拓海「ただいま~」
文太「おう。拓海じゃねえか。突然どうしたんだ?」
拓海「ちょっとまとまった休暇をもらったんだ。プロになってからずっと走りっぱなしだったから」
文太「ふ~ん」
拓海「何だよ。その気のない返事。オヤジが聞いたんじゃないか」
文太「別に気のない返事なんてしてねーよ」ふぅ~
拓海「ちぇっ。タバコやめろよ。早死するぞ」
文太「ほっとけ」
拓海「あれっ?」
そこにはあの夏と同じ、拓海と共に歩んできたクルマの姿があった。
元スレ
拓海「DREAM?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1384000871/
拓海「このクルマ、治ったのか?」
文太「治ったって何が?」
拓海「ほら!俺がプロジェクトDで走ってた頃神奈川のバトルでエンジンブローしたじゃないか」
文太「ああ。随分前だから忘れてたわ。エンジン載せ替えたからな。ノーマルの4AGをライトチューンしたのが収まってる」
拓海「シートも元に戻ってる……ボンネットも……」
拓海の脳裏に高校時代の想い出が蘇る……
『別にバトルなんて興味ありませんよ……』
『仕掛けるのは、この先の五連続ヘアピンカーブ……!』
『ムカついた!!てめーみたいなカスにはぜってー負けねーからなァ!!』
『ベンツのカレシと仲良くやれよ』
『曲がる!曲がってくれ俺のハチロク!』
『『頂点に立つドライバーになりたいんだ……!』』
……
拓海「これちょっと使うぞ。いろいろ挨拶しにいってくる」
文太「別に構わねえよ。前に言っただろ?半分お前のモンだって」
拓海「いや……修理したのはオヤジだし……」
文太「気にするな。行って来い」
拓海「サンキュー。行ってくる」ブロロロ
ガソリンスタンド
イツキ「ふんふ~ん」
イツキ「あれ?ハチロクだ。拓海のおやじさんかな?」
店長「文太?こんな時間に珍しいな……」
イツキ「いらっしゃいませ~。って拓海!」
拓海「ようイツキ。久しぶり」
イツキ「店長~!拓海が帰ってきました!」
……
店長「お前の活躍は雑誌やテレビで見てるぞ!」
イツキ「くぅ~!まさか群馬の峠からWRCのドライバーになっちまうとはなあ!元スピードスターズダブルエースの一人として誇らしいぜ!」
拓海「お前がエースになった事はないし、俺もスピードスターズに入った覚えは無いんだけど」
店長「オマケに嫁がプロゴルファーと来たもんだ。本当に誇らしいよ」
拓海「ど……どうも。それで池谷先輩と健二先輩は?」
イツキ「ああ。池谷先輩は整備士の資格とって自分の工場持ってるよ」
イツキ「健二先輩は普通にサラリーマン」
拓海「そっか……(時間の流れを感じる……)そうだ!今日あたり皆で走りに行かないか?」
イツキ「え……いや……」
拓海「どうしたんだ?」
店長「実は夜間走行禁止になったんだよ、秋名山」
拓海「ええ!?」
イツキ「ああ。丁度その時池谷先輩と健二先輩の仕事も決まったからスピードスターズは解散になったんだ」
店長「豆腐の配達だけは何とか許してもらったみたいだがな」
拓海「そうだったのか……(だから『元』ダブルエースなのか)」
イツキ「赤城の白い彗星高橋涼介なんてこの街の一番大きい病院で次期院長候補に挙がってるんだぜ」
拓海(オレがいない間に何もかも変わってしまった……)
イツキ「そう落ち込むなよ拓海!お前いつまで休みなんだ?」
拓海「え?一週間ぐらいかな」
イツキ「じゃあ今度の日曜先輩たちも誘ってサーキット行こうぜ!オレも最近走ってなくてウズウズしてんだ!」
拓海「……おう!。楽しみにしてる」
イツキ「それと拓海!」
拓海「?」
イツキ「せっかくだから今日の配達はお前が行けよ!コッソリ見に行くからさ~!WRCドライバーの全力ダウンヒルみせてくれよ!」
拓海「ああ。そうするよ」
イツキ「よし!じゃあ池谷先輩達にも伝えなきゃ!」
……
コンコン
啓介「アニキ~入るぞ~」
啓介「ただいま」
涼介「啓介か。噂は聞いているぞ。GT選手権のシートも目前だな」
啓介「大したことねえよ。それより……」
涼介「……知っているさ。スランプなんだろ。それで休暇を貰ってきた」
啓介「知ってるのか。アニキにはかなわねえな」
涼介「そろそろプロジェクトDで得た引き出しが通用しなくなる頃だと思っていたよ」
啓介「教えてくれ、アニキ。オレには何が足りないんだ?」
啓介「Dでの経験だけでやって来たわけじゃないんだ。プロでも色々学んだ……」
啓介「なのに!モヤモヤした何かがずっとオレを足止めする!」
涼介「……ちょっと見せたいものがある。ガレージに来い」
……
啓介「これは……オレのFD!」
そこにはレッドサンズが遠征を始めた頃のFDが停まっていた。
啓介「この異様にでかいウィング、リトラクタブルライト……全部あの頃のままだ!」
……
『何っ!ハチロクだと!』
『オレのFDが……行けると教えてくれてる……!』
『アドレナリン全開の最大ブーストでぶっちぎってやらぁ!!』
『オレの13Bターボ吠えまくれ!』
『『オレはお前に勝ってプロを目指す。メジャーな世界でビックになる!!』』
……
啓介「どうしてこれを?」
涼介「おそらくお前は技術的に問題がある訳じゃない」
涼介「もっと本質的な……公道最速理論の根幹を為すモノに問題がある」
涼介「それはお前自身が一番良くわかっているはずだ」
啓介「……」
涼介「今夜、一緒に秋名に行くぞ」
啓介「秋名へ!?」
涼介「オレ達の第二の原点とも言えるあの峠なら何かつかめるはずだ……」
……
PM12:00 秋名山
ドッギャァァァアアアアア
啓介「ふぅ~」
涼介「見事だな。しばらくFDから離れていたのにすぐ乗りこなすとは」
啓介「まあな。それより良かったのか?」
涼介「何がだ?」
啓介「走行規制だよ。峠の入口に看板があったぞ?」
涼介「ああ、何だそのことか」
涼介「今日は警察に頼んで貸し切りにしてもらったよ」
啓介「ハァ!?」
涼介「高橋家の財力、そしてある人物の力でね」
涼介「今日は峠の走り屋達にとって最後の夜なんだよ。啓介」
啓介「最後の夜?」
涼介「走行規制、減速帯、不景気、若者のクルマ離れ……時代は変わった」
涼介「走り屋は一人、また一人と減りもう殆ど残っちゃいない」
啓介「……」
涼介「オレ達がやってきたのは単なる暴走行為だ。むしろ喜ぶべきことなのだろう、この傾向は」
涼介「だから今夜で終わりにする。今頃は麓で久しぶりに集まったレッドサンズのメンバーが交通整理をしているはずだ」
史浩「お~い涼介!」
啓介「史浩!」
史浩「啓介じゃないか。噂は聞いてるぜ。今は忙しいから後で話聞かせてくれ」
史浩「涼介、それで集まってきたギャラリーの処理なんだが……」
……
ケンタ「ちぇっ。交通整理だなんて損な役回りだなあ」
松本「そうでもないぞ。これだけのイベントに関われるんだ、こんなに嬉しいことはない」
ケンタ「そりゃあそうですけど」
中里「おい!そこのお前!」
ケンタ「はいはい何でしょうか……ってお前は!」
中里「お前はいつかの雨のダウンヒラー!」
ケンタ「で、元ナイトキッズの頭が何の用?」
中里「とぼけるな!今日は大きいイベントがあるんだろ?」
慎吾「うるせえぞ毅。そんな大声出さなくても伝わってるだろ」
ケンタ(ゲゲッ庄司慎吾まで一緒かよ!)
ケンタ「……クルマは指定の駐車場に置いてこい。移動は基本歩きだ」
慎吾「おいおいマジかよ。登山客じゃねえんだぜ!」
ケンタ「つべこべ言うな!涼介さん達が必死で抑えた駐車場だぞ!感謝しろ!」
……
PM3:40 藤原豆腐店
拓海「オヤジ、今日の配達……」
文太「行って来い。壊すなよ、ハチロク」
拓海「わかってるよ」
外は満点の星空。絶好の峠日和だ。
拓海「今日は水、いいのか?」
文太「天下のWRCドライバーにそんなの必要ねーよ」
拓海(おっかしいな……いつものオヤジならお前なんてまだまだだとか言うハズなんだけど)
拓海「……なあオヤジ」
拓海「オレ、最近スランプなんだ。それで何かを掴むために休暇を……」
文太「どうした、早く行って来い」
拓海「あ……ああ。それじゃあ行ってくる」ブロロロ
文太(お前が帰ってきた理由は解ってる)
文太(おそらくあいつはオレに何か助言して欲しかったんだろうが、オレに教えられる事はもうない……)
文太(今日行われるであろうバトルの中で自分で答えを見つけるんだ、拓海……)
……
拓海(あのクソオヤジ、息子が苦しんでるってのに!)
プッシャァァァァァァァアアアアア
拓海(違うな。教えたくても教えられないのか……)
拓海(クソっ!だったらどうすりゃいい!ヒントぐらいくれたっていいじゃねーか!)
ドギャアアアアアアアアア
拓海(それにしてもギャラリーが多いな。もう午前四時だってのに)
……
涼介「そろそろだな……」
涼介「啓介!お前はそろそろ下って帰れ」
啓介「帰れって!まだ何もしてねーぞ!」
史浩「まあまあ。涼介の言うことだしなにか意味があるんじゃないか?」
啓介「……それもそうか」
涼介「啓介。後ろから一台来るまで絶対に飛ばすなよ」
啓介「わーったよ。もう何も聞かねー」
啓介(何考えてんだ……アニキのヤツ……)
涼介「……」
……
……2週間前
涼介「すいませ~ん。厚揚げ下さ~い」
文太「珍しいな。あんたみたいな金持ちがうちに来るなんて」
涼介「実はあるお願いがあってここに来たんです」
文太「お願い?」
……
文太「で、秋名を一日貸切にするのに手を貸してくれ、と?」
涼介「ええ。よろしくお願いします」
文太「つってもなぁ~兄ちゃん。しがない豆腐屋のオヤジにそんな事言われても」
涼介「そうですか。じゃあ今日はこれで失礼します」
文太「あれ?意外とドライなんだな」
涼介「きっと貴方は協力してくれる。あなたの息子さんを見てると解るんですよ。それじゃ」ブロロロ
文太(わかってるじゃねーか)
文太(拓海と高橋……誰だかのために一日秋名を貸し切りか)
文太「オレがあいつにしてやれる最後になるかな」ピッポッパ
文太「おい、土屋か、オレだ。文太だ」
……
拓海(ふぅ~配達おしまいっと)
拓海(しかし秋名も変わったなあ)
拓海(車高が高くセッティングされてるのは減速帯のためか)
拓海(しかしなんだろう……このギャラリー達は……)
拓海(ん?なんだあのFD……啓介さんっぽいけど今は日本にいないはずだし)
拓海(まあ誰でもいいや……久々にハチロクを限界まで走らせてみるか!)
拓海「よし、行くぜ!俺のハチロク!」
……
啓介(クソ……減速帯があって車体が安定しない!)
ドッギャァァァアアアアアア
※推奨BGM http://www.youtube.com/watch?v=EAM5Ho6On14
啓介「後ろから一台来る……」
啓介「MR2か?180か?」
ゴァァァァアアアアアアアア
啓介「何!ハチロ……藤原!」
拓海「啓介さん!?」
啓介(アニキ……そういうことか!)
拓海(この人と走れば……!)
啓介「上等じゃねーか!オレだってプロになって多くの事を学んだんだ!藤原!お前にだけは負けられない!」
拓海「まさか啓介さんも帰ってきてたなんて……このバトル負けられない!」
……
イツキ「ひょえ~スゴイ人だかり!」
池谷「いったい何があるんだ?健二、お前何か聞いてないか?」
健二「いや……オレも走り屋から遠ざかってたから何が何だか……」
池谷「何だよ……。すいませ~ん!そこのお姉さん!この騒ぎは……って真子ちゃん!」
真子「い……池谷さん!」
沙雪「あれ?アンタはいつぞやのS13のお兄さん達じゃあ~ん」ポヨヨーン
イツキ・健二(うおお!相変わらずスゴイ胸!)
真子「きょ……今日はプロジェクトD最後のバトルがあるらしいです……」アセアセ
池谷「へ、へぇ~全然知らなかったなぁ~!」アハハ
健二(何キョドってんだよ池谷!)
イツキ(そうですよ!チャンスじゃないですか!)
池谷(だって結婚してたらどうするよ!それにオレ二回も約束すっぽかしてんだぜ……)
健二(馬鹿野郎!男はあたって砕けろだ!)
イツキ(そうそう!さもないとハイオク飲ませますよ!)
池谷(そんな事言ったって!)
……
沙雪(ほら真子!愛しのS13のお兄さんよ!)
真子(そんなこと言ったって……私どうしたらいいの?)
沙雪(すっぽかした事なら私が後で引っぱたいてやるから!ほら!)
真子(ほら!って……私きっと嫌われてるよ。アイドルみたいな存在とはいえ他の男の写真持ち歩く女だし……)
真子(それに二回も大事な約束すっぽかされたんだよ!)
沙雪(ああもう!じれったい!どうせまだあのお兄さんの事好きなんでしょ!)
真子(だってぇ~!)
ギャラリーA「おい!クルマが二台こっちに突っ込んでくるぞ!」
ギャラリーB「車種は?」
ギャラリーA「黄色いFDとハチロクだ!」
ギャラリーC「高橋啓介と藤原拓海!元プロジェクトDのダブルエースだ!」
ワァァァァァァアアアア
拓海(凄い……。なんて繊細なアクセルワークだ!)
啓介(流石だぜ。バックミラー越しでもオーラがわかる……!)
ドッギャァァァアアアアアアア
ギャラリーA「スッゲー!二台ともなんてクレイジーな走りなんだ!」
ギャラリーB「うおおお!若いころを思い出すぜたまんねぇ!」
イツキ(この懐かしい感じ……)
池谷(まるであの頃に戻ったよう……)
健二(180買い直そうかなあ……)
池谷・健二・イツキ「うおおお!拓海ガンバレー!」
沙雪(凄いよ……凄すぎる……)
真子(本当にもう追いつけない所にいるんだね……)
真子・沙雪「ガンバレー!拓海クーン!」
……
ケンタ『第一コーナー通過しました』ピーピーガーガー
涼介「そうか」
ケンタ『凄いですよ……二人共……解ってるけど悔しいです……』ピーピーガーガー
ケンタ(オレは本気であの二人を追いかけてるつもりだったんだ……)
涼介(啓介、藤原、これがオレからお前たちにしてやれる最後だ……)
……
推奨BGM http://www.youtube.com/watch?v=XCiDuy4mrWU
拓海(クソッ!ダウンヒルなのに追いつけない!パワーの差か!)
啓介(悔しいがコーナーではお前に分がある……ストレートを活かす組み立てにさせてもらうぜ!)
ギャァァァアアアアアア
ギャラリーD「うおおおお!信じられないツッコミ!」
なつき(拓海クン……君はどんどん夢に向っていくね……)
ワアアアアアアァァァァアアア
拓海(不思議だ……脳ミソが別のクルマなのに記憶が走馬灯のように巡っていく……)
啓介(お前のおかげでここまでこれたんだぜ、藤原。オレの全てをお前にぶつける!)
拓海(感傷に浸っている暇はない……仕掛ける!)
啓介(消えた……?ブラインドアタックか!)
ゴオオオオオオォォォォオオオオオ
舘「あれは……」
二宮「ハチロクが消えたァ!?」
酒井「一体どんなトラップを!?」
舘(あいつらは別格だ……。もはやあの二人はオレよりも速い!)
……
拓海(ダメだ!手の内を知られてるんじゃブラインドアタックに意味は無い!それでも!)
啓介(カラクリを知っていてもイザってなると焦るぜ……!)
プッシャァァァァアアアアア
須藤(涼介……やはりお前にはかなわないな)
須藤(公道という閉鎖されたステージであれほどのドライバーを育て上げるとは!)
須藤(いや……公道だからこそ、か)
須藤(……いいクルマだ。藤原拓海)
……
ドッシャァッァァアアアアア
啓介(五連ヘアピンまでにどれだけのアドバンテージを稼げるかが勝負だ!)
拓海(仕掛けるなら五連ヘアピンしかない!)
ゴォォォォオオオオオ
啓介(五連ヘアピン直前のこのストレート!頼むぜFD!)
拓海(いくらなんでも離されすぎてる!これじゃヘアピンでオーバーテイクに入れない!)
プッシャァァァァアアアアア
啓介(このアドバンテージ……勝てる!)
拓海(ダメだぁ……これ以上は踏めない……!)
ボゴン!
ボゴン!
推奨BGM http://www.youtube.com/watch?v=IMNRoApV5T0
啓介「何ィ!減速帯だとォ!!」
啓介(これじゃあ思い切り踏めない!)
拓海(FDの姿勢が崩れた!これなら!)
拓海「いっけぇぇぇ!!」
啓介「クソッ!頼むFD!こらえてくれ!」
ギャアアアアアアァアア
史浩『減速帯で啓介のFDが失速した!』ピーピーガーガー
史浩『遥か遠くにいた藤原のハチロクが一気に追い付いてくる!』ピーピーガーガー
史浩『啓介もアクセルワークで何とかFDをコントロールしている!』
史浩『二人がこんなに上達していたなんて!』ピーピーガーガー
涼介「かなわないな……うちのダブルエースには……」
ワアアアアアアァァァァアアアアア
啓介「これじゃ溝でやられる!」
拓海「頼むぜハチロク!お前の心臓だけが頼りだ!」
啓介(クッ……アドバンテージが……)
拓海(溝に……ってなんじゃこりゃあ~!!)
啓介「溝が……」
拓海「埋められている!」
啓介(これならまだチャンスはある!死ぬ気で振り切る!)
拓海(食いつくので精一杯だ!溝がないんじゃオーバーテイクに入れない!)
……
文太「さあて、どうすっかな拓海のヤツ」
土屋「かなり苦しそうだな~拓海は」
店長「オレには互角に見えたけどな~」
文太「祐一~お前にはあれが互角に見えるのか」
店長「なんだ?違うのか?」
文太「ちょっと考えればわかるだろうが」
土屋「この五連ヘアピンの後は中・高速コーナーが主だ。拓海はなんとしてもここで前を取らなきゃならなかったんだよ」
店長「そりゃなんでだよ?あの感じじゃFDはタイヤが」
土屋「ウチの啓介はタイヤマネージメントの達人だぞ~」ニヤニヤ
文太「お前が育てたあの高橋とかいうドライバーもなかなかやるな……だが」
土屋「だが?」
文太「拓海が『アレ』を思い出せば勝負は五分五分だ……」
土屋・店長「なんだよ『アレ』って!教えてくれよ!」
文太「馬鹿野郎。それぐらい自分で考えろ」
文太(そうだ……自分で答えを出すんだ拓海……)
……
推奨BGM http://www.youtube.com/watch?v=HLtfeR2hEHQ
啓介(ここからは中・高速コーナー!)
啓介「この勝負もらったァ!」
啓介(と……言いたいところだがこいつの爆発力は侮れないぜ……!)
拓海(どうする!どうするどうする!)
拓海(あそこで前出られないんじゃ……)
拓海(クッ!諦めないぞ!針の穴のようにチラチラと見え隠れする突破口を見つけてやる!)
ゴギャァァァァアアアアアアア
……
中里「……やっぱりここしかねえよな」
慎吾「ああ」
中里「五連ヘアピンで前へ出られないハチロクにチャンスがあるとすれば」
慎吾「高橋涼介を仕留めたこのコーナーしかない……」
中里「……おい慎吾!あんまりくっつくなよ!仲いいと思われるだろ!」
慎吾「くっついてきたのはお前の方だろうが!」
コノヤロ
アッチイケ
バカ
アホ
……
拓海(ついていくので精一杯……いや離される!)
啓介(どうした藤原!お前の力はこんなもんじゃねえだろ!)
拓海(思いだせ……諦めるな!)
……
ブロロロ
拓海『オヤジ、配達終わったぜ』
文太『おう、ごくろう』
拓海『……オヤジ。オレ雪の日のカーブでタイヤ滑らないようにする方法見つけたよ』
拓海『道路の溝に片方のタイヤ引っ掛けるんだ。面白いようにスイスイ曲がるよ』
文太『溝走りか。その技ならオレもよく使う』ふう~
拓海『ちぇっ。オヤジもやってんのか』
文太『拓海、秋名の溝の使い方は二つあるんだ』
文太『お前が発見したのはコーナー入口でアンダー出さないためのツッコミ重視の溝走り』
文太『もうひとつ、立ち上がり重視の溝走りってのがあってな』
拓海『えっ』
文太『落とすタイミングも、飛び出すタイミングも違う』
文太『こいつは難しいぞ……一人で研究してみな』
……
拓海(涼介さんの時に使った『アレ』!オレに残された道はそれしか無い!)
拓海(それをブラインドアタックと併用すれば!)
啓介(凄いプレッシャーだ……何か来る!)
推奨BGM http://www.youtube.com/watch?v=A4mIeUNGhCY
拓海「ここだっ!」ドチュン
啓介「この音は……だがなぜ今!?」
拓海「いっけぇぇぇ!!」
啓介「いない!またブラインドアタックを!?」
啓介(落ち着け……自分の走りを守ればクルマは必ず答えてくれる!)
ドッギャァァァアアアアアア
ギャオン
プッシャァァァァアアアアアア
……
中里「来た……!」
慎吾「どっちが前だ!」
ゴオオオォォォォオオオオオ
啓介(行かすかよ!)
拓海(確かに啓介さんは速い!でも!)
中里「FDだけ……?いや!」
慎吾「ハチロクがヘッドライトを消している!」
慎吾「そのままコーナーへ突っ込むぞ!」
ドッッシャァァァァアアアアアアアア
啓介(クッ!バックミラーを見ている暇は無い!自分とクルマを信じるだけだ!)
拓海(曲がれる!前に出られる!)
中里「ハチロクが前に出た!」
慎吾「二台ともスピードが乗りすぎている!膨らむぞ!」
中里・慎吾「曲がれっこない!!」
啓介「行ける……オレのFDが……行けると教えてくれてる……!」
拓海「曲がる!曲がってくれオレのハチロク!」
ギャアアアアァァァアアアア
中里「ハチロクがFDの頭を抑えた!」
慎吾「勝負あった!」
拓海「しゃあああああああ!!」
啓介「クソッ……負けたァ……」
啓介(オレもまだまだだな……流石だぜ藤原……)
……
啓介「やっぱ凄いな、お前」
拓海「今日はたまたま運が良かっただけですよ」
啓介「もっと喜べよ。遠慮するな」
啓介「負けたのに清々しい気分だぜ……お前が勝ったことに安心してるぐらいだ……」
拓海「ありがとうございました。今日のバトルで、スランプの突破口が掴めた気がします」
啓介「オレもだよ……ありがとな。また一緒に走ろう」
拓海「ええ……でも」
啓介「……今アニキ達が十勝のラリーみたいに峠で合法のレースをする計画を進めてる」
拓海「!」
啓介「オレもレーサーとして落ち着いたら協力するつもりだ」
啓介「その時までウデ磨いとくぜ」
啓介「今日は楽しかったよ。じゃあな」ブロロロ
推奨BGM http://www.youtube.com/watch?v=KoFSQeOAYz4
拓海(なんて……なんて凄い人達なんだ……!)
……
『藤原!現在ポイント一位!』
拓海(オレは頂点に立つドライバーになる……!いつまでも夢を追い続ける!)
『24週目!高橋が仕掛けに行ったああああ!』
土屋「よし!いいぞ啓介!」
啓介(待ってろよ藤原!次は負けない!)
『高橋先生~』
涼介「ああ。今行く」
涼介「それじゃあ史浩。書類は任せた」
史浩「ああ。任せておけ」
涼介(頭文字『D』。オレ達の『DREAM』はまだ終わらない……!)
若者たちの夢は続いていく……形を変えながら……
see you to the next stage……
64 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/09(土) 23:06:18.25 5Y4YUZXZ0 44/44おしまい
時代に取り残された感すごいよなこの漫画
フィクションと現実の区別がつかない奴の存在をあぶりだした作品だと思いました(小並感)
でも実際に峠出身のレーサーいるんだよね。キチガイじみてる。
後最後はイニシャルDじゃなくてプロジェクトDで締めた方が良かったと思う。