシヴに感じられた。

rear

室内に目を移すと、ダッシュボードはモデルSにそっくりで、ダッシュボードの中央には17インチスクリーンが鎮座している。これだけ大きなスクリーンが付いていると周りの人からも凝視されてしまう。

しかし、スタイリッシュなモデルSに比べると、モデルXのデザインは不格好だ。まるでステロイドを服用したモデルSのようだ。テスラお馴染みのタービン風21インチホイールを履くモデルはなおのこと不格好に見える。

とはいえ、フロントウィンドウが大きいため、室内はモデルSよりも明るい印象で、2列目シートや3列目シートまで十分に光が届く。エンパイア・ステート・ビルディングの横を通る際もビルの姿をはっきりと目に焼き付けることができた。

重要になってくるのはモデルXがモデルSよりも本当に実用的なのかという点だ。モデルSの3列目シートは後向きである一方で、モデルXの3列目シートは前向きなのだが、ヘッドルームが限られており、基本的には子供向けだ。それに、折り畳むことができるのは3列目シートだけだ。2列目シートは畳めないため、荷室を大きく広げることはできない。

ただ、問題点はあれど、この車はCO2を排出しない。それに、現在拠点を増やしているテスラスーパーチャージャーという急速充電器ネットワークにも対応している。車重が重いとはいえ、航続距離は400kmとかなり長く、通勤にも十分使えるだろう。


New Tesla Model X 2016 review