2012年10月06日

酒田の音楽シーンを先導してきたバンド・FRIDAYZが放った傑作アルバム「HOPE」の凄まじき中毒性。

これは完全に、中毒である。


FRIDAYZの音楽を聴きたくなる欲望は、煙草を吸いたくなるそれに近い。
そして、まさにニコチン中毒の依存症に似た症状で、その音を繰り返し欲してしまうのである。

酒田を拠点に活動するハイテンション・ハードコアバンド、FRIDAYZ。彼らの2ndアルバム「HOPE」が2012年8月22日にリリースされてから早1ヶ月半。
僕は1日に少なくとも1回、多い時は2回から3回、このアルバムを聴かずにいられなくなっている。
仕事帰りの電車の中で「HOPE」を聴いた後にそのまま1stアルバム「LOCALISM」を通して聴き、最寄りの三鷹駅に着いてから徒歩で家まで歩く道すがら、再び「HOPE」をまるっと聴いてしまった日もあった。

必ずしも僕は、最初から彼らの音楽が好きでたまらなかったわけではない。初めてFRIDAYZの音楽をmyspaceで聴いたとき、僕は正直、彼らの音楽を全く理解することが出来なかった。それどころか、体が拒否反応を示していた。

耳をつんざくハイトーンの叫び。
畳み掛けるファストなリズム隊。
空間を切り裂く歪んだギター音。

当時の僕には、いささか刺激が強過ぎたのかも知れない。

そう、生まれて初めて煙草を吸ったときに、肺がびっくりして極限までむせてしまうような、そんな拒絶反応。

しかし、何度目かに聴いたときに、煙草の味が徐々にわかってくるような感じで、そのハイトーンの叫び声が心地よくなってきたのだった。そして今となっては、ニコチン中毒のように毎日FRIDAYZの音楽を欲してしまうのである。

そのすさまじき中毒性。恐るべし。

しかも、FRIDAYZの音楽は、強度の依存性を持ちながら、いくら嗜んでも健康に害はない。
まさに最強の嗜好品なのである。


FRIDAYZは、日本海側の港町(西海岸のマッドシティ)、山形県酒田市で生まれ育ったハイテンション・ハードコアバンド。

僕の故郷でもある酒田。

江戸時代は海上交通の要所として栄え、「西の境、東の酒田」と呼ばれるまでの繁栄っぷりだった街。

でも、今や、酒田は過疎化が進みつつある地方都市。

若者が遊ぶとこがあんまり無かったり、駅前の一等地にあったジャスコはとうの昔に潰れて、だだっ広い広場が駅前に広がってたりする。パチンコ屋はとにかくたくさんある。

そして、はんぱなく風が強い。

時には台風並みの強風が吹く時もあり、全然チャリが進まないので、向かい風が学校の遅刻の理由になる。

冬は、暴風雪が吹き荒れる。チャリではとても学校に通えない。


天候的にはそこまで恵まれている土地ではないし、特に冬の厳しさはとんでもない。

でも、山も川も海も田んぼもある。
自然は十分すぎるほどあるし、そして、食べ物も酒も美味いものばかり。

風が強いからか、夏は東京ほどじめじめした暑さでもなく、気候も人の性格もカラッとしている。

そして、人のあたたかさは折り紙つき。

そんな酒田で、僕は生まれた。


酒田では、少なくとも僕が住んでいた1999年頃までは、バンドシーンと言えるものが育まれる土壌はほとんど無いに等しかった。

本格的な音楽ライブハウスと言えるハコは皆無。
若者がバンドを組んでも、思う存分ライブを出来る場所がほとんど無かった。

余談になるが、僕が高校卒業時の春休み、1999年の3月に、同じ学年の酒田西高の石垣君という人の声かけで、酒田の高校生バンドの卒業記念ライブイベント、その名も「SOLID GARAGE」(実は僕が名付け親ですw)が行われた。僕も、酒田東高の同級生と結成していたREDBERRY JAMというブランキー・ジェット・シティのコピーバンドで出演した。
ライブをできるハコがなかったため、酒田の清水屋隣にある商工会議所・産業会館のホールを借りて、ステージはビールケースを敷き詰めて手作りで作り、総勢10バンドぐらいでやったものだった。ステージ設営とか会場準備とか、出演バンドの皆で力を合わせて行ったわけであるが、とにかく大変だった覚えがある。その分、当日お客さんがいっぱい来てくれた時の嬉しさはひとしおだったが。


そんな状況の中、2000年4月に中町の清水屋の裏に突如として現れたのが、「flavor」という小さなライブハウス。

地元では知る人ぞ知る古着屋「ミッシェル」の店主である、本間さんというロック好きのおばちゃんが、借金を背負って始めたハコだった。

実は僕、大学時代に東京で組んでいた「くぎバット」というバンドで、2002年頃に1回だけ、その「flavor」でライブをやったことがある。小さいハコだったので、ドラムもベースアンプもギターアンプも、全部生の音。生々しい音と客席との近さが独特の空間を作り出しているライブハウスであった。

flavorは、2011年に閉店する。その時の、店主・本間さんのブログがこちら。

酒田flavor: ミッシェルのブログ
http://michelle168.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/flavor-c421.html


FRIDAYZは2005年に結成し、その「flavor」と、酒田駅前に2004年に誕生した大型ライブハウス「MUSIC FACTORY」でのライブ活動を通じて、着々と実力と集客を伸ばして行った。

そして満を持して2009年にリリースされた1stアルバムが、「LOCALISM」。
このアルバムの1曲目は、その名も「LOCAL HERO」。この曲の歌詞は、酒田という決して音楽的な環境では恵まれてはいない街で活動する彼らの思いと決意表明が高らかに提示されている。

歌詞は英詞なのであるが、その内容がこちら。

You champ carry your way !
ここから景色を眺めている ここから世界を見たことがあるか?この寂れた街についてどう考える?
可能性を断ち切ったのっておまえ自身じゃない?だから俺はここからやってやる 俺はここから変えてやる
何かが起こる それは場所ではない 数ではない 理屈ではない 他人ではない
憧れでおまえは高く飛べない
You champ gangatte carry your way ! You gonna way !
此処から変えろ おまえの街は此処だ 此処で生きてる 逃げるな 此処から景色(シーン)を変えろ LOCAL HERO

この歌詞を読んだ時、僕は少なからず身震いする感覚を覚えた。

彼らは、酒田を「寂れた街」だと単純に悲観しているのではなくて、もはや“達観”している。
そして、決して彼らは酒田に対して諦めていない。
限られた環境しかないけれども、此処から変えてやる、という強い意思表示。

かと思うと、2曲目は「TAKADA」というタイトルの、高田純次はいいかげんな男だと断罪する曲だったりして、その緩さとのギャップがまた面白いのである。


それから3年の月日を経て、発表された2ndアルバム「HOPE」。

その間には、東日本大震災があり、それが引き金となっての「flavor」の閉店があり、そのハコを引き継いでFRIDAYZヴォーカルのけんた君が店主として始めた、酒田「hope」という新たなライブハウスの開店があった。

まさに激動の3年間だったのだろうと思う。

その期間で熟成されたFRIDAYZというバンドは、酒田のローカルヒーローにとどまらず、全国、あるいは全世界に打って出ることができるアルバムを作り上げてしまった。レーベルオーナーでもある、RAZORS EDGEのKENJI RAZORS氏をプロデューサーに迎えて制作されたそのアルバムは、けんた君が作った酒田のライブハウスと同名の「HOPE」と名付けられた。

「HOPE」のリード・トラック「OVER THE TOP」のPVがこちら。

FRIDAYZ/OVER THE TOP【PV】


1stアルバムが、鋭さと繊細さを持ち先鋭的な印象だったのに比べて、今回の2ndアルバムで強く感じられたのは、1stにも増した爆発的な演奏の力と、彼らの懐の深さと包容力。

FRIDAYZの音は、一聴すると激しさや速さが印象に残るかも知れないが、実はギターやベースがめちゃくちゃメロディアスなことをやっている。今回のアルバムでは、歌でもメロディー要素が増えている。バンド全体で「歌っている」感覚が増大している。

勢いだけではなくて、実はメロディーを大切にしてるバンドなのだ。

今回のアルバムツアー初日は、トイズ・ファクトリーからメジャーデビューしたWiennersのツアー初日も兼ねて、酒田hopeにて9/1(土)に行われた2マンライブ。当然のようにSOLD OUTになり、音楽好きな奴らが集まった満員の客の熱気は凄まじかったし、ライブ自体も素晴らしく楽し過ぎた。

FRIDAYZとWiennersとは、一見ジャンルにかなり隔たりがあるように思えるかもしれない。が、ハードコアの激しさと強さ、速さや勢いをまといながら、演奏全体としては非常にメロディーを重視しているという点で、大きな共通項があるように思える。


また、FRIDAYZはそれに加え、緩急のつけ方が素晴らしい。曲中のテンポでの緩急。
そして、ハードコアを核に、メロコア、スカコアなど「コア」と名のつく音楽を全て体内に取り込んで消化したかのような、バラエティ豊かな各曲の並びでの緩急。
真面目に憂いを叫ぶ歌詞もあれば、くだけた歌詞の曲もあるという、歌詞のギャップでの緩急。

うなるような豪速球で基本的には攻めるものの、七色の変化球も持ち合わせ、まさにダルビッシュのような変幻自在のピッチングを音楽で実現しているのである。そのため、ダルビッシュのピッチングを見ていて飽きないのと同じで、FRIDAYZのアルバムは、通して聴いても全く飽きが来ない。

酒田の持つ、風が強いけどカラっとしているという表面的な特徴と、食べ物がとても美味しくて、住んでる人があたたかいという内面的な土地柄の魅力。

これって、そのままFRIDAYZの音楽の特徴にも当てはまるような気がするのだ。強風のようなとんでもない勢いの演奏を見せるかと思えば、スカコアのようなカラッとした要素もあり、その内部には芳醇で美味しいメロディーを含んでいる。

まさに、酒田を体現しているバンド。それがFRIDAYZなのではないだろうか。


僕は、今後もこのバンドを応援し続けて行きたい。


2013年3月まで続く「HOPE」のツアーでは、東京でのライブも予定されている。

10/7(日)には、秋葉原revole&GOODMAN“MATSURI2012”という総勢60バンド出演のイベントにて、秋葉原GOODMAN(16:00 - 16:20)でライブを行う。

11/3(土)には、PIZZA OF DEATH RECORDS主催で開催される渋谷6会場サーキットイベント「FUCK ON THE HILL 2012」にて、渋谷CLUB ASIAにRAZORS EDGEとともに出演。

その他、全国各地でのライブが予定されている。

ライブスケジュールの詳細はこちらにて。
http://fridayz.net/top/?page_id=2


ぜひ、その目と耳で、彼らのライブの魅力を多くの人に体感して欲しい。


これまでとは違う景色が、きっと見えてくるはずだ。


■FRIDAYZ official web
http://fridayz.net/

■FRIDAYZ「HOPE」バウンディー特集ページ
http://www.boundee.jp/features/details/345.html

■酒田hope official web
http://sakatahope.com/

HOPEHOPE
アーティスト:FRIDAYZ
販売元:BounDEE by SSNW
(2012-08-22)
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LOCALISMLOCALISM
アーティスト:FRIDAYZ
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P.S. またまた余談ですが、OTOTOYという音楽サイトで、メジャーデビュー15周年を迎えたバンドGRAPEVINEのベストアルバムのレビューを僕が書きましたので、ぜひ読んでみてください。

[ototoy] 特集: GRAPEVINEのデビュー15周年! 『Best of GRAPEVINE 1997-2012』
http://ototoy.jp/feature/index.php/2012091901


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