2004年07月04日

【中東報道に振り回される英国人】BBC News (2004/6/22)

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原文http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/3829967.stm
(翻訳:203号系統)



イスラエルとパレスチナの抗争を取り上げている英国のテレビ・
ニュースは視聴者を惑わせ続けており、またイスラエルに好意的
な立場を取り続けている、との最近の調査報告があがっている。

スコットランドのグラスゴー大学メディア・グループが調査したところ
によると、イスラエル人の意見が引用される割合がパレスチナ人
のそれに比べて2倍以上にもなっていることが明らかになった。
(訳注)

また同研究は、ニュース番組では抗争の歴史とその発端に関する
情報が充分提供されてこなかったとも報告している。

また視聴者の多くは、誰が誰の土地を「占領」しているのか、ろくに
判っていなかったのである。

用語の違い

調査は、現在のパレスチナ民衆蜂起( Palestinian intifada )が
始まって以来の、BBCの1チャンネルとITVニュース・チャンネル
の報道に対象を絞って行われた。200以上の番組とBBCの
著名特派員たちも含めた800名以上へのインタビューを、
調べあげたのである。

「イスラエルの公式見解への圧倒的傾斜」に加えて、合州国の
イスラエル支持派政治家が、他のどの国の政治家よりも(英国の
政治家の2倍も)多く登場することで、ニュース番組では
「非常に強力な役割を果たしている」と云うことを、研究者たち
は見出した。

「この事実が、もうそろそろ明らかになっても良い頃なんだが
――大多数の人は、パレスチナとパキスタンの違いが判って
いない。」( Sharif,Leeds )

パレスチナ人の行動がこの問題を「引き起こしてきた」ものとして
描き、他方イスラエル人の行動を「それに応戦している」かの
ように意味づけ・文脈を構成する。このような傾向がメディアに
あることを、この研究は非常に問題視している。

「これら両者間の本来の関係、即ち一方(パレスチナ人)が
もう一方(イスラエル)による軍事的支配に従属させられてきた
こと、に関しては殆ど議論が起こっていなかった。」と報告書
は述べている。

また、ニュース番組に於いては、パレスチナ人の死者が圧倒的に
多いにも拘わらずイスラエル人死傷者が特に強調されていること
も明らかになった。

そして、両者に対してジャーナリストが使用している用語の相違にも、
研究者は注目している。

「『虐殺( atrocity )』『残忍な人殺し( brutal murder )』『大量殺人
( mass murder )』『極悪非道な殺人( savage cold blooded killing )』
そして『屠殺( slaughter )』などといった用語は、イスラエル人の死に
対しては使用されているが、パレスチナ人の死に対しては使われ
ない。」と報告されている。

「ジャーナリストがパレスチナ人を表記するときには『テロリスト』と
いう言葉が使用されている。しかしイスラエル人の集団がパレスチナ人
の学校を爆破しようと試みた時の報道では、イスラエル人たちは
『過激派 ( extremists )』或いは『自警団 ( vigilantes )』と述べられて
いるのである。」

「速報」文化

今回の調査によって、平均的な英国人はイスラエルとパレスチナの
抗争について殆ど何も判っていないことが明らかになった。

抗争に関するメディア報道が溢れかえっているにも拘わらず、
英国人の多くは真実とは逆にパレスチナ人たちがイスラエルの
土地を占領し続けていると考えている。さらに、パレスチナ人
のことをアフガニスタンからの難民と考えている人も居る有様
である。

この報告書でインタビューを受けたジャーナリストの中には、
十分な背景説明が不足していることに関して、与えられる時間
の少なさや斯様なややこしい話題を報道しなければならない
ことの困難さを挙げている者も居る。また、ジャーナリストに
加えられる両者からの圧力( intimidation )を指摘する人たちも
居る。

世界で最も報道されていながら最も理解されていない抗争の
一つを、総合的に報ずることなく簡単な速報( sound bites )
ニュースに切り詰めてしまうような「速報 ( breaking news )
文化。これを批判するBBC News読者は多い。

「今や歴史は、全ての報道が見落としている部分で出来上がっ
ている。」これは、合州国在住のBBC News読者であるRakesh
Jainの投書である。

「速報文化の結果、人々はテレビから流れてくる15秒速報
( sound bites )の影響を受けやすい状態になってしまい、問題の
根本要因をまるっきり読み違えてしまうのです」

英国の読者Douglas Shawが報告書で指摘された点を挙げて
いる。即ち占領地に在るイスラエル人入植地のことを、軍事的
かつ戦略的機能を持っているものであると云うよりもむしろ
攻撃の標的にされているかのような描き方をする傾向がジャー
ナリストの間にある、と云うことである。

「BBCは、ヨルダン川西岸とガザ回廊に在るイスラエル人
入植地のことを全て「不法」なもの、と記述した方が良い。」
とShaw氏は書いて居る。

「これは、大衆の理解にとって小さな手助けになり得るはず
です。」

歴史のお勉強

BBC Newsの上級役員Mark Damazerは、抗争に関するBBC
の報道に於いてはいかなる反パレスチナ的偏向の情報提供も
あり得ないとしている。しかし、テレビ報道の「文法作法」の
故に重要な文脈が抜け落ちてしまうことも、認めている。

「大衆は、毎晩のように一日が終わるまで判りもしないニュー
スを見ている。」(グラスゴー大学、Greg Philo)

「氾濫している報道の中に歴史の重要事項が埋もれていくこと
は、まま在ります。」と彼は、BBC World Service’s Newshour
番組で、語っている。

しかし、特派員と編集者は、その危険性についての意識を持って
いたし、ことの文脈を落としたような記事の書き方に対しては
常々「極めて厳粛に」責任を負っている、と述べている。

そして報道での用語を顧る限りでは、BBCが親イスラエル的で
あろうとしてきた形跡は何も無い、と彼は言う。

「BBCの特派員たちがヨルダン川西岸やガザ回廊のことを記述
せねばならないときには、彼らは、「帰属が争われている」土地
とは言わずに、その土地は「占領されている」と表現している。

だが、グラスゴー大学のGreg Philoは、真実は同じ番組を観れば
自ずと判ると言う。

「報道番組を制作する度に歴史のお勉強を盛り込む訳にはいか
ないでしょう。しかし問題なのは、大衆の80%が、世界に
関する情報をテレビのニュースに頼ってしまっている点に、ある
のです。」

「毎晩毎晩、彼らは一日が終わるまでニュースを観ていながら、
この抗争が一体なんなのか全く理解していないのです。」

この記事について、どのようにお考えになられたでしょうか?
以下の書式にて、私たちにご意見をお送り下さい。


http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/3829967.stm

【訳注:イスラエルからの悪い知らせ】
原文http://www.gla.ac.uk/departments/sociology/Israel.htm

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反戦翻訳団さんのところで,BBCのこの記事が日本語訳されて紹介されている。
報道における「圧倒的傾斜」〜グラスゴウ大学の研究より。【today's_news_from_uk+】at 2004年07月06日 03:35
少し前に翻訳されて出ていたものだけれど、さっき気づいた興味深い記事を。BBC Newsの「中東報道に振り回される英国人」という記事で、グラスゴー大学メディアグループが調査した「イスラエルとパレスチナの英国での報道のされ方」をまとめたもの。「英国人はパキスタンとパ
英国でのパレスチナ報道【P-navi info】at 2004年07月14日 12:42
この記事へのコメント
イギリス人がこれほどパレスチナ問題に付いて知らないとは!!
これも、どこかで聞いたことのある昔ながらの島国根性というヤツか?
冗談はさておき。
これは、学校で教えてないのか?それとも教育が機能してないのか?
誰か知ってたら教えて下さい。
Posted by みんどる+え=みんどぅるれ at 2004年07月06日 10:42
両者のいい分を並べて圧倒的な軍事力による悲惨な現実を隠すのはメディアの常套手段です。国連憲章、国際法にもとずいた国連決議や国際司法裁判所の裁定に従わず、アメリカ、イスラエルによるテロを認めない報道をするのはメディアの経営上の判断からきています。政権政党、官僚、警察などからの好意的な情報提供、企業からの広告という名目の資金提供によつて経営が成り立っており、政策の浸透に影響する視聴率、部数を伸ばす事ぐらいしかメディアとしてはやることはない。口先、ペン先の威勢のよさに反して経営基盤は脆弱そのものです。御用記者の取材能力はエリートやテクノクラートがその気になるようにメイクしたケツをフリフリしながら差し出す能力のことです。近頃では抑圧というと北朝鮮ということになっていますが、いつの時代、どんな政治体制であろうと権力というのは支持している人々によつて支えられています。家庭、学校、企業みな独裁的な性格をもっていながらそれなりに仕合せであり、満足しているではないですか。反戦デモが少ないのは厳しい経済活動を通じた政治的支配が効果を上げているからであって、メディアによって政治的自由があるように思い込まされていても、じつは飲み食いの自由でしかない事が明白になっています。メディアはダーティビジネスなんです。
Posted by ビワのたね at 2004年07月11日 03:20