今回は、米国「ROAD & TRACK」によるホンダ 新型リッジラインの試乗レポートを日本語で紹介します。


Ridgeline

初代ホンダ・パイロットをベースとした初代リッジラインは変わり種だった。2006年から2014年のモデルイヤーまで販売された初代モデルは8年間でわずか25万台しか売り上げておらず、これはアメリカにおけるシビックの販売台数で換算するとおよそ9ヶ月分だ。新型パイロットに引き続いて登場した2代目リッジラインは中型ピックアップトラック市場において高い競争力を持つことが目標とされている。

まず概形を見てみよう。初代の特徴であった荷台周りの傾斜はなくなり、至って平凡な荷台の形状となっている。丸みがかったノーズは基本的にはパイロットと同じなのだが、それよりも後ろは完全にトラックだ。荷台長は100mm増加して1,524mmとなっており、ホイールハウス間距離は1,270mmなので合板なども載せやすい。

荷台部分にはグラスファイバーで強化されたSMC複合材料が使われており、紫外線や衝撃にも強く、荷台をプロテクターなどで覆う必要もなくなっている。テールゲートにはヒンジが2箇所あり、普通に下に向かって開くだけでなく、運転席側に向かって横開きにすることもできる。また、荷台の後端部分のフロア下には天候に左右されない収納スペースがあり、82クォートのクーラーボックスがぴったり入るようになっている。最大積載重量は718kgだ。

新型リッジラインもモノコックボディであり、サスペンションは前後とも独立懸架だ。アメリカで販売されるピックアップトラックの中に同じ構造を採用しているモデルは他に存在しない。サンアントニオで行われた試乗会では、この構造によるメリットがはっきりと感じられた。

舗装道路を走ると、衝撃はうまく逃してくれたし、静粛性も高く、非常に快適だった。リッジラインからホンダが比較用に用意してくれたトヨタ・タコマシボレー・コロラドなどに乗り込むと、まるで30年前の車に乗っているかのような気分になった。テキサスの舗装の悪い道ではタコマならば揺すられたのだが、リッジラインは衝撃をうまくいなしてくれたし、車体からキーキー音がするようなこともなかった。

interior

走行性能も乗用車的だ。高速で舗装路を走行しても安定しているし、ロールも少なく、重心も十分に低い。搭載されるのはパイロットやアキュラ・MDXと共通の3.5L i-VTEC V6エンジンで、最高出力284PS、最大トルク36.2kgf·mを発揮する。トランスミッションは6速ATのみで、パイロットに設定される9速ATはリッジラインには設定されない。

新型では初代に設定されなかった前輪駆動モデルも設定される。一方、4WDシステムにはi-VTM4 (Intelligent Variable Torque Management 4WD system) が採用される。このシステムにはトルクベクタリング機構が備わり、コーナリング時にコーナー外側の後輪のトルク配分を増加させることで、操作性を向上させる。

結果、乗用車的な走りを実現している。試乗した最上級グレードのRTL-E 4WDはパイロット(0-100km/h加速は6秒を記録する)と同じくらい速く感じられたし、エンジンも十分に静かだった。走破性も高く、傾斜のついた泥道や凸凹のある路面も難なく走ることができた。4WDモデルにはノーマル、スノー、サンド、マッドの4種類の走行モードが設定され、それぞれスタビリティ・トラクションコントロールの介入度合いやスロットルレスポンス、変速タイミングが調整されるのだが、ノーマルモードのままでもほとんどの路面状況に対応することができる。片方の後輪が宙に浮いた状態になってもノーマルモードのまま脱出することができた。

しかし、リッジラインに乗っていると違和感を覚えることもある。ダッシュボード越しにパイロットと共通のボンネットを見ていると、ピックアップというよりもミニバンに乗っているような気分になる。未舗装のワインディングを走っているとトルクベクタリングの恩恵を体感できる。コーナー途中でアクセルを踏むとラインがうまく決まり、テールが滑りがちなタコマやコロラドの2WDモデルとはまったく感覚が違う。要するに今回試乗したような軽めのオフロードではリッジラインが他のピックアップを圧倒するのだが、同時にその見た目からはどこか頼りなさも感じてしまう。

Tailgate

しかし、そんなことは気にするべきではないだろう。中型ピックアップに要求される実力はすべて備えている。4WDモデルの最大牽引重量は2,268kgだし、荷台にはATVを載せることだってできる。それに、同じ4ドアのコロラドやタコマと比較すると、室内はリッジラインのほうが広い(リアシートの下にゴルフバッグを収納することもできるし、リアシートを畳めば室内にマウンテンバイクや大画面テレビを載せることもできる)。前述したように荷台下にはクーラーボックス用のスペースもあるし、オプションで荷台用サウンドシステムも選択できるし、液晶テレビにも使える400WのACアダプターまで荷台に付けられるので、屋外パーティー用の車としては他のどのピックアップよりも優れている。

2代目リッジラインはホンダらしいピックアップに仕上がっている。これは褒め言葉だ。中型ピックアップトラックのオーナーが一般的に求めるようなものをすべて備え、しかも、他の車軸懸架・フレーム構造のピックアップにあるような快適性や空間効率の問題を排除している。カタログ燃費は、2WDモデルがシティ8.1km/L、ハイウェイ11.1km/Lで、4WDモデルがシティ7.7km/L、ハイウェイ10.6km/Lを実現している。しかも、ひとクラス上の室内空間を実現している。

2WDのベースグレードは3万ドルをわずかに切り、最上級グレードは4万3,000ドルとなる。新型リッジラインはサイズ、価格、実力のどれをとっても他の従来的なピックアップに引けを取らない。唯一未知数なのは、この車が従来的なピックアップトラックのオーナーの眼鏡に適うかどうかだ。


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