ブラック-ショールズ方程式
Black-Scholes Model



ブラック-ショールズ方程式(ブラック-ショールズほうていしき)とは金融派生商品の価格づけに現れる確率微分方程式(およびその境界値問題)のことである。そして、オプションの値段を計算するモデルとして認知されている。ここでオプションというのは将来のある時点で何かをあらかじめ決まった価格で買う(コール)、あるいは売る(プット)ことができる権利のことです。



【欠点】
(1)ブラック-ショールズ方程式はヨーロピアンオプションのオプション・プレミアムの計算には使用できるがアメリカンオプションには使用できない。
(2)価格の変化率の分布が正規分布に従うという仮定を置いているが、現実の金融商品ではこれが成立していない。
(3)テールリスクに対する脆弱性が指摘されている。
(4)計算者が変数(原資産価格、原資産利回り、短期金利、ボラティリティ)にどのような値を使うかで、プレミアムが変わる。


ブラック-ショールズモデルは1973年にフィッシャー・ブラック (Fischer Black) とマイロン・ショールズ (Myron Scholes) が共同で発表した理論であり、このモデルを使って当時の懸案であったヨーロピアン・コール(およびプット)オプション(満期日にのみ権利を行使できるオプション)のオプション・プレミアムを計算してみせた。後にロバート・マートンが彼らの方法に厳密な証明を与えた。これらの理論は現代金融工学の先がけとなったとも言われる。



ブラック-ショールズ方程式はヨーロピアンオプションのオプション・プレミアムの計算には使用できるがアメリカンオプションには使用できない。アメリカンオプションとは、購入日から満期日までのいつでも権利行使することのできるオプションのことである。満期日のみ行使可能なヨーロピアンオプションに比べて、アメリカンオプションは権利行使日が不確定なため、価格付けが難しく、その分アメリカンオプションのプレミアムは割高になっている。良い計算方法が理論化できておらず格子モデルや Brennan-Schwartz アルゴリズムなどがよく用いられている。



ブラック-ショールズモデルとは、1種類の配当のない株と1種類の債券の2つが存在する証券市場のモデル。このモデルが導き出すプレミアムが「適正価格」と呼ばれる背景としては、株と債券を使ってヨーロピアン・コールオプションを複製することができるという事実から来ている。

ブラックショールズ式の計算には、行使価格、期間、原資産価格、原資産利回り、短期金利(安全利子率)、ボラティリティ(予想変動率)など6つの情報が必要です。
このうち、行使価格、期間の2つは、取引当事者が自分で任意に設定する情報です。一方、原資産価格、原資産利回り、短期金利、ボラティリティの4つは、市場から入手する情報です。



米系投資銀行ソロモンブラザーズ(現シティグループ)は、1980年代には既にこのモデルを実際の金融商品のプライシングに応用していたと言われている。オプションの理論価格算定方式が数学上非常に明晰な形で提供されたことはSPAN証拠金(1988年にシカゴ・マーカンタイル取引所が開発したリスクベースの証拠金計算方法、Standard Portfolio Analysis of Risk)算定方法に決定的な示唆を与えている。

投資戦略としてはオプション価格の理論値が得られることから、適正プレミアムの獲得や現実の取引価格との乖離が裁定取引上の利益目標となり得ると想定されたが、実際にはテールリスクに対する脆弱性などが指摘されており、LTCM破綻(1998年9月)という現実の失敗によりその投資戦略上の権威は大きく毀損されてしまった。投資中に発生するイベントの定性情報を無視したポートフォリオ戦略(将来何が起きるかは知りえないことを前提とした投資戦略)としては依然として強力であり、それまでアナロジーやアフォリズム、アノマリーやテクニカル分析などといった従来の「投資の慣行」を超え、確率論からの記述が与えられた貢献は大きい。



この方程式は、価格の変化率の分布が正規分布に従うという仮定を置いているが、現実の金融商品ではこれが成立していないため、この方程式は現実世界では成立しないという批判がある。また、現実に成立した市場価格のみを参照情報としているため、いわゆるパッシブ投資法であり、現実の企業活動への評価や予想を織り込んだ長期運用、あるいは市場参加者(投資家)の心理や損益状況、特定投資家が特別な状況に追い込まれていることを逆手にとったアクティブ投資戦略にとっては、ブラックショールズ型投資戦略はその投資戦略があからさまに読み取れることから、格好の攻撃対象になる可能性がある。この場合、市場価格は確率的に変動するのではなく誰かが破綻・破産することを収益機会とするゲームが成立してしまうため、市場参加者に無意識での協働が成立する。



実際、この方程式を作った、マイロン・ショールズらが参加したLTCMでは、実際はそれほど希ではないが、正規分布という誤った仮定においては希であるロシア財政危機という歴史上のイベントに遭遇し、1998年に創業4年で破綻した。