2016年発売の新作漫画の個人的ランキングです

さて、遅くなりましたが新作漫画のランキングを。


第10位
大間九郎・まつだこうた『ヒロシ戦記』




とある国家と中華料理店の人間関係が結びつくスペースオペラです。要するにギャグ漫画です。今年の新作ギャグ漫画では一番好きです。フジリュー銀英伝の連載やってる中でこれを始めるというひどさ。素晴らしいですね。
とにかく何から何まで馬鹿らしいというか、中華料理屋の小さな人間関係も、それを気にせざるを得ない小国家の運営模様もくだらないのに、見ていられる。変な漫画だと思います。

あと地味に大間九郎作品ではバイオレンス色の低いものだと思います。小説も書いてくれ。



第9位
大久保篤『炎炎ノ消防隊』




連載が始まった時は「地味すぎる……大丈夫か……」と思っていたのですが、話を重ねるごとに能力のバリエーションも戦闘のコマ割りもどんどん激しくなってきました。現状ベストはシンラ、レッカ戦か第七編の終盤ですかね。とにかく大ゴマの使い方が派手な作品は良い作品です。

少年漫画かくあるべしという理想はありませんが、しかし、同じパターンの重ねで勢いを増していく作品よりは、こういう構図も見せ方もどんどん変化していく作品の方が個人的には好きですね。



第8位
オダトモヒト『古見さんは、コミュ症です。』




『デジコン』の人だと最初わかんなかったですよ。大分思い切って作風変えてきたなと思います。
きらら系(日常系)4コマ作品という紹介をしてしまえばそれまでとも言えるのですが、それにしても上手いところをついてきたなーと思います。『ダンジョン飯』『だがしかし』の系列で同誌に『魔王城でおやすみ』、他誌に『手品先輩』という作品があった中、週刊連載でこういう普通のものを送り込めるのは良いですね(そういう意味では月刊連載の『湯神くんには友達がいない』よりもすごいなと思います)。

しかしやはり普通というか、フックが少なくなっていく(パターン化しやすい)作品だとは思うので、どうにか連載初回の見開きのような一撃をまた入れてほしいなと思います。読んでない方はとりあえず最初の見開きまで読みましょうね。



第7位
米代恭『あげくの果てのカノン』




2016年度「表紙見てなんとなく買ったら面白かった漫画」No1です。帯に釣られた湧けじゃないですよ?本当ですよ?

昨年読んだ恋愛漫画もいろいろありましたが、妙に「自分が何を愛しているのか(何に恋愛感情を持っているのか)わからない」恋愛ものがあったように思います。(このあと取り上げる『春の呪い』もそうですね)
この作品は「不倫×SF」というジャンル掛け合わせの(?)作品になっていて、そこをクローズアップされることが多いのですが、個人的にはそれ以上に、主人公のカノンが、自分が好きなものが自分の頭の中にいる先輩なのか、目の前にいる先輩なのかがわからなくて煩悶する作品であるところをクローズアップして読んでもらいたいなと思います。

というか、「不倫」も「SF」も、このカノンの恋愛観を捉えるための道具という面が大きいように思えます。
例えば「不倫」の方は「憧れていた高校時代の先輩」と「今誰かと結婚してしまっている先輩」という過去と現在の対比に、「SF」の方は「一度でも死ぬ前の先輩」と「死んで帰ってきた先輩」(一応ネタバレなので白文字)という過去と現在の対比に使われています。
この2つが上手く掛け合わせられている、という点は間違いないのですが、その結果として何が生じているか、というところを見つめてもらえたらなと思います。

そして余談ですが、この「私の頭の中にいる彼/彼女を愛する」というテーマでは元長柾木の『未来にキスを』という作品がありますので、興味がある方は是非とも……入手困難ですが……



第6位
TAGRO『別式』




年末にこういうのぽろっと出すのやめてください!面白いから!アニメ化しようぜ!

時は江戸、合コンとかコミケとかの単語が見え隠れしてるけど江戸。武芸で身を立てる女性剣士「別式」の主人公、類を中心とした、4人とか5人とかの話です。
TAGROさんなので(というと少し語弊がありますが)基本的にはコメディタッチの作品になっていて、コミケ回なんかは時事ネタまで入って時代劇でもなんでもねぇよ状態にまで陥っているのですが、1話の冒頭やら5話のラストやら、どうかしてるなと思う程度にはシリアスだと思います(特に5話はコメディ気味の描写で隠してますけど、かなりのシリアス度です)。

おそらく今後も平気な顔をしてコメディやりつつドラマを進めていくと思うので、触れ幅が大きくなればなるほどダメージが大きくなる(1話冒頭を読めば、着地点は見えているので)わけですが、その時がくるまで全力で楽しみたいと思います。
とりあえずここで2話まで読めるので、読んでみてください。



第5位
小西明日翔『春の呪い』




2巻で終わった……綺麗に終わった……凄いな。もうちょっと続けられたろうに。

まず妹の婚約者とお付き合いをする姉というシチュエーションからしてずしっときますが、当然のように「生きていた頃の妹は自分や婚約者をどう見ていたか」「今の私を見たら妹はどう考えるだろうか」という視点を持ち始めてしまうので、本当に息苦しい作品だと思います。
また、この作品も『カノン』で触れた、「何を愛しているのかわからない」作品なのですが、こちらはより複雑で、「妹の婚約者だった彼は、私を通して妹の姿を見ているのではないか」「妹の姿を映せなくなった私は愛されないのではないか」、つまり、「私の何が愛されているのかわからない」作品になっています。
この、妹、私、妹の婚約者という三角関係に加えて、それぞれの母子の関係も影を落としてくるので、本当に重たい作品なのですが、それでも軽いパート、ギャグタッチの画面も多く、意外とさらっと読めてしまうのがずるいと思います。重たい気分になるのに、つい読み返してしまえるくらいの気軽さもあるんですよ……

というわけで、どこかで地雷を踏み抜く可能性が無きにしも非ずな作品です。体力をつけてから読みましょう。ちょっと怖い、無理、という方は、作者のPixivにまとめられてある「来世は他人がいい」を読んでみてください。平和です。



第4位
城平京・水野英多『天賀井さんは案外ふつう』




『虚構推理』が絶好調ですが、個人的にはオリジナル作品であるこちらの方がイチオシです。
特殊設定ミステリというか、「特殊な設定を解読する」ミステリである本作ですが、真面目なところとボケたところの配分が本当にいいなと思います。ちなみに詳しい感想はこちら

個人的に、堅実にサプライズを提供してくるのが城平京っぽさだと考えているのですが、本作はそういう意味で非常にらしい作品になっています。『絶園のテンペスト』みたいなスケールの大きい小さな話も好きなのですが、これくらいのスケールの話のほうが、「堅実なサプライズ」にしっくりきますね。
今月には3巻も出ますし、早ければ年内で完結すると思うのですが、とりあえず今年も定期的に城平分が補給できそうで何よりです。



第3位
ジョージ朝倉『ダンス・ダンス・ダンスール』




良さを伝えようとすると、ただただ「いい……」としか言えなくなるのですがこれは私に限った話ではないですよね?信じたいところです。

メイン3人の関係性と立ち位置が様々に入れ替わる本作ですが、3人に共通する「父親がいない」というのが様々な形で影響してくるのが素晴らしいと思います。
こちらにも書きましたが、本作は父親がいない家庭で男らしくあろうと育った少年が、昔見て痺れたバレエの世界に入っていくところから始まります。
そして、最初の学校編(?)では「男がバレエをやること」というジェンダー的な面がピックアップされ、次の発表会編では「バレエとはどのようなものか」が実際の舞台を通して描かれ、そして現在進行中のバレエスクール編では「バレエを続けること」が、親子の関係を通して描かれています。そして、これらの全てに何らかの形で「父親の不在」が影を落とし、3人の関係を変えていきます。

こういう複雑な関係性をさらっと描けてしまうのがとても良いなと思うと同時に、ドラマ自体がどんどん盛り上がっていることもあり、今年もまだまだ面白くなるのではないかと思います(急な打ち切りだけが怖いですが、今のところ大丈夫そうですし)。



第2位
永椎晃平『星野、目をつぶって。』




今年の少年漫画誌の新連載では最高だと思います。ちょっとトーンダウンしたかなと思うところもあるのですが、それでも面白いです。
とにかく、少年誌で「同級生の女の子にメイクをする男子」という話をやっているのが本当に素晴らしいと思います。まぁ、やはりと言うべきかなんというか、途中(2巻の半ば辺り)からは「生徒の悩みを解決する謎の部活もの」みたいなテイストが強くなっていくのですが(トーンダウンを感じるのはこのため)、それでも主軸として「メイクすること」が残り続けているのが強いです。

また、本作は一応ラブコメに属する作品ですが、そういう視点からみたとき、ヒロイン間にある(主人公とヒロイン間では言わずもがな)爆弾がどんどん増えているので、どこでそれを炸裂させるかも見所ではないでしょうか。
あと少年誌掲載ですが、女性人気が出そうな作品でもあるのでいろんなとこで読まれて欲しいですね……



第1位
久米田康治『かくしごと』




はい、というわけで1位はこちら、久米田康治の新作です。
漫画家マンガで、やっぱり時事ネタ多目のギャグマンガではあるのですが、『絶望先生』なんかとは違い、「今回はこのネタでいきます」みたいな縛りがなく、自由に話が展開されるのがとても良いです。
また、久米田作品にはおなじみの大ネタも、今作では最初から少しずつ見えてくるようになっていて今から楽しみですね……

少し気になるのは時事ネタが減ったかわりに自虐ネタが増えてることですかね……『せっかち伯爵と時間泥棒』面白かったんですが、打ち切りだしやっぱり落ち着いちゃってたんだろうなぁと思うと、少し悲しい気持ちになります。
というわけで、またアニメ化するくらい売れればいいなーと思います。やっぱり次に何が出てくるか読めない作品は読んでて楽しいですね。



さて、今年は新作がけっこう多く、ランキング外でも注目作品がいろいろありました。
とりあえずジャンプ系列誌からいくと、吾峠呼世晴『鬼滅の刃』が新作ではお気に入りです。あと『約束のネバーランド』はアレですね、『学糾法廷』みたいにならないといいですね。
またSQでは西尾維新・暁月あきら『症年症女』が徐々にテンション上がってきて良い感じです。「死なない少女をどう殺すか」をミステリじゃなくレトリックで描くのが西尾っぽいです。また、『憂国のモリアーティ』もホームズが出てきて本番開始というところでしょうか。
あとはミラクルジャンプでやってた福島鉄平『こども・おとな』が単行本に。ノスタルジィ全開な小学生時代から、身近に感じられるようになってしまった大人へのジャンプがとても上手い作品でしたが、もっと長期の連載を期待していたので少し残念。新作はまだか。そしてヤングジャンプで始まりました中山敦士『うらたろう』西義之『ライカンスロープ冒険保険』(単行本はまだ出てません)は今年が本領発揮になるでしょうか。前者は源平合戦で平氏側が勝利したパラレルワールドで不死者と妖怪に呪われた子が死ぬまで生きるお話、後者は冒険者パーティに生命保険をはじめとする各種保険を紹介する話なのですが(しかし作者の趣味が前面に出てる作品ではないでしょうか)、ヤンジャンもたいがいカオスな雑誌になってきましたね。

では次にサンデー、藤田和日郎『双亡亭壊すべし』が面白いのですが、やっぱり不思議な作品で、ホラーとダークファンタジーとSFを行ったり来たり(こう書くといつも通りですね藤田先生)しながら、「双亡亭」という幽霊屋敷を破壊する作品になっています。あまり長期の連載ではないと思うのですが、けっこうな量の設定、伏線を処理しているのでやっぱり凄いなと思います。
また裏サンデーでやっているサンドロビッチ・ヤバ子/MAAM『ダンベル何キロ持てる?』も1巻が発売。原作が『ケンガンアシュラ』の人ですね。女子高生筋トレ漫画なので(?)、健康的にエロい作品なのですが、この路線で最後までいくんでしょうか。トレーニングと一口に言ってもいろいろあるので、意外と駆け抜けられそうな気もしますね……ケンガンのキャラ出てこないかなー。

マガジンは……雷句誠『VECTOR BALL』が瞬間最大風速を発揮していましたね……病気だよもう……なんだよあのどこ切り取っても面白い回……海産物とブスを組み合わせると……あぁはならねぇよな普通。やっぱりおかしいわ。あとヤンマガは今年あんまり面白い新作がなかったように思います。『手品先輩』が売れてるみたいで何よりですが。

チャンピオンは『永遠の一手』『BEASTARS』『放課後ウィザード倶楽部』と、一見するとイロモノみたいな作品がしっかりとまとまっている、というのが多かったように思います。『BEASTARS』はまだ連載が続いているので、まだいろいろ見せてくれそうですね……いや、あんまり深入りしたくないところもありますが。

また、イロモノといえば、夏目漱石・架神恭介・目黒三吉『こころオブ・ザ・デッド』という、漱石作品を集結させてゾンビものに仕立て上げた、完全なるイロモノ……なのですが、意外にしっかりと原作の要素を盛り込んでいる怪作もありました。メインのストーリーは兎も角、細部はけっこう漱石な気がします。2巻も楽しみな一冊ですね。
料理する方というか本家の方の新シリーズも始まりましたが、西条真二『鉄牌のジャン!』もなんだかんだ面白いです。森橋ビンゴが好きなのもあるかもしれませんが、しかし巻を重ねるごとに麻雀関係ない話が増えていくというか、料理対決とかやってますし、もう普通にジャンの新作として読んでます。本家の新シリーズの方も楽しみだ……
そして最後に(この流れで紹介するのもどうかと思いますが)ざら『ふたりでひとりぐらし』を。「登場人物がいつの間にか仲良さそうになってる」のが良いなと毎度思わせられるざら先生の作品ですが、本作の「仲良さそう」さ加減も絶妙です。語ってないことがたくさんあるのに、なんでも話が出来そうな関係性を各キャラクターが持っているのが羨ましいです。そろそろ2巻がでるかなー。


では次は連載・完結作品まとめで……なるべく早く書きます……