Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのリチャード・ハモンドが英「Top Gear」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、2011年に書かれたランチア・デルタ HF インテグラーレ エボルツィオーネ II のレビューです。


 Delta

これからはじまるのはかつての宿敵との再会だ。20年ほど前、ヨークシャーからランカシャーまで続くペナイン山脈の道をバイクで走っていると、ランチア・デルタ インテグラーレ EVO II を見つけた。

ホイールアーチは太いタイヤを覆うように膨らみ、ジウジアーロによりデザインされたボディはさまざまなスクープやグリルで飾られ、見ただけでその潜在能力の高さが窺えた。そのオーナーがやる気なのは直感的に理解できた。そんな彼に、僕は愛車のカワサキ・ZZR600で本物のパフォーマンスというものを教えてやろうと思った。ところが、僕が自動車vsバイクの対決をしよう企んでいると、ランチアのオーナーが僕を引き離してしまった。慌てて僕もスロットルを全開にしたのだが、2台の距離は広がるばかりだった。それどころか、彼は挑発するような走りをしはじめた。

僕の愛車のようなハイパワーバイクを相手にこれだけの実力を発揮できる車はほとんどいない。デルタ EVO II は史上空前のラリーカーであり、僕を引き離した車はその最後のホモロゲーションモデルだった。これはランチアが世界ラリー選手権への出場権を獲得するためだけに発売したモデルだ。ランチアは1987年から1992年まで、6年連続で総合優勝を果たしている。

この車は前後独立懸架の4WDで、最高出力215PSの2.0Lターボエンジンが搭載される。今でもその実力や楽しさは色褪せない。折り紙や陶磁器のように扱わなければいけない繊細なクラシックカーとは違う。パワフルでグリップに富み、コーナーを一目散に駆け抜ける。コーナーを抜けても四輪はしっかりと安定しており、また次のコーナーを獰猛に攻めていく。

コツさえ掴んでしまえばデルタと一心同体になることができる。今でもデルタのステアリングを握ればその潜在能力が拍動として伝わってくる。駆動力はフロントよりもリアにわずかに多く伝わるのだが、この4WDシステムは特別複雑なものではない。分かりやすくて優秀な4WDシステムだ。コーナーでは車の余力が手に取るように分かるので、あとどれだけ飛ばせるかも直感的に理解できる。

アルカンターラのRECAROシートや機能的なダッシュボードは非常に実際的だ。この車は都会映えのするホットハッチなどではなく、走るための道具だ。膨らんだホイールアーチやグリルやスポイラーは装飾的に見えるかもしれないが、これは名ラリーカーのホモロゲーションモデルだ。一つの目的をこなすためだけに生まれた車だ。この車はかつて大活躍し、いまでも走り続けている。

昔の車を乗り回し、自分の愛車は名車であると語る人も多い。しかし、真の名車とはインテグラーレのような車のことを言う。機能的な美しさと本物の歴史を持ち、現代の車すら凌駕するような実力を持つ車こそ、真の名車と言えるのではないだろうか。


Hammond vs Lancia Delta Integrale Evo II