今回は、英国「Auto Express」によるアルファ ロメオ GT の試乗レポートを日本語で紹介します。

※内容は2003年当時のものです。


Alfa GT

グランツーリスモ。テレビゲーム世代にとってこの名前は、日本のスーパーカーが繰り広げる画面上での戦いを連想させるものだろう。しかし、それよりも上の年代にとって、グランツーリスモはまったく違う意味を持っている。

かつて、グランツーリスモという名前は自動車界の中で特に秀でた車にのみ使われていた。フェラーリ・250GTやマセラティ・3500GT、フォード・GT40、それからアルファ ロメオ・ジュリア スプリントGTなんかがそうだ。

そしてこの度、グランツーリスモの名を冠する新たな車が誕生した。過去の名車と同じ名を冠するのだから、それだけ重大な責任がのしかかる。

アルファ ロメオ GT は156のシャシの改良版がベースとなっており、ここ数年のイタリア車の中でも特に面白そうな車と言えそうだ。

デザインは賛否両論あるだろう。ベルトーネによるデザインはかつてのアルファのスポーツカーを思い出させる。サイドラインは初代GTVを彷彿とさせるし、ルーフラインはアルファスッド スプリントに似ており、曲面的なリア周辺からはSZの雰囲気がはっきりと感じ取れる。

しかも、それだけの要素がしっかりと調和している。これぞまさしくアルファ ロメオのデザインだ。大胆でありながら、それでいて落ち着いており、平凡とは程遠い。

インテリアも同様だ。ダッシュボードには4連メーターやスポーティーな3本スポークステアリングが据え付けられ、ドアパネルやシートにはアルファテックスというアルカンターラ風のファブリックが使われている。

見れば見るほど、この車の優秀さを実感する。シンプルなシフトレバー、メタルアクセントの入ったエアコン吹き出し口、それにシートの角度を調節するレバーすらも個性的で、他のメーカーには決して真似できないだろう。これこそがアルファに必要不可欠な個性だ。

しかも、実用性が無視されているというわけではない。リアシートには窮屈ながらも大人2人が座れるし、室内には収納スペースが豊富に用意されている。しかも、意外なことにトランクは十分な広さを確保している。

interior

質感も高い。インテリアはドイツ車の水準には届いていないかもしれないが、基本的にどの材質も上質に感じられるし、ウインカー・ワイパーレバーなどの操作系も壊れにくそうだ。ナビのスイッチは少し使いづらいのだが、装備内容も充実しており、ベースグレードにもオートエアコンやクルーズコントロール、ヘッドアップディスプレイ、BOSEサウンドシステムが装備される。残念なのは視界だけだ。ウエストラインが高く、窓も小さいため、室内は少し閉塞感がある。

今回は2004年3月にイギリスで発売される2.0LのJTSに試乗した。ほかにも、1.9LディーゼルのJTD、1.8Lのツインスパーク、そして3.2L V6が2004年中にイギリスで発売される予定だ。しかし最量販モデルと見込まれているのは2.0 JTSで、このモデルはパフォーマンスとランニングコストのバランスが優れている。

実力はなかなかのものだ。アルファらしくエンジンは元気よく回るし、スロットルレスポンスも良好で、5速MTも正確なので、速く走ることができる。加速時に響く音は迫力があり、4気筒よりもV6に近い。ただし、クロスレシオ気味なので高速道路を走っているともう1段ギアが欲しいと感じる。

高速域でこそGTの本領が発揮されるのでなおさら残念だ。サスペンションは156と共通なのだが、よりスポーティーになるよういくらか改良が施されている。フロントサスペンションのダブルウィッシュボーンは強化されており、リアでは横剛性を向上するためにクロスメンバーに高張力アルミが使われている。

おかげで非常に安定した走りを実現している。ステアリングはフィードバックこそ少し足りないものの、シャープだし応答性も高い。それに、グリップ性能もかなり優れている。

この車がGTという名前に見合った車であることは疑いようがないし、アルファ ロメオの中でも重要な位置を占める車になることだろう。デザインに関しては賛否両論あるだろうが、スポーツカー好きにはきっと大いに受けることだろう。


Alfa Romeo GT