「あ、開けて良いですか?」
大吾さんはそう聞き返す。
日本の礼儀はこっそり部屋に持ち帰り、確認するのが正だ。
だが、大吾さんは一番に土産を貰った事で、否、多分初めてのお土産なのだろう。
それで舞い上がったのかも。
「まあ、良いが…」
流石に師匠が気まずい顔をする。
「あらっ、見せてくれるの?」
奥さんがそう煽る。
「見たいわよね」
カゲロウもそう催促する。
「じゃ、じゃあ…」
そう言って、上気した顔の大吾さんは渡された包みを解き出した。
細い外見。
何だろう?
がさ、がさ、音を立てて、大吾さんが包みを開けた。
えっ、
あっ、
嘘っ、
何?
皆が一様に驚く。
それは黒光りする一本の木の棒だった。
但し、唯の棒ではない。
先端が太く加工され、しかも、表面は漆が塗られているのか、テカテカと光っている。
それだけではない。
その棒は途中で括れが施され、且つ独特の文様が掘られていた。
「岩崔の作」
師匠はそう告げる。
山本岩崔。
又の名を、岩仏。
鎌倉時代に木仏彫士として、その名をはせた高僧と聞く。
あの時代にも関わらず、士は女性だったという言い伝えがある。
一刀彫。
最初の母材から最終作品に至るまで、唯一つ専用のノミで仕上げる天才士。
師匠はその末裔に位置するといつも、述べる。
確かに、師匠のノミに迷いは見られない。
最近こそ、形状の複雑なものは半割加工に逃げていたが、昔はそんな工作を忌み嫌っていたものだ。

