今回は、イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのジェームズ・メイが2010年に英「Telegraph」に寄稿したコミュニティサイクルをテーマにしたコラム記事を日本語で紹介します。


Community Cycle

これから書くコラムは自転車に対する賛美だ。私は自転車が大好きだし、3歳以降、一度たりとも自転車を手放したことはない。

だからこそ、つい最近自転車を買ったばかりの環境活動家が自転車について偉そうに講釈を垂れているのを見ると嫌な気分になる。

ひょっとしたら、自転車こそが史上最高の発明かもしれない。自転車は、価格高騰を続ける液体を使わずとも人の行動範囲を広げることができる。

中国やインド、あるいはドイツの歴史を振り返れば分かるだろうが、自転車のおかげで国家は活性化する。そしてやがて、オートバイや自動車が普及するようになる。

自転車とは乗り物の原点であり、危機的状況においては頼れる逃亡手段になる。

だからこそ、私は自転車に関するあらゆる規制に反対している。自転車の保険制度や自転車の登録制度、自転車の免許制度などあってはならない。書類上の手続きさえすれば世界がうまく回るなんてことはありえない。

自転車とは恵まれない人々の希望だ。足であり権利だ。

中には頭のおかしい自転車乗りもいるが、同様に頭のおかしいドライバーだって一定数いる。頭がおかしいのは当人の問題であって、乗り物自体には何の問題もないはずだ。自転車には何の責もない。

私はボリス・ジョンソンによる都市計画に興味を持った。同様の計画が他の都市でも立ち上がるかもしれない。その計画とは、自転車のための道路を整備し、自転車の安全性を高めるというものだ。

自転車は転ばない限り利益しかもたらさない。それに、冷蔵庫や花瓶を輸送するような場合を除いて、自転車は渋滞の最高の回避策でもある。

私は自転車の有料共同利用システムというものに興味を持った。なんらかの登録が必要なので私自身は使ったことがないのだが、ずっと気になってはいた。

貸し出し用の自転車は街中の至る所にあるステーションに置かれている。専用の鍵を使えばその自転車が使えるようになる。返却をする際は街中のどのステーションに返してもいい。

利用料が高いかどうかは判断しかねる。専用の鍵の価格は3ポンドだ。登録料や使用料は別途かかる。24時間登録の場合、1ポンドの登録料がかかるのだが、年間登録の場合、登録料はわずか45ポンドだ。

30分までなら使用料はかからず、つまり、面倒を承知で30分ごとにステーションへの返却を繰り返せば、使用料を払わずに自転車を使うことができる。

ちなみに、24時間以上自転車を連続使用すると150ポンドの罰金が科せられてしまう。つまり、休日にシュヴァルツヴァルトまでサイクリングをするなら、この共同利用システムを使うべきではないだろう。とはいえ、基本的には素晴らしいシステムだ。ただし、大きな問題が二つある。

一つ目。ステーションへの返却が義務付けられた結果、本来自由な移動手段だったはずの自転車が、公共交通機関の亜種へと成り下がってしまった。今いる場所から目的地までずっと自転車に乗って移動することはできない。そうなると自転車の存在意義の一つが失われてしまう。

しかし、二つ目の問題はさらに厄介だ。このコミュニティサイクルシステムはバークレイズ銀行が後援しており、バークレイズ銀行はそれを宣伝しようとしている。そのため、元々それなりに恰好良かったはずの自転車に銀行のロゴがでかでかと貼られてしまっている。そんな自転車に乗るのは恥ずかしい。

コミュニティサイクルに乗っている人を見かけても、その人を先見の明のある人だとは決して思わない。ただの高利貸しの広告塔としか思えない。

ここは営利主義の世界であり、スポンサーがいなければ自転車の共同利用システムも実現しないのだろう。それは理解できる。

私はビールの広告塔をしている。私はビールが好きだ。その点については間違いない。しかし、私がビールの広告塔をしているのは、ビール会社からお金をもらっているからに他ならない。

同様に、もし私が「ゴルフセール開催中」と書かれた看板を持って街中を歩くなら、その対価を貰わなければ割に合わない。なのに、どうしてわざわざお金を払ってバークレイズの広告塔にならなければならないのだろうか。

結論に移ろう。自転車に乗りたいなら、自転車を買えばいい。


Cycling proficiency with James May