1 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 16:43:30.32 cl/Kmlgr0 1/36

「……」

「……」


「デートの時くらい、ヘッドフォンつけるのやめてほしいな…」

「聞こえてるけど」

「え」


「この距離の会話くらいなら、そのまま聞き取れるから、気にしないで」

「はぁ」

元スレ
男「僕の彼女はヘッドホンマニア」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1359877410/

3 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 16:47:52.05 cl/Kmlgr0 2/36

「あと」

「ん?」


「ヘッドフォンじゃない。」

「ヘッドホン」

「え?」


「JIS規格及びJEITAでは、耳を覆うまたは乗せるタイプの音響機器を“ヘッドホン”と定義しているの」

「日本人なら、ヘッドホンと呼んで」


「ちなみに、これは?」

「…スマートフォン」

「……」

5 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 16:52:15.46 cl/Kmlgr0 3/36

「あれ?」

「もしかして、ヘッドホン変えた?」


「気づいてくれたの」

「今度のは調子いい?」

「うん、いい。これは、とてもいいわ」

「ピンクが目立つなあ。派手なヘッドホンは珍しいね」


「ULTRASONE、edition8 Julia」

「お値段、14万円」


「高すぎだろ」

7 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 16:56:45.76 cl/Kmlgr0 4/36

「前にも、その、【うるとらなんとか】って持ってなかった?」

「……」ムスッ


「彼女の趣味にはもっと興味持つべき。」

「その台詞には、興味関心のかけらも感じない」


(そんなこといわれても…)


「以前、確かに使ってた。同じ、ULTRASONEの、edition7」

「音は良かったけど、装着感が気にいらないから現在は2軍。」

「あと、白い素材は、汚れと経年劣化が目立ってしまって、嫌」


(それも多分安いヘッドホンじゃないだろうに…)

8 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 16:59:11.44 cl/Kmlgr0 5/36

「結局今日も家電量販店か」


「そこは楽園。開店から閉店まで居座っても苦痛じゃない」

「いやな客だ」


「ただし、お店のテーマソングは頭を洗脳される。ヘッドホンは必携」

「ヘッドホンじゃなくてもいい気がするけど」

「……」ムスッ


「ごめん、怒った?」


「なるほど…あなたもイヤホン派の差し金ってわけね」

「なにその派閥面白い」

9 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:02:09.92 cl/Kmlgr0 6/36

「男、みて。この売場。」

「見ての通り、ヘッドホン・イヤホン売り場だ」


「iPodが発売されて10年以上が経った。」

「iPodをはじめとしたデジタルポータブルオーディオの人気によって」

「…いや。正確にはCDやMDといった媒体を使わない、手軽なシリコンオーディオの人気で」

「ヘッドホン・イヤホンの人気も大きく拡大した。」

「国内市場規模は300億円。年間累計1000万本の売り上げがとなり、音響業界としても無視のできない規模になった」


「しかし、見ての通り」

「時代はすっかり小型イヤホンに集中している」

「ほんの数年前まで、申し訳程度に並んでいたイヤホン売り場が」

「今となってはポータブルオーディオの一大勢力となってしまっている」

「この店も、種類も数も圧倒的にイヤホンが多い」


「…どう思う?」

(どうでもいいかな)

10 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:06:34.13 cl/Kmlgr0 7/36

「そもそもヘッドホンとイヤホン、何か違うの?」

「同じオーディオなんだし、仲よくすれば…」


「…短い間でしたが、大変お世話になりました。さようなら」

「ちょっとちょっと!」


「もともと、日本はヘッドホンづくりが上手だった」

「なんでも部品を小さくしたがる日本が、小型機器であるヘッドホンを作らないはずがなかった」

「そして、予想通り日本のヘッドホンは世界に通用し、認められた」


「でも、日本はイヤホンづくりがずっと下手だった」

「まともな製品が作れるようになったのは本当につい最近のこと」

「それまで、イヤホンといえばアメリカの独壇場だった。」

「だから私のような人間は…」


「イヤホン好き=米国被れの俄(にわ)か者という偏見が」

「それはひどい偏見だ」

12 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:10:50.72 cl/Kmlgr0 8/36

「一方で、アメリカのメーカーはヘッドホンづくりが下手だった」

「音も作りも大雑把なメリケンヘッドフォーン(笑)は、繊細な日本人には相容れない存在」

「それもあって、アメリカの小型オーディオ機器には慢性的な不信感がある」


(よくわからないけど、とりあえず、女の前でイヤホンの話は禁止)


「しかし、イヤホンを否定しても始まらない。」

「食わず嫌いもいけないから、少しずつイヤホンのことも知っていこうと陰ながら努力している」

「そうなんだ?」


「あなたについても、興味ないけど、知るための努力を、一応陰ながらしている」

「そこは陰にする必要ないかな」

13 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:14:33.04 cl/Kmlgr0 9/36

「折角来たのだし、試聴をしよう」

「はい」


「しかし、いろんな種類があるんだな。どれ選べばいいか目移りするよ」


「あれ?女?」


「すいません。そこにあるSennheiserのHD700、試聴できますか?」

(ガラスケース入りのほうの試聴?やたら値段高そうだけど)

「…。だめですか。そうですか。ありがとうございます」

(断られた)


「…くそが」ボソッ

「女の子がそんな暴言いけません」

15 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:18:38.09 cl/Kmlgr0 10/36

「高級機こそ試聴が必要だというのに、まったくわかってない」

「そんなことじゃ、あのガラスケースに入ったヘッドホンはいつまでたっても売れない」

「ヘッドホンは使うものであって、飾るものではない」


「まあ、高いものだし、使うと肌に触れちゃうし、難しいところじゃない?」

「なら、2台納入して、1台は試聴用にすべき」

「そして1年くらい経ったら、試聴機はB級品として安く売ればいい」


「なぜもっと商売を上手にできないのか…」イライラ

「まあまあ、落ち着いて」


※お店によってはちゃんと試聴させてもらえるよ!でも無理強いや買うつもりのない冷やかしはやめよう!

18 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:22:19.70 cl/Kmlgr0 11/36

「仕方ないから、一般試聴コーナーのヘッドホンを物色しよう」


「女的には、どの会社のヘッドホンが好きなの?」

「国産なら、オーディオテクニカ」

「オーディオ、てく…?どうして?」


「デザインと装着感がいい」

「……」


(そこは音じゃないんだ)

19 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:26:55.30 cl/Kmlgr0 12/36

「もちろん、上位機種は音もいい。」

「高音域が明るくて綺麗なのが、オーディオテクニカの特徴ね」


「Xシリーズに刷新されて、昔の音のほうが好きだったというマニアも多いけど」

「私はXシリーズに代わった今も好き、むしろ今のが好き」


「特に、ATH-AD2000Xは、先代の良さを残しつつも、力強さが加わった」

「国産開放型のヘッドホンとしては、未だ最高傑作といってもいい」


「しかし、試聴コーナーにはAD2000Xがないので、下位機種のAD900Xで我慢しよう」

「…うん。オーディオテクニカは下位機種でも装着感が素晴らしく良い」


「こ、このヘッドホン、なんか穴だらけだけど…これじゃ音が漏れてひどいんじゃ?」

「“開放型”のヘッドホンだから、これで問題ない」

21 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:31:56.21 cl/Kmlgr0 13/36

「男が想像しているのは、こんな感じのヘッドホンだと思う」

「ちなみに、これもオーディオテクニカ。ATH-ES700」

「確かに。女がつけてるヘッドホンも、こんな穴だらけじゃない」


「AD900Xのように、ハウジングに穴が開いているタイプを開放型と呼ぶ。」

「逆に穴が開いていないES700のようなタイプは密閉型」


「密閉型は外界の音を遮断し、低音もしっかり出て音の密度が高いという利点はあるけど」

「音全体に閉塞感が出て、音の広がり方が不自然になる」


「オープン型はその逆で、音の広がり方が実際のコンサートやスピーカーで聴くような自然さになるけど」

「低音が弱くなって音の密度は散漫になりやすい」

「あと、男が指摘した通り、音漏れが大きい。小型スピーカー並みに音が出るモデルもある」


「一般的に開放型は価格の高い上位機種になるけど、本来は聴きたい音楽に合わせて使い分けるものね」


「開放型と密閉型は、根本的に用途が異なるの」

23 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:37:27.61 cl/Kmlgr0 14/36

「昔、電車の中でオープン型のAKG K701を使っていたバカがいた」

「某アニメで取り上げられて、有頂天だったのか。」

「K701もオープン型なので、普通に音が漏れる。電車の中では普通に迷惑」


「だから、蹴ってやった」

「暴力は良くないかな」


「ただ、K701はとても魅力的な機種。私も持ってた」

「AKGも一部では人気のあるメーカーだったけど、当時日本ではそこまで知られていなかった」

「一躍その名を知らしめた仕掛け人には、一応“ぐっじょぶ”と言っておく」


(知らしめたと言っても、別の分野のマニアにだけ知れ渡った程度だと思うけど…僕は知らないし)

24 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:42:15.56 cl/Kmlgr0 15/36

「話が逸れたわ。オーディオテクニカの話」


「ちなみに、これは木のヘッドホン。ATH-W1000X」

「木のヘッドホン?」

「そう。オーディオテクニカはハウジングに木材を使ったヘッドホン作りが得意」


「木材を使うというアイディア自体は昔からあったし、今なら他のメーカーからもたくさん出てるけど」

「木材をウリにして成功した事例は、たぶんオーディオテクニカが最初」


「正直、木材によって音がどう変わったかはわからない。私は、見た目と肌触りが良いので満足している」

「確かに、素人目にも高級って感じがする」


「ただ、W1000Xは見た目も音も明るすぎて気になってる。」

「先代のW1000のほうが、見た目、音ともに価格相応に落ち着いていた。今のは、悪くはないんだけど。」

25 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:45:35.78 cl/Kmlgr0 16/36

バカA「じゃー俺、オーテクにしようかなぁwwww、AD1000X買っちゃうでござるwwww!」

バカB「オーテクwwwwオーテク買うなんて情弱の極みwwwww」

バカC「その値段でオーテク買うくらいなら、禅のHD650を2つ買うわwwwww」


「……」


ゴソゴソ


「ファサー(塩をまく)」

「店内で、塩をまいてはいけません」

26 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:50:35.70 cl/Kmlgr0 17/36

「なぜかヘッドホンユーザだけ、オーディオテクニカのことを『オーテク』と呼ぶ」

「なんで?オーディオテクニカだから略して『オーテク』でいいんじゃないの?」


「オーディオテクニカは、古くレコードアーム、カードリッジの時代から」

「『テクニカ』の愛称で親しまれ続けた、創業半世紀にわたる老舗オーディオメーカーなの」

「オーテクなどという奇怪な呼称を使っているのはヘッドホンユーザだけ」


「雑誌記事ですらオーテクの呼称を使われてしまっている昨今だけど」

「歴史のある会社を踏みにじるような呼び方の気がして、正直相容れない」


「とはいえ、Panasonicの「Technics」というブランドがあり、ここでもヘッドホンを輩出している」

「呼称が似ているから、業界団体がその呼称を政治的誘導したのかもしれないけど」

「それはそれとて、理屈はわかっても納得は全くできない」


「じゃあ、あのゲーム機の略称は?」

「…プレステ」

「……。」

27 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:54:14.11 cl/Kmlgr0 18/36

「そんなソニーは、新製品開発がとにかく積極的。」


「バランスド・アーマチュアを自社開発するとか正気の沙汰じゃないわ」

「でもそれをやってのけちゃうのが、ソニーたる所以なのかもしれない」


「また妙な単語が出てきた…バランス、何?」


「おっと」


「イヤホン勢に塩を送るようなことはしない。今の単語は忘れて」

「今日はヘッドホンの話」

「私は、あなたの敵ではありません」

30 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 17:59:10.45 cl/Kmlgr0 19/36

「一時期はソニー血迷ったかと思っていた時期もあったけど」

「具体的にはSA3000とかSA5000を出していた時期だけど」

「最近は、割といい感じ。」


「ソニーはテレビもパソコンもゲーム機も作ってるから、ヘッドホンも余裕なんだろう」

「確かにそうとも言える。けど…」


「現在市場に並んでいる製品の種類で言えばソニーは、国内で業界2位。1位はオーディオテクニカ」

「この2社が日本のヘッドホン業界の両雄といわれているわ」

「そうなんだ」


「でも、ソニーがヘッドホン業界に存在する意義はとても大きい。」

「なにせ、ウォークマンを生み出した会社だしね。ポータブルオーディオとの親和性はどこの企業よりも強い」

35 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 18:04:30.06 cl/Kmlgr0 20/36

「でも、ソニーといえば、やっぱりこれね」

「MDR-CD900ST」

「このヘッドホンは見たことがある」


「正確にはソニーじゃなくて、ソニーミュージックコミュニケーションズの製品だけど」

「業務用機材ながら、日本人のこのヘッドホンの認知の高さは異常」


「女の評価としてはどう?」

「正直、ヘッドホンとしての能力はそれほどとは思ってない。価格相応。」

「あくまで業務用だし、使いやすさとか、プロが使う統一基準的な意味で、評価されているんだと思う」


「今でこそ、こうしてヘッドホン売り場に並べられることも珍しくないけど」

「基本は楽器屋さんとか、業務用機器でしか購入できない」


「あと、業務用だから保証も基本的にないから注意が必要。パッケージも真っ白よ」

38 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 18:08:52.46 cl/Kmlgr0 21/36

「CD900STと似たような傾向なら、MDR-Z1000のほうが私は好き」


「価格がドカンと上がるな…」

「…私はわりと古いモデルよりも新しいモデルを好む傾向だけど」

「正直このZシリーズはMDR-Z900の完成度をいまだ超えてないと思う」


「ソニーは他にもCD3000とかqualia010とか…」

「今一度、市場に並んでもエース級の製品を過去に作っているのに、なかなか次が続かない」

「ソニーの惜しいところは、過去に優秀すぎる先輩機器を持ってしまったことね」

「…それは、ヘッドホンに限った話じゃないかもしれないけど」


「でも素地があるから、いつかきっと次も来る。私はあきらめない。期待してる」


(女が珍しく熱くなっている)

39 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 18:15:04.87 cl/Kmlgr0 22/36

「私の中で赤丸急上昇なのが、このデノン。」


「ヘッドホン業界に限れば、今、国内で一番勢いのある注目株ね」

「市場に出ている種類こそ少ないけど、粒ぞろいでどれも品質がいい」

「この勢いは、かつてのオーディオテクニカやソニーの全盛期を彷彿とするわ」

「もしかすると、国内両雄の世代交代は、近いのかもしれない」


「確かに、さっきまでとはデザインが変わってるかも。カッコいい」

「…私は正直、見た目はあんまり好きじゃない」


(デザインについてはオーディオテクニカが贔屓だったか)

41 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 18:21:14.12 cl/Kmlgr0 23/36

「デノンが本格的にヘッドホンに参入したのは、比較的最近」

「正確には2007年ごろ」


「当初のプロモーションもそれほど派手ではなく、ひっそりと新製品が店頭に並んだのだけれど」

「もちろん、もともとデノンは、スピーカーや他の音響機器の知名度があったわけだけれど」

「その評判は、口コミであっという間に広まったわね」


「すごいことなんだ?」

「ヘッドホンのヒット商品は、営業力の高さがほとんど」

「デノンの売れ方は、そういう意味では異色だったわ。」


「当時の最上位モデルD5000は、正直、私は今一歩感をもっていた」

「その後、程なくして出したD7000が、ぐぅの音も出ないほど完璧だった。あの時の衝撃は忘れられない」


「当時の市場現行機種で最高峰だったULTRASONEのedition9を超えたとまで言う人もいた」

「それは言い過ぎだと思うけど」

(言いすぎなんだ)

43 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 18:26:05.57 cl/Kmlgr0 24/36

「ともあれ…」

「デノンは、ヘッドホン事業を強化に踏み切って、昨年、ラインナップを一気に更新」

「マイナーチェンジが多く、せいぜい数年に一度の新製品を出すくらいのヘッドホン業界としては」

「一斉刷新というのは、過去に例を見ないわ。勢いがある証拠よ」


「デノンは、利用シーンに合わせて4つのドメインを定義して展開している」

「D7000の後継であるD7100がいる“MUSIC MANIAC”が私の守備範囲」

「音質追及の高級機のラインナップね」


「初心者の男には、低音が面白い若者向けの“URBAN RAVER”がお勧め」

「確かに、デザインはこっちのほうがカッコいいな」

「男というか、男性が好きそうなデザインよね」

44 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 18:30:30.96 cl/Kmlgr0 25/36

「これは試聴できるようね。専用の試聴ブースがあるなんて、さすがデノン太っ腹」

「メーカー独自の試聴ブースなんて、ちょっと前まで考えられなかったけど」


「昨今のポータブルオーディオやスマートフォンの普及を考慮して」

「試聴ブースで自分の持っている機器をつないで試聴できるようになってきた。」

「いい時代よね」


「それまでは?」

「CDを持ちこむのは基本。」

「基本なんだ」


「CDプレイヤー(据え置き)も店に持ち込むのが応用」

「電源とか、引っ張るのが大変そうですね」


※家電量販店で、据え置きのCDプレイヤーを持ち込むのはやめましょう。

45 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 18:34:33.30 cl/Kmlgr0 26/36

「おお!」

「ものすごい低い音が聞こえる!」

「AH-D400は、最近流行の低音ブーストヘッドホンね。アンプを内蔵するとか、発想が面白い」

「オーディオテクニカのSOLID BASSシリーズ、ソニーのEXTRA BASSなんかが先行していたライバルだけど」

「独断と偏見で、この勝負は今のところデノンの圧勝」

「そのこころは?」

「??」


「どうして圧勝なのか、その理由を教えていただけますか」

「言ってもいいけど、たぶんQ.E.D.までに最低30分はかかる」

「ありがとうございます。後日にしましょう」

47 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 18:38:44.49 cl/Kmlgr0 27/36

「しかし、ヘッドホンってこんなに低音が出せるだ…すごい」

「Φ50mm程度の、単独のフルレンジドライバーで全部の音域を出すなんて現実離れしているけど」

「でも、メーカーによる血のにじむような努力の甲斐あって、こんな音が出せるようになったのよ」


「ジャズやクラシックを聴くのに、こういう強調された低音は余計だけど」

「ロックやポップス、テクノサウンドしか聴かない人には、楽しめる音でしょうね」

「確かに、知っていた曲がまるで別物のようだ…」


「でも、この音で慣れてしまうと、耳に変な癖がついてしまう」

「これはこれとて、あまり偏りのない音もしっかり覚えてもらいたい」

「そこで次のステージである、“ヘッドホンの使い分け”という概念が生まれるってわけ。」


(そのステージは、行きつく先はどこなんだろう)

50 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 18:43:00.10 cl/Kmlgr0 28/36

「来たわ、神聖なるサンクチュアリ」

「…何?」

「恐れ多いわ。スタックス様の製品コーナーよ」

「???」


「…?なんか妙な形のヘッドホン」

「年代もの?」

「愚か者。口を慎め」

「…」


「SR-407よ。私は先代のSR-404を使っていたことがあるけど」

「これはもう独断と偏見ではなく、事実として」

「スタックスのイヤースピーカーは、管弦楽を鳴らせたら世界一」


「おっと、また知らない単語が出てきた。これ、スピーカーなの?ヘッドホンじゃない?」

55 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 18:48:25.09 cl/Kmlgr0 29/36

「スタックスは、これまで見てきたヘッドホン・イヤホンとは根本的に仕組みが違う」


「音響機器が、電気と媒体を介して音を鳴らす方法は、大きく分けて4種類」


「ヘッドホンは、スピーカーと同じ原理である『ダイナミック型』で動いている」

「いわゆる、磁石を使ったタイプね」

「ああ、なんか中学の頃技術の時間で聞いたことがある気がする」


「対するスタックスは、『静電型』という方式を用いている」

「2つの電極に挟まれた、振動膜を静電気の力で振動させて音を鳴らしている」


「その振動は、物理的に弦楽器の弦が振動する状態に近い」


「この製品を作り上げるのは、非常に手間がかかり、高度な技術を要するの」

「過去にはいくつかのメーカーも静電型を作っていたけど、今なお製品化できているのはこのスタックスだけ」

「上位機種はこの時代にあっても、職人による手作業で組み立てているというわ」


「高級品ってことなんだ」

57 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 18:53:25.12 cl/Kmlgr0 30/36

「私は、小さい頃からヴァイオリンの習い事をしていたから、弦の音は身に染みてよく知っているのだけど」


「チャイコフスキーのコンチェルト、ヤッシャ・ハイフェッツの演奏」

「これを初めてスタックスで聴いたとき、比喩ではなく本当に、背筋がゾクゾクして、全身に鳥肌が立ったものよ…」

「まさにコンサートホールそのものの音だし、弦楽器そのものの音だった」

「ハイフェッツの情熱的なヴァイオリンが、まさに耳元で演奏されているようだった」

「そんなにか…?」


「はっきり言って、適当なお金出してコンサートホール行くくらいだったら…」

「最高の状態で録音されたCDをスタックスで聴くほうが、間違いなく有意義な時間だと思う」


「たまには、コンサートホールにも行ってあげましょう」

59 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 18:57:40.49 cl/Kmlgr0 31/36

「はっきり言って、iPodが出るまではヘッドホンなんて誰も評価しなかった」

「オーディオ雑誌でも取り上げられることはまれだったし」


「業界人もヘッドホンなんて貧乏人の嗜好、的な発想しかなかった。まともに聴きもしないで」

「その程度の仕事しかできない評論家なんて全員不幸な死を遂げればいいのに」

「不特定多数のSATSUGAI発言はやめなさい」


「まあ、それはともかく。」


「そんな超アウェーのなかであっても、ただスタックスだけは」

「ちゃんとその存在を知っている評論家からは、正しく評価されていた」

「さすがにこの音を『貧乏人の嗜好』で切り捨ててしまっては、その人の感性を疑うものね」

61 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 19:01:16.93 cl/Kmlgr0 32/36

「最近は、『静電型とダイナミック型は、ヘッドホン程度のサイズなら"原理的に"音質差はない』などというバカも出てくる始末」

「もちろん、理論や原理は、意味合いを知るうえで大事だけど、それは絶対じゃない」

「原理からしか結果を導けないという楽しみ方しかできないなら、そもそも音楽なんて趣味にすべきじゃない」


「私と同じように、世界中のヘッドホンを聴き」

「さまざまなコンサートホールで世界最高峰の音楽に間近で触れて」

「もちろん自分自身が、数十年以上楽器演奏者としても携わったうえで」


「それでもなお、やっぱりスタックスのイヤースピーカーは、ダイナミックと音質が変わりませんと言えるのなら」

「私は丁寧に耳鼻科への紹介状をお渡しするわ」 ドンッ


(女のシャドーボクシングは熱いなぁ)

66 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 19:05:37.42 cl/Kmlgr0 33/36

「残念ながら、スタックスはその特殊な仕組みゆえ」

「必ず専用アンプを通さないといけない」

「端子もほら、違う」


「これじゃオーディオプレイヤーにつなげないね」

「なので、イヤースピーカーとともに専用アンプをセットで購入する必要がある」

「専用アンプは1台あれば他のイヤースピーカーも動かすことができるから、そこは安心して」


「でも、随分お値段の桁数が多いけど、このアンプ…」

「安いくらいよ。ヘッドホンアンプなんてこの程度の値段なら普通だし」

「ピュアオーディオのアンプなんて、これの10倍100倍よ」


「音源が持っている本来の音を、一番安価で出し切ることができるのは、実はスタックスじゃないかとさえ思っているわ」

69 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 19:10:41.39 cl/Kmlgr0 34/36

「SR-009。これが、スタックスの現行最上位機種」


「ちょっと!これ3万円…じゃないよね!?桁数一つ多いよね!?」

「あわてることはない。至極妥当な値段」

「ぜひ、男にもSR-009でチャールズ・マッケラスのベートーヴェン交響曲5番を聴いてほしい」

「凄さは、絶対にわかる。」


「しかし、さすがにスタックスを試聴できる場所は少ない。」

「とても繊細な機器だし、これこそ、どこの馬の骨と分らない客に使わせるわけにもいかない」

「なので、試聴するなら、全国にあるスタックスの取扱店か…」


「もしくは、私の家に行けば、私愛用のSR-009とSRM-007tAがある」


「今度来て。聴かせてあげる」

「え?あ、はい」


(すでに持ってるんだ)

75 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 19:15:34.74 cl/Kmlgr0 35/36

「一通りまわったわね」

(疲れた)

「本当は、ビクター、ケンウッド、パイオニア、パナソニック…」

「語りつくせないくらい、いいヘッドホンはまだまだ世の中にたくさんあるけど。」

「それはまた次にしよう」

(助かった)


「それに、この店は海外ブランドが少ないので」

「次回は、もっと大きな量販店まで出向いて、海外ヘッドホンのいろはを、私が教えてあげる」

(そうか、今日は国産に限定してたんだ…)


「私は今なお、ヘッドホンは日本製が最も優れていると思っているんだけど」

「世界は広い。面白いヘッドホンは海を越えたところにもたくさんある」


「具体的にはドイツ付近」

(もっと広いだろ世界)

78 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/03 19:18:49.73 cl/Kmlgr0 36/36

「で、結局何も買わないんだ」

「edition8 juliaに投資したばかりだし、さすがに財政厳しい」

「14万だっけ」

「正解、よくできました」


「ヘッドホンについては、私がこれから、男を調教…否、講義していこうと思う。私の使命」

「今、あまり聞き逃せない単語が聞こえたけど気のせいかな」


(それに、女の情報って、なんとなく、いや大分。偏っているようにも思うんだけど)

(大事なのは、機械じゃなくて、聴きたい音楽のほうだと思うんだけどなぁ…)


「その眼は、何か言いたげ。何か?」

「いいえ、何もありません。勉強になりました。次もよろしくお願いします。」

「ふふっ、よろしい」


<おしまい>


※女の意見は、あくまで独断と偏見です!ネットの情報に流されないようにね!

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