新譜 「Some Other Time」 はアメリカでは8/31の発売ですが、日本では既に発売を開始し、またライブでは沢山の方にご購入頂いたので、もう聴いて下さっている方が多くいらっしゃると思います。

今回のアルバムジャケットには曲目解説もライナーノートもございません。私からのメッセージが簡単に書かれていますが、具体的な各曲の説明はないので、このブログで皆さんにシェアさせて頂こうと思います。


「Some Other Time」  楽曲解説 by Ayako Shirasaki

  1. Sunrise – シンプルなメロディーによるサンバ調の明るい曲。世界のどこからから見ても日の出は神秘的です。朝の始まり、登っていく太陽の力のように世界にも平和で明るい未来が待っていますように、という気持ちで作曲、演奏しました。
  2. 3 Steps Forward – バップの心意気を意識した曲作り。「三歩進んで二歩下がる」という有名な諺がありますが、これは気持ちが「前に前に」進むようタイトルを「三歩進め」に留めました。
  3. 与作 – レコーディングの数日前、マイナー調の曲のアドリブ練習中に不意に現れた与作のメロディー。全体をジャズアレンジしたら面白いかも、遊んでいたら出来上がったアレンジ。意外にも本CDで一番反響の多いトラックです。
  4. Some Other Time – アルバムのタイトルにもなった、レナード・バーンスタインの美曲。ビル・エバンスの名演が有名ですが、ビートを今風にして、心地よい風に吹かれているイメージで演奏しました。
  5. Oleo – 最近のライブで度々演奏していたベース&ドラムスは半分の遅さ、私だけが一人でアップテンポでスタートしています。ビートやリズムが二層、三層になるのが好きだったりします。途中から皆一緒に滑走しています。
  6. April in Paris – こちらもOleo同様テーマのA部は二層のビートでトリオが演奏しています。プラス変拍子、とミュージシャン泣かせのアレンジですが、決まった時は「ガッツポーズ」が出るほど、演奏していて気持ちいいです。
  7. My Man’s Gone – 案外知られていない、ジョージ・ガーシュインのオペラ「ポーギーとベス」の中の一曲。A部では5拍子、B部では3拍子で演奏しています。私にとっては難曲のひとつです。
  8. Long Ago and Far Away – スタンダード曲ですが、ファンクのビート、そしてハーモニーのアレンジで原曲のイメージを変えています。
  9. Sophisticated Lady – 2011年スイスの「ルツェルン音楽祭」出演の際、クラッシック界の巨匠、マウリツィオ・ポリーニ氏から直々リクエストを頂いた曲です。その時はピアノ&ベースで演奏しましたが、今回はあえてソロピアノで演奏しました。ポリーニ氏に捧げます。何度弾いても難しい曲です。
  10. あんたがたどこさ – いわずと知れたわらべ歌。大人の人はそらで唱えることができるのでは?乳幼児の音楽クラスで取り上げてきた題材ですが、この曲は実はとても複雑な変拍子で、ジャズアレンジで面白そうなことができそう、と取り組んだ曲です。
  11. Peace of Mind –元々は3拍子のオリジナル曲でしたが、4拍子、そしてドラムのブラシフィルインをフィーチャーした雰囲気の全く違う曲にリメイクしました。曲調は違いますが、「Cute」をどこかに意識したアレンジです。
  12. Hopeスウェーデンのピアニスト、ラーシュ・ヤンソンの美しい小品。最近のライブ、アンコールでよく演奏させて頂いています。


アルバムを作るにあたりコンセプトがあったわけではありません。8年ぶりのトリオ録音ではありますが、その割には気負わず、今できるベストのことを自然体で臨みました。しいて言えばアドリブがしやすい楽な曲(笑)と、テーマなどのアレンジに凝って形から入る曲(でも、アドリブは難しかった、笑)などをバランスよく選曲したつもりです。
そして、1曲1曲は割とあっさり短めです。ライブではもっとしつこくいくんですけれど、表に出たり、裏に出たり、と危険なので、笑。あとは調性が似たものに偏らないように意識しました。ジャズ曲はほっとくとフラット2こ、3こに偏りやすいので。与作は全てのキーで試してみて、シャープ二つのBマイナーに落ち着きました。

私の演奏はコアなジャズファンに好まれることが多く、アルバムを聴きこむほどいろいろな発見があって素晴らしい、とよく言って頂きます。有難いことです。
でも、今回のアルバムはジャズファンはもちろんのこと、ジャズをそれほど知らない方でも楽しんで頂ける、という自信がございます!
理由は一つ一つの曲にはっきりとした特徴があり、聴きやすい、短めに演奏している、そして、どの曲にも共通するのが「歌、メロディー」が聴こえてくること。
歌とは旋律に歌詞が乗っかって、肉声で聴かせる、これほどまでにパワーのあるものはありません。器楽演奏は歌詞、肉声が無い分、抽象的な部分があると思いますが、今回のアルバムは一つ一つの曲のイメージが掴みやすいのではと思います。

あるリスナーさんは「この曲は朝起きて、さぁ仕事頑張るぞ」という気持ちにさせてくれる。「この曲はアフターファイブでバーでお酒飲んでいる雰囲気ね」と一つ一つのイメージがはっきり見えてくるそうです。

変拍子やリハーモニゼーション(元々の和声を変化させること)なども結構施しているのですが、そっちに耳がいってしまうのは、きっとミュージシャンやコアなジャズファンなのでは?と思います

それらは私達ミュージシャンの自己満足だったり、何か物足りない、隠し味を、という気持ちからきています。

それらが前面に出すぎてしまわないように、考慮したつもりです。
メロディーと気持ちいいスイング、ビート感をまず感じて頂ければと思います。

楽曲説明を通して、更に曲のイメージや特徴を感じて頂ければ嬉しいです。


白崎彩子



新譜CD 「Some Other Time」 大好評発売中! (USA release 8/28)
http://diskunion.net/portal/ct/detail/JZ130704-01


Ayako Shirasaki piano trio

Ayako Shirasaki - piano
Noriko Ueda - bass
Quincy Davis - drums

Jan Matthies Records (JMR 201301)
Recorded on May 10 2013 USA


1. Sunrise (Ayako Shirasaki)
2. 3 Steps Forward (Ayako Shirasaki)
3. Yosaku-与作 (Kiminori Nanasawa)
4. Some Other Time (Leonard Bernstein)
5. Oleo (Sonny Rollins)
6. April in Paris (Vernon Duke)
7. My Man’s Gone (George Gershwin)
8. Long Ago and Far Away (Jerome Kern)
9. Sophisticated Lady (Duke Ellington) – piano solo
10. Antagata Dokosa – あんたがたどこさ (Japanese Traditional)
11. Peace of Mind (Ayako Shirasaki)
12. Hope (Lars Jansson)


2013年 再来日決定!
10月5日(土) 成城ホール 18時開演
白崎彩子 Jazz ピアノトリオ
"Some Other Time" in 成城


白崎彩子-piano
中村健吾-bass
ジーン・ジャクソン-drums

入場料 一般 3000円

詳細、チケット購入のご案内はこちら
http://www.setagayamusic-pd.com/event/2013-10-05.html

Seijo Hall