2004年05月09日

【苦しむ人々】ダール・ジャマイル(2004/5/3)

苦しむ人々

原文:
http://blog.newstandardnews.net/iraqdispatches/archives/000314.html
(訳:earthspider)

ダール・ジャマイル
2004年5月3日午後1:00(バグダッド時間)

この数日間というもの、ブログに何も書いていなかった。イラクにおける種々の事件はそれぞれ独自の流れをたどりつつあり、私がかかわった一つの事件がいま、ふたたび新しい意味を持とうとしているのだ。
私がサディク・ゾーマン氏の恐るべき一件に出会ったのは、この一月のことだった。手短にいうと、彼は昨年七月にキルクークの自宅で米軍兵士に逮捕され、抑留中に殴打され、電気ショックで拷問され、鞭打たれ、片手を骨折し、頭を殴られ、一ヶ月後にティクリート総合病院で昏睡状態に陥ったのだ。

この事件について、私は非常に大ざっぱな報告をエレクトロニック・イラクに投稿した日誌に書いた。

そうしたことには理由がある。すでにほとんどのイラク人が知るところとなった、アブ・グレイブ刑務所およびイラクの多数の米軍収容施設における、抑留者に対する非道な行いについて関心を惹起することのほかに、私はゾーマン氏の家族に対する賠償について、いくらかなりとも注目を求めたかったのだ。

やっと多くのメディアがこの国際法違反の犯罪行為を取り上げるようになったので、今回私は再度ゾーマン氏の事件について書く。だが、私の希望は一緒だ。

ゆえに私は、さらに詳しく事件について調査を進めることに尽力した。文書を集め、各方面に電話をかけること。そして何より大事なことは、ゾーマン氏の妻や九人の娘とよく知り合うことだった。なぜなら拷問の犠牲者のひとりひとりの後ろには、愛するものたちがいるからだ。あの恐ろしい写真に写る、フードを被せられたイラク人ひとりひとりの後ろには、妻があり、息子があり、娘が、兄弟が、姉妹が、母や父がいるからなのだ。

サディク・ゾーマン氏の打撲の跡が残る頭、昏睡状態の瞳の写真の裏側には、毎日すすり泣きながら彼をあおいでやる妻の姿があるのだ。一日二十四時間のうち停電がつづく十八時間のあいだ、空っぽになった家で、夫に涼しくいてもらうために。家がからっぽなのは、ほとんどすべての持ち物を彼の医薬品を買うために売ってしまったからだ。

電気火傷を受けた彼の足裏の写真の裏側には、父親の介護をする九人の娘の姿があるのだ。かつては大きく、強い男だったゾーマン氏は、みすぼらしいベッドに横たわり、妻と娘たちが交互に流動食を胃に流し込み、また電気があるときには食物をミキサーで混ぜてやるのだ。

バグダッドのアル・ドーラにある彼らの家のほとんどの部屋は、文字通り完全にからっぽだ。車もなく、電話もない。ほんとうに、お金がないのだ。もしこのまま何も変わらなければ、一家は近いうちに路上に投げ出されてしまうかもしれない。

昨晩、自宅で娘のひとりがいった。「何百万人もの人たちが私たちの話を聞いたとして、何をしてくれるっていうの。そうなったとしても、父さんは帰ってこない。話を聞いた人たちは悲しい気持ちになったり、腹を立てたりするでしょう。でも、それが何になるっていうの?」

もうひとりの娘はこういう。彼女はバグダッドの医学校に通っている。払った学費の期限が切れてしまうまでのあいだ、勉強を続けるために。「私たちのここでの生活を見たでしょう。こんな風にずっと生きていくことができるわけがないじゃない。どこに希望があるというの?」

私は、この事件について書くことで自分が何かを変えられるだなどという幻想は持っていない。でも、私はひとりの理想主義者。私は何をもたらしたいのだろう・・・正義?希望?家族への支援?当局の説明責任?終わり?あるいはこの苦しみをせいぜい和らげてくれる何か?

その全部だ。でもこの占領下イラクで、希望というものは不足品なのだ。そしてその言葉をこんなにも恐ろしい状況におかれている人々のもとに伝えることは、危険なことでもある。

私はわからない、あなたが間もなく読むだろうこの話を書くこと以外に、何をすればいいのか。でも、私がやろうとしていることは家族がCPAに対して賠償要求の手続きを踏んでいくことの手助けにはなる。米軍が何らかの金銭的賠償を、それを絶望的に必要としている家族に対して行うことを求めて。だが家族がこのほぼ一年間にわたろうとしている地獄の苦しみに対して、たった一イラクディナールでも受け取ることができる見込みは、あまりにも少ない。

だから私は、この話を読むすべての人々に聞いてみたい。
あなたは、はらわたが煮え繰り返った?腹がたった?怒った?悲しくなった?

たぶん、ね。

つぎに私はこう問おう。

で、あなたはどうする?


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ダール・ジャマイルはニュースタンダード紙のバグダッド特派員です。彼はアラスカ人で、占領下イラクの水面下で起こっている物事の取材に献身しています。イラクでの重要な取材活動を支えるために、募金を募っています。ダールへの募金に関してはニュースタンダード紙のウェブサイトを参照してください。
http://newstandardnews.net/

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この記事は、以下の記事の前段となるものです。こちらもぜひあわせてお読みください。
(earthspider記)

【米軍に抑留され、昏睡状態となって戻ってきたイラク人男性】ダール・ジャマイル(2004/5/4)
http://blog.livedoor.jp/awtbrigade/archives/528805.html

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反戦翻訳団より転載。 ---- 原文: http://blog.newstandardnews.net/iraqdispatches/archives/000314.html (訳:earthspider) ダール・ジャマイル 2004年5月3日午後1:00(バグダッド時間) この数日間というもの、ブログに何も書いていなかった。イラクにお.
苦しむ人々【ばっきょ隊長】at 2004年05月09日 22:07
この記事へのコメント
申し訳ありません。無許可にて転載させて頂きます。
ご勘弁下さい。
Posted by ばっきょ隊長 at 2004年05月09日 22:06
転載歓迎ですよー。
Posted by earthspider at 2004年05月09日 22:14
Good place to found many answers
Posted by cargo carrier at 2005年03月04日 20:22