2016年07月13日

自分の推し作家を見つけて読書生活を華やかにするためのお話です。




さて、始まりましたね。何がって?ラブライブ!サンシャイン!!ですよ。蟹がアレでセルラン1位取るの初めてだったことにびっくりですよもう。
まぁそれは兎も角として、最近のエンタメ界隈は右を見ても左を見てもアイドル。ツキウタとBプロのアニメも放送されてるし、スタミュ(厳密にはアイドルじゃない気もしますが)はOVAと2期がある、キンプリもまだ展開してほしいですし、あんスタはやたらCM見るし、ナナシスもまだ展開しそう。デレステはなんかバブルじみたCDの売れ方してるし、Mマスも一周年、ミリオンは相変わらずおかしいらしいと、まぁ今後もますます増えていくでしょう。個人的にはSB69とかバンドリのが楽しみですが……
あと今月は石川博品のアイドルものが出ますね。楽しみですね。

とにかく、つまるところ世はまさにアイドル戦国時代(数年前の話では?と言ってはいけません。今も戦国時代です)……そしてその波は、小説界にも押し寄せているのです……そう、作家もアイドル活動をする時代に突入したのですよ。作家がアイカツしてるケースもありますが。
というわけで、今回はこの全方位アイドル戦国時代に乗り遅れないためにも(?)、いろいろな媒体でアイドル活動をしている作家を見つけて、自分の推し作家(ここでは主に小説を書く人)を作ろう!というお話です。



その1,Twitter


まずはTwitterです。まぁ、そもそもの話として、「作家を見つける」ことに関して、Twitterというツールはとても便利なんですよね。
「Twitter 作家」で検索をかけるだけで作家のアカウントが大量に見つかりますし、作家がそれらのアカウントをどのように運用しているのかをすぐさま目にすることが出来ます。
まぁ、基本的には自分の作品に関することを呟いている人が多いわけですが、完全に宣伝のために使っている人、ソシャゲをしている人、子育て記録をしている人、飯テロをしている人、アニメを見ている人、FSDを見ている人と様々です。

ここで重要なのは、基本的にTwitterをやっている作家というのは、セルフプロデュースをしている(率直に言うなら、自分のデメリットになる発言をしない)、ということです。少し前に話題になったように、作者の言動と作品が一致することはないと思いますが、嫌な言動をしている作家の作品を積極的に買おうとする読者がいないということは言えると思いますし、作家の側もそのことはわかっていると思います。
何が言いたいかというと、これはアイドルとファンの関係性の構図に近いということです。セルフプロデュースされた存在というのを前提に(=暗黙のルールを把握して)、そこから得られる情報(=コンテンツ)を楽しむ。正しくアイドルとファンの関係ですね。

また、次に紹介する方法でも、セルフプロデュースされた作家との関係性を見ることになりますがそれと比べた上でTwitterで推しを探す際の他のメリットは、作家の生活(趣味)的な部分から探すことが出来る点でしょうか(これも、実際のアイドルと似通っています)。
もちろん、雑誌(かつくら等)のインタビュー等で、作家の趣味を知ることは出来ますが、それらに比べてもよりピンポイントな情報が得られるでしょう。

総合すると、気軽に(人によっては詳細な)情報が得られること、よりピンポイントに作家を知ることができる可能性があること、加えて交流できる可能性があること、という点でTwitterは非常に便利なツールだと言えるでしょう。


その2,文学賞受賞会見

さて、次はこちら。ひょっとすると作家=アイドルという図式を、より強く見ることが出来るのはこの場かもしれません。
「文学賞の記者会見が面白い」という流れを作ったという意味で、最初に話題になったのは西村賢太の芥川賞会見(風俗でも行こうと~)かな?と思うのですが、「芥川賞 会見」でググるとトップに出てくるのは田中慎弥です。やっぱり都知事が絡むと何かと話題になるんですかね。

ここでも当然ですが、私たちはセルフプロデュースされた作家の姿を見ることになります(何の意図もなく公の場で「もらっておいてやる」とか「馬鹿な質問はやめていただけますか」とか言い出す人、大分やばいですからね)。
話題を作ること、あるいは記者たちから(TVから)多くの反応を引き出すことを目的に、どのように振舞うか、ということを考えながら振舞う姿を見て、そのキャラクターを把握するわけです。
まぁ要するに、バラエティに出演するアイドルのようなもの、あるいは、ある種のライブだといえるかもしれません(作品は楽曲ということになるでしょうか)。

こちらの利点は、なんといってもTVというメディアにあります。ニュースなどで目にする機会が多く、またTwitterのように文字ではなく、実際に喋っているところを見ることが出来るため、より作家の存在を近く感じることが出来ます。
加えて、ここで一定の成功、つまりはテレビで受けるキャラクター(≒バラドル)だと判断されると、その後にもTV番組に出演することもあり、目にする機会が増えるようになります。推しの仕事が増えるのを目で見て実感できる下地が最初から用意されている、というのは、大きなメリットでしょう。
しかし問題点として、あまりに次々とTV番組出演が決まってしまい、「作家」というよりも「面白い人」になってしまいかねないことがあるかと思います。要するに、作家という属性をアイドル的なものが覆い隠してしまった、という話ですね。
ごく最近の例で言うと、やはり羽田圭介でしょうか。バラエティ番組でよく見るし面白い人だと思うけれど、作品は読んだことないよという人、そこそこいると思うのですがどうでしょう。



その3,文筆系トークバラエティ『ご本、出しときますね?』

さて、ここからは後半戦。より具体的なコンテンツを紹介していきます。
2016年4月から6月期までBSジャパンで放送(全12回)、7月からはテレビ大阪などで地上波放送されている番組です。
オードリーの若林正恭がMC、毎回2人の作家をゲストにトークをする、というバラエティ番組なのですが、個人的にはとにかく毎週楽しく見れました。
テレビ東京はときどきこういう変な球を投げてくるから面白い……というか、ゴッドタンや「ウレロ」シリーズ、Sicksなど(世間的にはピラメキ~ノかな)のプロデューサーをしている佐久間宣行という人が頭おかしい面白いけれどニッチな番組を投げてくるわけです。大好きですね。

しかしまぁ、やはりと言うべきか、開始当初は芥川賞、直木賞受賞者である作家が出演していました。しかし第4回放送の加藤千恵、村田沙耶香出演の辺りから段々とニッチさが増していき、第6回では佐藤友哉、島本理生夫妻が出演するなど、徐々に、視聴率取れるのかどうか心配になる番組になっていました(個人的にはテンションが上がりました)。
このように書くと、既に好きな作家がいる人(=作家を推している人)が、その作家を見るためにある番組のように思えるかもしれませんが、MCのオードリー若林さんがとても丁寧に喋っているせいか(本人曰く「自分が一番楽しくてやってる」そうです)、出演している作家がどういう人かストレートに伝わる番組だったと思います。あと林真理子はスタジオに来すぎだと思います。

まとめると、作家について知る(推しを作る)きっかけになる番組であり、既に知っている作家をより深く知るための番組だと言えるでしょう。
また、文学賞会見に比べるとかなり軽く見ることができ、創作に関するトークになっているのも大きいでしょうか。どんなルールを自分で決めて創作しているか、交流のある作家は誰かなどの話題から、番組のラストではその回のトークテーマに沿った小説を紹介するなど、作品や作家に直結するような番組作りがされているのが最大のポイントだと思います。

また、現在は地上波放送されていますが、シーズン2などの予定はなさそうなので、なんとか人気が出てほしいところです。テレ東は1話だけでも無料配信してくれていいんですよ……?(懇願)



その4,レッドドラゴン,etc

それでは最後に、小説作品について触れておきましょう。
と言っても、ここでは普通の作品を取り上げるわけではありません。やや特殊な作品を取り上げます。

というわけで、RPFレッドドラゴンです。この企画は『ケイオスドラゴン』の名前でアニメ化、ゲーム化したので、そちらを知っている人も多いのではないでしょうか。
『ケイオスドラゴン』に関しては特に語りません。というのも、『レッドドラゴン』をここで紹介する理由を簡単に言うと、TRPGリプレイであることだからです。

TRPG?リプレイ?という人は、ここではとりあえず、ゲームマスターとプレイヤーがルールブックに従って話を進める、対話型のゲームがTRPG、そのゲームのプレイ記録を脚本のような形式でまとめたものがリプレイと考えてください。
知らない人は知らないであろうリプレイですが、それが一冊の本としてまとまることは、別に珍しくありません。富士見書房とかHJ文庫辺りから定期的に出ていると思います。ロードス島、ソードワールドシリーズ辺りは有名なので、もしかしたらそれと気づかず見たことのある人もいるのではないでしょうか。

では、『レッドドラゴン』は何が特殊だったか、というと、この作品のためだけに作られた完全にオリジナルのルール、シナリオが、各プレイヤーの作り出したキャラクターに沿った形で用意されたことです。
そういう企画だったと言ってしまえばそれだけですが、この作品ではプレイヤーが取った行動にあわせてルールが加えられる、ということが普通に行われていました。その作家が取ろうとする行動を、可能な限り全て実現させることを第一に、ゲームが作られたと言ってもいいかもしれません。

アニメ化の際に行われたインタビューで、担当編集というか企画担当の太田克史が「プレイヤーの熱演」という言葉を使っていますが、これが作品の肝だと言えるでしょう。『レッドドラゴン』という作品は、読者である私たちに、「作家が面白い物語を作り出す瞬間」を提供してくるのです。
私たちが読むことができるのは、完成した作品です。作品が書きあがっていく過程を見ることは(よほどのことがない限り)見ることは出来ません。
しかし、『レッドドラゴン』では、その瞬間が、作り出した作家自身の言葉(キャラクターの台詞でなく、自身のコメントという意味で)と一緒に見ることが出来ます。しかも、TRPGという場、他のプレイヤーが存在する場であるために、自分の使っているキャラをその瞬間に導くだけでなく、他人のキャラを導くこともしているわけです。

読んだ方の何割かには納得してもらえると思うのですが、例えば婁(虚淵玄)とスァロゥ(奈須きのこ)の最終巻の場面なんかは、作中のキャラクター同士の戦いというよりは、自分の望んだ結末に導こうとする2人の作家の戦いであり、全体を見ても名シーンのひとつだったと思います。
作家という存在を凄い、格好いいと思える小説作品も多くあります。しかし、そこから一歩こちら側に近くあるような作品(そして、その状況を作り出すためにルールが作家を縛らないようにしていた)、という意味で、この『レッドドラゴン』という作品は特殊だったと思います。


また、『レッドドラゴン』ほどのオリジナルさ(というか無謀さ)はありませんが、TRPGリプレイは『艦これTRPG』や『クトゥルフ神話TRPG リプレイ 御津門学園ゲーム部の冒涜的な活動』(ファミ通文庫)など、面白い企画はいろいろとありますし、またTRPGとは違いますが、『人狼作家』(原書房)というミステリー作家、批評家が人狼を行った様子を、どの作家がどのプレイヤーか伏せてまとめられたものが発売されたりと、様々な作品があり、それぞれで面白い作家を見つけることが出来るのではないでしょうか。




さて、長くなりましたがどうだったでしょうか。推し作家を作る気になってきたなら幸いです。ならなかったなら、各自読書ライフに戻ってください。
まぁ、ぶっちゃけ「推し作家を持とう」なんて無理に考える必要はありません。あらゆるものは、好きなように(迷惑をかけないように)楽しめばいいのです。ここで私が伝えたかったのは、「作家という存在を、アイドル的なコンテンツとして見ることが出来る」こと、「その視点を持つことで、面白く見えてくる作品やコンテンツがある」ということです。

しかし、もし仮に、この文章を読んで「推し作家なるものを持ってみんとす」とか考えてしまった人がいたら、そしてさらに間違って「推し作家なるものを持ってしまった」人がいたらアレなので、少しだけ願望を書きます……
とりあえず、その作家がどんな作品を書いているか、サイン会や講演会のようなイベントをやっているかどうか、どんな雑誌でどんなインタビューに答えているか、つまりはどんな活動をしているか、ということを、自分の満足するまで調べてください(その結果どうなっても、当方は責任を持ちませんので各自の判断で適切な活動をしてください)。
そして、その上で、「作品を読むこと」を第一に考えてほしいなと思います。
おそらく、作家について知ることで読み方が変わってくる作品があります。その作家について知らなければ、こんな読み方はできなかっただろうなと思えるような作品があります。そういう作品に触れて、その読み方で笑えたり泣けたりして、得したような気分になれば、それでOKくらいのテンションでやっていって欲しいなと思います

もちろん、アイドル同様、基本的に底はない沼なので沈める人はどこまでも沈んでいくような気がします。溺れないように気を付けてくださいね。



最後に一応言っておきますと、ここ数年の個人的な推し作家は詠坂雄二です。いつになったらローディング終わるんや。こういうこと言うってことは、もしかしたら推しはアイロニックボマーかもしれません。笑える人だけ笑ってください。『壜詰事件』はよ。

では以上。感想、苦情があればコメントかTwitterにでもどうぞ。



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(12:00)

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