フォルクスワーゲングループの利益率はトヨタほどではない。

トヨタの2014年度決算は未発表だが、予想では売上高27兆円、営業利益2兆7千億円となって、営業利益率は10%ほどになる。

フォルクスワーゲンの場合は、2014年度(1-12月)、売上高2024億ユーロ、営業利益127億ユーロであるから、営業利益率は6.2%である。

とりわけフォルクスワーゲンの乗用車ビジネスの利益率は1~4%で推移しており慢性的に低い。売れ筋がポロやゴルフ、パサートであるからA6や5シリーズなどの上級モデルを多く売るアウディやBMWほど利幅はないし、ゴルフやパサートにしても兄弟車種であるアウディのA3やA4と中身は変わらないのに売価は低い。それでも開発・生産コストはドイツ水準であるから、当然利益率は低くなってしまう。

またVW乗用車部門の売上には中国事業は含まれておらず成長も頭打ちで、販売台数は450万台、売上高は1000億ユーロ程度となる。

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この低利益率をカバーするのが資本政策である。例えば、グループの稼ぎ頭であるアウディからフォルクスワーゲンへは毎年30億ユーロ以上の資金が移転されている。これはVW本体からアウディへの技術供与に対する見返りとでも言えよう。

さらには、中国での合弁事業2社から得られる配当金収入が大きい。これが2014年度では約30億ユーロほどだから、アウディと中国事業から合計で60億ユーロ(約7500億円)ほどVW本体への還流がある。仏ルノーやPSA、伊フィアットなども労働コストの高さから低利益率に苦しんでいるが、いかにして本体へマネーを還流させるかは欧州企業にとっては重要な課題となる。トヨタが受け取る配当金も5000億円以上はある。これらはグループの部品会社や株式を持ち合う金融機関から還流される。

たしかにトヨタの利益率は高くなった。しかしこれは日本政府による円安誘導政策のおかげでもある。エンジニアが作る製品の付加価値が上がったわけではない。単にお金を多く印刷するようになった結果である。それに営業利益が多いからと言って、企業が生み出す付加価値額が多いというわけではない。人件費を削れば営業利益は増える。

フォルクスワーゲンはグループで中国の合弁事業を除くと約519000人を雇用している。2014年度に支払った給与額は33834百万ユーロで、1人当たりでは6万5千ユーロ(1ユーロ130円で約850万円)である。トヨタの連結従業員数は約34万人であるが、仮に1人当たり850万円支払ったとすると人件費は約2兆9千億円になる。しかしトヨタの場合、850万円水準の給与を受け取れるであろう単体従業員は7万人だけだし、東南アジアでの雇用者数も多いので、実際はそこまでの人件費はかかっていないはずである。


日本企業では付加価値額の分配状況について公表することは皆無であるが、フォルクスワーゲングループでは情報が公開されている。下図の通り、2014年度(1-12月)のフォルクスワーゲングループが生成した付加価値額は約6兆7700億円(1ユーロ130円換算)になる。トヨタグループでは筆者推計で約5兆6000億円である。これは先に発表された決算情報に基づくが、32万人の人件費を約600万円/人として計算した。中国での合弁事業を除くと連結従業員数は約32万人でそのうち約11万人は東南アジア、南米、中東など人件費が比較的低い地域で就業しているものと見なされる。トヨタ単体の従業員7万人の平均給与は年850万円ほどだが、世界平均では600万円ほどではないだろうか。しかし東南アジアでの雇用者数を考慮すればこれでも高すぎる気はする。トヨタの場合、日本国内では臨時従業員や残業に頼ることができる。一方でVWの場合は欧州先進諸国での雇用者数が多い。

原材料費については、VWが17兆2200億円、トヨタが18兆7800億円程度となっているが、これはVWの方が利幅の大きい高級車が多いので当然ともいえる。高級な物(高級とみなせる物)ほど同じ原価でも高額で売れるものである。その分、高級品を作るには人件費も高くつく。

またトヨタの場合、今回得られた純利益は円安による部分が大きい。そういう性質による利益を32万人の従業員給与へ振り向けることは容易ではないはずだから、人件費はだいたい1兆9千億から2兆2千億程度と見積もってもいいと思う。

よって、両社が経済活動によって生み出す付加価値額は、トヨタの方がVWよりは低いだろう。


もちろん、高級車ブランドと中国事業に大きく依存するVWのビジネスポートフォリオにも問題はある。VW乗用車ビジネスの収益性向上は容易ではない。しかし結局のところ、高コスト体質であるドイツの自動車産業が生き残るには付加価値の高い製品を作るか、資本政策を利用するしかないのである。



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●中国合弁企業からVWへの配当金額150502_VW_China


















●付加価値額分配表(筆者推計)150502_ValueAdded_Calculation