ロシア「Motor1」によるUAZ パトリオットの試乗レポートを日本語で紹介します。


Patriot

UAZの最量販モデルであるパトリオットの車名の由来ははっきりとは分からない。UAZが第二次世界大戦中、赤軍向けのトラックおよびSUVを製造するメーカーとして誕生したという歴史が関係しているのかもしれない。ジープも同名のSUVを販売していたが、UAZのパトリオットもジープ同様に走破性を重視しており、ロシアの果てまで走り抜けることを目的に開発されている。

モスクワから東に900km近く離れたウリヤノフスクで製造されるパトリオットはUAZの中では設計の新しいモデルなのだが、それでも製造開始から13年が経過している。決して先進的なモデルとは言えないのだが、それでも年々改良は続けられており、顧客の不満を聞き入れ、初期よりは質感も向上している。

2014年と2016年にマイナーチェンジが行われているのだが、基本的なデザインは2005年の登場以来ほとんど変わっていない。13年間で変わったのは、灯火器やフロントグリル、ダッシュボードくらいだ。

2019年3月に施行されるの次の変更も外見に関してはそれほど大掛かりなものにはならない。ボディカラーに新色が追加され、18インチホイールのデザインが変更されるくらいだ。ウインチやルーフラック、リアラダー、BFグッドリッチ製オフロードタイヤが装備されるエクスペディション・パッケージも追加される。

内装の変更点も少ない。AピラーおよびBピラーには頑丈そうな手すりが追加され、乗り降りがしやすくなった。目に見えないところでは、ファイアーウォールとフェンダーに遮音材が追加されており、エンジン音やタイヤノイズが(多少は)抑えられている。

遮音材の追加により、ホイールハウス内を石が飛び散る音やオフロードタイヤによるロードノイズは抑えられているのだが、性能向上した新エンジンの音は隠しきれていない。最高出力150PS、最大トルク23.9kgf·mを発揮する4気筒 2.7Lエンジンはプロフィ(トラック)と共通で、基本設計は従来型と変わらない。

ピストンやシリンダーヘッド、排気バルブが刷新され、圧縮比が9.1:1から9.8:1まで上がったことで、エンジン性能は従来型より15PS/1.8kgf·m向上している。

rear

ただ、このような小さな改良では実際の走りは大きく変わらない。ただし、最大トルクの発生回転数が3,900rpmから2,650rpmまで下がった点は走りに大きく影響している。中回転域から十分に力強くなり、2速どころか3速でもオフロードをしっかり走り抜けることができる。ローレンジどころか後輪駆動でも障害物を問題なく乗り越えることができた。

オンロードでの走行性能も変化している。新エンジンの採用により、従来20秒近くかかっていた0-100km/h加速は12.7秒まで短縮し、おかげで追い越しがしやすくなっている。車重が2.1トンを越えることを考慮すればかなり大きな進歩と言えるだろう。

ただし、圧縮比の上昇によって指定燃料はハイオクになっている。とはいえ、ロシア北端のスレドニ半島やリバチ半島で手に入れられる92オクタンの燃料も使用できたので、今回の3日間の試乗でも問題はなかった。

これ以上の奥地を走りたい人も心配する必要はない。UAZはプロフィと共通のZMZ製バイフューエルエンジンを搭載するモデルも開発中だ。

UAZは信頼性の向上のため、クラッチにも改良を施している。新しいクラッチは従来より軽くなって操作しやすくなっただけでなく、NVH性能の向上にも寄与している。

パトリオットには5速MTのみが設定されるのだが、舗装路を走っていると6速が恋しくなる。UAZ自身もストロークの長さやシフトレバーの振動といった問題点は認識しており、新型モデルではレバー振動抑制のためにダンパーが追加されている。シフトストロークも従来より短くなり、変速操作はしやすくなっている。

今回の最大の変更点はフロントアクスルとステアリングシステムだ。プロフィと共通のアクスルはステアリングラック部分のフレームが強化されており、またステアリングラックのダンパーが強化されたことで路面の衝撃がステアリングまで伝わりにくくなっている。このおかげで操作性が向上し、かなり運転しやすくなっている。従来型はまっすぐ走らせるのも難しかったのだが、新型ではわずかな舵修正のみで良い。それに、回転半径も小さくなっている。

interior

サスペンションも変更されている。リアスプリングは6%ソフトになり、四輪のショックアブソーバーが改良され、リアのスタビライザー径は21mmから18mmに変更された。これにより、ロールを悪化させずに快適性が向上している。ただ、それでも実際は完璧ではなく、小さな段差を踏んだときには振動の収まりが悪いし、オーバーステアにも悩まされる。滑りやすい路面では動きがルーズだし、加速時のターンインでは曲がりすぎてしまう。

とはいえ、総合的に見ると、新型パトリオットは従来より理想的なSUVに近付いている。2019年モデルはよりパワフルになり、乗り心地も操作性も向上している。ドアヒンジの設計が改められたので耐久性も向上しているし、使用されるスチール材は従来より厚くて剛性も高いので、衝突安全性も向上している。また、3M製の接着剤を採用することで酸化にも強くなっており、塗装はルノー・日産・三菱アライアンスと共通のものを使うようになったそうだ。

かといって、品質に問題がなくなったわけではない。フィット&フィニッシュは残念だし、室内に使われているプラスチックの質感も低い。テールゲートの密閉性も改善の余地がある。ドアのシーリングは変更されているのだが、荷室部分は工夫が足りておらず、走行中に水や泥が荷室に入ってきてしまう。

それでも、従来より改善していることは間違いないし、それゆえに価格も高くなってしまっている。新型パトリオットの価格帯は766,500ルーブルから1,049,000ルーブルとなる。従来型と比べると30,000~35,000ルーブル程度値上げとなっている。

文明的な生活から逃れ、狩りや釣りを楽しみたいなら、新型パトリオットを検討する価値はあるだろう。従来のパトリオットは敬遠していた人もいるだろうが、今回の改良によってパトリオットは大幅に進化している。ただ、この改良によって売り上げが劇的に向上するとは言い難い。今やロシアでも韓国製や中国製SUVの人気が高まってきている。

とはいえ、輸出には期待できるだろう。UAZはレバノンやメキシコへの進出を発表しており、カザフスタン市場への進出も予定されている。それに、UAZのピックアップとパトリオットはイタリアでも発売される。ラーダ・ニーヴァをはじめとして、ロシア製SUVの実力の高さは世界で評価されており、低価格なパトリオットも成功を収めることだろう。