今回は、ブラジル「MOTOR CHASE」によるルノー・サンデロ ルノー・スポールの試乗レポートを日本語で紹介します。


Sandero RS

サンデロは成功を収め続けている。初代サンデロが世界に先駆けてブラジルで発売されると、ブラジルにおけるルノーのシェアが大きく伸びた。その理由は簡単だ。Bセグメント車の価格で、Cセグメント車の室内空間を実現していたからだ。けれど、サンデロはさほど優秀な車ではなかった。サンデロは決して完璧な車ではなく、安いからこそ売れていた。

2代目モデルになると多くの問題が解決したのだが、見た目はロガンとほとんど変わらなくなり、個性が失われてしまった。だからこそ、思わず憧れるようなサンデロが必要だった。そうして誕生したのがサンデロR.S. だ。

当然、ダチアブランドでサンデロが販売されている欧州市場においては、ルノー・スポールのバッジが付いたサンデロが登場することはないだろう。しかし、例えばダチア・スポーツ(D.S. と略したら色々と問題がありそうだが)という名前を付けてでも、世界中で売るべき車だと思う。価格は依然として安いのだが、同時に魅力的でもある。懐だけでなく、魂に、心に訴求する車だ。

ルノー・サンデロ R.S. の価格は62,125レアルだ。欧州通貨に換算するとおよそ17,650ユーロとなる。ちなみに、フランスで販売される最も安いルノー・スポールのモデル、クリオR.S.(日本名: ルーテシアR.S.)は26,750ユーロだ。つまり、9,100ユーロもの差がある。この差額でフランス仕様のダチア・サンデロ(9,050ユーロ)を購入しても、まだ50ユーロもお釣りが来る。

ブラジルの基準で考えてもサンデロR.S. はそれほど高価ではない。つまり、発展途上国においてさえお買い得な車ということだ。他にブラジル市場で販売されているスポーツモデルで最も安いのは80,590レアル(換算22,897ユーロ)のプジョー・208 GTだ。これを考慮しても、サンデロR.S. の価格が非常に安いことが分かるだろう。

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それに、装備内容も充実している。エアコン、パワーウインドウ、電動ドアミラー、7インチナビゲーションシステム、パーキングセンサー、ヒルスタートアシスト、ESPはすべて標準装備だ。ただし、エアバッグはフロントエアバッグしかないし、ISOFIXにも対応していない。唯一のオプションは17インチのブラックアルミホイール(1,000レアル)だ。標準装着の16インチホイールもブラックで、タイヤサイズは195/55R16となる。試乗車は17インチホイールを履いており、タイヤは205/45R17のコンチネンタル ContiSportContact 3が装着されていた。

サンデロR.S. に搭載されるのは2.0Lの4気筒エンジンで、6速MTが組み合わせられる。このエンジンはダスターおよびダスター オロチと共通のF4R型エンジンだ。エタノールを燃料とした場合は最高出力150PS、ガソリンを燃料とした場合は最高出力145PSを発揮する。最高出力の発生回転数はいずれも5,750rpmだ。最大トルクはそれぞれ20.9kgf·mと20.2kgf·mで、いずれも発生回転数は4,000rpmだ。ダスターと比較すると最高出力が2PS向上している。

ボディサイズは全長4,060mm、全幅1,730mm、全高1,500mm、ホイールベース2,590mmだ。車重は1,161kgで、パワーウエイトレシオは7.74kg/PSとなる。トランスミッションはルノー・フルエンスと共通のTL4 093型だが、ギア比は変更されている。

サンデロR.S. のブレーキは4輪ともディスクブレーキで、ペダルフィールも普通のサンデロより圧倒的に良好だ。踏んだ分だけちゃんと効くし、微調整もしやすい。ブレーキを踏み込んだときの制動力も強力だ。

BMWやメルセデス・ベンツなどの高級車を運転したことがある人なら分かるだろうが、こういった車の走りは大衆車とは一線を画している。乗り心地は良いし、それでいて路面の感覚はちゃんとドライバーに伝わってくる。高速コーナリング中に酷いロールが起こることもない。簡単に言うと、高級車の走りには「剛性感」がある。見た目では分からないかもしれないが、大衆車よりもサスペンションにコストがかけられている。信じられないかもしれないが、サンデロR.S. の走りもこんな感じだ。

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ステアリングは手にぴったりなじむし、シートのサポート性も十分にある。快適性も高いし、排気音を楽しむこともできる。乗り心地は標準のサンデロよりも良い。ネジが目に見える位置にあったりと、安っぽさは隠しきれていないのだが、中身はまるで高級車だ。サンデロR.S. は万人に訴求できる車だろう。

標準のサンデロと比べて悪くなっている部分もある。例えば、フロントシートは標準車よりも大型化しているため、リアシートが狭くなっている。そのため、大柄な人が前後に並んで座るのは難しい。ただ、大柄な人を頻繁に乗せないならば、大きな問題にはならないだろう。

残念ながら、長い間試乗することはできなかったのだが、短期間でもエンジンの力強さを実感することはできた。回転数にかかわらず、トルクがしっかり出てくれる。そのため、応答性は非常に良好だ。ただ、試乗車はタイヤバランスに問題があったようで、特に120km/h付近ではステアリングの振動が気になった。ちなみに、サンデロR.S. の最高速度は202km/hで、0-100km/h加速は8秒だ。

サンデロR.S. に乗ると、魅力的な車の必要性が理解できる。世の中には自動車文化の終焉を予知している人もいる。子供たちは次第に車への興味を失っているそうだ。ならば、面白い車を作ればいいのではないだろうか。現実的な価格で、車への憧憬を抱くことのできる車を作ればいいじゃないか。ルノーはそれが可能であることを証明した。

サンデロR.S. がブラジル以外の市場で販売されることはないのかもしれないが、是非とも売るべきだ。この車の安さは大きな武器になるだろう。


The Renault Sandero R.S. rides like a more expensive car – car review