2016年、個人的に面白かった漫画のまとめ、連載・完結作品編です
さて、こっちは連載・完結作品のベスト5です。


第5位
ふみふみこ『ぼくらのへんたい』




まずはこちら。全10巻で完結です。今年は長期短期含めて完結漫画が多かったですね。

表紙のデザインと共に物語の色が変わってきた本作ですが、個人的に最も印象深かったのは3巻、それまでは何の迷いもなく、夢のように女装をしていられたまりかの目が覚める場面です。
おそらく作中で彼女が最も、外部との関係でなく、自身の問題として「女装する」という行為を捉えていて、それが無条件に達成されるものでなくなってしまった瞬間が、早い段階で訪れたのはけっこう驚きでした。

また、最終巻、修学旅行の最後の場面で、この「夢から覚めた」モノローグが少し形を変えて繰り返されるのですが、その場面がまた素晴らしい。月日の流れとキャラクターの心情の移りを実感できるのは、連載作品をリアルタイムで追いかけることの醍醐味だと思います。

今年は既に2月に新作、3月にキューティーミュティーの1巻が発売されることが決まっていますが、他にも何かあるかな……少女漫画誌の単巻シリーズとかもまたお待ちしております。



第4位
松井優征『暗殺教室』




全21巻、4年間で3年間を描ききりましたね。
メディア展開との連携においてこれほど上手くやった作品もそうないだろうという作品でした。一学期の最後の話がお盆の合併号だったときも凄いと思いましたが、松井先生のスケジュール管理能力凄すぎませんか。
というわけで、3月に卒業の話を描ききった(連載と映画で)教師もの作品になりました。リアルタイムで読んでた中高生が羨ましい……長く語り継がれて欲しい作品です。

しかしこの作品もけっこう意地が悪くて、当初は「ヤンキーが先生」「極道が先生」という教師ものの流れにある「超生物が先生」という作品で、それを暗殺しなくてはならないから『暗殺教室』だと思われていたのが、実際にはストレートに「暗殺者が先生」だから『暗殺教室』だったわけです。
普通に考えれば「暗殺者が先生」というのが(それも少年漫画誌で)成立するはずがないと思うのですが、それをクリアするために用意したフックとしてチョイスしたのが「超生物」というのは強すぎますし、表面上は最後までちゃんと「超生物が先生」であるように見えるのも素晴らしいと思います。

「キャッチーで意地が悪い少年漫画」という意味では、ネウロよりも黒い作品じゃなかろうかとも思うのですが、やっぱりストレートに底意地の悪い作品が読みたい。というわけで次回作はどうかひとつお願いしたいです(?)



第3位
手原和憲『夕空のクライフイズム』




全10巻、こちらはもっと長く続いてほしかった……これで『アオアシ』が面白くなってなかったらキレてたところですよ。

「高校の部活のサッカー、勝つことにこだわっても、どこかで負ける。だから最高の負け試合をして美しく散りましょう」を合言葉にしていた作品なので、その終わり方は満足できるものでしたが、叶うならもっと先までいってほしかった……

とにかく練習、試合、日常会話とあらゆるシーンのテンポがよく、毎週楽しかったです。
また、サッカーに対する興味が、試合を見るのはけっこう好きだけど、選手の名前なんかは憶えられない、という程度の私でも笑えるような小ネタも多く、キャラクターの強さでぐいぐい話が進んでいくのが本当に良かったです。掲載誌がスピリッツというのもあって、読んでいない中高生も多いと思うのですが、『DAYS』『エリアの騎士』辺りと比べても、少年誌で読まれて欲しいと思えるサッカー漫画でした。



第2位
仲谷鳰『やがて君になる』




これだけ完結作品じゃないですね。1巻の刊行時からチェックはしていたのですが、2巻が出たときに買いました。最高じゃないですか……

買ったきっかけは坂上秋成さんのツイートだったのですが、「百合漫画だけどそれ以上に性愛(同性間含む)的な感情が理解できない女の子の話だ」みたいなことを言われていて(意訳)、それが決定打になりました。
というわけで、新作漫画ランキングの方の『あげくの果てのカノン』『春の呪い』でも触れた、「何を愛しているかわからない恋愛漫画」というジャンル(?)の中でぶっちぎっているのが本作です。

とにかく台詞とモノローグが最高で、彼女達の「わかってなさ」が端々から感じられるようになっているのも素晴らしいのですが、タイトルも本当に良いと思います。
『やがて君になる』というタイトルが、「やがて(好きな相手が)君になる」なのか、「やがて君(のよう)になる」なのか、そして君(と、「君」と言っているの)とは誰なのか。どちらの意味でも、彼女達の不安定さが見えるタイトルだと思います。
次巻(4巻)ではこの手の作品ではお約束の作中劇が展開されるみたいですし、まだまだ不安定な関係は続いていくと思います。彼女らがどのように変われるか、どのように変われないか、本当に先が楽しみな連載作品です。



第1位
水上悟志『スピリットサークル』『戦国妖狐』




さて、1位はこちらの2作品。片や6巻、片や17巻、それぞれ4年と8年という期間連載された作品がほぼ同時に完結しました。
『スピリットサークル』の方はこれとか個別にけっこう書いてきたので、ここでは『戦国妖狐』の方に触れたいと思います。

とにかく作者の作品で最長の連載になりましたし、おそらく今後これより長い作品はないだろうと思います。また、主人公の交代や世代交代と、受け継ぐことが作品の中心にあることの多い水上作品ですが、『戦国妖狐』ほど「引き継がれるものの多さと長さ」のある作品も、おそらく今後ないのではと思います(単純な交代の多さでは『スピリットサークル』が上だと思いますが)。
闇(妖怪)と人間というふたつの種族の戦国絵巻。バトル多目の少年漫画ということもあって、アクションシーン、見開きの力が大きい作品だと思うのですが、終わってみると「闇になりたい人間」「闇と共に生きる人間」「闇の集合体」という三者三様の物語が、それぞれきっちりと綴じられているのが印象的です。

個人的には「闇と共に生きる人間」こと真介が最初から最後まで本当に大好きでした。唯一作品を通して登場しており、おそらく作中に登場した人間、闇の殆ど全員と触れ合い、そのたびに少しずつ変わっていった彼の物語は、(他の2人に比べると)派手なアクションもない、端役のものにも思えますが、受け継ぐ側の人間から、受け継がせる側の人間への変化や、最後の死に方を見ると、この作品の基盤であり、作中の世界の隅々までを見せたキャラクターは彼だったのだと思います。

どちらもいい作品なので、未読の方は是非。昨年末からFGO漫画を投稿されてますが、今年は新作も読めるといいな……



また、2016年は完結漫画が非常に多かったです。2016年に始まって彗星のごとく消えていった作品もありましたが……

とりあえず週刊連載では若木民喜『なのは洋菓子店のいい仕事』の終了が悲しかったです。もうちょっと親子の話が出来たはずだし、セージ君についてだってもっと突っ込んでいけたはずだし、高校でももっと色々な話が出来たはずだと思います。ラストがまとまっているだけに、そこまでの道のりがもう少しあったらなと思ってしまいました。
また、変わったラブコメとしては庄司創『白馬のお嫁さん』が3巻で完結。こちらももう少し続いて欲しかったなと思います。「産む男」という設定だけでも色々な話が出来たと思いますし(まぁ本編でソフトなものからえぐいのからやってましたが)、最終巻での「薬物投与で気持ちを作り出す」という展開から見ても、まだまだ他の要素も噛ませられたと思います。
ちなみに現在ブログの方で新作ネームを公開されています。気になる方は読みに行くと良いのではないでしょうか。

さて、それ以外にもけっこう短期で終わった作品が多かったですね。
西尾維新・チョモラン『零崎軋式の人間ノック』はきっちり原作どおりにまとめられていたので終わるのはわかっていたのですが、しかしアクションシーンが後半になるにつれてガンガン冴えていくのが本当に良かったです。また、アクションでいくと高橋慶太郎『デストロ246』も最後まで趣味全開でした。もうちょっと伊万里がどうにかなってしまうかなと思っていたのですが、『Ordinary±』よりも穏当な着地をしたようにも感じます。友達出来たしな……
武東宗哉『擬人家』は2巻で完結。最後までパロディも時事ネタもしっかりとやりきってました。次もギャグ漫画描くのかな……あと最近ヤンマガサードを読めてないので新連載とかどうなってるのか全然わからないんですよね。『亜人ちゃんは語りたい』以外に何か出てきたりしてないのでしょうか。
ちょっと残念だったのが田中ロミオ・筒井大志『ミサイルとプランクトン』です。あまりにも余白がなかった読切版から比べると、キャラが増え、各キャラの個別エピソードもあり、と良かった点も増えたのですが、その分ラストのヒロイン2人の詰め込み具合がなかなかひどいことに……
なんというか、時間と年齢が違えばお花ちゃんたちになれるような2人だったので、共依存の相手を間違えた『CROSS†CHANNEL』だと思って読み直すと面白いかも……しれませんね?
そして深見真・αアルフライラ『ちょっとかわいいアイアンメイデン』も4巻で完結。もうちょっと続くかなと思いましたが、まぁやることはだいたいやってましたね。しかしこう、原作・作画それぞれの趣味が炸裂していた作品だったと言いますか、一部の趣味は完全に被ってたせいか隙あらば突っ込んできてたというか、カップル全部おかしいからなこの作品……
しかし本編がちょっと力の抜けた感じで進行する一方、拷問コラム(一部洗脳)とかはかなり読み応えがありました。その辺のバランスも良かったですね……

また、ちょっと長期の連載では、つばな『第七女子会彷徨』大須賀めぐみ『ヴァニラフィクション』がありました。
『七女』は最終巻の前、6~8巻辺りがシュールに寄りすぎている感じがあって、ずっと乗り切れずにいたのですが、ラスト2冊は初期の脱力系ギャグ漫画っぽいノリが戻り、かつ長編としての締めとも両立されていて、思わず序盤の巻を読み返してしまいました。
やはりシュール寄りだった期間がやや長かったなーと思うのですが、まとめて読むとあまり気にならないかもしれませんし、この機に読んでもらいたいなと思います。
一方で、『ヴァニラ~』はラストで失敗した……とまではいかないものの、メタフィクション気味の展開、キャラクターの言動に引きずられすぎたなという印象が強く、消化不良というか肩透かしでした。実際にはルールがあってないようなものとわかっていても、「あるルールに従ったゲームをクリアする」ことを目的とした物語の着地が、それまでのルールから少しずれたところになってしまうのは残念だと思います。


あと一応触れておきますが、予想通りというかなんというか、篠房六郎『葬送のリミット』が一瞬で終わりました。3巻結局読んでないのですが、そのうち読もうとは思っています。
どう考えても構成が悪いというか、モアイで無料公開される1話のよくわからなさが凄いです。2話まで見ると、どこが何のためのシーンだったのかわかるのですが、2話でもさらに別の要素が突っ込まれてくるので、どこまで読めば落ち着くのかもわかりづらい。奇しくも久米田康治『かくしごと』にて「読者が黙って読んでくれるのは息を止めていられる間だけ」と描いていて、なかなかに辛くなりました。



では最後に、年が明けてしばらくたってしまったことで、完結してしまった作品などもあるのですが、現在連載中の注目作を……
『僕のヒーローアカデミア』『背すじをピン!と』の2本は今年も二転三転していくと思います。特にヒロアカは看板作品にならざるを得ないと思いますので、番外編の方も含めて楽しみですね。
『左門くんはサモナー』『ハイキュー』辺りも面白いですし、『ワンピース』も最近は展開が早い方ではありますので、ジャンプは強いなーとしみじみ思います。
サンデーは変わらず『BIRDMEN』『湯神くんには友達がいない』が強いです。特に『BIRDMEN』のジュブナイルSFぶりは本当に素晴らしいと思います。親から離れる瞬間をあんな形で描くのは本当に卑怯ですよ。

マガジンは新作の方に書いたので特に言うことがないのですが、ヤンマガも『僕たちがやりました』が完結してしまってけっこう危うくなりつつあるような気がします。『喧嘩稼業』が毎週載ってれば……
また、アニメ放送中の『亜人ちゃんは語りたい』が面白いです。今年は『セントールの悩み』もアニメ化しますので、異種族生態SFとラブコメの比率はそれぞれ違う作品がどう受け取られるかには興味があります。

その他にも、相変わらず絶好調な『波よ聞いてくれ』、ドラマ放送中の『東京タラレバ娘』、連載再開した『ハイスコアガール』等々、今年も話題になりそうな連載や完結しそうな作品が多いです。
去年から、週刊誌以外を読む機会がめっきり減ってしまったので、雑誌で連載を追っている作品も減ってしまいましたが、今の数はどうにかキープしたいと思います。


さて、ギリギリ1月という時期になってしまいましたが、漫画のまとめでした。もう一個、映画のまとめ記事を書くと思いますが……2月になるかな……?