オーストラリア「WhichCar」によるRUF CTR3の試乗レポートを日本語で紹介します。

※内容は2009年当時のものです。


CTR3

アロイス・ルーフ・ジュニアはただのチューナーではない。彼が生み出した911ベースの初代CTRは「イエローバード」と呼ばれ畏れられており、界隈では神のように崇められている。

最高出力476PS、最大トルク56.4kgf·m、0-100km/h加速4.0秒という数字は1987年当時としては偉大で、CTRが登場する映像作品『ファシネーション』も有名だ。この映像はRUFがPlayStationの『グランツーリスモ』に登場するとともに世界中の車好きに広まった。

しかし、これまでのアロイス・ルーフの作品はベース車である911にそっくりで、相当の好き者でなければ見分けることもできなかった。RUFはそこから一歩先の領域へと進みはじめる。RUFは独自のスーパーカーを開発した。

今回我々は、イエローバードの栄光から20周年を記念して登場したCTR3に、ドイツ・プファッフェンハウゼンのRUF本社で対面することとなった。

その日はよく晴れており、光沢のある特徴的な塗装がよく映えた。RUFには平凡なチューナーが使いがちな安っぽいプラスチックなど使われていない。表面はしっかりと厚く塗装されており、かなりのコストがかかっていそうだ。

今回試乗した個体は2007年4月に発表された1台目の市販仕様車だ。その見た目はル・マンで活躍した911 GT1の雰囲気もあり、かなりの存在感がある。斜め後ろから見るとケイマンっぽさも感じるのだが、普通のポルシェとは一線を画している。ただし、フロントエンドに関しては911ターボほとんどそのままだ。

ポルシェのフロントエンドを流用することにより、それほど苦労することなく衝突安全性の確保に成功している。ドアよりも後ろは911とはほとんど別の車であり、シャシにはスチールとカーボンケブラーが使われていて、かなり高剛性だ。

rear

ほとんど独自設計の車なので、レイアウトの自由度も高い。ボクサーエンジンはポルシェ伝統のリア置きではなくミッドシップに搭載され、その後ろに6速シーケンシャルトランスミッションが搭載される。

キャビン後方には巨大な空気穴しか存在しないため、後方視界は実質皆無なので、CTR3にはリアカメラが装備される。ただし、700PS/7,600rpm、90.8kgf·m/4,000rpmの3,746ccツインターボ水平対向6気筒エンジンに圧倒されて、後ろを見ている余裕などほとんどないだろう。後方視界を奪うもう一つの要素である巨大なリアウイングは375km/hまで加速しても車を地面に留めるために必須だ。

CTR3のクラッチを踏んで(変速方法は通常の3ペダルMTと同様だ)1速へと入れると、滑らかに加速しはじめる。20インチのリアタイヤ(ミシュラン Pilot Sport)はしっかりと地面を蹴り上げ、そのまま100km/hまでわずか3.2秒で加速する。

アルミ製のシフトレバーはかなりがっちりしているのだが、アクセルを踏み込んでシフトアップしていけば1,470kgの車体が軽々と先へ進んでいく。それほど苦労することもなく、この車はとてつもない速さを見せてくれる。

イタリアンスーパーカーのように調律された音を楽しめるわけではないのだが、ブースト圧1.2barのターボチャージャーやウェイストゲートが生み出す音と振動は乗員を楽しませてくれる。もちろんかなりの大音量だ。

CTR3はヴェイロンに匹敵するほど速いのだが、後輪駆動だし、アルミニウムやカーボンケブラーを上手く使っているため、車重はWRXとほとんど変わらない。そのため、ヴェイロンよりもよっぽど俊敏で、車との一体感もヴェイロン以上だ。CTR3にはレーシングカーのDNAを感じることができる。

コーナーでは軽やかで楽しいし、アンダーステア傾向はある(運転技術の乏しい富裕層向けのセッティングとなっている)のだが、そのせいで車の楽しさが削がれてしまっているわけではない。

interior

バランスは非常に良く、スピードを上げるほどにダウンフォースが生じるため、物理法則を歪めるように曲がることができる。ステアリングもクイックなので低速コーナーであってもきびきびとした操作が可能だ。

ブレーキは四輪とも380mmのセラミックコンポジットディスクと6ピストンキャリパーの組み合わせで、RUFのロゴは付いているのだが、GT2のブレーキにそっくりだ。制動性能もGT2同様にかなり高い。

サスペンションはフロントがストラット式で、リアがマルチリンク式となる。サスペンションは路面のあらゆる衝撃を直に伝える。変速操作には力が必要だし、長時間運転していると耳も痛くなってしまう。とはいえ、なるべく高いギアを使うようにすれば一般公道でも十分楽しく運転できる。

CTR3のインテリアは他のハイパーカーよりもまともだ。欠点を「個性」という言い訳で隠そうとはしていない。ただ、それでも欠点を挙げるとすれば、内装もかなりポルシェ的なので、RUFならではの「個性」は感じがたい。

ドイツのチューニング産業は狂気的なほどに厳しい競争を繰り広げており、運転しやすさも合理性も捨ててしまったただのミサイルのような車も量産されている。しかし、RUFはポルシェ的な実用性と高い性能を両立している。

CTR3よりも速い車はたくさんある。CTR3より美しい車もたくさんある。しかし、CTR3ほど万能なハイパーカーは他にない。